日米株価指数の月別動向パフォーマンスを検証

「セル・イン・メイ」という相場格言があります。5月にいったん売り逃げろ、という先人の教えです。

米国での相場格言には「ただし9月にはマーケットに戻ってこい」という続きの言葉があり、マーケットが軟調になりやすい5 月から夏場の間は相場から離れた方が賢明なことを示唆しています(”Sell in May and go away. But remember to come back in September.”:5月に売って相場から離れなさい、ただし9月には市場に戻ってくることを忘れないように)。

また日本にも、7月8月9月の「夏枯れ相場」、12月の「掉尾の一振(とうびのいっしん)」、3月の「お化粧買い」といった言葉があります。

この格言に基づき、NYダウと日経平均株価の戦後78年間の株価動向を検証しました。

まずはNYダウの月間平均騰落率を見てみましょう。グラフは5月から始まっています。9月までは弱含みな動きが目立つ一方、10月から4月にかけては堅調なパフォーマンスを記録してきた様子がわかります。

NYダウ:月別平均騰落率

(注)1945年1月からの月間騰落率の平均値を算出。直近値は2023年4月末。
(出所)S&Pダウジョーンズ・インデックス社、ブルームバーグより野村證券投資情報部作成

次に日経平均株価の月間平均騰落率グラフです。こちらも9月の下落率が目立つほか、5月から10月までのパフォーマンスは、11月から4月までに比べて低い様子がわかります。

日経平均株価:月別平均騰落率

(注)1949年6月からの月間騰落率の平均値を算出。直近値は2023年4月末。
(出所)日本経済新聞社、ブルームバーグより野村證券投資情報部作成

検証結果は格言に則る形に

では今度は、相場格言に則ったパフォーマンスを検証してみましょう。下のグラフをご覧ください。赤色(A)は、格言に則り「前年9月末にそれぞれの株価指数を買い、4月末に売った場合」の平均パフォーマンスです。グレー(B)は、格言の反対の投資行動といえる「4月末に買い、9月末に売った場合」の数字です。

格言に則った赤色(A)の場合、NYダウも日経平均株価も+8.1%と高いパフォーマンスを得られたのに対し、反対の投資行動をとった グレー(B)ではNYダウは+0.2%、日経平均株価は+1.4%と冴えない様子がわかります。

期間別平均騰落率

(注)データはNYダウは1944年9月からの、日経平均株価は1949年6月からの月末値を基に算出。直近値は2023年4月末時点。
(出所)S&Pダウジョーンズ・インデックス社、 日本経済新聞社、ブルームバーグより野村證券投資情報部作成

また、「上昇した回数が占める割合」を表す勝率のグラフも用意しました。こちらも格言に則った赤色(A)の場合はNYダウ、日経平均株価ともに約7割の確率で上昇したのに対し、反対の投資行動をとったグレー(B)の場合は5、6割程度に留まっています。

期間別勝率

(注)データはNYダウは1944年9月からの、日経平均株価は1949年6月からの月末値を基に算出。直近値は2023年4月末時点。
(出所)S&Pダウジョーンズ・インデックス社、 日本経済新聞社、ブルームバーグより野村證券投資情報部作成

この先押し目買いの好機が到来か

ちなみに5月から9月にかけて株価パフォーマンスが良くない要因としては、米国では個人の確定申告の税還付の資金流入が一巡することや夏季休暇前のポジション調整などがその理由として挙げられます。日本でも「夏枯れ相場」など様々な要因が挙げられます。いずれも明確な根拠はないのですが、有効なアノマリー(経験則)とされており、これらの検証によると、秋までに買って春に売るサイクルは、有効な投資手法であるとも言えそうです。

2023年4月末現在、日経平均株価は年初来高値を更新、NYダウも今年の高値圏に接近しています。これらの経験則によると、この先秋口にかけて、いったん上昇一服となる場面を迎える可能性がありそうです。ただそのような場面は、中長期的な投資スタンスに立てば押し目買いの好機と捉えることができるのではないでしょうか。

この資料は、投資判断の提供を目的としたものではなく、一般的なテクニカル分析の手法について記したものです。テクニカル分析は過去の株価の動きを表現したものであり、将来の動きを保証するものではありません。

ご投資にあたっての注意点