日銀のサプライズ緩和縮小で金融市場急変

日本銀行は、12月19-20日に開いた金融政策決定会合で、大規模な金融緩和策の一部を修正することを決定しました。金融市場では広く金融政策の据え置きが見込まれていたことから、サプライズとなりました。金融市場の反応ですが、ドル円相場では一時1ドル133円台と3円以上も円高が進んだほか、日経平均株価の下げ幅は一時700円を超えました。個別銘柄では、三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)が一時9%を超える上昇となるなど、銀行セクターの上げが目立っています。

野村證券尾畑秀一シニアストラテジストの解説

日本銀行は2022年12月20日、主要な金融政策の据え置きを決定したうえで、長期金利操作の運用の一部見直しを発表しました。

具体的には、10年国債金利の許容変動幅を従来のゼロ%±0.25%から、ゼロ%±0.5%ポイントへ拡大しました。また、従来は短期金利として日銀当座預金金利、長期金利として10年国債金利を操作対象としてきましたが、今回は10年国債利回りの許容変動幅拡大と「整合的なイールドカーブの形成を促すため、各年限において、機動的に、各買い入れ額の更なる増額や指値オペを実施する」との意向を示しました。

声明文では今回の修正の目的として「緩和的な金融環境を維持しつつ、市場機能の改善を図り、より円滑的にイールドカーブの形成を促していくため」だとしています。具体的は、海外の金融市場ではボラティリティ(変動性)が高まるなかで、本邦国債市場の流動性の欠如により市場機能が低下していることを懸念したものと考えられます。このため、利上げなどの政策変更につながる措置ではないと考えられます。

今回の会合で何らかの政策変更が行われることは予想されていなかったことから、市場のファーストリアクションは長期金利上昇、円高、株安となっています。ただし、上記のように、10年国債利回りには引き続き上限が設定されている点、金融政策の本格的な見直しにつながる可能性は低い点を考慮すると、水準調整が終了した後、市場は落ち着きを取り戻す可能性が高いと予想されます。米国、欧州では長期金利に頭打ち感が見受けられる点も、市場の安定化に寄与すると考えられます。

(野村證券投資情報部 尾畑 秀一)

ご投資にあたっての注意点