今週から米国は夏時間となります。米国株式市場の取引終了時刻である米国時間午後4:00は、日本時間の朝6:00から5:00に繰り上がります。

①3月3日~3月10日の振り返り:利上げ再加速懸念+シリコンバレー銀問題で下落

S&P 500:3,861.59(-4.55%)

NYダウ:31,909.64(-4.44%)

ナスダック総合:11,138.88(-4.71%)

先週の米国主要3指数は、2つのイベントで大きく動きました。

1つ目はパウエルFRB(米連邦準備理事会)議長の議会証言です。3月21日(火)~22日(水)にはFOMC(米連邦公開市場委員会)が予定されていますが、11日(土)からはFOMC前の沈黙期間(参加者が金融政策について公の場での発言を控える期間)に入っています。同議会証言は、沈黙期間直前の議長コメントであったため市場の関心を集めました。今後の利上げペースの再加速が示唆され、マーケットは金利上昇と株価下落で反応しました。

もう一つは、銀行破綻が相次いだことです。8日(水)引け後には仮想通貨関連企業への融資を行うシルバーゲートバンクの清算が発表され、9日(木)には多くのスタートアップ企業に融資するSVBフィナンシャル(SIVB)が、増資と保有証券売却による流動性確保の措置を発表しました。翌10日(金)には、FDIC(米連邦預金保険公社)が、SVBファイナンシャル・グループ傘下のシリコンバレー銀行が経営破綻し事業を停止したと発表し、これを受けて金融株が下落し相場全体の重石となりました。

②今週の気になる経済指標:14日(火)の米CPI

シリコンバレー銀行破綻は米金融政策を変えるか?

野村の米国拠点では、これまで3月FOMCでの利上げ幅を0.50%ポイントと予想してきました。ただ、シリコンバレー銀行をめぐる問題を踏まえれば、0.50%ポイントの利上げの可能性が低下していることが想定されます。 そもそも、0.50%ポイントの利上げを予想していた理由の一つに、利上げ休止を市場が先んじて織り込みリスクオンとなった金融環境を引き締めるために FRB がタカ派的にならざるをえないだろうという点がありました。 しかし、シリコンバレー銀行に関するニュースを受けて、市場全体にリスクオフムードが広がっていることから、FRB が機先を制するメリットは低下しています。 FRB による積極的な利上げにより、その他の小規模銀行の財務状態がさらに悪化する可能性が高いことも懸念材料でしょう。

14日(火)のCPI

仮にSVB問題が金融システムへのリスクを大きく高めないと市場に判断されるならば、市場の目線は14日(火)のCPI(消費者物価指数)に移るでしょう。22日(水)に結果発表を控えるFOMCで、どういった金融政策が示されるか、政策金利の最終到達点や見通しを何%と置くか(いわゆる「ドットチャート」)を見極めるための大きな手掛かりとなりそうです。

野村では2 月のコアCPI(消費者物価)インフレ率は、前月の0.4%に続き、前月比+0.4%で上昇すると予想しています。前年比ベースでは、コアCPIインフレ率が1月の+5.6%から+5.5%に低下すると予想しています。

③今週の気になる決算:15日(水)のアドビ

※ここで取り上げる銘柄は、あくまで「今週決算発表がある企業およびその関連企業」のうち、「米国経済やセクター全体を見通す上でインプリケーションが多い」という観点で言及するものです。個別銘柄の勧誘・助言を目的とするものではありません。

「2月期決算」が見られるアドビに注目

15日(水)にアドビ(ADBE)が決算を発表します。先週ご紹介したオラクルの決算は、クラウドおよびオンプレミスのライセンス部門が市場予想を下回ったことで株価は発表後に下落しましたが、実績・見通しともに概ね市場予想を上回るものでした。ソフトウェア市場全体にはプラスのインプリケーションだったと言えます。今週は、改めて2022年12月-2023年2月期決算が本格化するため、2023年1月-3月決算に向けて情報収集できる良い機会です。中でも大手ソフトウェア動向を見る上でアドビについては多くの情報が得られそうです。当社を見る上では、AI、フィグマ、デジタルメディア、エクスペリエンスの4点へのコメントが注目されます。

AI を巡る昨今の動向と当社の立ち位置

OpenAI社などが開発する生成系AIでは、画像も生成することが可能です。そうなると、当社のクリエイティブ・ソフトウェアは、顧客企業のクリエイティブチームの解散や縮小などを通して需要が減退する可能性もはらんでいます。当社は「Sensei」というAIで、当社独自のクリエイティブサポートを行っています。こうした潮流に対してどのようなコメントをするかに注目が集まります。

フィグマの買収計画

買収計画が着々と進んでいます。フィグマは企業向けソフトウェアの中でも評価が高く、アドビの製品とも競合が少なく統合のシナジーがあるとされています。2023年中に買収完了する見通しであり、進捗や買収後の戦略にも注目が集まります。

デジタルメディア部門の動向

会社は第 4 四半期中に、ガイダンスには景気の影響を織り込んでいますが、その時点で事業には重大な影響は出ていないと述べています。コロナ禍の反動で、当社のソフトウェアは大きく成長が鈍化しており、その点を解消できているかに注目が集まります。

デジタルエクスペリエンス部門の動向

現在、投資家の関心の的となっているのはフロントオフィスのソフトウェアが抱える景気面の問題です。ただ、野村が提携するウルフリサーチの調査によれば当社はデジタルトランスフォーメーション(DX)ビジネス、特に超大型案件で支配的な状況にあるとの調査もあり、コメントが注目されます。

ご投資にあたっての注意点