特集
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03/19 09:30
【チャート分析】アドバンテ、昨年7月高値を奪回後、一段高(3/19)
このたび、日本株の年初来騰落率上位銘柄をチャート分析しました。 【TOPIX100採用銘柄】年初来騰落率上位ランキング(2023年12月末~2024年2月末) 銘柄。騰落率は、2023年12月末値と2024年2月末値の比較で算出。(出所)東京証券取引所より野村證券投資情報部作成 今回は2月末時点で上昇率第2位のアドバンテスト(6857)を取り上げました。週足チャートを用いて、チャート分析上の注目点を記しています。投資戦略を考える上で、ご参考になれば幸いです。 主要移動平均線は角度のついた上向き 当社は、半導体検査装置の世界的大手メーカーです。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (図1)当社の株価は、2022年10月以降上昇相場が続いています。今年1月に昨年7月高値を奪回した後、一段高となりました。 主要移動平均線は角度のついた上向きとなっており、この先V計算値(7,687.6円)のフシを達成となれば、さらなる上値メドとして2022年10月安値~昨年7月高値にかけての上昇幅を同高値に当てはめたE計算値(9,537.6円)の水準が挙げられます。 押しを入れる場合は、6,000円処で下げ止まるか注目 (図2)ただ、このところの上昇で13週移動平均線からの乖離が進んだこともあり、3月に入り押しを入れる展開となっています(3月11日:+9.6%)。 この先の下値メドとしては、昨年11月以降の上昇幅に対する1/3押し(6,137円)や上向きの13週線(同:6,021円)がある6,000円前後の水準が挙げられます。 (注1) 株価は修正株価でザラ場ベース。直近値は2024年3月11日。 図中の「〇週線」 とは移動平均線を指す。 (注2)株価表記について、2014年7月以降、一部の銘柄の呼値の単価変更により、小数点以下第1位まで表記しているものがある。(注3)日柄は両端を含む。(注4)トレンドラインには主観が含まれていますので、ご留意ください。またご投資に際しては、企業業績や投資尺度などテクニカル以外の要素についてもご確認ください。 (出所)東京証券取引所データより野村證券投資情報部作成 (野村證券投資情報部 丹羽 紘子) この資料は、投資判断の提供を目的としたものではなく、一般的なテクニカル分析の手法について記したものです。テクニカル分析は過去の株価の動きを表現したものであり、将来の動きを保証するものではありません。 また、記載されている内容は、一般的に認識されている見方について記したものですが、チャートの見方には解釈の違いもあります。 ※画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点
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03/18 20:00
【今週の米国株】20日のFOMCは米国株の脅威か好機か(3/18)
先週:インフレ懸念じわり、米金利上昇が株価の重石に 先週の米国株式市場は、米長期金利(10年国債利回り)の上昇が株価の重石となりました。米10年国債利回り8日終値の4.076%に対し、15日終値は4.309%と大幅に上昇しています。12日(火)発表の2月消費者物価指数(CPI)や、14日(木)発表の2月生産者物価指数(PPI)がいずれも市場予想を上回る伸びとなり、市場が織り込む2024年中の利下げ幅が縮小しました。 今週のポイントは2点です。 ポイント1:20日(水)のFOMC結果発表 足元の米国株は市場の金融政策の見通しを背景とした長期金利の動きに反応していると捉えられます。 今後の金融政策を予想するうえでは、19・20日に開催される3月FOMC(米連邦公開市場委員会)が最も重要です。20日(水)14:00(日本時間21日3:00)に結果が公表され、14:30からパウエルFRB(米連邦準備理事会)議長の会見が予定されています。今回のFOMCは、FRBの経済予測や、ドットチャートと呼ばれるFOMC参加者の今後の政策金利見通しが公表される会合です。 2023年12月のFOMCでは以下のドットチャートが示されました。 (注)図中の●はFOMC参加者が予想するその年の年末の政策金利(FF(フェデラル・ファンド)金利翌日物)のレンジの中央値。引き出し線で示されている数値は、参加者の予想中央値。政策金利のレンジ幅は0.25%であるため、例えば5.25%~5.50%のレンジを予想している参加者は中央値が5.375%となる。2023年12月の見通し時点の2023年末は実績。長期は長期先の着地点(Longer run)。見通しは3の倍数月のFOMCの開催後に発表される見通しで、それぞれのFOMCの日程は2023年9月は9月19-20日、2023年12月は12月12-13日。(出所)FRBより野村證券投資情報部作成 上記ドットチャートでは、2024年中に0.75%ポイントの利下げが示唆されています。1回当たりの利下げ幅を0.25%ポイントと仮定した場合、3回の利下げが想定されていることになります。FRBの見通しに対して、市場は概ね2024年中に4回以上の利下げ期待を織り込み続けてきましたが、足元の金利スワップ市場では3回未満とFRB見通しに近い予想となっています。 もっとも、足元の景気・インフレ指標は市場予想を上振れることが多くなっています。FOMC参加者からは景気が堅調である間は利下げを急ぐ必要がないとの声も大きく、2024年末の政策金利見通しは引き上げられる可能性があります。その場合、当初は長期金利上昇・株価下落圧力になると想定されます。ただし、金融引き締め継続の結果、先々ではインフレが前年同月比2%程度へと減速する可能性が高まることから、米国株押し目買いの機会となることも考えられます。 一方で、24年末の政策金利見通しが据え置きとなれば、FOMCが足元の景気・インフレがある程度堅調な中でも6月に利下げを開始することを示唆していることになります。一時的には金利低下・株価上昇材料となりやすいですが、先々でインフレ再燃のリスクが高まりうることには注意が必要です。 野村證券では、FRBの政策金利見通しは上方修正されると予想しています。野村證券では、FRBは2024年は7月と12月の計2回、各0.25%ポイントの利下げを行い、2024年末の政策金利は4.75-5.00%と予想しています(従来は同年6月、9月、12月に利下げを実施、同年末の政策金利は4.50‐4.75%と予想)。 ポイント2:20日(水)のマイクロン・テクノロジー決算発表 米企業の1-3月期決算発表は4月中旬からスタートします。その前哨戦となる2023年12月-2024年2月期決算の動向にも目配りが必要でしょう。 20日(水)には半導体メモリーのマイクロン・テクノロジー(MU)が、21日(木)にはコンサルティング及びシステムインテグレーターのアクセンチュア(ACN)とスポーツ用品のナイキ(NKE)が、2023年12月-2024年2月決算を発表する予定です。 先週決算を発表をした企業では、オラクル(ORCL)はクラウド事業の好調に加えエヌビディアとの提携が好感され株価は上昇、アドビ(ADBE)はChatGPTを手掛けるオープンAIが発表したSora(動画生成AI)との競争激化懸念に加え、決算発表で保守的な見通しを示したことを受け株価は下落しました。市場では、生成AIや半導体への関心が高い状況が続きそうです、今週はまずマイクロン・テクノロジーの決算発表に注目したいと考えます。 マイクロンはAI向けサーバーにも多く使われるDRAMと呼ばれるメモリー半導体を手掛ける大手メーカーです。野村のテクノロジーチームでは、DRAM全般の傾向として、引き続きAI向け需要の好調が継続しており、プロダクトミックスの改善に伴う平均単価上昇効果に加え、汎用DRAMでもHBMへの生産キャパシティの移行を通じた減産効果で、今後も着実に価格上昇が進むと予想しています。野村の予想通り同業界の堅調さが続くのか、マイクロンの決算発表やコメントを通じて確認したいと思います。また、同社とサムスン電子が技術的なリーダーとなっている3D構造の半導体に関するコメントは、アプライド・マテリアルズなど半導体製造装置メーカーの業績にも影響を与えます。設備投資の方向性・金額にも注目が集まります。 その他、アクセンチュアは顧客業界別のIT投資動向、ナイキは中国消費動向を考える上での参考に、それぞれ注目したいと考えます。 (FINTOS!外国株 小野崎通昭) ご投資にあたっての注意点 野村オリジナル記事の配信スケジュール
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03/18 12:00
野村證券の「語り部」に聞く投資の疑問 第1回「日経平均最高値、投資を続けて大丈夫?」
日経平均株価が史上最高値を更新するなど、日本の株式市場は新たな時代に突入したといえそうです。45年前(1979年)に野村證券に入社し、バブル期に日経平均株価が高値を付けた1989年には上場企業の資金調達などを担当。現在は野村ホールディングス ファイナンシャルウェルビーイング室 シニア・コミュニケーションズ・オフィサーとして大学で投資や経済についての講義などを手掛ける池上浩一に、今、投資家が持つべき心構えなどについて聞きました。 日本株、買い続けても大丈夫? 史上最高値は「通過点」 ―日経平均が史上最高値を更新し、一時4万円台に到達しました。それでも日本株を買い続けることはできますか。 2024年2月22日、日経平均株価は1989年末につけた史上最高値を更新し、終値は前日比836円高の39,098円を付けました。そして同じ2月22日の米株式市場でも、ダウ平均株価は続伸し、前日比456.87ドル高の39,069.11ドルで終え、こちらも初めて39,000ドル台に乗せました。 もちろん、日本の市場と海外の市場では取引に使われる通貨は違います。しかし、数字だけを見ると日経平均株価とダウ平均株価が、同じ日に史上最高値を更新して「39,000」台に到達しました。2024年2月22日は、両国の株式市場における歴史的な日といえるかもしれません。その後、3月4日には4万円台に到達し、史上最高値をさらに更新しました。 この事実が物語る通り、今回の日経平均株価の最高値には、米国市場を中心に株式投資が非常に活況な中で到達しました。そう考えると、株価にとっての一つの「通過点」でしかないのではないかと思います。 欧米企業の時価総額合計は大幅増、日本企業は… 1989年末に終値で38,915円を付けた時は、世界の企業の時価総額ランキングで日本の企業が上位の大半を占めるなど、日本の企業に多くの資金が集まり、多くの日本人が、株価が上がり続けると信じて疑わない、いわゆるバブル景気の真っただ中でした。 あれから30年以上が経過しました。欧米など各国の株式市場に上場する企業は、時価総額の合計が数倍から十数倍に増加しています。しかし、上場企業の時価総額の合計こそ約1.6倍に伸びたものの、市場環境はようやく30年前以上の水準に追いついたといえます。 今後の見通しとして、野村證券は2月28日時点で日本株インデックス(指数)の年内レンジ(変動幅)の高値は、日経平均株価で 43,000円、TOPIXでは3,025を予想しています。 東京証券取引所は、かねてから上場企業に対して経営の構造改革や資本効率の改善を求める「PBR改革」を推し進めており、それに呼応する形で上場企業の改革が進んでいるように見えます。改革が進んだ企業には国内外の投資家の資金がさらに集まり、株価の上昇が期待できます。 世界の成長は続く さらに、世界の未来を考えてみます。国連は2022年7月に世界の人口が2022年11月に80億人を突破すると発表しました。さらに、OECD(経済協力開発機構)の調査では、世界の中間所得層の消費額は、2015年の28兆ドルから、2050年になると84兆ドルへと約3倍に増えるとされています。 インドと中国だけで世界の半分を超え、現在の新興国を加えると世界全体の中間所得層の消費額の3分の2を占めるまでになるそうです。 このように、今後数十年間にわたって、現在の新興国を中心に世界の経済が大きく成長すると見込まれています。日本は国としての未来は決して明るいとはいえないものの、世界の成長に伴って、経済や企業の再生、さらなる発展も十分期待できると考えています。 これら理由から、日本株への投資を続けていくことはできると考えます。 今の株価は過熱気味? 世界経済はさらなる発展へ ―日米やほかの先進国ともに株価が上がりすぎ、過熱気味な印象があります。今から投資をするのは遅いのではないでしょうか。 繰り返しになりますが、今後数十年間にわたり、現在の新興国を中心に世界経済が大きな成長局面を迎える中で、日本の経済や企業の再生やさらなる発展に期待しています。 その一方で生成AIなどの技術開発が進んでおり、生成AIに必要な半導体などを製造する米国のテック企業などに投資資金が集まっています。 私は生成AIへの期待は決して過度なものではないと考えていますし、生成AIによって、あらゆる業界や企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)はさらに進むでしょう。生成AIのデータ処理に必要な半導体を開発するエヌビディアや、生成AIを使ったサービスを拡大させるマイクロソフトなどの株価は大きく上昇しています。 これを過熱気味とみるか、通過点と見るかは、投資の時間軸の設定で異なると思います。 「お金に働いてもらう」意識を 短期的な視点で考えると、予想される企業の利益に対して株価が高くなりすぎた場合、一時的に株価の調整が起こることはあり得ます。 しかし、長期的な視点で考えると、私は生成AIをうまく使いこなし、事業を発展させた企業の業績は着実に伸びていくのではないかと期待しています。そして、企業の業績の長期的な向上は、株価にも長期的に反映されるはずです。 生成AIに限らず、あらゆる業界で、経営改革を成功させる企業や、斬新なビジネスを世に送り出すスタートアップは今後も現れ続けるはずです。そういった企業や、配当や自社株買いなどの株主還元を重視している企業などに「分散投資」をすることで、「お金に働いてもらって」効率的に自らの資産を増やすことが大切ではないでしょうか。 ※第2回に続く 【池上 浩一】野村ホールディングス株式会社ファイナンシャル・ウェルビーイング室SCO(シニア・コミュニケーションズ・オフィサー)。1979年野村證券株式会社入社、人事部に配属。英ロンドン大に留学後、海外投資顧問室、第一事業法人部、国際業務部を経て、法人開発部長やIR室長、グループ本部広報部長兼宣伝部長などを歴任。2011年から名古屋大客員教授も務める。2023年4月から現職。社内では、日本版金融ビッグバンの際に講演をしていたことから「ビッグバンおじいさん」と呼ばれて親しまれ、社内サイトでの連載コラムは1000回以上を数える。 ※この記事は、2024年3月時点の情報に基づくものです。※掲載している画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点
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03/18 09:30
【チャート分析】東エレク、2022年高値を奪回後、大幅上昇(3/18)
このたび、日本株の年初来騰落率上位銘柄をチャート分析しました。 【TOPIX100採用銘柄】年初来騰落率上位ランキング(2023年12月末~2024年2月末) (注)対象はTOPIX100採用銘柄。騰落率は、2023年12月末値と2024年2月末値の比較で算出。(出所)東京証券取引所より野村證券投資情報部作成 今回は2月末時点で上昇率第1位の東京エレクトロン(8035)を取り上げました。週足チャートを用いて、チャート分析上の注目点を記しています。投資戦略を考える上で、ご参考になれば幸いです。 中期的な上値メドは48,000円台 当社は、半導体製造装置の世界的大手メーカーです。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (図1)当社の株価は、2022年10月以降上昇相場が続いており、昨年11月に2022年1月高値(23,056.7円)を奪回した後、上昇の動きに弾みがつきました。 主要移動平均線は角度のついた上向きとなっており、中期的な上値メドとしては2020年3月安値~2022年1月高値にかけての上昇率を2022年10月安値に当てはめた48,370円が挙げられます。 本格調整の場合は、30,000円処で下げ止まるか注目 (図2)ただ、このところの上昇で13週移動平均線からの乖離が進んだこともあり、3月に入り押しを入れる展開となっています(3月11日:+20.6%)。 この先株価が本格調整に転じた場合は、上向きの13週線(同:30,800円)や、2022年10月以降の上昇幅に対する1/3押し(30,498円)、今年2月の上昇時に空けたマド埋め水準(30,160円)などのフシがある30,000円前後の水準が下値メドとして挙げられます。 (注1) 株価は修正株価でザラ場ベース。直近値は2024年3月11日。 図中の「〇週線」 とは移動平均線を指す。 (注2)株価表記について、2014年7月以降、一部の銘柄の呼値の単価変更により、小数点以下第1位まで表記しているものがある。(注3)日柄は両端を含む。(注4)トレンドラインには主観が含まれていますので、ご留意ください。またご投資に際しては、企業業績や投資尺度などテクニカル以外の要素についてもご確認ください。 (出所)東京証券取引所データより野村證券投資情報部作成 (野村證券投資情報部 丹羽 紘子) この資料は、投資判断の提供を目的としたものではなく、一般的なテクニカル分析の手法について記したものです。テクニカル分析は過去の株価の動きを表現したものであり、将来の動きを保証するものではありません。 また、記載されている内容は、一般的に認識されている見方について記したものですが、チャートの見方には解釈の違いもあります。 ※画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点
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03/17 12:00
【注目トピック】中国経済はバブル崩壊後の日本と同じ道をたどるのか
中国経済は日本化を回避できるか 近年、中国経済の「日本化」が指摘されています。経済の「日本化」とは、長期に渡る低成長、低インフレ、低金利などを総称して用いられます。中国では不動産不況や、過剰債務、人口減少、米国との対立など1990年代のバブル崩壊後の日本と多くの共通点を見出すことができます。一方、日本のバブル崩壊から教訓を得ている事、共産党一党体制ゆえの迅速な政策遂行など、当時の日本とは異なる点もあります。本稿では中国と日本の類似点や、足元の政策方針を踏まえ、今後の中国経済について考察します。 日中の不動産バブルは類似点が少なくない 日本のバブル期には、東京都区部のマンション価格(75㎡当たり)は、86年の4,185万円(平均年収に対する倍率(以降、年収倍率):6.7倍)から89年には10,785万円(同15.8倍)と、2.58倍に急上昇しました。不動産価格高騰を抑制するために、政府は不動産業向け貸出の総量規制を実施し、公定歩合の引上げに伴う長期金利の上昇も加わり、不動産価格は91年をピークに大幅に下落しました。 他方、中国の四大都市の新築住宅価格は2009年1月から2024年1月にかけて2.58倍に上昇しており、近年は住宅取得が困難になっています(下図)。中国政府は2021年1月、深刻な格差の是正を目指す「共同富裕」の一環として、不動産投機を抑制するため不動産関連融資に総量規制を設けました。その結果、不動産開発会社の資金繰りが急速に悪化し、住宅購入者が代金を前払いしていた集合住宅の建設が中断し、社会問題化しました。不動産開発業者の資金不足や、価格が将来下落することを懸念して、消費者は住宅購入に消極的になっており、足元で住宅販売が急減しています。不動産開発会社の経営不安が緩和し、不動産価格が適正水準に下落するまでは、住宅需要は抑制されると見ています。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 過剰債務の水準は日本のバブル期を上回る BIS(国際決済銀行)によれば、中国の民間非金融部門の与信残高の対GDP比は、日本の1990年前後を上回る水準にあります。中国の国有企業は、銀行融資を受けて設備投資を続け、中国の高成長のけん引役となって来ました。また、大規模な景気対策などを通じて、インフラ、不動産投資等に資金が投入され、景気を下支えしましたが、それが今日の生産設備や債務の過剰をもたらしました。BISは過剰債務に対して抜本的対策が採られなければ金融危機に陥る可能性があると指摘しています。 人口減は住宅需要と潜在成長率の低下要因に 日本では1980年頃に住宅の主要な購入層(25~49歳)の人口がピークアウトし、不動産バブル崩壊とその後の低成長の遠因になりました。中国では、2023年末時点の人口は前年比0.15%減の14億900万人と、2年連続で減少しました。過去の一人っ子政策と急速な都市化に伴う出生率の低下が主因です。教育費や住宅価格が高騰する中、産児制限が緩和された後も中国の合計特殊出生率は低下を続け、2022年末時点で1.09人と、日本の1.26人を下回っています。人口減に伴って、住宅購入需要の減少や、潜在成長率の低下が懸念されています。 24年成長目標は5%前後も、実現は困難 構造的な問題が山積する中国では、抜本的な政策対応が求められています。しかし、向こう1年間の経済や外交の主要政策を審議する全人代(24年3月5日~11日開催、第14期全国人民代表大会第2回会議)では、成長期待の低下や構造問題に対して危機感を示しながらも踏み込んだ具体策は示されませんでした。 全人代の政府活動報告では、2024年の経済目標として実質GDP成長率を5%前後と、2023年と同水準に据え置きました。目標達成に向け、財政政策では、財政赤字目標を対GDP比3.0%と、2023年から据え置きました。新たに発行する超長期特別国債、地方政府特別債、融資平台(地方政府の資金調達を担う投資会社)などを合わせた広義の財政支出は前年比+1.0%程度と予想します。 不動産関連セクターの低迷、消費の停滞、米中対立に伴う貿易への悪影響、地方政府債務に対する規律が依然として厳しい中では、2024年の実質GDP成長率は目標を下回る4.0%前後に留まると予想します。 日本化か成長路線回帰か、岐路に立つ中国 政府活動の重点政策は、産業の現代化、内需拡大、企業の発展促進、外資誘致、発展と安全保障の両立などの順に重きを置いています。産業システムの現代化を筆頭に置いた意図は、先端半導体等の分野で西側諸国による対中包囲網が敷かれる中、経済安全保障の観点から供給網の完結を目指しているものと推察されます。80~90年代の日米貿易摩擦と共通点もありますが、米国に対する強硬な中国政府の姿勢は日本政府と大きく異なります。 中国が日本化を防ぐには、民間活力を活用し、米中関係を改善し、対外開放を進めることが肝要です。また、住宅投資などの固定資本投資への依存度を低下させ、民間消費を成長のドライバーへ引き上げることも重要です。中国政府の目指す国家安全保障と経済発展の両立には政策的な矛盾が生じ、困難が伴うと見られます。中国経済は長期的な停滞に向かうのか、再び成長路線に回帰するのか、岐路を迎えています。 (野村證券投資情報部 坪川 一浩) ※画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点
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03/17 09:00
【基礎から学べる「行動ファイナンス」】 第12回 イメージの力
野村證券金融工学研究センターの大庭昭彦が投資や資産運用の際に人が陥りがちな「バイアス」に関して解説する「基礎から学べる行動ファイナンス」シリーズ。今回は、貯蓄や投資におけるコントロールのポイントについて取り上げます。 金額より「顔」をイメージする 当たり前のこととは言え、「投資をするのは、増やしたお金でやりたいことや買いたいものがあるからだ」と意識しておくことは大切です。 やりたいことや買いたいものをイメージし続けることで、投資を継続しやすくなり、さまざまなバイアスの悪影響を防ぐことができると分かってきたからです。 例えば、毎月の貯蓄を封筒に入れて保管している家庭で、「封筒に子どもの写真をつけたところ貯蓄率が上昇した」「特に貧しい家庭での貯蓄率は倍になった」という米国の謂査結果があります。 子どもの将来の教育資金が目標だという場合、金額よりも子どもの顔をイメージした方が貯蓄しやすい、ということでしょう。 住宅の購入や、旅行などの「ゴール」を意識して資産運用する「ゴールベース運用」の口座管理サービスでは、利用者1人が複数の目標を指定ができます。 「キャンプ用4WD」など投資目標を示す具体的な名前を付け、目標ごとに投資期間と予算を決めておけば、金融機関が継続的に資産状況をモニタリングし、目標の達成度や達成のお祝いなどをメールなどで伝えてくれます。これは、イメージの力の応用したサービスと言えます。 良いイメージに含まれるポイントとは? もちろん、どんなイメージでも行動コントロールに役立つわけというわけではありません。心理学者のダニエル・クロスビーによると、良いイメージ(※1)には次の4つのポイントのいずれか、または複数が含まれるといいます。(※2) ※1 クロスビーが「サリエンス」と呼ぶ性質。※2 2016年「ゴールベース資産管理入門」(野村證券ゴールベース研究会訳、日本経済新聞出版) 1つ目のポイントは、一般的でなく個人的であることです。一般に人が喜ぶといわれていることより、些細なことでも自分がうれしいと思うことの方が特別なイメージとして心に残りやすいということです。これは投資目標がもともと具体的であればたいてい満たされるでしょう。 2つ目のポイントは肯定的であることです。否定的な感情も行動を促しますが、肯定的な感情の方が長期的な行動を促すうえで好ましいといえます。特にそのイメージが「自分のため」よりも「人のため」の時に肯定的になりやすいということも大事なポイントでしょう。 3つ目のポイントは身近であることです。「欲しい車を運転する自分をイメージする」といったような行為が分かりやすい例です。ですが、使う時までの期間が長くなるほど身近に感じにくくなってくるので、次の四つ目のポイントなどを意識する必要があります。 4つ目のポイントは持続的であることです。将来にわたって続くイメージ、サステナビリティ(持続可能性)は、特に長期投資に有用といえます。家族に遺そうと考えている遺産、孫に援助しようと考えている教育費、応援している団体への寄付などのゴール策定はその典型になるでしょう。 良いイメージが「個人的」で「肯定的」かつ、「身近」で「持続的」という四つのポイントを踏まえると、「自分の子どもの写真を貼った封筒によって貯蓄が増えた」という先述の成功例は、決して偶然ではなかったと言えそうです。 (KINZAI Financial Plan 2023年12月号掲載の記事を再編集したものです) 大庭 昭彦 野村證券株式会社金融工学研究センター エグゼクティブディレクター、CMA、証券アナリストジャーナル編集委員、慶應義塾大学客員研究員、投資信託協会研究会客員。東京大学計数工学科にて、脳の数理理論「ニューラルネットワーク」研究の世界的権威である甘利俊一教授に師事し、修士課程では「ネットワーク理論」を研究。大学卒業後、1991年に株式会社野村総合研究所へ入社。米国サンフランシスコの投資工学研究所などを経て、1998年に野村證券株式会社金融経済研究所に転籍、現在に至るまで、主にファイナンスに関わる著作を継続して執筆している。2000年、証券アナリストジャーナル賞受賞。 本稿は、野村證券株式会社社員の研究結果をまとめたものであり、投資勧誘を目的として作成したものではございません。2023年12月掲載時点での情報に基づいております。 ご投資にあたっての注意点
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03/16 12:00
【オピニオン】米利下げと金利低下のタイミングが後ズレするリスク
パウエルFRB(米連邦準備理事会)議長は24年3月6~7日に米上下院での半期の議会証言を行いました。同議長は「今年のどこかで引き締め的な政策を巻き戻すことが妥当になる」と述べた一方で、「インフレが2%へと持続的に向かっているとの確信がより高まるまで利下げが妥当とは予想されない」と言及し、目先での利下げに慎重な姿勢を示しました。この表現は2024年1月のFOMC(米連邦公開市場委員会)後の記者会見で表明した認識と概ね同様であり、特に目新しい材料はありませんでした。 その後、3月8日に発表された24年2月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数は前月比+27.5万人と市場予想の同+20.0万人を上回り、引き続き雇用者数は堅調に拡大、との結果でした(なお、23年12-24年1月分が合計で17万人下方修正されました)。6ヶ月移動平均で均した場合、同+23.1万人となっており、一部の地区連銀総裁が指摘している「労働市場の需給均衡の目安は前月比+10万人程度」を依然として大幅に上回っています。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 一方、注目度の高い時間当たり賃金は前年比+4.3%と、市場予想、及び前月の同+4.4%を僅かながらも下回りました。時間当たり賃金は減速傾向が続いていますが、やや下げ止まりの兆しも見えます(下図)。振り返って見ると、FRBは2022年3月以降、2023年7月まで急ピッチで5.25%ポイントもの大幅な利上げを実施しました。勿論、中小地銀の破綻、住宅市場の落ち込み、商業用不動産価格の下落、消費者・住宅ローンの延滞率の上昇、など利上げ効果は明らかです。しかし、今のところ米国経済はリセッション(実質GDPが前期比で2四半期連続でマイナス)を回避し、信用創造機能にも大きな支障は見られません。アトランタ連銀が「GDP NOW」において米国の実質GDPの推計値を発表していますが、24年1-3月期は前期比年率+2.5%と堅調な伸びを推計しています(3月7日現在)。 今後、本格的な景気減速、あるいはリセッションを迎える可能性もあります。これまでの消費拡大の大きな源泉であった、コロナ禍対応の手厚い失業保険給付金により大幅に拡大した貯蓄は取り崩しが進んでいます。一方で、インフレ率が減速しているため、実質賃金の伸びはプラスへ転じています。 消費が持ちこたえれば、景気のマドルスルー(不明瞭な状態でも何とか切り抜けてゆく、との意味)シナリオの可能性が高まるでしょう。ただし、換言すれば、それだけインフレ減速に更に時間がかかり、FRBの利下げが後ズレする公算が大きくなります。24年11月5日実施の米大統領選挙は、バイデン大統領(民主党)対トランプ前大統領(共和党)となる公算が大きくなりつつあります。仮に、トランプ前大統領が当選した場合、予想される政策面において、対中規制強化、関税引き上げ、所得税減税、移民規制強化などは、インフレを押し上げるリスクがあります。いずれにせよ、FRBの利下げ、米金利低下のタイミングが後ズレするリスクは十分に視野に入れるべきでしょう。 ※画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点
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03/16 09:00
【マーケット解説動画】日経平均調整、この先は(3月15日引け後収録)
テクニカル展望(3月15日引け後収録) 今週の「テクニカル展望」動画では、弊社の岩本ストラテジストが 、チャート分析の観点から、今後の展望や注目点について15分ほどで解説しています。今後の投資の参考にご覧ください。 今週の収録内容 「日経平均調整、この先は」 1.1週間の振り返り2.日経平均株価:日足・月足3.ドル円相場:日足・週足・月足4.来週の注目イベント (解説)野村證券投資情報部ストラテジスト 岩本 竜太郎 ※動画の終盤に言及している、「アンケート」については、FINTOS!ではご回答いただけません。ご了承ください。 ご投資にあたっての注意点
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03/15 19:00
【最新ランキング】日本株、今週の値上がり/値下がり銘柄は?(3月第3週)
日本主要銘柄・株価騰落率ランキング(上位) 2024年3月第3週(2024年3月8日~3月14日) 2024年3月月間(2024年2月29日~3月14日) 2024年年間(2023年12月29日~2024年3月14日) (注)対象はTOPIX500、直近値は2024年3月14日。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 日本主要銘柄・株価騰落率ランキング(下位) 2024年3月第3週(2024年3月8日~3月14日) 2024年3月月間(2024年2月29日~3月14日) 2024年年間(2023年12月29日~2024年3月14日) (注)対象はTOPIX500、直近値は2024年3月14日。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 <参考>今週の日本株式市場パフォーマンス 主要指数 TOPIX: 東証33業種 (注)業種分類は東証33業種ベース。直近値は2024年3月15日前引け時点。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点