ESG投資とは、環境や社会、企業統治の点で優れた取り組みを行っている企業を選び投資することで、投資を通じて社会に良い影響を与えようとする取り組みです。Eは環境、Sは社会、Gは企業統治のことですが、ここでは、このうちのEの環境に焦点を当ててみていきます。

 Eとはエンバイロメント、すなわち環境の英語の頭文字のことです。この環境の項目は、人類が経済的発展を優先した結果生じた、様々な環境問題の解決に向けて設定されました。気候変動や生物多様性の減少をはじめとする諸問題に対して、国際的な対応と共に企業も取り組みを行っていく必要があります。

 上段の図をご覧ください。日本企業の具体的な取り組みとして、気候変動については、温室効果ガス排出量の削減や、再生可能エネルギーの利用促進などがあります。生物多様性では、生物保全を前提とした事業計画の策定や実行、社有地等における希少種の保全などがあります。環境汚染防止については、大気汚染物質の排出抑制への取り組みや、リデュース、リユース、リサイクルの3Rの推進などがあります。3Rのリデュースとは廃棄物などの発生抑制のことで、リユースは資源の再使用、リサイクルは再資源化のことです。

 次に、環境に着目した投資では、企業のどのような取り組みが評価されるのでしょうか。上段の表をご覧ください。この表は、世界取引所連合が挙げる環境の評価項目を示しています。温室効果ガスの排出量、エネルギー原材料の割合を示すエネルギーミックス、環境関連事業などがありますのでご参考にしてみてください。

 では、環境に注目することで、投資のパフォーマンスは改善するのでしょうか?上段のグラフをご覧ください。グレーの線は東証株価指数、TOPIXの推移を、赤い線はS&P JPX カーボン・エフィシェント指数の推移を示しています。2つの株価指数は、2009年3月末の水準を100にそろえています。これにより、2本の線を比べることで、パフォーマンスの推移を比較できるようにしています。

 TOPIXは、日本の代表的な上場企業を網羅した、日本の株の動向を測る代表的な株価指数です。そして、S&P JPXカーボン・エフィシェント指数とは、そのTOPIXを構成する企業のなかで、環境への取り組みに関して基準を満たした企業のウェイトを引き上げるなど、採用企業の環境への取り組みを反映させた指数です。

 二つの指数のグラフを見ると、カーボン・エフィシェント指数は、TOPIXの推移とほぼ重なっています。環境への取り組みに力を入れているからといって、TOPIXにパフォーマンスが劣っているわけではありません。

 カーボン・エフィシェント指数で重視されるような企業のように、多くの企業が様々な環境への取り組みを通じて、環境にまつわる将来のトラブルを防ぐ努力を強化しています。そう考えると、環境への取り組みは事業のリスクを減らし、企業を安定させてくれるものだといえるでしょう。これは、投資家が安心して投資するための重要なポイントのひとつです。

 中長期の資産形成という観点から、ESG投資の中でも、環境に注目した株価指数への投資を検討してみるのはいかがでしょうか。

(野村證券 ファイナンシャル・ウェルビーイング室 井上 政則)

ご投資にあたっての注意点