短期では川下の繊維等の業績が良好

 2023年前半は半導体材料の需要伸び悩みや米国のマクロ経済悪化が予想される。この局面はコロナ後の需要の反動増が見込まれる航空用炭素繊維や自動車向け材料等に注目したい。また、原燃料価格の低下は川下の繊維やペイント企業に恩恵があろう。東レや三井化学、関西ペイント、日本ペイントホールディングスなどに期待する。

中国改善の恩恵を享受する企業

 中国経済はゼロコロナ政策解除による急改善が見込まれる。中国でペイント事業を営む日本ペイントHD は業績改善が加速する可能性がある。また財務体質が良好でアジアの塩ビやMDIの採算改善が期待される東ソー、過去のボトム水準まで市況が下落したMMA の改善が見込まれる三菱ケミカルグループも恩恵を享受しよう。

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電子材料:需要の底打ちを探る局面

 半導体需要は民生やデータセンター向けのメモリを中心に減少しており、半導体材料需要は23年前半は伸び悩むであろう。こうした中でも、高い製品技術力を有する信越化学工業は相対的に堅調な業績が見込まれる。過去には半導体需要サイクルの改善局面で、同社は高い競争力等が評価され、株価が他社に先駆けて底打ちしていた。また、米国では金利がピークアウトした場合に住宅需要が回復する可能性があり、塩ビ事業の業績にプラスの影響が及びうる。

 野村では23年後半には半導体需要が回復局面をむかえ、足元で低下しているメモリ価格は23年4~6月期近傍には下げ止まると予想している。底打ちすれば、信越化学工業にくわえSUMCOや東京応化工業なども恩恵を受けよう。JSR についてはArF(フッ化アルゴン)レジストの世界シェアの伸び悩みやバイオCDMO(医薬品の受託開発生産)で課題がある。

 ディスプレイ材料はテレビ向け材料の在庫調整が進展しつつある。しかし、ハイエンドスマートフォンは景気後退の影響で需要が伸び悩もう。製品を手掛ける日東電工はワクチン補強材やダイボンディング材の需要も減少するため、業績は伸び悩もう。

繊維:東レの好調が続く

 繊維では、炭素繊維の需要が拡大している。同材料を用いた航空機であるB787の受注が機体のトラブル解消やコロナ禍からの回復で拡大していることが背景にある。同様に、アパレルや自動車向け繊維についてもコロナ禍から需要の回復の兆しが見られ、これらを手掛ける東レでは好調な業績が持続するとみている。欧州天然ガス価格など原燃料価格等がピークアウトしていることも業績にプラスとなりうる。帝人も繊維製品を手掛けるが、同社は複合成形材料事業について米国での装置トラブルの改修状況等が明らかになり、損益改善にめどが立つかが注目点である。

 クラレは各種フィルムを手掛けており、野村ではポバールフィルムの業績悪化が23.12期上期に止まると見ている。とはいえ、23.12期は在庫評価益の剥落が大きく、イソプレンなどの減価償却増もあり、前期比で営業減益を予想している。

 総合化学では三井化学のメガネレンズモノマや農薬、EUV用ペリクル(半導体露光工程の防塵カバー)など、競争力の高い製品の売上好調が24.3期も持続し、高付加価値の機能化学における成長3領域の成長が期待できよう。

(エクイティ・リサーチ部 岡嵜 茂樹、吉武 祐翔)

※野村週報2023年1月30日号「産業界」より

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