FINTOS!編集部記事
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11/29 15:30
【新産業紹介】地域移行を目指す学校の部活動
学校の部活動、特に運動部の在り方の見直しに向けて、政府は学校と地域団体や民間企業の連携を促進している。 文部科学省のガイドラインでは、「学校と地域が協働・融合した形での環境整備」などが示されている。部活動の運営を民間事業者などに委託したり、地域のクラブチームと合同で活動したりすることで、教員の負担軽減を図ることを狙う。 民間事業者や地域のクラブチームに部活動の運営を担ってもらうには、彼らに経済的なインセンティブを感じてもらうことが必要である。経済産業省では「未来のブカツ」と題した実証実験を展開し、細かな運用方法や事業の経済性に踏み込んだ検証を進めている。例えばスポーツジム事業者が高校の空き教室にトレーニング機器を設置した事例がある。生徒にトレーニングメニューを提供すると同時に、地域住民にも機器を有料で開放することで収益性の確保を模索した。 学習塾とクラブチームの連携も検証されている。部活動への指導者派遣と部活後の教室での学習指導を有料で提供するモデルである。学校の教室を学習塾に無償で貸し出すことで、部活動の指導料を捻出する仕組みである。生徒にとっては通いやすく、学習塾としても集客しやすい。 これらの事例以外にも、運営資金の確保に向けて、企業版ふるさと納税やクラウドファンディングを活用する案などが提言されている。 部活動の地域移行を進めていくためには、大会への参加資格を民間クラブにも開放することや、条例などによって定められている学校開放の登録団体要件である「営利を目的としない団体」という表現を見直すことなども求められる。他にも、コーチの育成や確保なども課題として挙げられる。米国では部活動の指導に、指導資格をもつ外部コーチを登用することが主流である。コーチングや応急処置に関する一定のスキルを担保する仕組みが、国内でも求められるようになる可能性があろう。 欧州では地域社会や経済のエンジンと呼びうる「地域スポーツクラブ」が存在している。スポーツを介して学校と民間企業が繋がることで、生徒の部活動や社会人の生涯スポーツを包含した独自のサービス業の創出が期待できよう。 (野村證券フロンティア・リサーチ部 小川 裕一郎) ※野村週報 2023年11月27日号「新産業の潮流」より ※掲載している画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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11/29 12:00
【#自動運転】AI抽出15銘柄/日本セラミック、東京応化工業、メガチップス…
「レベル4」サービスの実用化に向けて政府が会合 11月17日、政府は自動運転サービスの普及を目指し、省庁間の横断的な会合を初めて開催しました。一定の条件下で運転手の同乗が不要な「レベル4」の運行には、法律に基づき、自治体や各省庁からの許認可が必要です。同会合では、手続きを効率的に進めるための仕組みを検討しており、自動運転普及の後押しとなることが期待されます。仮に今後、自動運転投資が拡大した場合、日本企業にどのような影響を与えるのでしょうか。AI「xenoBrain」は、「自動運転投資拡大」が他のシナリオにも波及する可能性を考慮し、影響が及ぶ可能性のある15銘柄を選出しました。 ニューストピック:自動運転投資拡大 「xenoBrain」は自動運転車用の部品などを手掛けている15銘柄をリストアップしました。 ・日本セラミック・東京応化工業・メガチップス・理研計器・タムロン・アルプスアルパイン・平田機工・日本酸素ホールディングス・ダイヘン・サンケン電気・メイテックグループホールディングス・MS&ADインシュアランスグループホールディングス・ソニーグループ・SOMPOホールディングス・三益半導体工業 ※xenoBrain 業績シナリオの読み方 (注1)本分析結果は、株式会社xenodata lab.が開発・運営する経済予測専門のクラウドサービス『xenoBrain』を通じて情報を抽出したものです。『xenoBrain』は業界専門誌や有力な経済紙、公開されている統計データ、有価証券報告書等の開示資料、及び、xenodata lab.のアナリストリサーチをデータソースとして、独自のアルゴリズムを通じて自動で出力された財務データに関する予測結果であり、株価へのインプリケーションや投資判断、推奨を含むものではございません。(注2)『xenoBrain』とは、ニュース、統計データ、信用調査報告書、開示資料等、様々な経済データを独自のAI(自然言語処理、ディープラーニング等)により解析し、企業の業績、業界の動向、株式相場やコモディティ相場など、様々な経済予測を提供する、企業向け分析プラットフォームです。(注3)時価総額500億円以上の銘柄を表示しています。xenoBrainのデータは2023年11月29日時点。(注4)画像はイメージ。(出所)xenoBrainより野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点
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11/29 09:30
【野村の投資判断】12月中旬まで「モメンタム」ファクターは調整か
モメンタムは追加で2~3%程度の調整が生じる可能性 日本株の株価反発を主導してきた海外の先物投資家については、足元で減速感が強まっているものの、目先は再び株高に作用する可能性が高いでしょう。「順張り」のCTA(商品投資顧問)は、ロングポジション(買い持ち)の拡大傾向を維持しています。株価が34,000円を上抜けると、買い越しペースが徐々に加速し始めると見込まれます。 経済情勢などに基づいて売買するマクロ系ヘッジファンドも、ロングポジションの拡大が期待されます。米金利上昇への懸念が高止まりする中、米国株よりも日本株を選好する姿勢は維持される可能性が大きいと見ます。 ヘッジファンド動向については、「(買い持ちと売り持ちを同額にする)マーケットニュートラル」でのリデンプション(償還)にも注目します。今年の相対パフォーマンスの低迷を踏まえると、第4四半期から資金流出が見込まれます。ポジション(持ち高)の解消に伴い、ファクター(要因)別では「モメンタム(相場の勢い)」が調整しやすい状況になるでしょう。 11月に入ってからのモメンタムファクターは既に約4%調整していますが、過去の傾向に従えば、リデンプション対応が一段落すると見られる12月中旬までに、追加で2~3%程度の調整が生じる可能性があるでしょう。 (野村證券投資情報部 デジタル・コンテンツ課) 要約編集元アナリストレポート「野村クオンツ・インサイト – マクロヘッジファンドと「年末ラリー」(2023年11月27日配信)」(プレミアムプラン限定) (注)画像はイメージ。 要約編集元アナリストレポートについて ご投資にあたっての注意点
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11/29 08:33
【モーニングFINTOS!】米国株買い戻しの動きに一巡感漂う(11/29)
海外市場の振り返り 11月28日の米国株式市場では主要3指数が揃って続伸しましたが、3指数ともに前日終値を挟んで狭いレンジ内での動きとなりました。米10年国債利回りが4.3%台へ低下した事を考えると、動意の薄い商状だったと言えます。S&P500は11月に8%以上上昇し、月間として記録開始以降で最大級の上昇となりました。この背景には先物での米国株ショート(売り)ポジションの買戻しの影響が大きかったと見られますが、この動きが一巡しつつあるとの見方が高まっています。 相場の注目点 米国株急騰の背景には、米長期金利の低下に加えて、2023年7-9月期決算を受けて、22年10-12月期から3四半期連続で続いてきた前年比での減益を脱し、23年7-9月期に増益に転じたことが好感された面もあると見受けられます(LSEG(旧リフィニティブ)集計)。ただし、増益への寄与の大部分が大手7社によるものであり、業績回復のすそ野が広がるにはもう暫く時間がかかる見通しです。米国株式市場ではインフレ鎮静化による金利低下と景気ソフトランディング(軟着陸)のいいとこ取りという、非常に難しい経路を織り込んでいる側面があることから、当面の間は、インフレ指標と景気指標、両睨みの展開が続くことが予想されます。 本日のイベント 米国では12月FOMCに向けた地区連銀経済報告(ベージュブック)が発表されます。 (投資情報部 尾畑 秀一) (注)データは日本時間2023年11月29日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 ※画像はイメージです。 FINTOS!編集部オリジナル記事 【週間ランキング】最も閲覧数が多かった個別銘柄は?トップ10を紹介(11/28) 【#サイバーセキュリティー】AI抽出15銘柄/NRI、マクニカ、IIJ… ご投資にあたっての注意点
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11/28 19:00
【週間ランキング】最も閲覧数が多かった個別銘柄は?トップ10を紹介(11/28)
高値更新銘柄が複数ランクイン 足もとの日経平均株価は、7月3日に記録した年初来高値(終値ベース、33,753円)を一時上回るなど、高値圏で推移しています。今週のランキングには、年初来高値を更新した銘柄が複数含まれています。3位にランクインした日本たばこ産業(2914)は11月27日に年初来高値を更新しました。 9位の東京海上ホールディングス(8766)は、11月20日に株式分割を考慮したベースで上場来高値を更新しました。同社は11月17日に決算を発表し、通期の修正純利益予想をわずかに下方修正しています。また、合わせて上限700億円の自社株買いを公表しています。 10位のレゾナック・ホールディングス(旧昭和電工、4004)も11月27日に年初来高値を更新しました。同社は11月21日に、東京都港区芝大門にある旧昭和電工本社の土地や建物の売却を発表しました。この取引による譲渡益約183億円は、2024年12月期に特別利益として計上する予定です。 (野村證券投資情報部 デジタル・コンテンツ課) (注1)画像はイメージ。(注2)各種データは2023年11月28日時点。 ご投資にあたっての注意点
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11/28 15:54
【イブニングFINTOS!】円高進行が嫌気され、日経平均株価39円安(11/28)
本日の株式市場 前日の米国株式市場は主要3指数揃って小幅に下落しました。一方、債券市場では、10月の新築住宅販売件数が低調だったことから、長期金利は低下しました。米国市場で株安と長期金利低下という強弱材料が拮抗する中で、本日の日経平均株価は、前日比72円高の33,520円と小幅に反発して取引を開始しました。しかし、新規の材料は見当たらず、日経平均株価は寄り付き直後には下げに転じました。また、1米ドル=147円台となる円高米ドル安が重石となり日経平均株価は下げ幅を広げ、一時前日比149円安の33,298円となる場面もありました。しかし、好調な企業業績を背景とした先高感に支えられ、その後は33,300円台付近で一進一退を続けました。大引けにかけては、下げ幅を縮め再度上昇に転じる場面もありましたが、結局前日比39円安の33,408円と続落して取引を終えました。 個別銘柄では、指数計算上日経平均株価に最も大きな影響を及ぼすファーストリテイリングが前日比+1.56%上昇し、1銘柄で57円超日経平均株価を押し上げました。 本日発表予定の海外経済指標等 【米国】・11月消費者信頼感指数(コンファレンスボード) (総合)前月:102.6 予想:101.0 (注)経済指標などの市場予想はブルームバーグによる市場コンセンサス予想。時間は日本時間。(出所)東京証券取引所等より野村證券投資情報部作成 ※掲載している画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点
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11/28 15:30
【資産運用の視点】アクティブETFの発展
特定の指標に連動しないアクティブ運用のETF(以下、アクティブ ETF)の取り扱いが9月に東京証券取引所で始まった。ETFではない投資信託と比較して、ETF は「市場での日中売買が可能(成行・指値注文も可能)」、「(一般的に)信託報酬や購入時手数料が安い」、「保有銘柄が日次開示される」というメリットがある。 アクティブETFの取り扱いが先行している米国市場では、2023年9月末でアクティブETF の総資産額は4,347億ドルでETF 全体の6.5%に過ぎない。しかし、5年前と比較して約3.36倍に拡大しており、成長率ではパッシブETF(同期間で約1.85倍)を上回っている。今後日本においても、アクティブETFは拡大していくものと思われる。以下、アクティブETFにまつわる話題を2つ取り上げる。 ① アクティブETF への参入障壁ETF の「基準価額」をリアルタイムで正確に算出するために、「保有銘柄情報の日次開示」が課されている。しかし、ファンドマネージャー独自の銘柄選択や運用戦略が模倣される懸念が生じ、運用会社の参入障壁となっている。この問題に対応するため、非・半透明型ETFという手法が米国市場に登場した。マーケット・メイクを行う特定機関にだけ保有明細の全部もしくは一部を開示することで、リアルタイムでの売買を可能にしている。しかし、上場する際のハードルが高く(非開示や一部開示に関して規制当局の承認が必要)、資産規模はまだ小さい。このように、アクティブETFはまだ黎明期とも言える状況にあるが、今後、障壁の解決が進み、市場規模が更に拡大する余地が残されているとも言える。 ② テーマ型アクティブETFテクノロジーやエネルギーなど特定のテーマに関連する企業に投資するETFが近年注目を浴びている。投資家が特定のテーマに興味や関心を持っている場合、投資意図が理解しやすいことが背景と思われる。注意すべき点として、「特定のテーマに投資が集中してしまうと、価格変動が大きくなること」、「テーマの注目度が低くなった場合、取引量が低下し、流動性が低くなること」等があり、投資する際はテーマの持続性や成長性にも注目し、リスクの分散や流動性に気を付ける必要がある。 (野村ファンド・リサーチ・アンド・テクノロジー 樋渡 靖一郎) ※野村週報 2023年11月27日号「資産運用」より ※掲載している画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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11/28 12:00
【#サイバーセキュリティー】AI抽出15銘柄/NRI、マクニカ、IIJ…
LINEヤフーが個人情報流出の可能性を発表 LINEヤフー(4689)は、LINEのユーザー情報が不正アクセスによって流出した可能性があることを発表しました。大株主であり、一部システムを共有している韓国のネット大手ネイバーを通じてサイバー攻撃を受けたとされています。サイバー攻撃は国内外で常態化しており、手口もますます巧妙になっています。このため、サイバーセキュリティーの重要性が一層高まっています。仮に今後、サイバーセキュリティーの需要が増加した場合、日本企業にどのような影響を与えるのでしょうか。AI「xenoBrain」は、「サイバーセキュリティー需要増加」が他のシナリオにも波及する可能性を考慮し、影響が及ぶ可能性のある15銘柄を選出しました。 ニューストピック:サイバーセキュリティー需要増加 「xenoBrain」はセキュリティー関連製品の開発・販売を手掛けている企業などを中心に15銘柄をリストアップしました。 ・野村総合研究所・マクニカホールディングス・インターネットイニシアティブ・トレンドマイクロ・理研計器・SOMPOホールディングス・メイテックグループホールディングス・日本電気・富士通・日鉄ソリューションズ・ウイングアーク1st・アイル・オービックビジネスコンサルタント・オービック・内田洋行 ※xenoBrain 業績シナリオの読み方 (注1)本分析結果は、株式会社xenodata lab.が開発・運営する経済予測専門のクラウドサービス『xenoBrain』を通じて情報を抽出したものです。『xenoBrain』は業界専門誌や有力な経済紙、公開されている統計データ、有価証券報告書等の開示資料、及び、xenodata lab.のアナリストリサーチをデータソースとして、独自のアルゴリズムを通じて自動で出力された財務データに関する予測結果であり、株価へのインプリケーションや投資判断、推奨を含むものではございません。(注2)『xenoBrain』とは、ニュース、統計データ、信用調査報告書、開示資料等、様々な経済データを独自のAI(自然言語処理、ディープラーニング等)により解析し、企業の業績、業界の動向、株式相場やコモディティ相場など、様々な経済予測を提供する、企業向け分析プラットフォームです。(注3)時価総額500億円以上の銘柄を表示している。xenoBrainのデータは2023年11月28日時点。(注4)画像はイメージ。(出所)xenoBrainより野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点
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11/28 09:30
【市場展望】2023~25年度の日本経済見通し
潜在成長率を上回る景気回復へ 7~9月期GDP(国内総生産)統計(1次速報)の発表を踏まえ、野村では日本経済の見通しを改定した。改定に当たり、ドル円レートは23年度末140円、24年度末130円、25年度末130円、原油価格(北海ブレント)は23年度末85.2ドル(バレル当たり、以下同)、24年度末79.3ドル、25年度末76.8ドルとの前提を置いた。 改定後の見通しにおける実質GDP 成長率は、23年度が前年度比+1.4%(23年9月8日時点の前回見通し:同+1.8%)、24年度は同+0.5%(同+0.4%)、25年度は同+1.0%(同+1.0%)である。 野村では、23年度に入って低迷していた民間内需が今後、持ち直してくると見込んでいる。①実質雇用者報酬の緩やかな増加、②岸田政権による給付金、所得税・住民税の定額減税、③人手不足を背景とする省力化投資やデジタル化投資の促進、④米国経済の早期の後退リスクの低下などを材料として、23年10~12月期以降、振れを伴いながらも、潜在成長率(年率0.5%程度)を上回る景気回復が実現しよう。 コアCPI(生鮮食品を除く消費者物価指数)に基づくインフレ率は、23年度が前年度比+2.8%(23年9月8日時点の前回見通し:同+2.8%)、24年度は同+1.7%(同+1.7%)、25年度は同+1.6%(同+1.2%)と予想する。 食料価格によるCPI インフレ率の押し上げ効果は、24年半ばにはほぼ消滅しよう。 一方、潜在成長率を超える景気回復が23年10~12月期以降に見込まれることから、需給ギャップ(実際のGDP と潜在GDPの乖離)は需要超過(実際のGDP が潜在GDP を上回る)の度合いを強めそうだ。加えて、今回の需給ギャップは人手不足の色合いが濃く、今後の賃上げ圧力を強める要因と位置付けられる。野村では、24年、25年の春闘においていずれも3.9%(定期昇給を含む)と、23年(3.6%)を上回る賃上げ率を見込む。こうした環境において、より基調的な物価変動を反映するコアコアCPI(酒類以外の食料・エネルギーを除く)で評価したインフレ率は24年半ば以降、前年比+1%台後半で安定するとみる。コアCPI インフレ率が下がる中でも、インフレの粘着性は徐々に高まるだろう。 金融政策シナリオを変更 今回の経済見通しの改定を経て、野村では金融政策のシナリオを変更した。これまでのメイン・シナリオでは、YCC(長短金利操作)の撤廃を24年10~12月期、マイナス付利の撤廃を25年以降としていたが、新たなメインシナリオ(確率60%)では、YCCの撤廃を24年4~6月期(4月を有力視)、マイナス付利の撤廃を24年7~9月期以降(同年7~9月期を有力視)に、それぞれ前倒しする。また、日銀のフォワード・ガイダンスについては、「必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる」という文言がYCC 撤廃と同時に削除されると見込む。 一方、インフレ率が持続的・安定的に2%を超えるような経済環境(需要や賃金の伸び)の定着を想定しがたい中、野村では引き続きプラス金利政策や量的引き締めは想定しない。オーバーシュート型コミットメント(コアCPI の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続するという日銀のコミットメント)も据え置かれると、野村では予想する。 上述したメイン・シナリオに対して、2つのリスク・シナリオを想定している。リスク・シナリオA(確率30%)では、①賃金・物価の好循環が想定よりも早く実現する、あるいは、②賃金ではなく、為替や金利など市場環境に配慮する形で、半ばなし崩し的に、日銀が2%インフレの持続性・安定性を確認する、などを前提として、24年3月までのYCC撤廃、24年6月までのマイナス付利撤廃を見込む。 リスク・シナリオB(確率10%)では、景気の鈍化、物価・賃金上昇の持続性喪失を前提に、YCCの撤廃は25年以降、マイナス付利の撤廃は26年以降にずれ込む。 GDPデフレーターの上昇に見られるように、足元にかけてインフレの「国産化」がじりじりと進んでいる。次に問われるのは、日銀もその重要性を強調する「賃金・物価の好循環」である。 2%インフレの実現を目指している日銀にとって、なぜ単なる物価上昇ではなく、賃金・物価の好循環が求められるのだろうか。それは、日銀の目指すところが、ただインフレを醸成することではなく、インフレの「原因」を日本経済に根付かせることにあるからだ。 賃金・物価の好循環は、インフレの原因が日本経済に根付いたかを評価する材料として、今後も金融政策運営の適否を判断する際の軸を提供する。 (野村證券経済調査部 森田 京平) ※野村週報 2023年11月27日号「焦点」より ※掲載している画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点