投資家の皆様から関心の高い質問を専門分野のリサーチャーに聞いてみました!

Q:金利が上がると株価が下がるのはなぜ?

「金利が上がると株価が下がる」と言われているのはなぜですか?その説明として、「(株価に対して)債券の魅力が上がるから」は、正しいですか?

A:金利が上昇しかつ、景気が悪くなる局面では、債券の魅力が相対的に高くなる。

ご指摘頂いた債券の魅力が高まるという説明は間違っていないと思います。

ただし、金利の上昇局面は必ずしも株価の下落局面ではありません。好景気によって金利が上昇している局面では「債券の魅力も高まるが、それ以上に株価の魅力が高まる」というパターンがある、ということです。一方、景気悪化が見込まれる環境で金利が上昇している局面ではご指摘の通り「債券の魅力が高まり、株価の魅力が相対的に低下する」というパターンになり得ます。

以下ではより詳細に、定率成長配当割引モデルを用いて説明をいたします。配当が成長率で毎年増加することを前提とした定率成長配当割引モデルでは、理論株価は次式で表されます。

理論株価=配当/割引率ー配当成長率

(割引率=金利(リスクフリーレート)+リスクプレミアム)

金利が上昇すると分母が上昇するので、理論株価は下落します。一方、好景気によって金利が上昇している際には、同時に配当成長率(≒利益成長率)も上昇します。配当成長率の上昇が割引率の上昇を上回れば、金利上昇局面においても株価は上昇します。

一方、金利上昇が続いたことで景気が悪化し、配当成長率が低下すれば、株価は下落します。その後、金利が低下したとしても配当成長率がさらに低下すれば、株価は下落し続けます。

その後、金利低下により景気が好転し始めると、配当成長率上昇への期待が高まり株価は上昇します。このサイクルが教科書的な景気と株価の関係性です。

では、このモデルを債券で用いた場合はどうでしょうか。

債券へ投資した場合、分子の配当は一定、配当も成長しません。金利が上昇した際には、債券価値は低下(利回りは上昇)します。金利が上昇しかつ、景気が悪くなる局面では、配当成長率の低下分だけ、株価は債券価値より低下することになりますので、債券の魅力が相対的に高くなります。

整理しますと、「金利上昇 + 株価下落」が成り立つ局面は、金利が上昇していて、景気が悪くなりそうな局面ということになります。

なお、2022年は景気が鈍化(配当成長率低下の兆し)しても、供給要因からくるインフレの加速を止めるためにFRBが利上げ(金利上昇)を継続していたことが、株価下落の要因となりました。2023年に入ってからは、利上げのピークが見え始め(金利低下への期待上昇)、懸念していたほど景気が悪くない(配当成長率回復への期待)との見方が、米国株上昇の要因となっています。(もちろん、今後インフレ加速や予想以上の景気悪化はあるかもしれませんが…)

(野村證券投資情報部 大坂 隼矢)

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