※来週5月1日(月)は「今週の米国株」に代わり、特別企画として「FOMCプレビュー」を予定しております。

①4月14日~21日の振り返り:大型株決算が相場を左右

先週発表された経済指標の方向感はまちまちで、週を通した株価の上下を決定づける材料にはなりませんでした。日毎に見ると、20日(水)が比較的大きく下落しました。前日19日に決算を発表したテスラ(TSLA)、アメリカン・エキスプレス(AXP)、AT&T(T)の株価下落が指数の重石となりました。

②今週の気になる経済指標:28日(金)の コアPCEデフレーター

市場のインフレへの警戒感は続いています。

28日(金)公表の3月コアPCE(個人消費支出)デフレーター(食料エネルギー除く)の市場予想は前月比+0.3%(2月同+0.3%)、1-3月期雇用コスト指数の市場予想は前期比+1.1%(10-12月期同+1.0%)と、いずれも減速の兆しが見られないと予想されています。

雇用コスト指数はFOMC(連邦公開市場委員会)が賃金インフレ圧力を評価する際に重視している指標の一つです。既に市場では5月FOMC(3日結果発表)での0.25%ポイント利上げが概ね織り込まれていますが、前述の2指標が市場予想を上回ると、利上げ期待が上方修正され得るため注意が必要です。

③今週の気になる決算発表:大型ハイテク株の決算発表相次ぐ

今週は、25日(火)のマイクロソフト(MSFT)とアルファベット(GOOGL)、26日(水)のメタ・プラットフォームズ(FB)、27日(木)のアマゾン・ドットコム(AMZN)など大手ハイテク株の決算発表が予定されています(アップルは5月4日)。これら企業の業績ならびに見通しに市場の注目が集まります。

ここまでの決算、純利益ベースでは直近1年に比べ”ポジティブ”

先々週、先週の決算を振り返ると、金融では大手銀行が比較的好調な一方、中堅・中小銀行では軟調な決算も散見されました。また、受注や在庫などから見ると半導体ではまだ最悪期は続いているものの、受託生産のTSMC(台湾セミコンダクター,TSM)が設備投資計画を維持するなど、半導体製造装置銘柄にはポジティブな材料もありました。

これまでにS&P500企業の2割強が決算発表を終えました。ポジティブサプライズ比率(注1)を見ると、売上高は直近4四半期平均を下回っているものの、純利益は直近4四半期の平均を上回っています

アナリストの予想は大きく下方修正されていない

結果として、リビジョン・インデックス(RI,直近4週間にアナリストが業績予想を上方修正した銘柄数/下方修正した銘柄数)は下方修正優位ではあるものの、前四半期ほどに落ち込むことなく推移しています。

市場は「1-3月期が底」見通しを継続

S&P500の四半期ごとの予想EPSは2023年1-3月期が前年同期比-7.1%、4-6月期が同-6.3%と、依然として1-3月期が底との見通しが維持されています。

今決算期の注意点は、足元の決算発表における純利益が「実績好調だが、見通し慎重」と仮になった場合、純利益の前年比成長率の「底」が4-6月期に移りうる点です。継続的な成長回帰見通しを維持できるかに注目が集まります。

大型ハイテク株決算の注目点

①クラウドの成長性

1つ目の注目点は、GAFAMの成長性をけん引するクラウド(IaaS/PaaS、インフラストラチャー・アズ・ア・サービス、プラットフォーム・アズ・ア・サービス)事業の成長率でしょう。同分野ではアマゾン・ドットコムのAWS、マイクロソフトのアジュール、アルファベットのグーグル・プラットフォームが世界的な3強となっています。2022年10-12月期決算では、最大手のAWSが前年同期比10%台、アジュールとグーグル・プラットフォームでも同20%台へ売上高成長率が落ち込んでいます。ユーザー側の企業は費用削減からクラウド利用を絞っていると見られ、成長性と見通しの確認が必要です。

②オンライン広告の底打ち

2つ目はオンライン広告事業です。主な収益をオンライン広告から得ているのは、GAFAMではメタ・プラットフォームズとアルファベットの2社です。広告は、出稿側企業にとって裁量性の高い支出であり、上記2社は2022年にGAFAMの中でも比較的早いタイミングで株価は下落に転じていました。足元で株価は反転基調にありますが、アマゾン・ドットコムやネットフリックスなどが広告業に新規参入する中で、2社がどのような成長を見込んでいるかに注目が集まります。

③ビジネス・ソフトウェアの成長性

3つ目は、ビジネスソフトウェア事業です。同分野はコロナ禍におけるリモートワーク需要の後もDX(デジタル・トランスフォーメーション)を追い風に堅調に推移してきましたが、経済全体が鈍化する中で2022年後半から成長率が低下基調にあります。マイクロソフトは多くのビジネスソフトウェアを商材にしている上、製品別に開示があり、1-3月期あるいは2-4月期決算にも多く発表が予定されるソフトウェアセクターの決算を見通す上でも重要です。セキュリティソフトウェアで好調が続くとみられる一方、Office365などの製品は顧客企業が支出を絞っている可能性も考えられ、成長性には注視が必要です。

④経済成長鈍化の小売への影響

4つ目として、小売事業が成長を続けられているかが注目されます。マクロ統計である3月小売売上高では、電気製品など裁量的支出と考えられる項目の減退が顕著であり、企業決算への影響に関心が高まっています。GAFAMの内では比較的早く投資を縮小したアマゾン・ドットコムの小売事業の売上高ならびに利益率には注目です。また、先週にはアメリカン・エキスプレスが軟調な決算を発表していることから、25日(火)に発表されるビザ(V)の決算内容も注意が必要でしょう。

(FINTOS!外国株 小野崎通昭)

ご投資にあたっての注意点