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【注目トピック】2026年、半導体需要の牽引役に変化か 世界半導体市場統計を読み解く

※画像はイメージです。 前回予測から上方修正、2026年も拡大を見込む 米国時間6月3日に、主要半導体メーカー50社で構成される業界団体、WSTS(世界半導体市場統計)が、2025年春季の半導体市場の見通しを発表しました。今回の予測会議は2025年5月20~22日に開催され、2025年3月までの実績値を基に作成したとのことです。 半導体市場全体は、2024年実績が前回発表時点(2024年12月)の予測を上回り、2025年予測も前回予測よりも上方修正となっています。2023年は前年比で減少しましたが、2024年については拡大に転じ、これまでの過去最高だった2022年の5,741億ドルを超えました。そして2025年も拡大が続き、今回新たに示された2026年も拡大が続くと予測されています。 世界半導体市場の推移・予測 (注)灰色は実績、薄い赤色は2024年12月時点、赤色は2025年6月時点の予測。予測はWSTS(世界半導体市場統計)。(出所)WSTS、LSEGより野村證券投資情報部作成 AIがけん引、2026年にはエッジAIも WSTSは、2024年はAI需要を見越したデータセンター投資に連動する形でメモリー製品やGPUなどのロジック製品が半導体市場の成長をけん引した反面、AI関連以外の領域では自動車用途も含めて低調に終わるなど、用途による二極化が顕著であったとしています。 2025年については、引き続きデータセンター投資の恩恵を受けるメモリー製品やロジック製品については高成長を予測したとしています。AI関連以外では、足元はスマートフォンや家電向けなどで、中国の補助金政策などの押し上げ要因が見られるものの、関税問題や輸出規制を含む地政学リスクの高まりなど不透明要素が多いことから、通年では弱含んだ予測となったとしています。 2026年については、けん引役は引き続きAI関連で、エッジAI(データセンターにおいてではなく、端末でAI処理を行う)など応用領域が拡がることも、電子機器への半導体搭載金額の増加に繋がることが期待されるとしています。そして、引き続き地政学的な不透明要素は多いものの、経済が安定していることを前提に、全ての製品群でプラス成長を予測したとしています。 地域別では引き続き米国の成長率が高い 地域別では、米州が2024年の前年比+45.2%から2025年には同+18.0%と、伸び率は鈍化するものの、引き続き2桁成長となり、地域別では最も伸び率が高く予測されています。 アジア太平洋は、2024年の前年比+16.4%から2025年は同+9.8%と、伸び率の鈍化が予測されています。 欧州は、2024年の前年比-8.1%から、2025年は同+3.4%とプラス成長が予測されています。 日本は、2024年の前年比微減から、2025年には若干のプラス成長になると予測されています。 2025年もデータセンター向けがけん引 製品別についてみると、データセンター投資の恩恵を受けると予測される、集積回路のうちのロジックとメモリー(HBM、広帯域幅メモリーやDRAM、フラッシュメモリーなど)が、2024年に続き、2025年も前年比二桁成長が予測されています。 それ以外は、一部については回復が予測されているものの、全般には低調と見込んでいる模様です。ディスクリート(一素子一機能の単一機能製品)とオプトエレクトロニクス(カメラなど光学関連用)は、2024年に続き、2025年もマイナス成長が予測されています。集積回路のうちのマイクロ(自動車のエンジン・コントロール・ユニットなど)は、2024年には小幅ながらもプラス成長となったものの、2025年には再び小幅ながらもマイナス成長が予測されています。 センサー・アクチュエーターと、集積回路のうちのアナログ(アナログ信号処理用)については、2024年のマイナス成長から、2025年には小幅ながらもプラス成長が予測されています。 2026年は各製品とも前年比プラスに 2026年には、各製品とも前年比プラス成長が予測されています。 製品別動向で目を引くのがロジックとメモリーです。共にプラス成長が見込まれていますが、ロジックは2025年の前年比+23.9%から2026年には同+7.3%へと伸び率の鈍化が予測されている一方、メモリーについては2025年の前年比+11.7%から2026年には同+16.2%へと伸び率加速が予測されています。WSTSのコメントからは、データセンターで用いられる半導体の伸び率が鈍化する一方、スマートフォンやパソコン、その他の電子機器に搭載されるメモリーの需要の増加を予測していると推察されます。 世界半導体市場の内訳 (注)予測は2025年6月時点のWSTS(世界半導体市場統計)による予測。(出所)WSTS、リフィニティブより野村證券投資情報部作成 2026年にかけてのけん引役への示唆が興味深い 前回、2024年12月の予測では、2025年はすべての製品で前年比プラス成長が予測されていましたが、今回の予測では、AI関連以外については、全般的に下方修正されています。 半導体製品は、AI以外では自動車や産業機器、家電などが大きなユーザーです。米政権による関税・貿易政策に伴う経済の不透明感から、全般的に設備投資が先送りされたり、足元では駆け込み需要で米国で販売台数が増えている自動車や家電等についても、その反動が懸念されることなどが、反映されていると推察されます。 AI分野については、けん引役交代の可能性を予測していることがうかがえたことが目を引きました。AI向けは、データセンター投資関連も引き続き拡大が予測されていますが、2026年にかけては、エッジAIなどAI機能を搭載した端末関連の需要がけん引するとしています。 なお、半導体需要はAI関連がけん引していて、自動車や産業機器向けの需要が弱含んでいることは、直近の半導体産業に関する各種報道や、半導体メーカー各社の決算動向と整合的な内容で、その意味では大きなサプライズはありませんでした。とはいえ、半導体市場全体の予測が引き上げられ、今回新たに示された2026年は拡大が継続するという点は、ポジティブと受け止めてよいと判断します。 <執筆者紹介> 野村證券投資情報部 シニア・ストラテジスト村山 誠 1990年野村総合研究所入社、1998年に野村證券転籍。エクイティアナリスト、クレジットアナリストとして勤務。2011年6月より米国株ストラテジー担当。投資環境の分析、個別株の投資アイデアを提供。テレビ東京「Newsモーニングサテライト」出演中。 ご投資にあたっての注意点

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