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05/25 09:00
【動画 3分チャート塾】シーズンⅤ:第4回 実際に引いてみよう②:「下降トレンド」編
「動画 3分チャート塾」は、株価チャートの見方を学びたい初心者から中級者の方向けの動画シリーズです。 今回は、下降トレンドの時のトレンドラインの基本的な引き方について、説明しています。 シーズン I:意外と知らないローソク足(全8回)ローソク足の基本の読み方や中長期的な相場の捉え方などについてわかりやすく解説していきます。シーズンII:相場の見方の強い味方、移動平均線(全9回)移動平均線の基礎や活用法についてわかりやすく解説していきます。シーズンIII:上値、下値のメドを探ろう(全10回)上値、下値メドの探り方についてわかりやすく解説していきます。シーズンIV:相場の過熱感を測るには?(全9回)オシレーター系指標についてわかりやすく解説していきます。シーズンV:トレンドラインを引いてみよう(全9回)トレンドラインについてわかりやすく解説していきます。 ご投資にあたっての注意点
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05/24 16:00
文化的共感を生む香りのフード・マーケティング - 焼き芋と現代中国フードブランドに見る「五感ブランディング」の可能性 -
執筆:野村證券株式会社フード&アグリビジネスビジネス・コンサルティング部 シニア・コンサルタント 周旋(2025年5月20日) はじめに 現代のマーケティング戦略は、製品の機能や価格による競争から脱却し、体験価値(experiential value)や情動的つながり(emotional bonding)の創出に向かっている。その中で注目されているのが「五感ブランディング」である。特に嗅覚は、他の感覚に比べて人間の記憶や感情と深く結びつく性質を持つ。「香り」は、消費者の感情・記憶・文化的アイデンティティに働きかける非言語的チャネル(non-verbal channel)として、再注目されている。それゆえ、香りを用いたブランド体験は、消費者との情緒的な関係構築において大きな可能性を秘めている。 本レビューでは、香りによる文化的共感とブランド構築の可能性について、食に関する事例を通じて論じる。具体的には、日本の焼き芋文化、中国の伝統的な焼き芋文化、そして中国の新興ティーブランド「喜茶(Heytea)」などに注目し、香りがどのように消費者との関係を構築し、文化的共鳴を生み出すか、特にZ世代を中心とする現代の消費者が重視する「意味」「物語性」「自己表現」といった価値に香りがどう貢献しているのかを、ブランド論・感覚マーケティング・消費者心理学の視点から論述する。 1. 嗅覚とブランドの記憶 ― 理論的背景 香りは、視覚や聴覚に比べて非言語的かつ潜在的な記憶を喚起する力がある。嗅覚刺激は、大脳辺縁系を経由して感情や記憶の処理に関与する扁桃体や海馬に直接働きかける。このため、ある香りを嗅いだ瞬間に過去の出来事や情景が鮮明に思い出される現象、いわゆる「プルースト効果」が生じる。 ブランド研究においても、香りは「ブランド記憶(brand memory)」や「ブランド・アフェクト(brand affect)」に影響を与える要素とされている。さらに、文化的共感(cultural resonance)という概念において、香りは個人の文化的ルーツや社会的背景とブランド体験を結びつく役割を果たす。 2. 日本の焼き芋文化 ― 香りによる安心と郷愁 日本で焼き芋を食べる文化は、戦後から高度経済成長期を経て、現在に至るまで人々の暮らしに深く根ざした存在となっている。とりわけ冬には、石焼き芋の炭火の香りが街角に漂い、それが季節の移ろいを感じさせるトリガーとなってきた。 2003年に静岡県のマックスバリュ東海株式会社が、傘下のスーパーでオーブンによる焼き芋の販売を開始して以来、現在では多くのスーパーや一部の百貨店のスイーツ売り場でも焼き芋が販売されている。これらの店舗では、香りを意図的に拡散する設計が施されており、例えば換気ダクトを調整して「店外に香ばしさを漏らす」といった空間設計まで実施されている。この香りは、単なる「おいしそう」という印象にとどまらず、「子供の頃の帰り道」「家族との時間」といった記憶と結びつき、消費者の深層的な安心感を喚起する。 このように、焼き芋は香りを通じて「自己の過去」や「文化的安心感」を再確認させる装置として機能している。ブランド側が能動的に語る物語ではなく、消費者が自身の物語を投影する“受動的共鳴”を生み出している点に特徴がある。 3. 中国の焼き芋文化 ― 都市化の中で香りがつなぐ記憶 中国においても、焼き芋は冬の季節に街角で見かける代表的な食べ物であり、その香りには文化的意味が宿っている。特に都市部においては、昔ながらのドラム缶型焼き芋屋台が出現すると、多くの人々がその場に足を止める。香りは一瞬で「寒い日」「祖母の家」「帰省の道中」といった情景を呼び起こし、消費者へ一時的に情緒的な帰属感をもたらす。 このような香りの体験は、都市化と核家族化が進行する中で、急速に失われつつある「人間関係」「共同体」「手作り感」といった文化的価値に対するノスタルジーを喚起する。とりわけZ世代にとっては、物理的には体験したことのない記憶であっても、物語として共有された文化的記憶(cultural memory)として香りが共感を呼び起こすという現象が起きている。ここでは、焼き芋の香りが「文化的ルーツ」と「都市的日常」のギャップを埋めるメディア(情報媒体)となっている。 4. 中国のフードブランド事例 ― 戦略的に活用する先進的事例 香りを用いた文化的ブランディングは、焼き芋に限らず、一部のフードブランドが活用することを模索している。ここでは、喜茶(Heytea)、三頓半(SANDUNBAN)、柒香茗(Qi Xiangming)、王小鹵(Wang Xiaolu)という四つの異なるタイプのブランドを取り上げ、それぞれが香りをどのように設計・運用し、文化的共感やZ世代との関係性を築いているのかを考察する。 ① 喜茶(Heytea) ― 都市的文脈における香りの再設計 喜茶は、2012年に広東省で創業された中国の新興ティーブランドである。同ブランドは、茶葉・フルーツ・ミルク・フレーバーなどを組み合わせたドリンクを主力とし、都市部の若年層、とりわけZ世代を中心に爆発的な人気を獲得した。 喜茶の香り戦略は、焼き芋のような「自然発生的な香り」ではなく、意図的に設計された香り体験である。例えば、茶葉の抽出温度、フレーバーの配合比率、カップの形状、パッケージの開閉設計に至るまで、香りが最適に拡がるように調整されている。特に、商品の開封時や飲用直前といった決定的な瞬間に香りが最も強く立ち上るよう、容器設計や包装技術を工夫している。また、熱いお湯を注ぐことで香り成分が瞬間的に揮発するようにブレンドされた素材の選定が挙げられる。これにより、消費者は自分の選んだ「タイミング」と「場所」で香りの体験を最大化でき、日常の中に自発的なリフレッシュの瞬間を作り出すことが可能になる。香りを楽しむ「タイミング」や「場面」を精緻にコントロールすることで、消費者の五感に訴えるブランド体験を創出している。 喜茶の香りは「パーソナルな共鳴」ではなく、都市の文脈での“新たな意味付け”として機能している。たとえば、紫芋ドリンクは“懐かしい味”を想起させると同時に、“冬限定の自分へのご褒美”というメッセージとして再定義されている。 さらに、喜茶は「限定性」と「参加性」を香り体験と組み合わせることで、ブランド共創(co-creation)の構造を築いている。消費者は香りだけでなく、パッケージ・SNS投稿・店舗空間の写真などへの発信を通じて、「自分自身が意味を付け加える体験」を共有している。 ② 三頓半(SANDUNBAN/サンドンバン)― 香りで都市の情緒を届けるコーヒーブランド 三頓半は、インスタントでありながら高品質なスペシャルティコーヒーを提供する中国ブランドである。ブランド戦略の中核には「開封時の香り体験」があり、各フレーバーには都市の風景や特徴が反映された香りの物語が付随している。例えば「林間の朝」や「午後の書斎」といったネーミングにより、香りと生活の情緒をリンクさせている。 この香り戦略は、「忙しい都市生活の中にある静寂な瞬間」を演出し、消費者が日常に文化的意味づけを与える行為を支援している。ここでは香りは、リラクゼーションや自律的生活感のシンボルとして機能している。 ③ 柒香茗(Qi Xiangming/チシャンミン)― 香りで古典と日常をつなぐ現代茶ブランド 柒香茗は、伝統的な中国茶文化の美意識を継承しつつ、現代生活に適合するプロダクトデザインと香り体験を融合させているブランドである。使用する茶葉には竹、桂花や茉莉花(ジャスミン)など、古典詩にもしばしば登場する芳香素材が採用され、香りそのものが「香茗」(香茶)の象徴として機能する。 ここでの香りは、都市生活に取り込まれた伝統文化を想起させる役割を果たし、Z世代に「自分は古典を知っている」という文化的自己効力感を与える。 ④ 王小鹵(Wang Xiaolu/ワンショウルー)― 香りで郷土の記憶を蘇らせるスナックブランド 王鹵は、中華スパイスを効かせた卤味(煮込み系スナック)の香りで強い訴求力を持つブランドである。封を開けた瞬間に広がる花椒(ホアジャオ)や八角の香りは、四川地方の料理文化や家庭的な記憶を呼び起こす。特に都市部に住む若年層にとっては、「幼少期に家族と過ごした食卓」「田舎に帰省した時の空気」を思い出させるトリガーとなっている。 このように王小鹵の香りは、家庭・郷土・郷愁といった文化的レイヤーを即座に呼び起こす装置として設計されており、非常に強い“感情の再生効果”を持っている。 5. 香りを通じた消費者関係構築の比較 ― 心理・共感・文化レゾナンス(共鳴) 香りという切り口を通じて、焼き芋と上記ブランドがそれぞれどのように消費者との関係を構築しているかを以下に整理する。 図表1:焼き芋及び中国フードブランドの比較表:香りによる文化的レゾナンスとブランド関係性の分析 (出所)野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 このように、香りは単なる嗅覚刺激にとどまらず、ブランドごとに異なる文化的文脈(レイヤー)や心理的価値に働きかけており、消費者との関係構築における設計思想そのものに差異をもたらしている。たとえば焼き芋の香りは、「郷愁」や「家庭」といった情緒的な文化記憶を喚起し、消費者に安心感や懐かしさをもたらす。一方、喜茶では、香りが「モダン」「限定」「自己演出」といった都市的意味と結びついており、より能動的に自己表現するZ世代の心理に対応している。ここでの香りは、単なる付加価値ではなく、「ブランドとの共創体験を構成する要素」として機能している。さらに、三頓半は「香りと都市の詩的瞬間」を、柒香茗は「古典の美意識と現代生活の橋渡し」を、王小鹵は「郷土料理の記憶と都市生活の再接続」を、それぞれ香りによって実現している。これらのブランドは、香りを「商品の匂い」としてではなく、消費者の文化的アイデンティティや記憶、社会的自己像に働きかける“意味と物語の媒体”として扱っている点が共通している。 つまり、香りは“感じるもの”ではなく、“解釈し、語るもの”になっている。そして、その香りに込められた意味が、ブランドの世界観や価値観と接続されることで、消費者は自分の感性や人生観と重ね合わせてブランドと関係を築いていく。このような高度な香り活用は、今後のブランディングにおいて単なる差別化手法ではなく、“物語と共感を設計する戦略装置”として位置づけられていく可能性を示しており、焼き芋や喜茶、そして三頓半・柒香茗・王小鹵のようなブランドは、その先進的な実践例であるといえる。 6. 結論と実務的示唆 ― 香りは文化的共感と消費者関係を媒介する戦略装置 本レビューでは、日本・中国それぞれの焼き芋文化と、複数の中国の現代フードブランドに着目し、嗅覚を通じたブランド体験がどのように消費者の感情・記憶・文化的共感と結びつき、ブランドとの関係性を構築しているのかを分析してきた。 その結果、香りは商品属性だけではなく、消費者の内面(記憶・感情・文化的ルーツ)とブランドを接続するメディアとして機能することが明らかになった。焼き芋は「記憶を喚起する香り」、喜茶は「意味を構築する香り」として、いずれもZ世代の感性と高い親和性を示している。 このような視点は、訪日外国人を対象とした小売・免税業態においても活用可能である。特にZ世代を中心とした中国人インバウンド顧客に対しては、単なる“商品購入”ではなく、“意味を伴った体験”の提供が重要であり、ここに香りが大きな役割を果たすと考えられる。 日本で免税店を展開する企業へのヒアリングによれば、「訪日中国人にとって、香りは文化的記憶を呼び起こす要素であり、特に抹茶や焼き芋の香りは“日本らしさ”として強く認識されている。」との見解が示された。また、「香りによって顧客が空間に安心感や心地よさを感じることで、店内滞在時間が自然と延び、結果として商品との接触機会や衝動購買の可能性が高まる。」と指摘された。 さらに、「香りがSNSへの投稿や口コミ行動にも影響を与える可能性がある。」との観点から、リアル空間での香り体験が、オンライン上でのブランド接点の創出にもつながるという期待も語られた。香りは視覚や価格訴求では届かない“感情的満足”を提供する手段であり、特に短期滞在型の訪日観光客にとっては、記憶に残る購買体験を形成する鍵となる可能性がある。これらは中国人や日本人だけでなく全てのインバウンド客を対象にして、香りを体験化できる食品や飲料に特有のブランディング手法である。 以上より、インバウンド客向け食品や飲料の販売戦略における実務的示唆をAIDMA(RA)モデルとしてまとめる(図表2)。 図表2:インバウンド客向け食品・飲料の販売戦略におけるAIDMA(RA)モデル (出所)野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 おわりに 香りは、空気に混ざる一過性の刺激ではなく、記憶を呼び起こし、文化を想起させ、感情を動かす「戦略的感覚資源」である。だからこそ、香りは単なる演出ではなく、ブランドの“意味”を構築し、消費者との感情的つながりを形成するための有力なブランディング手法となりうる。こうした香りの特性を意識的に設計し、ストーリーや空間、商品体験と統合できるブランドや事業者こそが、感性主導の時代において他との差異化を実現し、文化的共感を通じた強固なブランド構築を成功に導くだろう。 参考文献Hera, C. (2004) 「Sensory marketing: the role of the senses in marketing and consumer behavior」Krishna, A. (2012) 「An integrative review of sensory marketing: Engaging the senses to affect perception, judgment and behavior」(Journal of Consumer Psychology)Herz, R. S., & Engen, T. (1996) 「Odor memory: Review and analysis」(Psychonomic Bulletin & Review)Lindstrom, M. (2005) 「Brand Sense: Build Powerful Brands through Touch, Taste, Smell, Sight, and Sound」(Free Press)Hultén, B. (2011) 「Sensory marketing: The multi-sensory brand-experience concept」(European Business Review)許志強, 張珊珊(2020) 「感官営銷在中国茶飲市場的応用研究」戸谷圭子(2015) 「感性価値創造のためのマーケティング戦略」(同志社商学)Schmitt, B. (1999) 「Experiential marketing. Journal of Marketing Management」(Journal of Marketing Management)小阪裕司(2004) 「感性のマーケティング」久保田進彦(2011) 「感性価値のマーケティング」 ディスクレイマー 本資料は、ご参考のために野村證券株式会社が独自に作成したものです。本資料に関する事項について貴社が意思決定を行う場合には、事前に貴社の弁護士、会計士、税理士等にご確認いただきますようお願い申し上げます。本資料は、新聞その他の情報メディアによる報道、民間調査機関等による各種刊行物、インターネットホームページ、有価証券報告書及びプレスリリース等の情報に基づいて作成しておりますが、野村證券株式会社はそれらの情報を、独自の検証を行うことなく、そのまま利用しており、その正確性及び完全性に関して責任を負うものではありません。また、本資料のいかなる部分も一切の権利は野村證券株式会社に属しており、電子的または機械的な方法を問わず、いかなる目的であれ、無断で複製または転送等を行わないようお願い致します。 当社で取り扱う商品等へのご投資には、各商品等に所定の手数料等(国内株式取引の場合は約定代金に対して最大1.43%(税込み)(20万円以下の場合は、2,860円(税込み))の売買手数料、投資信託の場合は銘柄ごとに設定された購入時手数料(換金時手数料)および運用管理費用(信託報酬)等の諸経費、等)をご負担いただく場合があります。また、各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面、上場有価証券等書面、目論見書、等をよくお読みください。 国内株式(国内REIT、国内ETF、国内ETN、国内インフラファンドを含む)の売買取引には、約定代金に対し最大1.43%(税込み)(20万円以下の場合は、2,860円(税込み))の売買手数料をいただきます。国内株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。国内株式は株価の変動により損失が生じるおそれがあります。 外国株式の売買取引には、売買金額(現地約定金額に現地手数料と税金等を買いの場合には加え、売りの場合には差し引いた額)に対し最大1.045%(税込み)(売買代金が75万円以下の場合は最大7,810円(税込み))の国内売買手数料をいただきます。外国の金融商品市場での現地手数料や税金等は国や地域により異なります。外国株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。外国株式は株価の変動および為替相場の変動等により損失が生じるおそれがあります。 野村證券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第142号 加入協会/日本証券業協会、一般社団法人 日本投資顧問業協会、一般社団法人 金融先物取引業協会、一般社団法人 第二種金融商品取引業協会
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05/24 12:00
【注目トピック】トランプ関税は2025年度業績に織り込まれたのか?
※画像はイメージです。 日本:2025年1-3月期決算レビュー 2025年度期初会社側見通しまとまる 2024年度の決算実績がほぼ出揃いました。2024年度はほぼ事前予想通りの着地となりましたが、市場の関心はトランプ政権の関税政策の影響が年度を通して表れる可能性が高い2025年度見通しに向けられていたと思われます。 また、不透明な先行きを理由に期初会社側見通しを非開示とする企業が多数にのぼることも危惧されていました。実際、東日本大震災の際には25%、コロナ禍の際には実に64%の会社が期初の見通しを非開示としたため、株式市場ではボラティリティーが顕著に上昇しました。今回は、結果的に非開示とした企業は、歴史的な平均よりもむしろ低い4%にとどまり、株式市場に安心感をもたらしたと見られます。 さて、2025年度の現時点での会社側見通しは前年度比-8.5%の経常減益となっています。トランプ政権の関税政策の影響がどの程度織り込まれているのか気になるところです。過去においては、リーマンショック、コロナ禍など期初時点では想定外の事象が起きた場合には実績値が期初見通しを下回っていますが、逆に期初時点で想定されていた事象についてはある程度織り込まれている、と考えてよいでしょう。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注1)赤線は、ラッセル野村Large Cap(除く金融)の期初時点(各年5月末)での会社側経常増減益率見通し。会社側見通しが未発表/非公表の企業は、野村予想、あるいは東洋経済予想で補完している。直近値は2025年度で2025年5月19日時点。(注2)灰色線は各年度の実績経常増益率。2024年度以降の数値は2025年5月19日時点での野村證券市場戦略リサーチ部による推定・予想値。(出所)野村證券投資情報部作成 アナリスト予想は大幅下方修正 期初会社側見通しが減益予想だったこともあり、アナリストによる予想利益の下方修正が本格化しました。 下方修正の主な要因は、業績予想に際しての為替前提の変更(従来150円/米ドル⇒現在140円/米ドル)、および一部業種でのトランプ政権による関税政策の影響の織り込み、などが挙げられます。その結果、ラッセル野村Large Cap(除く金融)の2025~2026年度予想経常利益は2025年3月時点の予想に比べて5兆円前後のかなり大きな下方修正となっています。 (注)ラッセル野村Large Cap(除く金融)の予想経常利益額の推移。直近は2025年5月19日。(出所)野村證券市場戦略リサーチ部より野村證券投資情報部作成 一部でトランプ関税の織り込み始まる 2025年3月以降、アナリストによる2025年度予想経常利益は大きく下方修正されています。このうち、際立って下方修正額が大きい業種が、自動車、電機・精密です。いずれもトランプ政権による関税政策の影響を主に織り込んだ結果です。 一方、そのほかの業種の修正額は僅少です。トランプ政権の関税政策の直接的な影響は主に自動車、電機・精密など限定的な業種・企業にまず及びますが、その他の業種・企業への間接的な影響については現時点で業績予想に織り込む難易度が極めて高いため、修正額がわずかとなった、と考えられます。 仮に、今後、トランプ政権の関税政策が、(高い関税率の状態で)長期間に及んだ場合、影響は自動車、電機・精密に留まらず、鉄鋼や化学、海運などに間接的な影響となって顕在化する可能性があります。さらに、直接・間接的な影響が積み重なって、実体経済の減速にまでつながると現在は無関係と思われている、内需・非製造業の業種に影響が及ぶ可能性もないとはいえません。今後も、自動車、電機・精密以外の業種に影響が拡がることがないか、注視する必要があるでしょう。 (注)ラッセル野村Large Capを構成する19業種の、2025年3月3日~2025年5月19日の間の、2025年度予想経常利益修正額。(出所)野村證券市場戦略リサーチ部より野村證券投資情報部作成 RIが加速度的に悪化する可能性は低い 2025年3月以降、トランプ政権の関税政策の業績予想への織り込みが始まった結果、リビジョン・インデックス(RI)も急激に悪化しています。2025年5月19日の段階で、ラッセル野村Large Cap(除く金融)のRIは-44%と極めて大きなマイナスとなっています。2025年3月時点の+3.2%から劇的と言ってもよい悪化です。 少なくとも2012年度以降、RIがプラス圏から、いきなり-30%以下となったことはありません。なお、一旦、RIが-30%を下回ると、それ以上マイナス幅が拡がることはありませんでした。RIがプラスに復帰するには時間がかかる可能性がありますが、経験則上は更なる悪化の可能性は低いでしょう。 (注)赤線はラッセル野村Large Cap(除く金融)のリビジョン・インデックス(四半期)。灰色線は、ラッセル野村Large Cap(除く金融)の予想経常増益率(前年度比)。2024年度および2025年度は2025年5月19日時点の集計値。(出所)野村證券市場戦略リサーチ部より野村證券投資情報部作成 (野村證券投資情報部 伊藤 高志) ご投資にあたっての注意点
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05/24 09:00
【オピニオン】トランプ2.0でドルの信認は揺らぐか?
※画像はイメージです。 トランプ大統領は就任以来、貿易赤字の削減や製造業の国内回帰を掲げ、大型関税を相次いで導入してきました。為替についても、強すぎるドルを問題視する発言を繰り返しています。このため、市場の一部では「ドルに対する人々の信認が大幅に悪化するのではないか」といった声が聞かれます。 5月16日には米格付け会社大手のムーディーズ・レーティングスが米国債の長期信用格付けを最上位の「Aaa」から「Aa1」へ1段階引き下げたことを受けて、市場の「ドル離れ」懸念が高まっています。 ドルが基軸通貨の地位から転落するリスクが高まっているのでしょうか。基軸通貨を「貿易や資本取引など、国際的な経済取引における決済手段として最も選ばれる通貨である」と定義した場合、ドルが基軸通貨から転落する可能性は、現時点では非常に低いといえます。 IMFの調査によれば世界の輸出に占めるドル建ての割合は54%(1999~2009年平均)であり、同じくBIS(国際決済銀行)の調査では世界の為替取引におけるドルのシェアは44%(22年4月の1日当たりの平均)と、いずれも半分程度はドルを経由して行われています。 下記の図表は、主要国・地域の経常収支を見たものです。世界の経常赤字の過半は、米国の赤字であることがわかります。このことは、貿易や配当、利払いなどを通じて世界中にドルが供給され、世界中で流通していること、また米国にこれだけの赤字を計上できるだけの資金が還流していることを意味しています。この点から、基軸通貨としてのドルの地位を脅かす通貨が直ちに誕生する可能性は低いと言えます。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注)データは年次で、直近値は2023年。台湾は1984年以降、中国は1997年以降。(出所)IMF『World Economic Outlook April 2025』より野村證券投資情報部作成 一方で、米国では経常赤字に概ね匹敵するペースで対外純債務が積み上がっているという見方もできます。このため、米国政府は経常赤字の削減や、米国が海外に所有している資産の価値を上げる目的で、ドルを切り下げるのではないか、との市場の懸念につながりやすい面があります。 実際、ドルに関しては、ニクソンショックやプラザ合意として知られるように、戦後だけでも2回の通貨切り下げが行われました。トランプ大統領の掲げる政策が、市場のドル切り下げ懸念を高めているようです。 ただし、ドルの切り下げは副作用も大きく、それだけでは経常赤字問題を解決できないことは歴史の教える通りです。現時点では、起こると影響が大きいけれどめったに起きない「テールリスク」であると言えます。 ご投資にあたっての注意点
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05/24 07:00
【来週の予定】米議会では予算審議が活発化
来週の注目点:米国の予算審議、通商協議、日米の物価動向 トランプ政権の政策や、景気動向、インフレを巡る不透明感が再び強まっています。世界的な株価の大幅反発をもたらした米中の関税率引き下げは、90日間の暫定措置です。第1次トランプ政権時には米中協議が合意に達するまでに1年半を要しており、今政権下でも交渉が長期化する可能性があります。中国以外の主要国と米国との通商協議も相次いで行われており、目が離せない状況が続きそうです。 また、米議会では予算審議が活発化しつつあります。今後は、法人税減税や、個人所得税減税の延長、連邦法定債務上限引き上げなど、政策の重心が財政政策へとシフトすると予想されます。いずれも議会での可決が必要ですが、共和党内でも意見が対立するなど、政策の実現は容易ではないと見られています。仮に実現した場合には景気を下支えする効果が期待される一方、財政赤字の増加懸念が米長期金利を押し上げ、株式市場の上値を抑える可能性があります。 米国の経済指標では、5月27日(火)に4月耐久財受注、5月消費者信頼感指数(コンファレンスボード)、28日(水)に5月FOMC議事要旨、30日(金)に4月個人消費支出・所得統計、5月シカゴ購買部協会PMIの発表が予定されています。中でも注目は、FRBが物価動向の指標として重視する個人消費支出・所得統計のPCE(個人消費支出)コア価格指数です。4月CPIでは明確な証左はなかったものの、関税引き上げの影響が注目されます。 日本では、30日(金)に5月東京都区部消費者物価指数が発表されます。コアコアCPI(生鮮食品及びエネルギーを除く総合)は、春の引っ越しシーズンにおける家賃の引き上げなどを受けて加速したと野村では予想します。また、同日に発表される4月鉱工業生産では、トランプ関税への懸念が生産を下押し、前月比でマイナスに転じると見ています。 (野村證券投資情報部 坪川 一浩) (注1)イベントは全てを網羅しているわけではない。◆は政治・政策関連、□は経済指標、●はその他イベント(カッコ内は日本時間)。休場・短縮取引は主要な取引所のみ掲載。各種イベントおよび経済指標の市場予想(ブルームバーグ集計に基づく中央値)は2025年5月23日時点の情報に基づくものであり、今後変更される可能性もあるためご留意ください。(注2)画像はイメージです。(出所)各種資料・報道、ブルームバーグ等より野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点
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05/23 16:45
【野村の夕解説】日経平均株価は反発し174円高(5/23)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 寄り付き前に日本の4月CPI(消費者物価指数)が発表され、生鮮食品を除くコアCPIは前年同月比+3.5%と市場予想を上回りました。CPIの結果は日本の長期金利上昇を押し上げるものでしたが、22日の米国長期金利の低下(価格は上昇)を受け、日本の10年国債利回りは1日を通しやや低下(価格は上昇)しました。 22日の米国ハイテク株高を受け、日経平均株価は前日比175円高の37,161円で寄り付き、その後は値がさの半導体株が上昇し相場をけん引しました。午後には石破首相がトランプ大統領と電話会談を行ったと報じられ、関税を巡る日米協議などについて幅広く意見交換を行ったとされましたが、市場の反応は限定的でした。その後は日本時間の24日に予定されている日米関税交渉を控え、リスク回避が優先される中徐々に上げ幅を縮小させ、大引けは前日比174円高の37,160円と小幅反発となりました。個別株では、利益成長の期待からゲーム関連の株が上昇し、任天堂の終値は前日比+5.35%、コナミグループは同+2.78%、バンダイナムコは同+2.59%となりました。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注) データは15時45分頃。米ドル/円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。米ドル/円は11:30~12:30の間は表示していない。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 日本時間24日に、日米関税交渉の3回目の協議が予定されています。 (野村證券投資情報部 清水 奎花) ご投資にあたっての注意点
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05/23 12:00
【今週のチャート分析】日経平均株価、短期的過熱感から押し、22日に37,000円を割り込む
※画像はイメージです。 ※2025年5月22日(木)引け後の情報に基づき作成しています。 日経平均株価、25日平均線が下支えとなるか注目 今週の日経平均株価は、金利上昇に加え、それに伴う円高進行を嫌気して軟調でした。22日は、約2週間ぶりに3万7,000円台を割り込みました。 これまでの動きをチャートから振り返ってみましょう。日経平均株価は、米国と英国及び中国との関税交渉進展を受けて上昇し、5月13日に一時38,494円をつけました(図1)。 しかし、昨年10月から今年2月にかけて長期間保ち合ったレンジ(37,700~40,300円)に入り、戻り待ちの売り圧力が強まりやすい状況となったことや、各種テクニカル指標が短期的な過熱感を示唆したことから、5月13日の高値(38,494円)形成後に押しを入れています。 22日には75日線(5月22日:36,893円)まで下落しており、この先、上向きの25日線(同:36,262円)が下支えとなるか注目されます。仮に同線を割り込んだ場合、今年4月安値に対する二番底形成へ向けた動きとなるとみられます。その場合、まず4月以降の上昇幅に対する38.2%押し(35,551円)や、半値押し(34,643円)の水準が下値メドとして挙げられます。 一方で、調整一巡後に上昇に転じる場合、再び200日移動平均線(5月22日:37,810円)を超えて、5月13日高値(38,494円)を突破することができるかが注目点です。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注1)直近値は2025年5月22日時点。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(出所)日本経済新聞社より野村證券投資情報部作成 為替の歴史から学ぶ ニクソンショック、その時相場は? トランプ政権は具体的な通貨政策を示していないものの、市場では第二のプラザ合意の可能性が懸念されています。米ドルは戦後、1971年のニクソンショックと1985年のプラザ合意で二度の大幅な通貨切り下げを経験しました。本稿ではニクソンショックの相場動向を振り返ります(図2)。 1971年8月15日、ニクソン大統領が米ドルと金の交換停止を発表し、金と各国通貨の固定レートを維持する「ブレトンウッズ体制」が崩壊しました。これにより為替市場は変動相場制へ進む流れとなり、円も1ドル=360円の固定レートを離れ、大幅な円高・ドル安に移行しました。同年12月にはスミソニアン協定で1ドル=308円が設定されましたが、この水準は長続きせず、1973年2月には再び変動相場制に移行しました。 ニクソンショック直後、日経平均株価は直前の高値から20%以上の大幅下落を記録。円高ドル安による輸出企業への打撃を懸念した政府と日本銀行は、積極的な財政・金融政策を実施しました。その結果、株価は回復に転じるとともに、景気過熱とインフレの加速を招きます。さらに、1972年には田中角栄氏の「日本列島改造論」が発表され、全国的な土地投機ブームが発生。その影響で日経平均株価は1971年8月の安値から1973年1月の高値まで約2.5倍に急上昇しました。 なお、1971年と2025年では経済環境が大きく異なり、単純比較は困難です。ただ、過去の事例が現在を理解する一助になれば幸いです。 (注1)出来事はすべてを網羅している訳ではない。赤い点線丸印はニクソンショック時。下落率は直前の高値から計算。(出所)ブルームバーグ、各種資料より野村證券投資情報部作成 (野村證券投資情報部 岩本 竜太郎) 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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05/23 08:34
【野村の朝解説】米減税法案が下院を通過(5/23)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 5月22日の米国株式市場では、NYダウとS&P500は小幅安、ナスダック総合は小幅高となりました。トランプ政権の減税法案が下院を通過し、財政赤字の増加が懸念され10年国債利回りは一時4.62%台へ上昇したものの、その後4.53%程度に低下しました。米国株は金利上昇を受け下落し、その後金利低下を受け反発したものの上値の重い展開でした。法案に再生可能エネルギー控除の早期の縮小が盛り込まれたため関連株は軟調でした。野村では、法案は上院で州・地方税控除やメディケイド、再生可能エネルギーなどに関する修正を経た上で7月上旬までに成立する可能性が高まったとみています。 相場の注目点 来週26日月曜日は、米国市場はメモリアルデー、英国市場はスプリング・バンクホリデーで休場です。 28日に、AI用半導体大手のエヌビディアが決算発表を予定しています。トランプ政策の不透明性が企業のAI設備投資にに悪影響を与えると懸念されていましたが、顧客であるメタ・プラットフォームズが4月の決算発表時に25年の設備投資額見通しを引き上げ、アルファベットは従来の計画を維持しました。また、トランプ大統領の訪問に合わせて、サウジアラビアの政府AI企業と提携し、最大110億ドル相当の製品を納入すると発表していました。これらに加え、中国向けの販売の詳細などが、グローバルのAI業界の現状を知る上で注目されます。 本日のイベント 米国では、4月新築住宅販売件数が発表されます。予想は年率69.4万件と、3月の72.4万件から減少するとみられています。4月の株価の下落による資産効果の低下など、消費者の動向に変化があったかが注目されます。 (野村證券 投資情報部 竹綱 宏行) (注)データは日本時間2025年5月23日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 ご投資にあたっての注意点
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05/22 16:23
【野村の夕解説】日経平均は313円安 円高と弱い経済指標が重石(5/22)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 22日寄り前に、米財務省から、日米財務相会合では為替に関する議論は行われなかったと発表されました。これを受けて、米ドル円は143円50銭台から一時144円30銭台へと円安方向に進みました。しかし、市場ではあらかじめ想定されていた内容だったことから、その後は急速に円高方向に回帰しました。寄り前に発表された2025年4-6月期機械受注見通しにおいては前期比-2.1%と3四半期ぶりの減少見通しとなりました。また、5月のPMI速報値は製造業・サービス業ともに前月から悪化しました。21日の米国株安に加え、円高と弱い経済指標を受けて、22日の日経平均株価は前日比367円安の36,931円で寄り付きました。10:00頃、金融政策に対してハト派的とされる日銀の野口審議委員が講演で、米国の関税政策の影響に留意しつつも、利上げ継続の姿勢を示したことで、米ドル円は143円10銭台と更に円高方向に進み、日経平均株価の重石となりました。材料不足の中、37,000円付近で上値が重く、終値は前日比313円安の36,985円となりました。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注) データは15時45分頃。米ドル/円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。米ドル/円は11:30~12:30の間は表示していない。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 22日、米国で5月S&PグローバルPMI速報値が発表されます。米中が相互に関税引き下げで合意したことで、企業の景況感に変化がみられるか、注目されます。 (野村證券投資情報部 秋山 渉) ご投資にあたっての注意点