
植田和男新総裁にとって初の日本銀行金融政策決定会合が、4月27-28日に迫りました。焦点は3つあります。
(1)YCC(イールドカーブコントロール、長短金利操作)の修正など金融政策の変更があるか。
4月10日の植田総裁の会見で示されたように、日銀は2022年12月以降にとった市場機能に配慮した策の効果を見極める段階にあるといえます。この点を踏まえて、野村證券は次回の決定会合でYCCが据え置かれると予想します。その他の政策対応(マイナス付利、資産買入れ)も維持されるでしょう。
(2)FG(フォワードガイダンス)の変更があるか。
日銀の金融政策運営姿勢に関わるFGは現状、「当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している」となっています。
新型コロナウイルス感染症が5月8日、感染法上の「5類」に移行することを踏まえると、同感染症に言及する現行のFGが変更されることは自然です。
さらに、日銀が将来的により強い金融引き締めをしようとしているとの思惑を市場参加者が持つことを事前に避けるため、政策金利のFGを「物価のモメンタム(勢い)」と新たに結び付ける形に変更すると野村證券では予想します。安定的かつ持続的な2%インフレが視野に入るまで日銀は金融緩和を維持する姿勢を明確にするでしょう。
(3)展望レポートでどのような景気・物価観を示すか。
野村證券では、次回決定会合後に公表される「展望レポート」で日銀が2025年度コアCPI(消費者物価指数、生鮮食品を除く総合)を「前年度比+1.9%」(政策委員の大勢見通し)とすると予想します。この場合、2023、24、25年度と3年にわたって2%近くのインフレを日銀が視野に入れたことになります。
ただし、これを持続的かつ安定的な2%インフレの定着と解釈するのは時期尚早です。野村證券では、賃金の持続的な上昇に裏付けられた安定的な2%インフレを実際に家計が経験することが、持続的かつ安定的な2%インフレを達成する上で欠かせないと考えます。
金融市場の反応:ドル円は一時135円超を試すか
為替市場の反応ですが、政策修正が見送られるた場合、ドル円相場は一時的に135円超の水準を試す可能性があります。しかし、6月の日銀会合に向けた政策修正期待が維持されやすいことに加え、米金利上昇による円安ドル高の余地は限定的であり、ドル円は依然として下落リスクが大きいとみます。135円超での上値余地は限られ、4-6月期にかけてむしろ130円割れに向けて円高が進むリスクに警戒が必要です。
(FINTOS!編集部)
要約編集元アナリストレポート「日本銀行金融政策決定会合プレビュー – 金融政策は据え置き、フォワードガイダンスの変更を予想(4月19日配信)」(プレミアム会員限定配信)
要約編集元アナリストレポート「国際金融為替ウィークリー – 植田日銀は動くか?(4月24日配信)」(プレミアム会員限定配信)