
投資家の皆様から関心の高い質問を専門分野のリサーチャーに聞いてみました!
Q:米債務上限問題、本当にデフォルトの可能性はあるのか?
米国政府債務の法定上限の引き上げ問題が再び浮上してきました。同問題では、これまで幾度も議会対応が難航し、そのたびに米国債のデフォルトの可能性が話題になっています。実際、今回はデフォルトの可能性はあるのでしょうか。
A:米国債がデフォルトすれば、共和党も責任が問われる
6月上旬までに債務上限に関する法的対応(上限の引き上げや、一定期間債務上限を適用しない措置の適用)を行う必要があります。現在、共和党が下院で過半数を握っており、バイデン大統領に対し、債務上限での法的対応と引き換えに財政赤字削減実現のために歳出削減を求めています。一方、バイデン大統領側の主張は、財政赤字削減という狙いでは共和党と同じですが、実現手段が共和党と異なります。共和党が主張するように社会保障費の削減を行わず、一般の歳出(裁量的経費)を削減し、高所得者向けなどの増税で財政赤字を実現しようとしています。
もっとも、共和党は、債務上限に関する法的対応を阻害し、故意に米国債のデフォルトを引き起こすことが目的ではなく、あくまでも歳出削減の実現が狙いです。米国債がデフォルトし、金融、経済の混乱を招いた場合、法的対応を阻害した共和党の政治的責任が問われ、2024年の大統領・議会選挙で苦境に立たされかねません。
また、共和党は債務上限の法的対応を盾に、バイデン大統領に共和党の提案の丸呑みを求める強硬策に出ている訳でもありません。マッカーシー下院議長(共和党)とバイデン大統領が協議を行い、今後も協議を継続することで合意しています。6月上旬までに両者が財政赤字削減策で合意した場合、債務上限の法的対応が行われ、デフォルトは回避されると見込まれます。仮に、6月上旬までに財政赤字削減策で合意出来なかったとしても、小幅な債務上限の引き上げを行い、あらためて次の期限まで協議を続けると考えられます。
(出所)野村證券経済調査部より野村證券投資情報部作成
