国内外で、原子力発電(以下、原発)に対する関心が高まっている。ウクライナ紛争を背景に、世界的なエネルギーの価格高騰や供給懸念が広がる中、国際エネルギー機関(IEA)は、エネルギー安全保障の視点で原発を重視している。また、原発はウラン燃料の核分裂時に発生する熱を利用して発電を行うため、CO2(二酸化炭素)を排出しない。再生可能エネルギーの補完的な位置づけだが、世界の電力需要の拡大に伴い原発の発電容量も拡大し、2050年には20年の約2倍になるとIEA では予想している。国内では、岸田政権が22年12月に次世代革新炉の開発・建設と、既存原発の運転期間の延長を含む基本方針案を示した。

原発はCO2を排出しないエネルギー源として期待されるが、安全やコスト面の課題が残る。その問題軽減を期待されるのが次世代革新炉だ。中でも革新軽水炉は、経済産業省が本命視しており30年代の商用化が目指されている。既存技術の延長にあるため、実績のある日立製作所や東芝、三菱重工業などが恩恵を受けよう。また、原発の運転期間を最長60年に延長しており、日揮ホールディングスやIHI などが手掛けるメンテナンスや核燃料サイクルも注目だ。

一方で、核分裂ではなく核融合からエネルギーを得る研究もされており、40年頃の実用化が目指されている。核融合では1グラムの燃料から石油8トン分ものエネルギーを得られ、温室効果ガスの排出もない。国際プロジェクトである「国際核融合実験炉(ITER)」には複数の日本企業も参加しており、核融合の際に必要な高出力レーザーを手掛ける浜松ホトニクスや高温超電導線材を供給する古河電気工業などが存在感を発揮している。今後は政策の後押しもあり、原発関連企業への恩恵は大きくなることが期待されよう。

(投資情報部 磯崎 博志)

※野村週報 2023年3月20日号「投資の参考」より

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