①3月24日~3月31日の振り返り:インフレ懸念後退、VIX指数は20割れ

S&P500:3,970.99→4,109.31(+3.48%)

NYダウ:32,237.53→33,274.15(+3.22%)

ナスダック総合:11,823.96→12,221.90(+3.37%)

先週は、新たな経営不安に陥る金融機関はなく、米中堅地銀のファースト・シチズンズ・バンクシェアーズ (FCNCA)が経営破綻したシリコンバレーバンクを買収することで合意するなど、このところの金融不安が和らいだ一週間でした。

インフレを見通す上で注目された31日(金)の経済指標※は総じてインフレ鈍化を示唆するものとなり、FRB(米連邦準備理事会)が再びタカ派化するのではとの懸念も後退しました。

※…①月個人消費支出・所得統計の中の、変動が大きい食品とエネルギーを除く2月コアPCE(個人消費支出)デフレーター ②3月ミシガン大学消費者期待インフレ率確報値(5年先は市場予想を上振れした一方、1年先は下振れしました)

こうした投資環境を受け、VIX指数は24日終値の21.74から31日終値では18.70と20割れとなりました。VIX指数は「恐怖指数」とも呼ばれ、米シカゴ・オプション取引所(CBOE)が、S&P500を対象とするオプション取引の変動率を元に算出・公表している指数です。将来の相場に対する投資家心理を反映する指数とされており、一般的にVIXの数値が高いほど投資家の先行き不透明感が強いとされます。30が警戒水域、10-20が通常範囲とされるVIX指数の水準からは、「銀行不安に対する相場の反応は、一段落」と捉えられそうです。

②今週の気になる経済指標:7日(金)の雇用統計

ただ、このところ市場で広がるインフレへの警戒感の後退と「利上げ終了〜利下げへ」という織り込みはやや先走りかもしれません。

今週は、経済の先行指標とされるISM製造業指数(3日・月)、ISM非製造業景気指数(5日・水)、雇用統計(7日・金)と、景気とインフレを見る上での最重要指標の発表が相次ぎ、いずれも投資判断の材料となりそうです。

中でも重要なのは、3月雇用統計でしょう。非農業部門雇用者数増減の市場予想は前月比+24.0万人(2月同+31.1万人)と、減速するものの高水準を維持することが予想されています。1・2月は暖冬の影響により、雇用が例年対比で押し上げられました。3月にはこうした一時的な天候要因による押し上げが剥落することが予想され、前月比+20万人前後であれば、減速は天候要因による押し上げの剥落によるものと考えられ、市場の反応は限定的でしょう。また、7日(金)はイースター休暇で欧米のほとんどの市場が休場となるため、株価の反応が見られない点も注意が必要です。

③今週の気になる決算:小休止の週、リビジョンインデックスを確認

※ここで取り上げる銘柄は、あくまで「今週決算発表がある企業およびその関連企業」のうち、「米国経済やセクター全体を見通す上でインプリケーションが多い」という観点で言及するものです。個別銘柄の勧誘・助言を目的とするものではありません。

今週は決算を発表する企業は多くなく、来週後半からの1-3月期決算発表に備える週になりそうです。アナリストの業績予想を集計した指数である「リビジョン・インデックス(以下、「RI」)」の傾向を見ておきましょう。1.0超で「上方修正優位」、1.0未満で「下方修正優位」となります。

アナリストは企業の決算発表シーズン前に、業績予想を保守的に見直すことが多いため、RIは概ね3ヶ月周期で下振れする傾向があります。ただし、図の通り2022年の4-6月期と7-9月期の2四半期の決算発表シーズンでは、アナリストが事前に下方修正したにも関わらず、弱い決算内容により更なる下方修正を余儀なくされ、決算発表後もRIは下振れを続けました。前回10-12月期決算発表のピークでは、下方修正の割合がやや低下した一方で、発表後の反発も弱く、今に至るまで下方修正優位の週が続いている状況です。

 こうした環境を踏まえ、注目すべきは2点です。

・①決算発表前(つまり、今週〜来週)のアナリストの業績予想がどこまでの下方修正となるか? 

・②決算発表後に「上方修正優位」(RIが1.00超の状態)に回帰できるか?

 2022年の各四半期との方向性の違いを確認しながら、投資に活かしていく場面となりそうです。

先週は、苦境が続くメモリー半導体市場のメインプレイヤーであるマイクロン・テクノロジー(MU)が発表した売上高の見通しから、メモリー市況の底打ちが示唆され、決算発表翌日には当社の株価は上昇しました。このように、経済正常化に伴う、コロナ禍での巣ごもり需要の反動などで評価が下落していたいくつかの業界にも、明るい兆しが見えるかもしれません。ミクロにも引き続き目を配りながら投資先を選別していきたいと考えます。

(FINTOS!外国株 小野崎通昭)

ご投資にあたっての注意点