
連続増配企業への投資が注目される
株式市場は、時として様々な理由により大きな変動を余儀なくされます。2008年のリーマンショックをはじめ、近年では2020年の新型コロナ感染拡大、2022年のウクライナ紛争による株価の大幅調整が挙げられます。こうした中、長期的な視点で安定的な配当を得ることを目指す連続増配企業への投資が注目されます。
連続増配企業の強みと企業例
連続増配企業は新興テクノロジー企業のように、利益の急拡大を期待することは難しい側面があります。しかし社歴を重ねる中で、大幅な景気変動や各種のショックを乗り越え、ブランド力や技術力等を武器に安定的な利益を創出しうる独自の経営スタイルや販売手法を培ってきた点に強みを持っています。そのため、単年度では減益に陥ることがあっても継続的な配当が可能で、これまで数々の危機を乗り越え市場で評価され続けています。米国の連続増配企業代表格として、強いブランド力を持つ清涼飲料世界最大手の米国コカ・コーラが挙げられます。同社はサプライチェーンの上位に位置する原液の生産を受け持ち、100社を超える強いネットワークを通じて販売しています。

連続増配企業のパフォーマンス
長期的な視点でみれば、米国の連続増配企業で構成されるS&P500配当貴族指数(課税後配当込み)のパフォーマンスはS&P500指数を上回る傾向がみられています。オイルショック以来のインフレ高進やウクライナ紛争などを受けて、世界経済や社会構造が大きく変化している今だからこそ、長期的な視点で、連続増配企業が持つ本源的強みを重視した投資が注目されます。

ご参考:米国連続増配関連銘柄の一例
・アボット・ラボラトリーズ(A0001/ABT US)
ジェネリックを含む医薬品、診断薬・診断機器、栄養剤、医療機器などの開発・販売を手がけている。M&Aで業容拡大し、2017年には医療機器メーカーのセント・ジュード・メディカルを買収し、血管部門を強化した。
・キャタピラー(A0102/CAT US)
建設機械の生産で世界トップ規模を誇る。1925年創業で、建設機器および鉱業用機械、ディーゼルおよび天然ガスエンジン、産業用ガスタービン、ディーゼル電気機関車などの製造で世界をリードしている。
・コカ・コーラ(A0115/KO US)
「コカ・コーラ」のほか、「ファンタ」や「スプライト」、「ミニッツメイド」、「アクエリアス」など200ブランド以上のノンアルコール飲料をグループで製造し、世界約200ヶ国で事業を展開している。ボトラーや小売業者を含む配送ネットワークは世界最大を誇る。
・ターゲット(A0172/TGT US)
米国最大級の総合小売事業者であり、2022.1期末現在の店舗数は1,926を数える。E コマースを大規模に展開しており、売上高の19%前後を占める(コロナ前の2020.1期の約9%から大幅に拡大)。売上高のほぼ全てを米国で得ている。
・ネクステラ・エナジー(A0234/NEE US)
北米最大の再生可能エネルギー発電事業者で、株式時価総額世界最大の公益企業である。風力・太陽光発電で世界最大のNEERと、フロリダ州で電力・ガス小売を行う米国最大級の公益事業者であるFPLが当社の事業セグメントである。
・ゼネラル・ダイナミクス(A0277/GD US)
軍需関連の大手企業で、戦車や装甲車などの戦闘車両、潜水艦や駆逐艦などの軍艦、情報技術関連のハードウエアやソフトウエアを提供している。売上高の約7割が米国政府向けである。小型のビジネスジェット機事業も競争力が強い。
・IBM(A0353/IBM US)
主にソフトウエアやIT サービス、コンサルティング、並びにハードウエアを提供している。175の国と地域に進出しており、世界で約35 万人を雇用している。世界のクレジットカード決済の9割に、世界の無線通信の5割に携わっている。
・マクドナルド(A0460/MCD US)
2022年6月時点でハンバーガーを中心とした飲食店を119ヶ国で4万31店運営している。主な収益源は、直営店の売上高とフランチャイジー店舗からの手数料収入。最新デジタル技術の導入や、デリバリープラットフォームの活用などを押し進める。
・3M(A0469/MMM US)
1902年創業の総合資本財メーカーで、企業向け素材や消費者向け事務用品を製造している。過去5年以内に発売した新製品が売上に占める比率であるNPVI(新製品売上高比率)をKPIとしている。
・プロクター・アンド・ギャンブル(A0588/PG US)
1837年に創業した。有名ブランドを数多く抱える世界最大級の日用品メーカーで、年間売上高は800億米ドルを超える。「パンテーン」や「パンパース」など世界売上高10億米ドル超のブランドを20以上手掛けている。
・ウォルマート(A0820/WMT US)
売上高は小売業界で世界トップ規模を誇る。米国を中心に「ウォルマート」をチェーン展開している。大型(倉庫型)ディスカウントストアの形態で知られ、創業当初から低価格戦略「エブリデー・ロープライス」を掲げている。
・メドトロニック(A6637/MDT US)
医療機器の最大手の一角を占める。慢性疾患のための医療機器の開発・製造を手掛けている。主な製品に、心臓ペースメーカーや除細動器、心臓弁、ステント、インスリンポンプ、脳血管関連製品、先進エネルギーを用いた手術器具などがある。
(注1)全てを網羅しているわけではない。(注2)外国株式のコードは、野村コード/ブルームバーグコード。
(出所)各種資料より野村證券投資情報部作成
(野村證券投資情報部 寺田 絢子)
