主要企業の利益率の悪化が明確に

 2022年度第2四半期(以下、四半期をQ2のように表記)決算では、総じて主要企業の利益率の悪化が明らかになっている。

 まず、四半期実績が市場予想を上回った銘柄の割合は、売上高ベースでは好調、営業利益ベースでは低調という乖離が目立っている。これはインフレの影響が想定以上に大きいことを示唆している。

四半期実績が市場予想を上回った銘柄の割合

売上高の上振れが著しいが、営業利益は低調

(注)対象はラッセル野村大型インデックス構成銘柄(金融を除く)。QUICKコンセンサス予想(提供社数3 社以上を対象)が提供されて
いる銘柄のうち、実績値がQUICKコンセンサス予想を上回った銘柄の割合を示した。22年度Q2は22年11月14日までに決算発表を終えた
銘柄を対象。(出所)各社開示資料、QUICKより野村作成

 こうした構図は22年度Q1決算と似ている。しかし、Q1決算では半数以上の銘柄の営業増益率が市場予想を上回ったが、今回のQ2決算では半数を下回った。インフレの影響のうち、特に原材料高の悪影響が大きくなっていると考えられる。加えて、一部企業では固定費の増加も見られはじめた。主要企業の利益率の悪化は、Q1よりも鮮明になってきている。

 22年度上期は、売上高が前年同期比で2ケタ増収となった一方で、営業利益は前年同期とさほど変わらない水準にとどまった。企業は原材料高に対応して製品・サービスの値上げを進めているが、まだ価格転嫁が不十分な企業も少なくない。こうした状況下で足元の会社予想を見ると、22年度下期に増収率が鈍化する一方、営業増益率が回復するという「逆転現象」が見込まれている。しかし、原材料高は継続しており、Q3以降も利益率悪化要因になりえることなど、利益率・数量の両面で先行きの業績下方修正リスクが大きいと考えられる。

上期の営業利益は例年比で低進捗

 22年度上期の主要企業の営業利益進捗率(通期の会社予想営業利益に対する上期実績の比率)は46.2%と、09年度以来の低さで、アベノミクス後(13年度以降)の中央値(52.2%)を大幅に下回っている。

上期実績の進捗率(対会社予想営業利益)

直近は2013年度以降の中央値(52.2%)を大幅に下回っている

(注)対象はラッセル野村大型インデックス構成銘柄(金融を除く)。
(出所)各社資料より野村作成

 国際的な金融危機の直後であった09年度、東日本大震災の影響が残った11年度、新型コロナ禍にあった20年度などであれば、落ち込みの理由が明確であり、下期の挽回はそれなりに期待できた。しかし、22年度に関しては、下期もまだ原材料高など利益率を圧迫する要因が残っている。下期の挽回を前提とした足元の会社予想は楽観的であると判断せざるを得ない。

 業種別に見ても軒並み低進捗であり、例年を明確に上回るのは素材のみだ。同業種及びほぼ例年並みのエレクトロニクスを除いた業種では、進捗率が例年よりも低い。

 企業が直面する利益率悪化の状況は、マクロデータを見る限り容易には解消しそうにない。輸入物価の上昇率は前年比45~50%に達する一方、国内企業物価は10%前後で頭打ちである。今後のデータで再度価格転嫁が進むかどうかが注目点だが、需要が弱含みに転じている中では難易度が上がっていよう。

 需要の変化を数量面から把握する指標としては製造業生産の予測修正率が有用で、業績モメンタムの指標にもなる。製造業が低調であり、特に化学の下振れが顕著だ。一方、先駆けて悪化が目立っていた電子部品・デバイスはやや持ち直しており、在庫率も前年比での悪化にピークアウト傾向が見られる。年末商戦次第ではあるが、輸出業種の中では先行回復の芽が出てきているかも知れない。

(市場戦略リサーチ部 池田 雄之輔)

※野村週報 2022年12月5日号「焦点」より

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