23年は追加値上げにより業績回復へ

 食品業界はコモディティ市況の高騰、円安を受けて未曽有の原燃料高に直面しており、業界を取り巻く事業環境は厳しい。2022年には、ほぼ全ての食品メーカーが値上げした。しかし、原燃料コストは値上げ発表時点の想定を上回って推移しており、値上げ効果がコスト高をカバーできていないのが現状である。

 しかし、足元ではコモディティ市況が落ち着いてきた。くわえて20年夏から続いていたラニーニャ現象が23年春には終息する見通しで、世界的に天候が正常化する可能性が高く、農産物の供給不安は収まると見込まれる。また、為替は一時、1ドル150円台を付けたが、日本銀行の実質利上げを受けて、足元では円高となっている。ドルベースのコモディティ市況の落ち着き、円高転換により、24.3期は原燃料コスト増が続くものの、その減益影響は23.3期に比べて緩和すると予想される。一方、食品メーカーは足元で2度目、あるいは3度目の値上げを打ち出しているが、23年春にかけてより多くの食品カテゴリーで追加値上げがあろう。24.3期もコストインフレとの闘いが続くが、値上げ効果が原燃料高を上回ることで、業績反転の可能性が高まっている。

 まずは、24.3期の業績回復スピードが銘柄選択の焦点となる。ただし、経済リオープンによる消費行動の正常化により内食需要が落ち着いてきているうえ、度重なる値上げにより、食品カテゴリーの販売数量は総じて強くない。その中で、スナック菓子と冷凍食品に注目したい。

 まず、スナック菓子の販売はインフレ下でも底堅い。スナック菓子は生産の最終工程でフレーバーを変えることで、商品ラインナップを広げることが出来る。カルビーは商品施策を強化し、需要を喚起することで、値上げ後も販売が強い。同社は24.3期に追加値上げを実施することで、力強く業績が回復すると野村では予想する。また、冷凍食品は、3年に及ぶコロナ禍で新規ユーザーが増え、既存ユーザーの喫食率も高まった。時短・簡便ニーズを満たす商品という特性に、商品力の強化により美味しさという要素が加わり、インフレ下でも販売が強い。冷凍食品でトップシェアにあるニチレイに注目したい。

経営陣のスタンス変化にも注目

 足元で見られる値上げもそうだが、食品のインフレはコストプッシュ型である。そのため、原燃料安になれば、食品メーカーは値下げすると思われやすい。しかし、食品は13年のアベノミクス以降、原材料安局面でもほぼデフレになっていない。また、経営陣の価格政策へのスタンスが変化してきたといえる。適切な価格により利益を上げることが事業継続、サプライチェーンの維持に重要であるとの認識が広がっているためである。原燃料安になったからといって、安易に値下げすることはないだろう。

 先ほど見た通り、24.3期もコストインフレによる影響は残るが、現状のコモディティ市況、為替の水準が続けば、25.3期には原燃料安になると見られる。この数年間で引き上げてきた価格水準を維持することができれば、食品メーカーの利益水準は25.3期以降、一段と高まる可能性があろう。特にブランドが消費者に支持されているビール業界、その中でもビールカテゴリーでトップシェアのアサヒグループホールディングスに注目したい。

(エクイティ・リサーチ部 藤原 悟史)

※野村週報 2023年1月23日号「産業界」より

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