Q:金融危機発生時に有効なアセットクラスと運用手法は?
金融危機が発生した場合、どのような資産運用をすればよいのでしょうか。一般的には「有事の金」や「有事のドル買い」という言葉が有名ですが、そもそも分散投資をしていればアセットアロケーション(運用資産の配分)の変更は不要だという話も聞きます。ご回答ください。
A:短期は先進国国債やドルが優位傾向、中長期は幅広な資産と時間分散が重要
過去の金融危機時の平均パフォーマンスからみた有利・不利
金融危機は、その原因や震源地、経路が毎回同じではないため、各資産の反応に関して統一的傾向を見出すのは容易ではない点にご留意ください。その上で、過去の主な金融危機時の主要資産(株式、金利、クレジット、REIT、金など、※円ベース)とドルの平均パフォーマンスを比較すると、先進国国債とドルが上位、内外株式とREITが下位となり、ポートフォリオのリスクを落とした方が良いパフォーマンスとなったと言えます。
金は、大規模金融緩和に伴ってパフォーマンスが上位のケースもあれば、金融緩和のサポートがない場合には下位のケースもあり、金融政策次第と考えられます。
金融危機発生後も中長期・分散投資の継続で損失は修復されてきた
なお、金融危機の予見をすることは容易ではなく、持続期間や、どの材料を契機に危機が収束に向かうかに関しても予測が難しいものです。これらを踏まえると、今後の金融危機を警戒するのであればリスク回避的なポートフォリオ構築を、一方、金融危機が既に発生し、リスク資産が一定程度下落した後は、時間分散を伴いながらリスク資産も含む分散投資を通じたポートフォリオ構築が有効と考えられます。金融危機発生後も中長期で分散したポートフォリオ投資を継続した場合のシミュレーションを行うと、過去の約50年間は、金融危機から一定期間経過するとポートフォリオの損失が修復されました。
このように、長期投資であれば分散投資の継続とルールに沿ったリバランスが重要であり、その上で有効な資産の組み入れや機動的な運用を一部組み込む対応を合わせるという考え方が有力です。
(出所)野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティング株式会社より野村證券投資情報部作成