
需要拡大が期待される産業用ロボット
産業用ロボットは、人の代わりに工場での組み立て作業などに使用される機械装置(ロボット)です。コロナ禍で多くの企業がサプライチェーンの寸断に直面する中、生産拠点や調達先の分散化を進める上で、産業用ロボットなどを活用したFA化(工場の自動化)の重要性が増しています。また、世界の産業用ロボットの需要先は、半導体を含む電気・電子産業と自動車産業向けが全体の過半を占めています。半導体では各国・地域の政府によるサプライチェーン強靭化に向けた支援策、自動車産業では電動化に向けた自動車メーカーの積極的な投資が産業用ロボットの需要を拡大させると期待されます。
存在感を増す協働ロボット
産業用ロボット市場の中で、徐々に存在感を増しているのが、協働ロボットです。協働ロボットは、人をセンサーで感知して止まるため、柵なしで設置が可能です。また、複雑なデータの入力が必要だった産業用ロボットに比べ、直感的な動作設定も可能で、専門の技術者がいない中小零細の製造業やサービス業など幅広い分野での導入が進んでいます。

(出所)国際ロボット連盟「World Robotics Report 2022」より野村證券投資情報部作成
産業用ロボット市場で日本企業は高いシェアを有する
産業用ロボットでは、ファナック、安川電機、ABB(スイス)、KUKA(ドイツ、中国の美的集団傘下)が世界4強と言われています。産業用ロボットの中核部品であるモーターなどの駆動装置や、精緻な動きを実現する精密減速機、制御機器などでも、日本企業は高い世界シェアを有しており、市場拡大の恩恵を享受できると見られます。

(注)2019年、2020年、2021年の需要先別ロボット販売台数を合算してシェアを算出している。
(出所)国際ロボット連盟「World Robotics Report 2022」より野村證券投資情報部作成
ご参考: 産業用ロボット関連銘柄の一例
・ナブテスコ(6268)
産業用ロボット向け精密減速機で世界シェア6割を有する。
・SMC(6273)
駆動装置である空圧機器の世界トップメーカー。世界シェアは3割、国内シェアでは6割を有する。
・ハーモニック・ドライブ・システムズ(6324)
小型産業用ロボット向け精密減速機を手掛ける。
・安川電機(6506)
産業用ロボットで世界首位級。サーボモーターやインバーターでは世界トップシェアを有する。
・日本電産(6594)
世界的な総合モーターメーカー。協働ロボット向けに高精度減速機を手掛けている。
・オムロン(6645)
FA用センサーの世界大手メーカー。サーボモーターや産業用ロボットなども手掛ける。
・キーエンス(6861)
FA用センサーの世界大手メーカー。直販体制で、基本的には自社工場を持たないファブレス経営体制を敷いている。
・ファナック(6954)
産業用ロボットで世界首位級。自動車産業向け多関節ロボットに強みを持つ。協働ロボットにも注力。
・川崎重工業(7012)
産業用ロボットを手掛ける。1969年に国産初の産業用ロボット「川崎ユニメート2000」を発表した。
・ABB ADR(A6233/ABB US)
世界的な重電、重工業メーカー。産業用ロボットメーカーでも世界首位級。
・シーメンス(G0677/SIE GY)
世界的な産業機器メーカー。産業用ロボットでも世界首位級。近年は、ソフトウエア企業の買収を進め、産業向けソフトウエアメーカーへと変貌を遂げている。
(注1)全てを網羅しているわけではない。(注2)外国株式のコードは、野村コード/ブルームバーグコード。
(出所)各種資料より野村證券投資情報部作成