世界的な脱炭素の潮流に加え、ウクライナ紛争を契機としてエネルギー安全保障の重要性が再確認されたことで、再生可能エネルギーの導入が加速している。

 ロシア産燃料に対する依存度が高い欧州では、2022年にEU(欧州委員会)がロシア産化石燃料からの早期脱却を目指す計画「REPowerEU」を発表した。30年の最終エネルギー消費における再生可能エネルギーの割合を45%とし、21年7月に発表した政策パッケージ「Fit for 55 Package」で示した同40%から引き上げた。

 日本はロシア産エネルギーへの依存度が相対的に低いものの、エネルギー自給率が低く、世界的なエネルギー資源価格の上昇は経済に大きく影響を及ぼす。これを踏まえ、日本ではエネルギー安全保障を確保した上で脱炭素を加速させる「クリーンエネルギー戦略」の取りまとめが進んでいる。

 一方、エネルギー自給率の高い米国では22年に気候変動対策に重点を置いたインフレ抑制法が成立した。太陽光発電設備の設置に対する税額控除の延長など、クリーンエネルギー導入に伴う税額控除が盛り込まれている。

 脱炭素化に加え、エネルギー安全保障の観点からも、再生可能エネルギーの導入は欠かせないものとなった。太陽光発電を中心に導入が加速するとみられ、27年に太陽光発電が世界の電源別発電容量シェア1位になるとIEA(国際エネルギー機関)は予想している。

 こうした流れは、太陽光発電を手がける企業に加え、送電線網や蓄電装置、電力システム全体の需給をリアルタイムで均衡させるためのVPP(バーチャル・パワー・プラント、仮想発電所)システムなどを提供する企業の業容拡大につながろう。再生可能エネルギー市場の動向が注目される。

(投資情報部 岩崎 裕美)

※野村週報 2023年1月23日号「投資の参考」より

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