企業には株主還元だけではない抜本的な取組が求められる

3月31日に、東証は上場企業への要請「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願い」を公表しました。要請では、持続的な成長と中長期的な企業価値向上の実現に向けて、重要な項目が3点挙げられています。

(1) 資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応
(2) 株主との対話の推進と開示
(3) 建設的な対話に資する「エクスプレイン(説明)」のポイント・事例

これらは上場規則などによる義務ではありませんが、投資家の期待を踏まえて上場企業が積極的に取り組むように東証は求めています。

1月30日の東証による「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議の論点整理」の発表以降、自社株買いや増配の発表を行う企業が増えています。この点に関して東証は、「自社株買いや増配のみの対応や一過性の対応を期待するものではありません」としています。資本コストを上回る資本収益性を達成し、持続的な成長を果たすために、研究開発投資や設備投資、事業ポートフォリオの見直しなど幅広い取組みによって、経営資源を適切に配分するといった企業の抜本的な取組みが期待されています。

また、株式市場では「PBR1倍割れ企業」への関心が強いですが、東証は資料の中で、既にPBRが1倍を超えている企業に対しても、更なる企業価値向上に向けた目標設定を行うことが考えられると言及しています。

東証が要請を行ったことで、新年度は上場企業の経営陣による、成長や企業価値向上に向けた取り組みとその明確な発信が求められます。これらの開示について、東証は定型の開示方法を決めていませんが、投資家がわかりやすいように、コーポレート・ガバナンス報告書に、上記の開示を行っている旨やその閲覧方法を記載するよう要請しています。

なお、要請の実効性を高める施策の一つとして、3月30日には新指数「JPXプライム150」の立ち上げが発表されています。150銘柄は、(1)推定エクイティスプレッド(ROE-株主資本コスト)の上位75社、(2)PBR1倍超えの銘柄のうち時価総額上位75社、の2グループで構成し、7月からリアルタイム(1秒ごと)で算出・配信します。新指数への採用は、PBR1倍割れ大企業の一つの努力目標になり得るでしょう。

(FINTOS!編集部)

要約編集元アナリストレポート「東証が経営改革に向けた対応を要請 – 資本コストや株価を意識した経営の実現へ(3月31日配信)」(プレミアム会員限定配信)

要約編集元アナリストレポート「Quick Note – JPXプライム150でPBR1倍割れを「排除」 – 中国製造業PMI下振れリスク/海外投資家(3月31日配信)」(プレミアム会員限定配信)

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