特集
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2023/09/23 07:00
【来週の予定】日本のインフレ圧力は継続するか?中国経済にも注目
来週の注目点:インフレ圧力は長期化するか、経済指標に注目 前週のFOMC(米連邦公開市場委員会)は、2会合ぶりに政策金利を据え置きました。しかし、年内の追加利上げや金融引き締めの長期化が意識される内容だったことから、米長期金利が上昇し、株式相場を下押ししました。パウエルFRB(米連邦準備理事会)議長は追加利上げはデータ次第とする姿勢を維持しており、今後の経済指標に改めて注目が集まります。米国では、26日(火)に9月コンファレンスボード消費者信頼感指数、8月新築住宅販売件数、27日(水)に8月耐久財受注、29日(金)に8月個人消費支出・所得統計、9月シカゴ購買部協会PMIが発表されます。 日本では29日(金)に9月東京都区部消費者物価指数が発表されます。10月の日銀金融政策決定会合に向けてインフレ圧力が継続し、金融政策の正常化期待が高まるか注目が集まります。また、同日の8月鉱工業生産(速報)では、自動車生産の回復が下支え要因となる一方、中国経済の下振れが生産を下押しする可能性があります。 ユーロ圏では、25日(月)にドイツで9月Ifo企業景況感指数、29日(金)にユーロ圏の9月消費者物価指数(HICP)が発表されます。エネルギー価格の高止まりや世界的な財需要の落ち込みが、製造業の景況感を下押しすると見込まれます。他方、ユーロ圏のインフレ率は鈍化が見込まれますが、足元のエネルギー価格上昇の影響には注意が必要です。 中国では、29日(金)に9月財新版・製造業PMI及びサービス業PMIが発表されます。低調な不動産市況や世界的な財需要の落ち込みが景況感を下押しする一方、8月以降に実施されている経済対策の効果がどの程度現れるのか注目です。 (野村證券投資情報部 坪川 一浩) (注)イベントは全てを網羅しているわけではない。◆は政治・政策関連、□は経済指標、●はその他イベント(カッコ内は日本時間)。休場・短縮取引は主要な取引所のみ掲載。各種イベントおよび経済指標の市場予想(ブルームバーグ集計に基づく中央値)は2023年9月22日時点の情報に基づくものであり、今後変更される可能性もあるためご留意ください。(出所)各種資料・報道、ブルームバーグ等より野村證券投資情報部作成 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら 業種分類、Nomura21 Globalについて ご投資にあたっての注意点
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2023/09/22 19:00
【最新ランキング】日本株、今週の値上がり/値下がり銘柄は? (9月第4週)
日本主要銘柄・株価騰落率ランキング(上位) 2023年9月第4週(2023年9月15日~9月21日) 2023年9月月間(2023年8月31日~9月21日) 2023年年間(2022年12月30日~2023年9月21日) (注)対象はTOPIX500、直近値は2023年9月21日。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 日本主要銘柄・株価騰落率ランキング(下位) 2023年9月第4週(2023年9月15日~9月21日) 2023年9月月間(2023年8月31日~9月21日) 2023年年間(2022年12月30日~2023年9月21日) (注)対象はTOPIX500、直近値は2023年9月21日。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 <参考>今週の日本株式市場パフォーマンス 主要指数 TOPIX︓東証33業種 (注)業種分類は東証33業種ベース。直近値は2023年9月22日前引け時点。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点
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2023/09/22 13:12
【速報・解説】日銀、現行の金融政策を維持 円安ドル高で反応
日銀、主要な金融政策の据え置きを決定 日本銀行は9月21-22日に金融政策決定会合を開催し、大方の事前予想通りマイナス金利政策や10年国債利回りの誘導目標など、主要な金融政策の据え置きを決定しました。日銀が7月会合でYCC(長短金利操作)政策の運用柔軟化を決定、その後も植田日銀総裁を筆頭に政策委員会の一部のメンバーから政策修正に前向きな発言が聞かれたことから、日銀のタカ派化(緩和策の修正に積極的姿勢)を警戒し、長期金利は高止まり、為替市場では決定会合を目前に控え、主要通貨に対して円が上昇していました。このため、政策据え置きの決定を受けて円安が進行しています。ドル円レートは結果発表直前には1ドル=147円台後半で推移していましたが、発表直後には148円台まで円安ドル高が進みました。 本日、15時30分から行われる植田総裁の記者会見では、改めて政策修正に対する総裁のスタンスが注目を集めると見られます。FRB(米連邦準備理事会)は9月20日、政策金利を据え置いた一方で、2024年末の政策金利見通し(中央値)を0.5%ポイント上方修正したことから、市場では米政策金利の高止まりが想定以上に長期化するとの見方が強まり、ドル高圧力が残存する可能性が一段と高まっています。今回の会合で日銀は、今後の政策運営方針を示すフォワードガイダンスも据え置きました。植田総裁が早期の政策修正に慎重な姿勢を強調するようなことがあれば、更に円安が進行する可能性があります。政策為替介入の節目と見られる150円を前に、本邦政策当局の円安警戒感が高まっていると見られる状況だけに、植田総裁の発言が注目されます。 (野村證券投資情報部 尾畑 秀一) ご投資にあたっての注意点
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2023/09/22 12:00
【今週の日経平均チャート分析】中段保ち合い上限の水準に上値を抑えられ、大幅安
※2023年9月21日(木)引け後の情報に基づき作成しています。 今週の日経平均株価は、米国の株安や金利上昇などを嫌気し、軟調に推移しました。FOMC(米連邦公開市場委員会)において、政策金利見通しの上方修正を受け、金融引き締め長期化への懸念が強まり、グロース株の重石となりました。 調整継続の場合は、8月安値などが下値メド チャート面として、まずは日経平均株価の日足チャートを振り返りましょう(図1)。日経平均株価は9月15日にかけて上昇傾向となり、一時33,600円台を付ける場面もありました。ただその後は大幅安となり、21日には75日移動平均線(21日:32,643円)や25日線(同:32,511円)の水準まで下落しました。この先、さらなる調整となった場合は、8月18日安値(31,275円)や、今年1月安値から6月高値にかけての上昇幅に対する1/3押し(31,068円)の水準が下値メドとして挙げられます。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注1)直近値は2023年9月21日時点。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。 (注3)日柄は両端を含む。(出所)日本経済新聞社より野村證券投資情報部作成 一方で、底入れ後に反発となった場合、改めて9月15日高値(33,634円)や6月19日高値(33,772円)など、6月以降の高値が集中する水準を突破できるか注目されます。 保ち合い突破を試すも打ち返され、仕切り直しへ 次に中長期的な相場の流れについて確認してみましょう(図2)。6月以降の日経平均株価は大きな上昇局面内の一旦の調整である「中段保ち合い」をこなしていると考えられます。9月15日にかけての上昇で、中段保ち合い上限(33,500~33,700円)にトライしましたが打ち返され、仕切り直しとなりました。今年6月に上値を抑えられてから9月まで既に約3ヶ月が経過し日柄調整が進展しており、この先調整一巡となれば中段保ち合い上限突破に向けた動きとなるか注目されます。 (注1)直近値は2023年9月21日時点。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。 (出所)日本経済新聞社データより野村證券投資情報部作成 米国10年債利回りはFOMC後に4.4%台に 9月19-20日にFOMC(米連邦公開市場委員会)において、大方の事前予想通り政策金利を5.25-5.50%に据え置くことを決定しました。ただ、政策金利見通し(ドットチャート)において、2024年中の利下げ幅が6月時点の1.0%幅から0.5%幅へ縮小されたことが、市場ではややタカ派(インフレ抑制を優先)的と受けとられ、米国債利回りが上昇しました。 今回はチャート面から米国10年債利回りの動きをみてみましょう。米国10年債利回りは今年8月に昨年10月ピーク(4.335%)をわずかに上回った後、上昇傾向は一旦落ち着きました(図3)。しかし、その後、再び上昇し、9月のFOMCの結果を受けて4.4%台に達し、約16年ぶりの高水準となりました。この先のピークメドとして、8月22日ピーク(4.361%)から9月1日ボトム(4.053%)にかけての低下幅を上に倍返しした水準である4.669%や、心理的フシの5%の水準が挙げられます。 (注1)直近値は2023年9月20日。 (注2)トレンドラインには主観が含まれておりますのでご留意ください。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 一方で、2020年3月ボトム(0.313%)から今年9月20日ピーク(4.407%)にかけての利回り上昇幅は4%ポイントを超え、上昇期間は43ヶ月に及んでいます(図4)。同上昇局面は、2006年以降の主要な利回り上昇局面(図4:①~③)の上昇幅及び上昇期間を大幅に上回っています。その点を考慮すれば、目先の上昇が一服となれば、先行きのさらなる利回り上昇は限定的だと見られます。 (注1)直近値は2023年9月20日。(注2)トレンドラインには主観が含まれておりますのでご留意ください。(注3)日柄は両端を含む。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 (投資情報部 岩本 竜太郎) ※画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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2023/09/22 09:30
【銘柄ランキング】上場企業役員に買われた銘柄は?トップ20を紹介(2023年6-8月分)
1位はNTT、メガバンクは3社すべてがランクイン 2023年6月1日から2023年8月31日の期間に、野村證券に口座を持つ上場企業役員に買い付けられた上位20銘柄をランキング形式で紹介します。 通信セクターから3社がランクインしました。1位の日本電信電話(9432)は、株式分割の発表以降、投資家の関心が増しています。6位の楽天グループ(4755)は、傘下の楽天モバイルの契約数が8月28日付で500万件を突破したことなどが話題となりました。18位のソフトバンクグループ(9984)は、傘下の英半導体設計アームが9月14日に米証券取引所ナスダックに上場し、注目を集めました。 メガバンクは3社すべてがランクインしました。三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)が2位、三井住友フィナンシャルグループ(8316)が5位、みずほフィナンシャルグループ(8411)が19位となっています。日本銀行の金融政策の正常化や、日米の長期金利の上昇が追い風となり、銀行セクターの株価は堅調に推移しています。 五大商社からは、三菱商事(8058)が4位、三井物産(8031)が8位にランクインしています。2023年6月にウォーレン・バフェット氏の投資会社、バークシャー・ハザウェイが5大商社の株を買い増したことが大きな話題となりました。このニュースに触発され、バフェット氏の投資手法を取り入れる投資家が増えた可能性もあります。 (FINTOS!編集部) (注)画像はイメージ。 ご投資にあたっての注意点
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2023/09/21 19:00
【銘柄ランキング】投資家に買われたハイテク銘柄は?トップ10を紹介(2023年6-8月分)
株価が大きく上昇した半導体関連銘柄が上位にランクイン 2023年6月1日から2023年8月31日の期間に、野村證券の全口座で購入された株式のうち、東証33業種の電気機器・精密機器セクターに含まれる上位10銘柄を紹介いたします。 上位10銘柄では、半導体関連が目立っています。1位のルネサスエレクトロニクス(6723)は、半導体の設計や開発、製造、販売を一貫して行う垂直統合型の専業メーカーとして知られています。2位のソシオネクスト(6526)は、富士通とパナソニックそれぞれのロジック半導体事業を分離・統合して事業を開始した製造工場を持たないファブレス半導体メーカーです。5位のアドバンテスト(6857)は、半導体試験装置メーカーで、2022年の推定世界シェアはメモリー向け試験装置で53%程度、SoC(システム・オン・ザ・チップ)向け試験装置で58%程度となっています。10位のレーザーテック(6920)は、半導体製造工程で使用される回路原版(マスク)の検査装置を中心とした製品を取り扱っています。 2023年の半導体関連銘柄は、中期の成長テーマとして生成AIが注目を集め、株価が大幅に上昇しました。例えば、ルネサスエレクトロニクスとアドバンテストは、昨年末から株価が2倍近く上昇しています(9月15日時点)。また、ソシオネクストは2022年10月上場と、上場から比較的日の浅い銘柄ですが、今年6月には一時株価が上場時の7倍強まで上昇しました。レーザーテックについては、株価は昨年末から横ばい圏ですが、2022年4月から2023年8月まで17ヶ月連続で東京証券取引所の売買代金ランキングでトップに立つなど、売買は活況です。 (FINTOS!編集部) (注1)画像はイメージ。(注2)株価データは2023年9月15日時点。 ご投資にあたっての注意点
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2023/09/21 12:00
【#家庭用ゲーム機】AI抽出15銘柄/任天堂、ソニーG、ゲオHD…
東京ゲームショウが21日に開幕 世界最大級のゲームの見本市として知られる「東京ゲームショウ(TGS)2023」が21日、千葉市の幕張メッセで開幕する予定です。今年はコロナ禍による入場制限が解除され、4年ぶりに幕張メッセのホールを全面使用する形での開催となります。出展社数も過去最多を更新する見込みです。このTGSがゲームに対する関心を一段と高めるかどうか、業界内外からの注目が集まっています。仮に今後、家庭用ゲーム機の需要が増加した場合、日本企業にどのような影響を与えるのでしょうか。AI「xenoBrain」は、「家庭用ゲーム機需要増加」が他のシナリオにも波及する可能性を考慮し、影響が及ぶ可能性のある15銘柄を選出しました。 ニューストピック:家庭用ゲーム機需要増加 「xenoBrain」は家庭用ゲーム機メーカーやゲーム販売店、ゲーム機の各種部品メーカーを含む15銘柄をリストアップしました。 ・任天堂・ソニーグループ・ゲオホールディングス・中国塗料・四国化成ホールディングス・ニコン・リョーサン・トリケミカル研究所・イビデン・サンケン電気・TDK・山洋電気・メガチップス・MARUWA・THK ※xenoBrain 業績シナリオの読み方 (注1)本分析結果は、株式会社xenodata lab.が開発・運営する経済予測専門のクラウドサービス『xenoBrain』を通じて情報を抽出したものです。『xenoBrain』は業界専門誌や有力な経済紙、公開されている統計データ、有価証券報告書等の開示資料、及び、xenodata lab.のアナリストリサーチをデータソースとして、独自のアルゴリズムを通じて自動で出力された財務データに関する予測結果であり、株価へのインプリケーションや投資判断、推奨を含むものではございません。(注2)『xenoBrain』とは、ニュース、統計データ、信用調査報告書、開示資料等、様々な経済データを独自のAI(自然言語処理、ディープラーニング等)により解析し、企業の業績、業界の動向、株式相場やコモディティ相場など、様々な経済予測を提供する、企業向け分析プラットフォームです。(注3)時価総額500億円以上の銘柄を表示している。xenoBrainのデータは2023年9月21日時点。(注4)画像はイメージ。(出所)xenoBrainより野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点
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2023/09/21 10:14
【速報・解説】FOMCメンバーが予想する2024年の利下げ幅は0.5%ポイントに縮小
FRBはタカ派的金利据え置きを決定 FRB(米連邦準備理事会)は9月19-20日にFOMC(米連邦公開市場委員会)を開始し、大方の事前予想通り政策金利を5.25-5.50%に据え置くことを決定しました。同時に公表された政策金利見通し分布図(ドットチャート)の中央値を見ると、2023年については19名中12名が0.25%ポイントの利上げ見通しを示し、予想通り年内中の追加利上げの選択肢を残しました。市場にとってややサプライズだったのは2024年末の政策金利見通しが5.125%へ上方修正され、24年中の利下げ幅が0.5%ポイントへ6月の1.0%ポイントから縮小された点です。この結果、2024年の利下げ開始は早くても9月以降になる公算が高まったと言えます。これらの見通し変更は想定の範囲内とは言え、市場にとってややタカ派(インフレ抑制を優先)的な結果脱兎と言えます。FOMCの結果を受けて、米国債市場では短期国債を中心に金利が上昇、米国株式市場ではハイテク関連を中心に主要3指数は揃って下落しました。 2024年の政策金利見通しはややタカ派方向のサプライズだったとは言え、想定の範囲内であったことから、米国債や米国株式市場への影響は早晩後退することが予想されます。一方で、為替市場においては目先、日本の政策当局による対応の有無が焦点となりそうです。昨日の為替相場ではドル円レートが1ドル=148円36銭まで上昇しました。米国の政策金利の高止まりが長期化し、ドル高圧力が残存する可能性が一段と高まる中で、ドル円レートが為替介入の節目と見られる150円目前まで円安ドル高が進展していることから、本邦政策当局の円安への対応の変化の有無が注目されます。 (野村證券投資情報部 尾畑 秀一) ご投資にあたっての注意点
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2023/09/21 09:30
【業界展望】日銀金融政策を気にしながらのJ-REIT市場
オフィス稼働率の底打ちが鮮明に 足元、J-REIT(不動産投資信託)市場の代表指数である東証REIT 指数は1,900ポイント前後で推移している。2023年2月から23年8月末まで振り返ると、東証REIT 指数は日本株市場の代表指数であるTOPIX(東証株価指数)をアンダーパフォームする展開となった。22年12月に実施された日銀金融政策決定会合において、長期金利の変動幅が従来の「±0.25%程度」から「±0.5%程度」に拡大されたことに伴い、東証REIT 指数は一時1,800ポイントを割れた場面もあった。一方、その後同指数は下げ止まっており、これは加重平均配当利回りや株価/修正純資産倍率といった評価指標において投資魅力が高まったことが主因と考えられる。23年7月に実施された日銀金融政策決定会合では、長期金利の変動幅を「±0.5%程度」を目途としながらも、より柔軟に運用する方針が打ち出された。これに伴い、東証REIT 指数は1,900ポイント台から1,850ポイント程度まで調整したものの、その後は1,850ポイント程度を下限に安定的に推移している。 J-REIT の場合、毎月何らかの銘柄が決算発表と今後の業績見通しを開示している。その内容を確認すると、例えばオフィスに関しては、稼働率の底打ちが鮮明となりつつある。コロナ禍以降、J-REIT 各社では、オフィス賃料単価の上昇よりも稼働率の維持・向上を優先させる戦略を取っていたが、足元では同戦略が功を奏しているように見える。今年は、東京23区において大規模なオフィス新規供給が計画されており、その中でも相対的に大規模なオフィス新規供給と見られていた森ビルが開発した2棟の大型ビル等でもテナント内定は一定程度進捗している模様である。23年後半に向けて竣工が予定されるオフィスの内定が順調に進捗すれば、オフィス空室率は当初見込まれていたほどの上昇には至らない可能性もある。一方、新規供給ビルの仕様は高品質であり、そうしたことも内定進捗に貢献しているものと見られる。とはいえ、J-REIT が保有するオフィスの場合、一定の築年数が経過したオフィスも散見されるため、物件競争力の観点では、新規テナント入居までに時間を要す場合もあり留意が必要と言える。 J-REIT 市場は割安とは言いにくい J-REIT が保有する賃貸住宅の大半はシングルタイプと言われる単身者向け住戸である。同タイプの住戸の稼働率はコロナ禍以降に95%を下回る事象が散見されたが、22年中に概ね底打ちし、23年に入ってからは再び96%超まで上昇してきている。入居者が入れ替った際の新規賃料(新入居者の賃料)は既存賃料(前入居者の賃料)との比較で減額されやすかったが、稼働率の底打ちを受けて傾向が変わりつつある。野村では、23年後半には同傾向が解消し、既存賃料比での新規賃料の増額幅が緩やかにプラス転化すると考える。日本全体の景況感は好調一辺倒とは言い難いものの、本年の春闘に続き、来年も一定の賃金上昇(ベア)を表明する企業が確認されれば、とりわけ東京23区に所在する賃貸住宅では、賃料上昇が期待できると見ている。 他方、コロナ影響からの回復期待が内包するホテルについては、ホテルの客室あたり売上単価を意味するRevPAR(宿泊単価×稼働率)水準がコロナ禍前である19年と比較してほぼ同水準又はそれ以上の回復が確認できる。仮に中国人観光客を含むインバウンド需要(訪日外客需要)がさらに拡大すれば、RevPAR 水準が大きく上昇する可能性は十分考えられる。足元のエネルギーコスト上昇に伴う水道光熱費の増加にホテル従業員等の人件費増加が重なることで、J-REIT と賃貸借契約を結んでいるオペレーター各社(ホテル運営者)の損益収支に悪影響を与える可能性もある。この点には留意が必要との見方が存在する一方で、オペレーター各社では想定よりも高いADR(宿泊単価)上昇を実現しているところも出始めており、この点を評価する向きもある。野村では、市場参加者の視点がRevPAR 水準から変動賃料の決定係数の一つであるGOP(営業粗利益)水準に移ると考える。同指標でコロナ禍前までの回復が見通せるようになれば、投資魅力がさらに増すであろう。翻って、足元のJ-REIT市場における加重平均配当利回りは4.1%、同株価/修正純資産倍率は0.9倍(いずれも8月31日終値時点)であり、過去5年の平均3.9%及び1.0倍と比べて割安とは言いにくい。米国をはじめ金融政策に変化が見受けられる環境下、短期的には米利回り曲線の変化に伴う資金フローの変化によって、利回り商品としてのJ-REIT 株価は影響を受ける。但し、植田総裁下での金融政策方針の不透明さが後退してくれば、J-REIT に対する市場の注目は再び高まると考える。 (野村證券エクイティ・リサーチ部 大村 恒平) ※野村週報 2023年9月18日号「産業界」より ※掲載している画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点