日本は2050年のカーボンニュートラルを目指しており、家庭部門も大きな貢献が求められている。

 家庭部門のエネルギー源別消費では電力の構成比が20年度には50%に達した。一方で、日本の電力の電源構成では、天然ガスなどの化石燃料が20年度で76%を占めている。日本の電源構成全体を再生可能エネルギーにシフトすることは短期的には困難なため、家庭部門の炭素排出を削減するには個別の住宅ベースでの再生エネルギーの積極的な活用が必要である。

 東京都議会で22年12月に環境確保条例改正案が可決され、戸建て住宅を含む延床面積2,000m2未満の新築建物について、太陽光発電設備の25年度からの設置義務化が決まった。住宅オーナーではなく住宅メーカーが設置義務者となることが特徴である。都内供給住宅延床面積が年間2万m2以上の大手事業者は、建築棟数とエリアに応じて一定の発電量相当の設置が義務化される。画一的な設置義務化ではなく、日照条件などが太陽光発電に不向きな住宅では設置義務の回避が可能である。

 住宅メーカーは今後、設置義務者として、住宅ごとに効率的な太陽光発電を提案するための新たな知見が必要になる。

 短期的には、住宅オーナーのコスト負担の軽減支援が大きな課題となる。戸建て住宅の太陽光発電設備の設置には100万円前後を要することから、PPA(電力購入契約)やリースによって、発電事業者が太陽光発電設備を一定期間保有し、発電した電力を販売する代わりに、住宅オーナーの初期費用をゼロにする仕組みが注目される。従来PPAなどは大口の産業向けが中心だったが、市場拡大が見込まれることから住宅向けに参入する事業者が増えている。

 中期的には、発電効率の高い新型パネルの採用も課題である。太陽光パネルで現在主流のシリコン型は重く、設置場所が制約される。軽量で柔軟性が高いペロブスカイト型や有機薄膜型のパネルで、耐久性や発電効率を向上させるための開発が進んでおり、今後数年で実用化が期待されている。

 新築住宅への太陽光発電設備の設置義務化は、東京都以外の自治体でも検討されている。住宅メーカーは、事業提携などで太陽光発電の新サービスや新技術を積極的に取り込むことが期待される。

(フロンティア・リサーチ部 原田 静雄)

※野村週報 2023年1月16日号「新産業の潮流」より

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