ESG(環境・社会・企業統治)スコアは、第三者評価機関によって提供される、企業のESGに対する取り組みを企業間で比較できる定量的な指標である。評価機関は、ESG課題のなかで投資家の関心が高いものや投資判断に有用な項目を、場合によってはセクターごとに特定し、企業の公開情報等を活用して企業情報の収集や調査、評価を行い、投資家に提供する。

本稿では、MSCI およびFTSEのESGスコアに着目したい。これらのESGスコアに基づく株式指数は、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用対象にもなっている。MSCI およびFTSE のESGスコアは、株価指数を提供する米国MSCI 社、英国FTSE International 社によって、それぞれ付与される。これらのESG スコアと日本企業の傾向ならびに資本コストや株価との関係性を分析する。

日本企業のMSCI およびFTSEのESGスコアは、多くの業種で日本の平均値はグローバル平均値に対して劣位にある。その背景には、日本で相対的にスコア付与率の高い中小型株で、ESGに対する取り組みが遅れている可能性が示唆される。

日本は、企業規模が大きくなくとも、ESGへの取り組みが半強制的にスコア化され、投資家からの評価に晒されやすい地域と言える。企業規模に依らず、投資家からのESG に関する評価に晒される中で、グローバル同業他社のESG 対応動向を注視すると同時に、ESGスコアの仕組みを活用した、効果的なESG 施策を講じることが、その評価の維持・向上にとって重要である。

ESGスコアと資本コストおよび株価との関連性に着目すると、ESGへの取り組みが進んでいる企業ほど、資本コストならびに株価変動リスクが低い傾向がある。実際に、MSCIおよびFTSEのESGスコアが高いほど信用格付が高く(すなわち負債コストが低く)、アンシステマティックリスク(マーケット要因ではない、個別要因による株価変動リスク)が低い関係が、統計的に有意に表れている。

以上から、ESGへの取り組みは、非財務リスクがコントロールされる期待を向上させることで、企業の信用力を向上(負債コストを低減)させ、株価変動リスクを低減させる可能性が示唆される。

(クオンツ・ソリューション・リサ-チ部 長谷川 貴大)

※野村週報 2023年4月3日号「企業経営」より

【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら

ご投資にあたっての注意点