投資家の皆様から関心の高い質問を専門分野のリサーチャーに聞いてみました!

Q:株主還元への意識が高い業界は?

株主還元への意識が高い業界はどこになるでしょうか?その背景も含めて教えてください。

A:総合商社や銀行が代表的な企業群

株主還元の実施は各社の経営判断であるため、業種ごとではなく、企業ごとに特徴が現れるものだと思います。また、配当利回りの高い業種や企業が必ずしも株主還元を積極的に行っているわけではありません。こうした前提を考慮しつつ、あえて業種ごとに考えてみたいと思います。株主還元意識の高い業界としては、総合商社が代表的な企業群の1つと言えるのではないでしょうか。

総合商社は、中期経営計画期間中の下限配当を設定する企業や、減配をせず維持または増配を続ける累進配当の方針を掲げる企業もあります。また、自社株買いを実施する企業も多く、総じて積極的な株主還元策をとっている企業が多い印象です。

また、近年株主還元を積極化させているのが銀行です。コロナ禍から事業環境が安定化してきたことに加え、政策保有株売却加速などがその要因とみられます。

総合商社と銀行はいずれも、多くの企業がPBR1倍割れとなるなど、株式市場からの評価が高いとは言えません。株主が求めるROEの水準を達成する1つの手段として、株主還元を積極化させているとみられます。実際に、2022年6月の株主総会では、複数の地方銀行に対して株主還元等に関する株主提案がなされています。この株主提案は総じて否決されていますが、地方銀行経営陣の株主還元への意識が高まるきっかけになっています。

その他にも、PBRやPERなどの指標が市場平均並みあるいは以下の業種である、金融やエネルギー関連業種の中にも、株主還元意識の高い企業が多く存在しているという印象です。

※あくまで主観的なもので、データに基づいたものではありません。

(野村證券投資情報部 大坂 隼矢)

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