①4月30日~5月5日の振り返り:中堅銀行の経営不安への警戒感が重石となり今後の景気の不透明感も嫌気された

先週の米国株式市場は、中堅銀行の経営不安を巡る警戒感が相場の重石となりました。5月FOMC(米連邦公開市場委員会)の利上げ幅は0.25%ポイントと市場予想通りで、声明文で利上げ打ち止めの可能性が示唆されました。しかし、記者会見でパウエルFRB(米連邦準備理事会)議長はインフレ懸念を背景に早期の利下げを否定したことから、FRBの利下げ転換が遅れ、米景気や企業業績を冷やすとの見方が意識されました。
5日には、株価が急落していた中堅銀行の株価が反発しましたが、依然として株式市場には中堅・地域銀行の経営に対する警戒感は残っています。何らかの事象をきっかけに、中堅・地域銀行の経営不安が再燃する可能性は十分考えられ、引き続き注意が必要でしょう。
②今週の気になる経済指標:10日(水)の4月CPI(消費者物価指数)
5日発表の4月雇用統計は、非農業部門雇用者純増数が市場予想を大幅に上回り、失業率は市場予想を下回り、平均賃金上昇率も加速しました。これらを受けて米長期金利は上昇したものの、この日の株式市場では、雇用市場の堅調さは、米景気悪化への警戒を和らげる方に受け取られたようで、相場全体を押し上げる方向に働きました。
ただし、インフレの長期化や再加速と、それに伴うFRBによる利上げ継続に対する警戒感は、株式市場には引き続き残っていると推察され、10日発表の4月CPI(消費者物価指数)に注目が集まります。
3月CPIでは、総合指数がおよそ2年ぶりの低い伸びとなる前年同月比+5.0%まで鈍化したことが市場で注目されました。しかし、エネルギーと食品を除くコア指数の上昇率は同+5.6%と高止まりしています。

前月比で見ても、コア指数が総合指数を上回っています。

その他にも、11日に4月PPI(生産者物価指数)、12日に5月ミシガン大学消費者信頼感指数と同時に発表される期待インフレ率速報値などが注目されます。もしこれらの指標が市場予想を上回れば、インフレ鎮静化のためにFRBが利上げを継続するとの観測が強まり、株式市場がネガティブに反応する可能性が考えられます。6月以降の金融政策の方向性を見極めるうえで、これらインフレ関連の経済指標を確認したいと考えます。
③今週の気になる決算発表:10日(水)のウォルト・ディズニー・カンパニー
堅調さ続く1-3月期決算
先週までにS&P500構成企業のうち8割以上が1-3月期(2022年11月-2023年1月、2022年12月-2023年2月を含む)の決算発表を終えました。
ポジティブ・サプライズ比率(S&P 500 企業のうち決算実績がアナリスト予想平均を上回った企業の比率)は、直近4四半期の平均を上回っています。

企業見通しは慎重、大底は4-6月期へ
一方、実績は堅調でも慎重な見通しを示す企業も多く、リビジョン・インデックス(下図、直近4週間にアナリストが業績予想を上方修正した銘柄数/下方修正した銘柄数)は上方修正優位となる1.0以上にはなっていません。

これらを受け予想EPS(一株当たり利益)は、1-3月期が上昇、4-6月期以降が低下しました。結果として、前年同期比増減率の「底」が1-3月期から4-6月期へと移っています。

次の4-6月期決算発表が業績の底打ちとなるかが株価反転の一つのきっかけとなりそうです。
ウォルト・ディズニー・カンパニー、3つの注目点
大手企業の多くは決算発表を終えていますが、ウォルト・ディズニー・カンパニー(DIS)が10日に決算を控えています。
①ディズニー・プラスは純増を維持できるか?
動画配信サービス「Disney+」の加入者純増数の市場予想は 270 万件です。ただし、既に決算発表のあったネットフリックスでも解約の影響が出ている他、ディズニー経営陣も「最近の料金引き上げの影響で解約率が上昇しており、また海外の一部の市場で伸びが予想を下回っているため、中核の加入者は第 1 四半期と同様に緩やかなペースで伸びる」との見方を示したこともあり、慎重に見る必要がありそうです。
②テーマパークの視線は「海外」に
国内パークは好調さが続いていましたが、成長は鈍化してきたとみられます。ただ、日本、中国などコロナ政策からの反動や一部アトラクションでの値上げ効果が期待できるパークの貢献に注目が集まります。海外パークの営業利益はコロナ前の水準を大きく上回ると見られています。
③インド事業の影響は
インド事業のDisney+Hotstar では、プレミアリーグ(IPL、クリケットのプロリーグ)の放映権やHBO Maxのライセンスを手放すことによる加入者純減が続いています。3月末には、昨年同時期の開幕に合わせて年間契約をした加入者が契約の更新を前に解約するケースもあると考えられます。ただし、インド事業の加入数 1,200 万失っても売上高は約 1.2 億米ドル下押しされるに過ぎず、IPL の放映権と HBO Max のライセンスを手放したことによるコスト削減効果の方が遥かに大きいことが指摘できます。
引き続き厳しい競争環境の中で、エンターテイメント業界の戦略をフォローアップしてゆきたいと思います。
(FINTOS!外国株 小野崎通昭)