近年、米国における個人の資産運用において、低コストで分散投資が可能なインデックス運用が浸透している。米国では、アクティブ・ファンドからの資金流出が続く一方、インデックス・ファンドは資金流入基調となっている。この背景には、投資一任サービスにおけるポートフォリオの構成要素として、インデックス・ファンドが定着していることなどが挙げられる。

 こうした中、米国では、シンプルなインデックス・ファンドや、それらを組み合わせたポートフォリオ運用では満たしきれない投資家ニーズを捉えるべく、インデックス運用の利点を踏まえた新たな商品・サービスを開発・提供する動きがみられる。

 例えば、アクティブ型上場投資信託(ETF)市場が台頭している。アクティブ型ETF は、アクティブ型投資信託の運用戦略及び成果と、ETF が提供する低コスト・リアルタイム取引などの特性を兼ね備えた商品である。2021年には、ETFの新商品のうち半数以上をアクティブ型が占めた。

 また、ダイレクト・インデックス(DI)と呼ばれるサービスへの関心も高まっている。DIとは、投資一任口座において、特定の指数構成銘柄の一部を変更するなど、ポートフォリオのカスタマイズ等を行うサービスである。DIは、個別銘柄への投資も行うため、投資家のニーズに合わせたきめ細かいポートフォリオ調整に加え、損益通算を通じた節税対策としても利用される。

 インデックス・ファンドを活用したポートフォリオ運用は、シンプルかつ低コストの投資手法であり、今後も個人投資家の資産形成において重要な役割を担っていくものと思われる。一方で、個々の投資家は、それぞれ異なる選好や目標を有している。アクティブ型ETFやDIは、こうした投資家の多様なニーズに応える商品・サービスとして位置づけられよう。

 アクティブ型ETF及びDIは、先行する米国でも発展途上と言うべき段階にあり、資産運用業界における大きな潮流を生み出すかどうか、現状では未知数である。投資家の様々なニーズへの対応を目指す新たな商品・サービスが米国において今後どのような展開を見せるかは、米国と同様にインデックス運用が個人投資家の間で浸透し始めている日本においても、重要な示唆を持つだろう。

(野村資本市場研究所 関田 智也)

※野村週報 2023年1月30日号「資本市場の話題」より

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