①2月17日~2月24日の振り返り:利上げ継続懸念が重石に

S&P500 -2.67% 3,970.04

NYダウ -2.99% 32,816.92

ナスダック総合 -3.33% 11,394.94

米国時間の22日(水)取引時間中に1月のFOMC(米連邦公開市場委員会)議事要旨が公開されました。ほとんどの参加者が利上げペースの鈍化に賛同していた一方で、多くの参加者から「不十分な金融引き締めはインフレ抑制を阻害する」との意見が表明されたことで、利上げ長期化への懸念が再燃しました。24日(金)に発表されたコアPCE(個人消費支出)デフレーターも市場予想を上回るなど、インフレ高止まりのリスクを意識させる結果でした。

米長期金利(10年国債利回り)は17日(金)の3.8%台から24日(金)には3.9%台へ上昇しました。グロース株は一般に長期金利上昇の悪影響を受けやすく、グロース株比率の高いナスダック総合指数の対NYダウのアンダーパフォームは3週連続となりました。米長期金利上昇が株安に波及した様子がうかがわれます。

②今週の気になる経済指標:ISM指数(製造業1日、非製造業3日)

野村の利上げ予想をタカ派寄りに変更

野村の米国拠点では、FRBの利上げ予想を修正しました。

3月:+0.50%ポイント(従来+0.25%ポイント)

5月:+0.25%ポイント(従来利上げなし)

6月:+0.25%ポイント(従来利上げなし)

結果として、政策金利の到達点を5.50~5.75%へ予想を引き上げました(従来予想の到達点は4.75~5.00%)。従来予想・市場予想(足元で5.4%前後)比でタカ派寄りとなっています。

背景にある考え方

米国拠点の雨宮エコノミストは修正の背景として、足元の指標がインフレ再加速を示唆していることを挙げています。具体的には

1)財主導のディスインフレ(インフレ減速)は一時的なものとなり得るため、FRBがこれに依拠する公算は小さい

2)基調的なインフレ傾向が再加速するかもしれず、よって引き締め不足のリスクが高まる

3)金融環境を引き締めるには積極的な政策措置が必要とみられる

以上の3点を理由としています。

雇用を最注視

財(モノ)主導のインフレ減速に期待ができないとするならば、住居費を除くコアサービス・インフレの動向が重要となります。主な構成項目である「外食・宿泊サービス」など賃金動向の影響が大きい項目が多く含まれます。2月にサプライズとなった雇用統計は次回(2月)分が3月10日(金)に発表されます。しばらくは、インフレ高止まりを示唆する指標やFRB高官発言に神経質な展開が予想されます。

今週はISM景気指数を要チェック

今週注目の指標としては、1日(水)に発表される2月ISM製造業指数、3日(金)に発表される2月ISM非製造業指数が挙げられます。いずれも経済の先行指標と見なされており、強弱がインフレ予想を左右するため要チェックです。

③今週の気になる決算:1日(水)のセールスフォース

※ここで取り上げる銘柄は、あくまで「今週決算発表がある企業およびその関連企業」のうち、「米国経済やセクター全体を見通す上でインプリケーションが多い」という観点で言及するものです。個別銘柄の勧誘・助言を目的とするものではありません。

決算振り返り①:半導体

ロジック半導体大手のエヌビディア(NVDA)の株価は、決算発表翌日の23日(木)に前日比14%超上昇しました。2022年11月-2023年1月期実績の売上高・EPS(一株当たり利益)はともに市場予想を上回ったうえ、2023年2-4月期の売上高見通しも市場予想を上回ったことが市場で好感されたと見られます。この見通しは前年同期比-21%ですが、前四半期比では+7%と業績に底打ち感が見えたことも上昇の一因とみられます。

ChatGPTを運営するOpenAIへ出資したマイクロソフト(MSFT)やアルファベット(GOOGL)傘下のグーグルがAI(人工知能)分野で熾烈な競争を繰り広げており、半導体業界の中でも演算を担うロジック分野は高成長軌道へ回帰するとの市場の期待が裏付けられたと言えます。

同分野では、競合メーカーにアドバンスド・マイクロ・デバイセズ(AMD)やインテル(INTC)があり、製造受託の面では TSMC(TSM)、製造装置ではアプライド・マテリアルズ(AMAT)やラム・リサーチ(LMRC)、ASML(ASML)が挙げられます。

決算振り返り②:小売

小売業はまちまちな決算でした。

ウォルマート(WMT)は売上高見通しは慎重だったものの実績は売上高・EPSともに市場予想を上回りました。値引き販売や食料雑貨へのシフトが利益率を下押ししましたが、食料雑貨での対競合でのシェア(数量)を拡大させることに成功しています。業界全体で見れば、日常支出における低価格志向の消費行動がうかがえます。

一方、ホーム・デポ(HD)は市場予想を下回る決算となりました。供給逼迫の続くプロ向け(配管や浴室関連)は堅調でしたが、床材(どちらかといえばDIYのカテゴリー)は軟調でした。消費者は住宅関連の支出を手控えている可能性が示唆されます。

なお、当社は決算と同時に、時間給で働く現場スタッフに年間10億ドルの追加報酬を支払うとも発表しています。賃金インフレが小売業に与える利益の下押し影響には今後も注意が必要です。

ソフトウェア業界の雄、セールスフォース

今週は、ソフトウェア・小売ともに2022年11月-2023年1月期決算のピークを迎えますが、今回はセールスフォースを確認したいと考えます。

同社に注目する理由は、BtoB(法人向け)のソフトウェア需要をみられる点にあります。顧客企業が幅広く、どのセクターがソフトウェア投資を続け、どのセクターが支出を抑制したかを確認するのに有用な決算と言えます。前回決算までは大規模M&Aの影響や、(競合他社が人員削減を発表する中での)人件費などのコスト高止まりがノイズとなっていましたが、年明けに人員削減を発表済みで、今回は売上高やEPS成長の行方に注目が集まる決算となることが期待されます。

NYダウ採用銘柄では数少ないソフトウェア企業

NYダウ30指数構成銘柄で数少ないソフトウェア銘柄です。セグメントとしてソフトウェアを持つNYダウ採用銘柄としては、マイクロソフト(MSFT)、IBM(IBM)、シスコ・システムズ(CSCO)が挙げられ、いずれもひと月前に実績ベースでは堅調な決算を発表しています。当社の実績・見通しが注目されます。

金利上昇をはねのける「グロース」はあるか

情報技術セクター(米国では主に、半導体とソフトウェアで構成される)の株価は、足元のインフレ再燃懸念に伴う金利上昇で伸び悩んでいます。ただし、当節冒頭のエヌビディアのように、再度成長回帰への道筋を見せることができれば、長期金利高止まりの中でも株価上昇が期待できます。週を通して個別企業の決算から得られる情報を、セクター選びに活かしていきたいと考えます。

決算発表はピークへ

今週は、主要企業だけでも下記の通り毎日決算発表が予定されています。

27日(月)

人事ソフトウェアのワークデイ(WDAY)

ウェブ会議ソフトウェアのズーム・ビデオ・コミュニケーションズ(ZM)

28日(火)

ウォルマート競合のターゲット(TGT)

1日(水)

1ドルショップのダラー・ツリーDLTR)

百貨店のコールズ(KSS)

ホーム・デポ競合のロウズ(LOW)

セキュリティソフトウェアのオクタ(OKTA)

2日(木)

家電小売のベストバイ(BBY)

ディスカウント小売のコストコ・ホールセール(COST)

セキュリティソフトウェアのゼットスケーラー(ZS)

ご投資にあたっての注意点