安定利益成長と高水準の株主還元が継続

 通信大手企業では、2021年春の個人向け携帯料金改定による減収影響が続いている。しかし、旺盛な企業ネットワーク需要による法人事業利益の拡大、金融などの非通信事業の拡大、経費効率化により24.3期にかけて安定した営業増益が見込まれる。

 また、安定したフリーキャッシュフローを背景に、中期計画で明記した方針に基づき、高水準の配当や自己株式取得などの株主還元の継続が見込まれている。ESG(環境・社会・ガバナンス)では各社が30年にカーボンニュートラル(温室効果ガス排出を全体としてゼロ)を目標としている。

NTT は固定・携帯の統合が進展へ

 NTT では22年7月にNTT ドコモとNTTコミュニケーションズの機能を統合し、通信ネットワーク、サービス開発、法人営業を一体化させている。会社では、固定・携帯の機能統合による営業利益へのシナジー効果を24.3期に累計1,000億円、26.3期に累計2,000億円と計画している。

 中期計画最終年度の24.3期の会社EPS目標は370円だが、野村では固定・携帯統合のシナジー効果や自己株式取得効果も含めたうえで、一時要因を除き通常税率を適用して算出した修正EPS(一株当たり当期利益)で367.6円を予想している。

KDDI は24.3期の携帯通信ARPUに注目

 au では5G 契約数のうちデータ無制限プラン比率が約6割と、4G時代の大容量データプラン比率4割を超えている。23年1~3月期の携帯通信ARPU(顧客当り月間収入)は前年同期比0.7%減に留まり、24.3期は前期比1.3%上昇を予想する。

 23.3期~25.3期の3カ年中期計画では、総額で1.5兆円規模の株主還元が定められ、野村では24.3期に10円増配と2,000億円の自己株式取得を前提とする。会社の25.3期EPS目標は約389円で、野村では個人向け携帯事業のARPU回復、法人ネットワーク需要拡大、自己株式取得継続により、一時要因等調整後の修正EPSで386.8円を予想する。

ソフトバンクは24.3期に通信事業利益回復

 ソフトバンクでは24.3期には個人向け携帯料金値下げによる減収影響が480億円にまで縮小し、減価償却費や運用コストなどのネットワーク運用費用の効率化が500億円寄与することで、コンシューマ事業の営業利益は前期比5%増益になると我々は予想する。法人事業では企業のデジタル化需要の拡大でソリューションが増収増益を牽引する見込みである。Zホールディングスでは、22年10月に子会社化したPayPayにおいて販促効率化による営業利益黒字化やヤフー・LINEとのサービス連携によるシナジー効果が表れることに注目する。

(エクイティ・リサーチ部 増野 大作)

※野村週報 2022年10月17日号「産業界」より

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