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05/25 19:00
【来週の米国株】エヌビディア堅調でも上がらぬ株価、次の焦点は(5/25)
※執筆時点 日本時間24日(金)12:00 今週:エヌビディア決算堅調もインフレ懸念継続 ※5月17日(金)-5月23日(木)4営業日の騰落 注目されたエヌビディアの決算内容が市場予想を上回った一方で、景気指標・インフレ指標が市場予想を上振れ、年内の利下げ期待が後退したことが株価の重石となりました。 エヌビディア決算は堅調 22日米国市場の引け後に発表されたエヌビディアの2-4月期決算では売上高・一株当たり利益(EPS)はともに市場予想を上回りました。部門別にみれば市場予想を下回る項目もあったものの、生成AI需要の直接的な恩恵が期待されるデータセンター部門が市場予想を上回ったうえ、5-7月期の会社見通しも市場予想を上回ったことから23日(決算発表翌営業日)の当社の株価は相場が下落する中で逆行高となりました。 インフレ懸念は継続 株価にとって、好調な企業業績は好材料ですが、底堅い景気・高止まりするインフレ率は金利高止まりを介して悪材料になっています。 23日(水)に発表された5月のS&PグローバルPMI総合(速報値)は、54.4と2022年4月以来の高水準となり、前月の51.3および市場予想の51.1を上回りました。仕入れ価格指数が昨年9月以降で2番目の高さになるなど、インフレ関連の指標も上昇しました。 FRBは「忍耐強いスタンス(=利下げに積極的でない)」 市場は7月利下げの可能性を織り込んでおらず、FRB(米連邦準備理事会)は忍耐強いスタンスを強調しています。 重要なのは、FOMC(米連邦公開市場委員会)参加者のうち2024年の投票権を持つメンバー数人が7月利下げの可能性を排除していることです。ここ数年、FOMCの理論づけで主導的な役割を務めてきたウォラー理事は、利下げ開始には「あと数ヶ月の良好なインフレ指標」が必要だと示唆しています。ウォラー理事の政策スタンスは、1-3月期の予想外のインフレ上昇を受けて、ここ数ヶ月タカ派的(利下げに慎重)になっています。加えて、ボウマン理事やアトランタ連銀のボスティック総裁も7月の利下げを明確に否定しています。他のFOMC参加者は全員、インフレ見通しに対する十分な信頼を得るにはなお時間がかかるとの認識で一致していますが、その具体的な期間について言及した参加者はいません。これらの参加者が早期の利下げを積極的に推し進めるほど強い確信を持っているとは考えにくい状況です。 利下げ開始時期は9月と予想 こうした環境を受け、野村では米利下げ開始時期の予想を7月から9月に変更しました。引き続き2024年に2回、2025年はさらに4回の利下げを予想しています。1-3月期にインフレが加速したのは振れやすい項目の影響によるものであり、賃金の伸びが引き続き減速し、新規契約家賃の上昇率鈍化が既存契約家賃に徐々に波及することで、今後ディスインフレが再開すると想定しています。 今週のポイントは2点です。 ブラックアウト前最後のFRB高官発言相次ぐ 米国では6月1日(土)からFOMC参加者のブラックアウト(発言自粛)期間に入るため、次回FOMC(6月11日(火)-12日(水))をにらみながら、相次ぐFRB高官の講演内容に反応する展開が考えられます。 FOMC参加者全般は、引き続き利下げに対して慎重な姿勢を続けると見込まれます。FOMC全体に先行する傾向のあるダラス連銀のローガン総裁の講演(30日)は注目ですが、今回講演は職業支援に関連したイベントにおけるものであり、金融政策に関する示唆があるかは不透明です。 31日(金)のPCEコアデフレーター 5月コンファレンスボード消費者信頼感指数(28日)やFRBがインフレ指標として重視する4月PCEコアデフレーター(31日)などが注目されます。4月PCEコアデフレーターは前月比+0.2%台前半と鈍化する見込みです。ただし、利下げのためには前月比+0.2%が数ヶ月続く必要があると見込まれます。 また、米消費動向への関心も高まる中、決算発表ではダラーゼネラル、ギャップ、ベストバイ(いずれも30日)が注目されます。 (野村證券投資情報部 小野崎 通昭) ご投資にあたっての注意点 要約編集元アナリストレポートについて 野村オリジナル記事の配信スケジュール
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05/25 12:00
【オピニオン】NYダウ「10万ドル」シナリオの実現性
※画像はイメージです。 2024年5月17日、NYダウが終値で史上初めて4万ドルの大台に到達しました。春先以降、米国ではインフレ高止まり懸念から早期利下げ期待が後退し、株価の重石となっていました。しかし、雇用統計をはじめ消費者物価や小売売上など、5月に入って発表された4月分の主要経済指標が軒並み市場予想を下回ったことから長期金利が再び低下し、株価上昇の再開/最高値更新への追い風となっています。 今回のNYダウの4万ドル超えを受けて、急ピッチな株価上昇に対する警戒感も聞かれます。史上初の「3万ドル超え」が2020年11月でしたので、わずか3年半での大台塗り替えです。しかし、「2万ドル超え」が2017年1月でしたので、3万ドル到達までかかった3年10ヶ月と比べて今回の4万ドル到達はほぼ同じペースです。むしろ上昇率で見れば、2万ドルから3万ドルまでの50%に対し、3万ドルから4万ドルまでは33.3%ですので、前者の方がハイペースだと見ることもできます。いずれにせよ、現在の株価上昇ペースは巡航速度と考えられ、チャート面からは「4万ドル」という節目は一つの通過点に過ぎないと言えそうです。 NYダウの128年の軌跡をひも解くと、過去2回の超長期の上昇継続局面がありました(下図)。1回目が図中①の1942年から1966年までで、上昇期間は約24年間、100ドルから1,000ドルの大台水準に向けた上昇局面です。その後「株式の死」と呼ばれた調整期間を経て、2回目が図中②の1978年から2000年までで、上昇期間は約22年間、1,000ドルから10,000ドルの大台水準に向けた上昇局面です。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注)縦軸は対数目盛。1896年は5月26日以降のデータ。直近値は2024年5月17日時点。トレンドラインには主観が含まれておりますのでご留意ください。(出所)S&P ダウジョーンズ・インデックス社、各種データより野村證券投資情報部作成 そして今回、2000年のITバブル崩壊からリーマンショックに至る調整期間を経て、NYダウは3回目の超長期の上昇継続局面に入っていると考えられます。2009年から2024年まで既に15年間上昇していますが、過去2回の図中①②の上昇局面を参考とすれば、この先2030年代前半にかけて、次の桁替わりの大台水準となる10万ドルを目指す上昇が進行中とみることができます。株価上昇が一本調子で続くことはないですが、年換算で10~15%程度の上昇が続けば達成できる計算です。米国企業業績の成長を加味すれば、決して荒唐無稽な目標とは言えないのではないでしょうか。 テクニカル分析は過去の株価・為替等の値動きを分析・表現したものであり、将来の動きを保証するものではありません。また、記載されている内容は一般的に認識されている見方について記したものですが、チャートの見方には解釈の違いもあります。 ご投資にあたっての注意点
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05/25 07:00
【来週の予定】FRBの動向を探る上で米経済指標の重要度は高まる
来週の注目点:米国のインフレ鈍化、日銀の動向、中国の景況感 米国の4月消費者物価指数(CPI)でインフレの減速傾向が示されたことで、インフレ沈静化と景気後退の回避を同時に達成する軟着陸(ソフトランディング)シナリオが改めて台頭し、米国株の堅調さの一因となっています。このような市場の思惑をよそにFRB(米連邦準備理事会)高官の多くは、足元で利下げに慎重な発言を繰り返しています。このような利下げに慎重な姿勢が単月の経済指標を受けて変化するとは考え難く、今後のFRBの動向を探る上で米国の経済指標の重要度は高まると見られます。 米国では、5月28日(火)に5月消費者信頼感指数(コンファレンスボード)、29日(水)に地区連銀経済報告(ベージュブック)、31日(金)に4月個人消費支出・所得統計、5月シカゴ購買部協会PMIの発表が予定されています。中でも注目は、FRBが基調的なインフレを判断する上で重視する個人消費支出・所得統計のPCE(個人消費支出)コア価格指数です。野村證券では24年9月会合での利下げを予想しますが、コアインフレ率が予想以上に鈍化すれば、市場で24年7月会合での利下げ開始予想が高まる可能性もありそうです。 日本では27日(月)に日本銀行金融研究所主催「2024年国際コンファランス」での植田総裁の開会挨拶と内田副総裁の基調講演、29日(水)に安達日銀審議委員の挨拶が予定されています。国内債券市場では10年国債利回りが連日上昇し、11年ぶりに節目の1%に達しました。米長期金利の上昇や日銀の政策修正期待が背景にあり、足元では国債買い入れや追加利上げなど日銀の動向への関心が高まっています。 ユーロ圏では31日(金)に5月消費者物価指数(HICP)が発表されます。欧州中央銀行(ECB)が24年6月に利下げに転じるとの見方が市場コンセンサスですが、利下げペースや政策金利の着地点を占う上で、物価動向には注目です。 中国では31日(金)に5月政府版PMIが発表されます。堅調な輸出や、中国政府が24年3月以降に相次いで発表した景気支援策が景況感の改善に寄与するか、注目が集まります。 (野村證券投資情報部 坪川 一浩) (注1)イベントは全てを網羅しているわけではない。◆は政治・政策関連、□は経済指標、●はその他イベント(カッコ内は日本時間)。休場・短縮取引は主要な取引所のみ掲載。各種イベントおよび経済指標の市場予想(ブルームバーグ集計に基づく中央値)は2024年5月24日時点の情報に基づくものであり、今後変更される可能性もあるためご留意ください。(注2)画像はイメージです。(出所)各種資料・報道、ブルームバーグ等より野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点