特集
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01/02 07:00
【新春特集】2025年の日本経済は景気と物価の「国産化」に期待(内外経済展望)
経済の安定化に貢献すべき政治が国内外でむしろ経済の不安定性を高めかねない米国トランプ新政権による高関税の適用、減税の継続、移民送還、脱・脱炭素に注目日本経済では賃上げとソフトウェア投資を背景に、景気と物価の「国産化」に期待 2024年の日本経済は文字通り「激震」とともに始まりました。同年1月1日の「令和6年能登半島地震」です。このような甚大な災害とともに始まった24年においても、日本経済は多くの面で進展・改善を見ました。(1)値上げの継続、(2)賃上げの継続、(3)利上げの着手、(4)ソフトウェア投資の増加、(5)労働移動の増加、などはその一例でしょう。 一方、日本経済が新たな難局に直面しているのも事実です。(1)国内外の不安定な政治、(2)トランプ米国次期大統領の政策運営、(3)中国経済と政策対応、(4)地政学的な緊張の先鋭化、広範化、多極化の恐れ、などが例として挙げられます。本来、経済の安定化に貢献すべき政治が、むしろ経済の不安定性を高めかねない。これが25年の世界経済が直面する大きな課題といえるでしょう。 日本経済にも強く影響する米国経済は、大方の予想を裏切る形で堅調に推移しましたが、物価や雇用に一定の鈍化がみられます。こうした中、FRBは24年に約5年ぶりの利下げに転じました。野村では25年に1回(26年には2回)の追加利下げを見込んでいます。 利下げ局面に移行する中、米国経済の先行きは不確実性に満ちています。25年1月20日に発足するトランプ新政権の政策運営はその最たる例でしょう。 経済・通商政策の観点からは、トランプ氏の掲げる〔i〕高関税率の適用、〔ii〕減税策の継続、〔iii〕移民の強制送還、〔iv〕脱・脱炭素が特に注目されます。1点目の高関税率の適用は、輸入物価の上昇という経路で米国の物価に押し上げ圧力をかけ、同時に、物価上昇が経済主体の購買力を弱めることで米国の景気に下押し圧力をかける恐れがあります。2点目の減税策の継続は、米国景気を下支えする一方、物価には押し上げ圧力をかけると目されます。3点目の移民の強制送還は米国側に多額の財政コストが生じます。仮に実行されれば人権問題であり、なおかつ実行しようとすれば、米国側に多額の財政コストが生じます。仮に実行されれば、労働供給の減少によるインフレ圧力の強まりと、消費の減少による景気の下押しが警戒されます。4点目の脱・脱炭素は、トランプ氏が24年の大統領選中に使った「(化石燃料を)掘って、掘って、掘りまくれ!」 (Drill, baby, drill !) (ただし、この言い回しが最初に使われたのは2008年の共和党の選挙キャンペーン)という表現に表れています。同氏は、これによって化石燃料の生産量が増えるためインフレは抑えられると考えているようですが、実効性は不透明です。このように25年の米国経済は視界良好とはとても言えませんが、減税策の継続もあり、景気後退に陥る可能性は低いと見ています。 図表1: 米・ユーロ圏・英国は利下げ、日本は利上げ (注1)米国はFF(フェデラル・ファンド)金利の誘導レンジの上限。 (注2)日本は2016年2月15日までは無担保コールオーバーナイトレート、2016年2月16日以降は日銀当座預金の一部である政策金利残高の付利を図示(ただし2013年4月~2016年1月までは政策金利は存在せず、日銀当座預金残高という量的指標のみで金融政策が行われていた)。 (注3)ユーロ圏は預金ファシリティ金利。 (注4)英国はバンクレート。 (注5)データは日次で直近値は2024年12月18日時点。(出所)ブルームバーグより野村證券経済調査部作成 一方、25年の日本経済については、一つ期待できることがあります。それは、景気の「国産化」とインフレの「国産化」です。しばしば日本の景気は輸出依存、インフレは輸入依存と評されますが、25年は両者の「国産化」が進む可能性があります。 第1に、賃上げに「同調性」が生じつつあります。ライバル会社が賃上げするなら、自社も賃上げするという機運が自社、ライバル会社いずれにおいても醸成され始めています。しかも25年はいよいよ賃金増のペースがインフレを上回る、つまり実質賃金の増加が見込まれます。第2に、ソフトウェア投資の増加です。設備投資が単なる輸出の派生物ではなく、人手不足という国内の課題へのソリューションとしての省力化、更には戦略上不可欠となるデジタル化によって誘発される局面となっています。ソフトウェア投資が22年頃から明らかな上昇トレンドを形成している姿にも、その一端を見ることができます。 図表2: じわじわと高まる賃上げの同調性 (注)2024年度の調査期間は2024年1月18日~31日。調査対象企業は全国2万7308社(有効回答は1万1431社)。(出所)帝国データバンク「2024年度の賃金動向に関する企業の意識調査」より野村證券経済調査部作成 図表3: 増加トレンドを形成するソフトウェア投資 (注1)実質系列はSPPI(企業向けサービス価格指数)の「受託開発ソフトウェア(除く組込み)」の価格に基づく。 (注2)リンク係数による調整済み。 (注3)データは月次で、直近値は2024年9月。(出所)経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」、日本銀行「企業向けサービス価格指数」より野村證券経済調査部作成 日銀も経済と物価が見通しに沿って推移(オントラック)していると評価しています。ただし、24年12月の金融政策決定会合後の会見における植田日銀総裁は、不確実性に対してより配慮する姿勢を示しました。とりわけ25年の春闘に関わる情報や賃金関連データを集めつつ、賃金増の確度を見極めたいとの姿勢が強く示されました。 植田総裁のこうした慎重姿勢を踏まえて、野村では日銀による次の利上げ時期を25年3月に遅らせました。25年10月、26年3月の追加利上げを経て、政策金利は現行の0.25%から1.0%に引き上げられると予想しています。 (野村證券経済調査部 森田 京平) ※野村週報 2025年新春特別号「内外経済展望」より ※こちらの記事は「野村週報 2025年新春特別号」発行時点の情報に基づいております。※画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点
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01/01 18:00
【新春特集】2025年相場大展望 – 日本株編 (解説:池田)
日銀の大規模緩和の終了、岸田首相の辞任、バイデン大統領の撤退など、2024年は「出口」が相次いだなかでも、日本株の打たれ強さが目立った1年でした。2025年の日本株展望を、野村のマクロ調査部門を統括する池田が徹底解説します。 (約44分)。 ※ 動画の終盤に言及している、「アンケート」について、当記事ではご回答いただけません。 ご了承ください。 ~ 講師紹介~ 池田 雄之輔 経済調査部長/市場戦略リサーチ部長 1995年野村総合研究所入社、2008年に野村證券転籍。日本のマクロ調査(経済および市場戦略)を統括するマネージング・ディレクター。野村総研入社以来、一貫してマクロ調査を担当。シニアエコノミストを経て、為替、株式のチーフ・ストラテジストを歴任した。ロンドン駐在時代に築いた海外投資家とのネットワークを活かし、データに現れない「次の動き」を読み取っている。2015・17年の日経ヴェリタス人気アナリスト調査(為替部門)で1位を獲得。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ Q. 2024年で一番うれしかったことは?A. レポートの〆切に追われる毎日から卒業(?)できたこと。 Q. 2025年にチャレンジしてみたいことは?A. 最近サボっていたマラソン大会への出場。 Q. 最近読んだ本や影響を受けた映画やドラマは?A. NHKで再放送されたドラマ「正直不動産」が毎回素晴らしい。前回放映時に大評判だったのに見なかったことを反省。 Q. 1日の仕事の中で「これだけは譲れない」と思う自分だけの時間やルーティンは?A. 朝・昼・夕の3杯のコーヒー。 Q. 今の仕事を目指したきっかけは?A. 大学3年時に(単位が危なくなり)猛勉強したことが、「経済学を活かせる仕事」を目指すきっかけになった。 Q. 小さい頃の自分に話しかけるなら、伝えたいことは?A. 色んなことに挑戦するのが大事。3日坊主でもいい。 ご投資にあたっての注意点
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01/01 12:00
【新春特集】2025年主要政治・経済予定(年間カレンダー)
2025年主要政治・経済予定 (注1)日付は現地時間。全てを網羅している訳ではない。(注2)今後の予定は変更もあり得る。(出所)野村證券経済調査部「国内外の政治・経済日程(2024年12月2日)」、各種資料より野村證券投資情報部作成 (野村證券投資情報部 澤田 麻希) ※野村週報 2025年新春特別号「年間カレンダー」より ※こちらの記事は「野村週報 2025年新春特別号」発行時点の情報に基づいております。※画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点
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01/01 07:00
【新春特集】令和7年、「乙巳(きのと・み)」
十二支に割り当てられた漢字が実際の動物とは似ても似つかない形であるのに対し、「巳」の字はどこか蛇を思わせます。実際、これは冬眠から目覚めた蛇が地上へ這い出してくる姿を表した象形文字という説があります。 足を持たずニョロニョロと這う姿や毒を持っている種が多いことなどから、蛇に恐怖心を抱く人は少なくないでしょう。「鬼が出るか蛇が出るか」「藪から蛇」といった慣用句は、そうした人の心理を反映したものと言えます。 人は怖いと感じるからこそ蛇に並々ならぬものを感じ、さまざまな物語に登場させました。『旧約聖書』では、蛇は主なる神が造られた動物の中でもっとも賢いとされ、エデンの園でイヴに禁断の果実を食べるよう言葉巧みに誘った存在として描かれています。日本では、『古事記』や『日本書紀』に登場する八つの頭と尾を持つヤマタノオロチという大蛇が有名です。 畏怖の念から信仰の対象にもなりました。強い生命力を持っていることや何度も脱皮を繰り返す様子から、蛇は「不老不死」や「死と再生」の象徴とされます。自身の尾を噛み環状になった蛇のウロボロスがその典型です。日本では弁財天の使いとされ、金運や商売繁盛に関係するとされます。脱皮して成長していく姿が、繁栄や再生を象徴すると考えられたのでしょう。 それでは恒例の「乙巳(きのと・み)」縁起談。二回り前の乙巳は明治38年(1905年)です。前年から続く日露戦争で、日本はロシアに勝利します。日清戦争を上回る大規模な戦争で、約8万4,000人の戦死者と約20億円(現在に換算すると約2兆6,000億円)の支出となりました。アジアの国であっても欧州の大国に勝てることを示し、日本は国際社会での影響力を強めていきます。 一回り前の乙巳は昭和40年(1965年)。3月には人類初の宇宙遊泳が実現。旧ソ連の宇宙飛行士が宇宙船から外に出て、約12分間の宇宙遊泳を行いました。国際関係では日本が6月に日韓基本条約に調印、韓国との国交正常化が行われました。 また、5年後の昭和45年(1970年)に日本万国博覧会(大阪万博)の開催が決定したのもこの年。アジアで最初の国際博覧会となりました。 11月にはいざなぎ景気が始まります。昭和29年(1954年)からの神武景気、昭和33年(1958年)からの岩戸景気を上回るものになるよう期待を込めて名付けられ、57ヶ月におよぶ戦後最長の好景気となりました。この時期には、「新・三種の神器」と呼ばれた「カラーテレビ(color TV)」、「自家用車(car)」、「クーラー(cooler)」のいわゆる「3C」が急速に普及し、人々の生活が豊かになっていきました。 市民の間でベトナム戦争への反戦の機運が高まっていったのもこの年です。きっかけは、米軍によるベトナム北部への空爆で、多くの一般市民が亡くなったと報道されたことです。4月には哲学者の鶴見俊輔氏らによって「ベトナムに平和を!市民連合」、通称「ベ平連」が結成。反戦運動が盛り上がっていきます。 日本の快挙も相次ぎました。野球では、野村克也氏が三冠王に輝きます。戦後初であったことに加え、捕手としては世界初でした。また、物理学者の朝永振一郎氏が日本人として2番目のノーベル物理学賞を受賞したのもこの年です。 「乙(きのと)」は十干の2番目で、草木の幼い芽がやわらかく屈曲しながら伸びていく状態を指します。「巳」の字義は「已(やむ)」に通じ、万物がすでに盛りを極め、実を結ぶ時期が到来することを表します。これから発展していく「乙」と、最大限に繁栄した「巳」の組み合わせから、令和7年(2025年)の乙巳はこれまでの努力が実を結び、成果が現れる年になると読み解くことができるでしょう。 米国では大統領が交代、隣国韓国では大統領の弾劾が成立、ウクライナや中東では緊張が続きます。さまざまな変化が起こりそうですが、強い生命力を持ち金運を司る蛇にあやかって、私たちも「脱皮」し大きく成長していく吉年となりますよう。 (紙結屋小沼亭) ※野村週報 2025年新春特別号「乙巳」縁起より ※こちらの記事は「野村週報 2025年新春特別号」発行時点の情報に基づいております。※画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点