「PBR1倍」に強制力はないが現預金の使い道を考える重要な契機

東京証券取引所は2023年1月30日、「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」の議論を踏まえ、企業価値向上に向けた東証の対応を発表しました。東証が発表した「中長期的な企業価値向上に向けた取組の動機付け」では、プライム・スタンダード市場に属する銘柄に対して、企業価値向上に関する取組などを開示することを2023年春に「要請」するとしています。野村證券が注目したいのは、東証がPBR(株価純資産倍率)1倍割れ企業への対応に言及している点です。

東証市場改革における流通時価総額基準とは異なり、現時点ではPBR1倍が特定の上場維持基準などになっていないことには注意を要します。しかし、新型コロナウイルスにより設備投資が見送られるなどした結果、TOPIX構成銘柄(金融除く)の総資産に占める現預金の割合の中央値は17.7%と、コロナ感染拡大前の水準を上回っています。「超過貯蓄」とも言える現預金が積みあがっている企業は多く、たとえ「要請」であっても現預金の使途を企業が考えるきっかけになり得ます。「PBR1倍割れ」は、テーマとしてこれから本格的に注目度が高まる可能性があるでしょう。

(FINTOS!編集部)

要約編集元アナリストレポート「日本株ストラテジー – 東証の「要請」で注目される企業のB/S戦略(2月28日配信)」(プレミアム会員限定配信)

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