足元、米国ではインフレが進行しています。インフレ抑制のためにFRB(米連邦準備理事会)は金融政策の引き締めを行っていて、米長期金利も上昇しています。
インフレが進行すると、通常は債券利回りにも反映され、米長期金利はインフレ率と同等か、それ以上の水準となる傾向があります。
しかし足元では、CPIでみたインフレ率は米長期金利を大きく上回る水準となっています。1973年の第一次オイルショックの頃にも、CPIが米長期金利を上回って推移する期間がありましたが、足元、CPIが米長期金利を上回る状況はその時以来の水準となっています。
FRBはコロナ禍による経済危機への対応として、2020年3月以降、米国債を買い入れる量的緩和を再開し、2021年3月には終了、2022年6月からは量的引き締めを開始しましたが、依然として大量の米国債を保有しています。このため、実質的に量的緩和の状態がもたらされ、足元では米長期金利が上昇しているものの、インフレ率と比べると緩やかとなっている要因の一つとなっていると考えられます。
次に、金利が上昇すると通常、株式は割安感が乏しくなっていきますが、足元ではどうなっているかをみてみたいと思います。
株式のバリュエーション手法の一つに、債券利回りと株式益利回りを比較したイールドスプレッドと呼ばれるものがあります。株式益利回りとは、一株当たり利益を株価で割り算して算出します。そして、イールドスプレッドは、債券利回りから株式益利回りを引き算して算出し、この値がプラスの場合、株式は割高、マイナスの場合割安と判断されます。
足元、米長期金利は上昇しているものの、株式益利回りは米長期金利を上回って推移していて、イールドスプレッドはマイナスの状態が続いています。つまり、株式は割安の状態にあります。
米企業の収益力の強さが、債券利回りと比較した、株式の割安感をもたらしていると考えられます。
(野村證券投資情報部 村山 誠)