業績の下方修正リスクは高いが

 野村では、米国の実質GDP 成長率は、2021年の前年比+5.7%に対し、22年は同+1.4%に鈍化し、23年には同-1.1%とマイナス成長を予想する。

 足元のインフレ動向については予断を許さない状況で、FRB(米連邦準備理事会)はインフレ抑制のために積極的な利上げを進めている。このため米国経済が大幅に減速ないしは後退し、企業業績へも悪影響が及ぶことが懸念されている。

 野村ではFRBの政策金利は今後、11月に0.75%ポイント、12月に0.75%ポイント、23年2月に0.50%ポイント引き上げ、3月の0.25%ポイント引き上げで今回の利上げサイクルの到達点となり、最終的には5.25~5.50%で利上げを終了すると予想している。

 その後、インフレの低下トレンドを確認するまでこの水準で政策金利を維持した後、9月から利下げを開始すると野村では見込んでいる。23年末、24年末の政策金利水準はそれぞれ4.50~4.75%、1.00~1.25%と野村では予想している。

 FRBの金融引き締め姿勢を受けて、昨年来上昇してきた米長期金利(米10年国債利回り)について野村では、今後一時的に上昇する可能性はあるが、22年末は3.80%程度と予想する。その後は米国経済が鈍化することに伴い低下し、23年末には2.35%程度と予想する。

 次に企業業績をみると、調査会社リフィニティブによる9月30日時点の集計では、S&P500指数構成企業のEPS(1株当たり利益)は、22年は前年度比+7.5%の223.72ドル、23年は同+8.1%の241.83ドル、24年は同+7.9%の260.93ドルと予想されている。

 今後、米国景気が鈍化する中で、上記の企業業績予想が下方修正される公算は大きい。しかし、独自の技術力やビジネスモデルでグローバルに競争力を発揮し業容を拡大している企業については、相対的に高い利益成長率を維持し、22年以降も史上最高益を更新していく可能性が考えられる。今後、米長期金利が頭打ちから低下してゆく局面では、史上最高益を更新する企業群の株価は、米国株式市場平均を上回る株価パフォーマンスを示そう。

競争力の高い企業群に着目

 米国株式の銘柄選別の視点としては、独自の技術力やビジネスモデルで競争力を発揮している企業群に着目したい。

 一例として、中小企業向け会計ソフトウエアや個人向け確定申告ソフトウエアを手掛けるインテュイットを挙げたい。これら既存事業の拡大に加え、今後は個人向け家計管理の成長が予想され、これによりソフトウエア使用料以外の新しい収益源が加わることが期待される。

 企業向けソフトウエアで競争力を発揮している企業の中からは、オラクルを挙げたい。同社は企業向けにデータベース、アプリケーションソフトウエア、ミドルウェア、ハードウエアなどのITソリューションを幅広く提供している。クラウドサービスを拡充し、オンプレミス、クラウド、両者を混在させたハイブリッドクラウドなど、顧客のニーズにあわせた形態でIT環境を提供、顧客を獲得し、業容を拡大している。

 売上高で世界最大のソフトウエア企業、マイクロソフトは、世界的に企業や個人がクラウドへの移行を進める中、既存の顧客基盤を強みに業績は再び拡大傾向にある。

 世界最大の検索エンジン「グーグル」を展開し、積極的に新技術に投資するアルファベットも挙げたい。

 e コマースの最大手企業のアマゾン・ドットコムも挙げたい。コロナ禍で急増した需要に対応するための能力増強投資で損益は悪化していたが、今後、業績の回復が期待できる。

 カード決済ネットワークにも着目したい。コロナ禍の影響で実店舗でのカード利用減少の影響を受けてきたが、コロナへの対応で世界的に電子決済化の流れは加速しており、同分野最大手のビザを挙げたい。

 総合娯楽企業のウォルト・ディズニーも挙げたい。TV 放送やストリーミング配信、映画・TVコンテンツ、テーマパークなどの事業の拡大に加え、メタバース、NFT(非代替性トークン)など新技術の活用で業績の成長が期待される。

 それぞれの分野で競争力を発揮し、着実な業容拡大で長期間増配を続ける優良企業も紹介したい。過去25年以上増配を継続している企業で構成される「S&P500配当貴族指数」採用で、かつNY ダウ指数の構成銘柄でもある企業は、シェブロン、スリーエム、キャタピラー、マクドナルド、プロクター・アンド・ギャンブル、コカ・コーラ、ウォルマート、ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス、ジョンソン・エンド・ジョンソン、IBM 等である。

(投資情報部 村山 誠)

※野村週報 2022年10月10日号「焦点」より

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