投資家の皆様から関心の高い質問を専門分野のリサーチャーに聞いてみました!

Q:「インバウンド復活」シナリオのリスクはどこに?

「インバウンドの復活」は2023年前半の日本株式市場のテーマの一つになる可能性があります。ただし、中国からの旅行客の回復が遅れているなど、不安要素も目立ちます。この「インバウンドの復活」シナリオのリスクはどこにあるのでしょうか?

A:市場の関心は、中国や円高など「5つのリスク」に

主なリスクは、リスクの大きい順に、(1)中国における新型コロナの感染拡大、(2)海外景気の減速、(3)円高の進行、(4)宿泊業の人手不足、(5)コロナ変異株の登場、と考えています。

(1)には、上振れと下振れ双方のリスクがあります。急激な感染拡大の結果、中国での流行が早期に収束すれば、想定よりも速いペースで中国人観光客数が回復する可能性があります。一方、中国による日本人へのビザ発給停止といった動きもあり、両国間の水際対策の緩和が遅れるリスクもあります。

(2)は、米欧を中心に経済の減速感が高まり、海外旅行の意欲が減退する下振れリスクです。ただし、日本への外国人観光客の大宗を占めるのはアジア諸国であり、アジア諸国については米欧ほどの景気後退は起こらないと、野村は見込んでいます。

(3)は、日本銀行の政策修正期待の上昇等に伴う円高によって、日本への旅行が海外から見て割高になるリスクです。

(4)は、宿泊業の供給能力がひっ迫することによって、インバウンド需要の回復を十分に受け止めきれないリスクです。国内の旅行需要が急速に回復していますが、宿泊業の就業者数の回復は緩やかです。感染対策が継続されるなかで、宿泊業が受け入れられる旅行客数が減少している可能性があります。

(5)は、あくまで潜在的なリスクですが、コロナ(新型コロナウイルス感染症)について、強毒性の新たな変異株が登場する可能性がゼロではありません。各国政府がコロナを理由として強い行動制限を敷く可能性は小さいですが、旅行者の旅行意欲に悪影響が出る可能性は残ります。

(出所)野村證券経済調査部より野村證券投資情報部作成

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