投資家の皆様から関心の高い質問を専門分野のリサーチャーに聞いてみました!

Q:株主優待の廃止が相次ぐ背景は?

最近個人投資家に人気の優待を実施する企業が、相次いで廃止を発表しました。日本企業の方向感としては、配当や自社株買いなどへのシフトが進んでいるように見えます。市場からみるとどんな背景があるのでしょうか。

A:費用抑制と機関投資家への配慮

投資家配慮・費用削減・要件緩和の3つが背景

株主間の公平性を保つ必要、株主優待関連の費用抑制、株主数を増やす必要が以前よりも薄れた、といった要因が考えられます。

①株主間の公平性+機関投資家への配慮

まず、機関投資家にとっては、株主優待の取扱が大変です。優待で送られた物品・サービスは運用資金の委託者に所属します。しかし、委託者に配ったり、勝手に消費したりはできません。商品券など、換金可能なものを換金して運用資産に加えるくらいです。そんな手間がかかるくらいなら配当や自社株買いで還元してもらう方が機関投資家にとってはありがたいです。長期的に見ると国内外の機関投資家の日本株保有比率が上昇していますので、企業が機関投資家に配慮していると考えられます。

②株主優待関連の費用抑制

次に、費用の問題です。優待が魅力的で個人投資家が増加した結果、優待品の費用だけでなく手続き面の費用・手間がかさんでいる企業が増えているようです。個人向けの製品・サービスを提供している企業であれば一種の広告宣伝費と見ることもできるでしょうが、そうでない企業にとっては費用を掛ける意義が問われます。

③株主数を増やす必要性の低下

最後に、株主数の問題です。22年4月の市場区分見直しとともに、新規上場基準に関する株主数の要件が緩和されました。例えば、旧東証一部では2200人の株主が必要でしたが、現在のプライム市場では800人の株主がいれば十分です。

(出所)野村證券市場戦略リサーチ部より野村證券投資情報部作成

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