FINTOS!編集部記事
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11/26 09:00
【注目テーマ】大阪IRがもたらす事業機会に注目
2023年4月、政府は30年秋ごろの開業を目指す大阪府と大阪市のIR(統合型リゾート)整備計画を全国で初めて認定した。 大阪IR では、大阪湾の人工島である夢洲にカジノやホテル、国際会議場などを併設した一大エンターテインメント施設が誕生する見込みである。大阪府と大阪市は、IR が開業した後も、経済波及効果を年間約1.14兆円、雇用創出効果を年間約9.3万人と見込んでおり、関西圏を中心に地域経済の活性化につながると期待される。 海外のIR では、MICE に関連する施設が併設される事例が多く見られる。MICE とは、ミーティング(Meeting:企業等の会議)、インセンティブ(Incentive travel:報奨・研修旅行)、コンベンション(Convention:国際会議)、エキシビション(Exhibition またはEvent:展示会・見本市等)の頭文字を取った造語で、多くの集客交流が見込まれる大規模なビジネスイベント等の総称だ。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 世界を代表するMICE 都市が米国ラスベガスだ。ラスベガスは、大型ショッピングモールやファミリー向けのエンターテインメントショー、会議や展示会などが開催できるコンベンションセンターなど、カジノ以外の魅力をいかに高めるかに軸足を置いて街づくりを行い、その結果、世界最大級のMICE 都市となった。 日本型IR では、カジノの面積はIR 施設の延べ床面積の3%までとする方針で、観光施設等との一体開設が条件となる。その為、周辺都市のインフラ整備や広域の観光振興なども視野に入れた都市開発が必要となる。街全体の施設造りをマネジメントする不動産ディベロッパーや、建設会社、インフラを保有する鉄道会社などにとって、ビジネスチャンスが広がると期待される。 (野村證券投資情報部 寺田 絢子) ※野村週報 2023年11月20日号「投資の参考」より ※掲載している画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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11/25 19:00
【注目トピック】本格化し始めた会社側の見通し上方修正
日本:2023年7-9月期決算レビュー 2023年7-9月期決算出揃う 2023年7-9月期決算が出揃いました。ラッセル野村Large Cap(除く金融)では、前年同期比2.2%増収、同19.3%営業増益となった模様です(11/14時点,下図)。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 今回の決算シーズンでは、事前の市場コンセンサスに対して61.7%の企業が上振れて着地しました。平準ベースの50%台半ばに比べて高い水準です。業種レベルでは、①中国経済減速の影響をうけた機械や家庭用品、②人件費などのコスト増の転嫁が遅れたサービスやソフトウエアなど少数の業種を除く、幅広い業種で市場コンセンサスを上回る実績となった企業の比率が高くなっています。 また、今回の決算では増収率が比較的低めにとどまった一方で、増益率が高めとなったことも特徴です。 交易条件の改善が顕在化 2023年7-9月期の業績を取り巻く環境を整理しておくと、米ドル円レートが前年同期に対して6円/米ドルの円安、鉱工業生産は前年同期比-3.5%でした。 介入が警戒されるほど円安が進んだ印象ですが、前年同期も円安が進行していたため、2%強の利益押上げ効果にとどまった模様です。また、生産は自動車などで挽回生産が本格化しましたが、中国経済の不振から電子部品や電子材料、資本財が苦戦し、利益を押し下げる要因となったようです。 その結果、7-9月期決算では通常であれば業績に対する影響度の大きい為替要因および生産要因の増益寄与はほとんどなく、『その他要因』の増益寄与が非常に大きくなりました。 『その他要因』が何によるのかは局面により様々ですが、今回は交易条件の改善によるものとみられます。昨年来企業は、原材料費や人件費の増加分の価格転嫁に取り組んできましたが、2023年度に入りその効果が顕在化しています。7-9月期の営業利益率は8.5%と過去最高を記録しています。 順調に進む会社側見通しの変更 2023年7-9月期の決算発表時には、実績値だけでなく会社側の通期業績見通しの動向にも注目が集まりました。 例年、年度がスタートして日の浅い4-6月期の決算発表時(7~8月)には、会社側の通期業績見通しの修正件数は低調です。年度の1/4しか経過していない時点では、将来の不確実性が高く、期初見通しを修正する企業が少数にとどまるのはやむを得ないと思われます。 これが年度の半分を経過した7-9月期決算発表時には一挙に見通しを修正する企業が増加します。今回も、ほぼ例年通り57.3%の企業が見通しを修正しました。なお、このうち3社に2社が上方修正となっており、企業の景況感が良好なことも確認されました。 多くの企業が見通しを上方修正したことから、ラッセル野村Large Cap(除く金融)の会社見通しベースでの2023年度経常増益率は、決算発表シーズン前の9月月初時点で前年同期比-1.6%でしたが、現在では同+4.9%と増益見通しに転換しています。 会社側見通しの再々上方修正も 通期業績見通しに対する、第1-2四半期累計利益の比率、いわゆる進捗率は54.2%となっており、ほぼ過去10年平均と同水準です。 進捗率は、四半期利益が公表された時点の当時予想利益に対するもの(下図だと灰色の線)と、第4四半期が終了した時点で事後的に計算可能となる実績利益に対するもの(赤色の線)の2種類が存在します。 過去10年では、人民元ショック(2015年度)、コロナ禍(2019年度)といった不測の事態が起きた年度を除けば、おおむね実績利益に対する進捗率の方が低くなっています。これは、期中で通期利益見通しを会社側が引き上げたことを意味します。 今回も、期が進行するのにあわせ、追加的な会社側の見通し上方修正が期待できます。 (野村證券投資情報部 伊藤 高志) ご投資にあたっての注意点
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11/25 13:00
【オピニオン】日銀金融政策の修正を予想する理由
日本銀行は2023年10月の政策決定会合で、YCC(長短金利操作)運用の更なる柔軟化を決定しました。具体的には、10年国債利回りの誘導目標はゼロ%程度と据え置いたうえで、許容変動レンジの事実上上限であった1.0%を「目途」へと変更し、1.0%を上回る金利上昇を許容する姿勢を示しました。 ただし、声明文ではフォワードガイダンス(政策運営指針)を据え置き、「粘り強く金融緩和策を続けていく」方針を改めて示しました。また、同時に公表したコアインフレ率(生鮮食品を除く消費者物価)の前年比見通しを上方修正し、2023年度、24年度はともに+2.8%としたものの、25年度は+1.7%とし、2.0%の物価安定目標を「持続的・安定的」に実現する見通しは示しませんでした。 野村證券では11月15日、2023年7-9月期の実質GDP(1次速報)を受けて経済見通しを改定しました。野村のコアインフレ率の見通しは、2023年度+2.8%、24年度+1.7%、25年度+1.6%と、日銀同様に物価安定目標の持続的な実現は予想していません。 一方で、金融政策に関しては、従来の見通しと比べて金融政策の変更時期を前倒しし、YCCの撤廃は2024年4-6月期(改定前は同年10-12月期)、マイナス付利の撤廃を同年7-9月期以降(同2025年以降)としました。 物価安定目標の持続的・安定的達成を予想していないにもかかわらず、金融政策の修正時期を前倒しした背景には、企業の賃金設定行動が変化した可能性が高いとみている点があります。 2023年の春闘では前年比+3.60%と、約30年ぶりの高い賃上げが実現しました。これはインフレ率の上昇に経営側が配慮した一時的な動きとの評価もあります。一方で、経団連(日本経済団体連合会)の十倉会長は「今年以上の熱量をもって取り組んでいく」と発言するなど、経営側も2024年の賃上げに対して積極的なスタンスを示しています。また、人手不足を背景に、個別企業では既に2023年を上回る賃上げを表明する動きが相次いで報じられています。 このような変化を踏まえて、野村證券では企業の賃金設定行動がデフレ期(推計上は1995年以降と想定)からインフレ期(1994年以前)へ変化した可能性があると想定し、2024年、2025年の賃上げ率の見通しを上方修正しました。 2023年に続き2024年以降も高い賃上げが実現する可能性が視野に入れば、日銀が賃金上昇を伴った物価安定目標の達成に自信を深め、政策修正を実施する可能性が高いと予想しています。ただし、2.0%目標の達成を予想していないことから、マイナス付利の撤廃後の利上げは予想していません。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 ご投資にあたっての注意点
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11/25 08:00
【マーケット解説動画】日経平均、20日に年初来高値更新(11月24日引け後収録)
テクニカル展望(11月24日引け後収録) 今週の「テクニカル展望」動画では、弊社の岩本ストラテジストが 、チャート分析の観点から、今後の展望や注目点について15分ほどで解説しています。今後の投資の参考にご覧ください。 今週の収録内容 「日経平均、20日に年初来高値更新」 1.1週間の振り返り2.日経平均株価:日足・月足3.ル円相場:日足4.来週の注目イベント (解説)野村證券投資情報部ストラテジスト 岩本 竜太郎 ※動画の終盤に言及している、「アンケート」については、FINTOS!ではご回答いただけません。ご了承ください。 ご投資にあたっての注意点
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11/25 07:00
【来週の予定】11月に為替介入は実施されたのか?為替介入実績が公表
来週の注目点:米経済の軟着陸期待は続くか、主要経済指標に注目 市場では米国経済はソフトランディング(軟着陸)するとの期待が徐々に高まっており、米国、翻って日本の株高を支えています。労働市場が急速に悪化することなく、インフレ指標の減速が続くことで追加的な利上げの必要性が低下し、緩やかに米経済が減速してマイナス成長に至らないであろう、との期待です。また、半導体業界では生成AIによる需要増や在庫調整が進展し、製造業が底打ちするとの期待も相場を下支えしています。 米国では、27日(月)に10月新築住宅販売件数、28日(火)に11月コンファレンスボード消費者信頼感指数、全米小売業協会(NRF)による感謝祭週末の売上結果、世界半導体市場統計(WSTS)の秋季半導体市場予測、29日(水)に地区連銀経済報告(ベージュブック)、30日(木)に10月個人消費支出・所得統計、11月シカゴ購買部協会PMI、12月1日(金)に11月ISM製造業景気指数と、重要統計の発表が相次ぎます。 中国では、30日(木)に11月政府版PMI、12月1日(金)に11月財新版製造業PMIが発表されます。中国の住宅市況は足元で更に悪化しており、欧米の景気減速に伴う外需悪化も景況感の下押し材料になると見られます。そのような中、在庫調整の進展、景気刺激策の効果がどの程度現れるかに注目です。 日本では、30日(木)に10月鉱工業生産、11月の外国為替平衡操作の実施状況で通貨当局による為替介入額が発表されます。2022年以来続く歴史的な円安ドル高は、11月中旬に1ドル=151円台後半の攻防を経て、米長期金利の低下に伴い148円台まで調整しています。通貨当局は150円や152円を防衛ラインに置いていると市場では見られており、11月に為替介入が実施されたか否か注目が集まります。 (野村證券投資情報部 坪川 一浩) (注)イベントは全てを網羅しているわけではない。◆は政治・政策関連、□は経済指標、●はその他イベント(カッコ内は日本時間)。休場・短縮取引は主要な取引所のみ掲載。各種イベントおよび経済指標の市場予想(ブルームバーグ集計に基づく中央値)は2023年11月24日時点の情報に基づくものであり、今後変更される可能性もあるためご留意ください。(出所)各種資料・報道、ブルームバーグ等より野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点
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11/24 19:00
【最新ランキング】日本株、今週の値上がり/値下がり銘柄は? (11月第4週)
日本主要銘柄・株価騰落率ランキング(上位) 2023年11月第4週(2023年11月17日~11月22日) 2023年11月月間(2023年10月31日~11月22日) 2023年年間(2022年12月30日~2023年11月22日) (注)対象はTOPIX500、直近値は2023年11月22日。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 日本主要銘柄・株価騰落率ランキング(下位) 2023年11月第4週(2023年11月17日~11月22日) 2023年11月月間(2023年10月31日~11月22日) 2023年年間(2022年12月30日~2023年12222日) (注)対象はTOPIX500、直近値は2023年11月22日。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 <参考>今週の日本株式市場パフォーマンス 主要指数 TOPIX︓東証33業種 (注)業種分類は東証33業種ベース。直近値は2023年11月24日前引け時点。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点
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11/24 16:35
【イブニングFINTOS!】日経平均株価、一時年初来高値を更新も、伸び悩み173円高(11/24)
本日の株式市場 前日は日米ともに株式市場は休場でしたが、22日の米国市場で主要3指数は揃って上昇しました。その流れを受け、本日の日経平均株価は、前営業日比300円高の33,752円で取引を開始しました。寄り前に発表された日本の10月全国消費者物価指数は4ヶ月ぶりに伸び率拡大を示しましたが、市場への影響は限定的でした。一方、外為市場では、1米ドル=149円を超える円安水準となり、円安を背景に輸送用機器の上昇が目立ちました。日経平均株価は寄り付き後も上げ幅を広げ、一時年初来高値の33,753円を上回り、前営業日比366円高の33,817円となる場面もありました。しかし、高値警戒感から上値は重く、33,700円台で一進一退を続けました。後場に入ると上げ幅を縮め、結局、前営業日比173円高の33,625円と続伸して取引を終えました。 休日の谷間で、今晩の米国市場は短縮取引となることから積極的な売買を手控える雰囲気が強く、東証プライム市場の売買代金は3兆2517億円にとどまりました。 本日発表予定の海外経済指標等 【ドイツ】・11月 Ifo 企業景況感指数 (総合) 前月: 86.9 予想: 87.5 【米国】・11月 S&P グローバル PMI 速報値 (製造業) 前月: 50.0 予想: 49.9 (サービス業) 前月: 50.6 予想: 50.3 (注)経済指標などの市場予想はブルームバーグによる市場コンセンサス予想。時間は日本時間。(出所)東京証券取引所等より野村證券投資情報部作成 ※掲載している画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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11/24 12:00
【今週のチャート分析】日経平均、取引時間中ベースで年初来高値更新(11/24)
※2023年11月22日(水)引け後の情報に基づき作成しています。 中段保ち合いを完全に上放れできるか注目 今週の日経平均株価は、急速な円高・ドル安を背景に、週前半は下落しましたが、その後は日米長期金利の低下などを受け、底堅く推移しました。 日経平均株価のこれまでの動きを振り返ってみましょう。日経平均株価は、11月に入り75日移動平均線(11月22日:32,196円)を上抜けたことに加え、10月13日高値(32,533円)を超え10月4日・30日安値でのダブルボトムが完成となったことから、本格的な上昇トレンド入りとなっています(図1)。 20日にはザラバベースで6月19日高値(33,772円)を一時上回り年初来高値を更新しました。その後押しを入れましたが、それら急騰の反動をこなしつつ、11月20日高値(33,853円)を超え中段保ち合いを完全に上放れできるか注目されます。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注1)直近値は2023年11月22日時点。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(出所)日本経済新聞社より野村證券投資情報部作成 また週足チャートで見ると、今回の中段保ち合い上限への接近は、下落率や調整期間の点で2020年6月~10月末の中段保ち合い時と比較して調整十分となった後の上限接近です(図2)。上限突破となる可能性も十分考えられ、次の上値メドとして心理的フシの35,000円の水準が挙げられます。 (注1)直近値は2023年11月22日時点。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(出所)日本経済新聞社より野村證券投資情報部作成 一方で、上値が重く一旦調整を入れる動きとなった場合は、11月6日上抜け後に下値支持線として機能した75日移動平均線(11月22日:32,196円)や、上向きに転じた25日線(同:32,125円)が下支えとなると期待されます(図1)。 米長期金利・日米株、中期トレンドに変化やその兆し 10月にかけては米国長期金利の上昇が、株価の下落につながっていましたが、一転11月は長期金利が低下し、株価は上昇しました。チャートで見れば、その動きは揺り戻しの範疇を超え、複数の指数で中期トレンド(数ヶ月単位の方向性)に変化や、その兆しがみられています。 ①米国10年債利回りは、今年4月ボトムから続いてきた上昇トレンドラインを割り込み(図3)、②NYダウは今年8月以降の下降トレンドラインを完全に上抜けました(図4)。 (注1)直近値は2023年11月20日。 (注2)トレンドラインには主観が含まれておりますのでご留意ください。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 (注1)直近値は2023年11月21日。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。 (注3)日柄は両端を含む。(出所)S&P ダウジョーンズ・インデックス社データより野村證券投資情報部作成 そして③日経平均株価も大幅上昇し、11月20日に取引時間中ベースでの年初来高値(33,853円)をつけました(図1)。その後は押しを入れていますが、10月安値は下落率や下落期間の面でみて調整十分と捉えられ、同安値で大底を形成した可能性が高いと考えられます(図2)。そのため、この先、急上昇の反動をこなしつつ、中段保ち合いの明確な上放れに向けた動きとなることが期待されます。11月に生まれた相場の新たなトレンド(方向性)が2024年にかけて継続となるか注目されます。 (投資情報部 岩本 竜太郎) ※画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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11/24 09:30
【テーマ銘柄】SiCパワー半導体、EV向け市場は22年→27年で5倍予想
自動車の電動化ではパワー半導体が主役 パワー半導体は、電力の制御・供給を行う半導体です。EV(電気自動車)などの電動車に必要不可欠なインバーターやオンボードチャージャー(車載用充電器)などに用いられています。 現在EVに搭載されているパワー半導体の主流はSi(シリコン)を材料としていますが、今後は、電力損失の更なる低減や小型化を実現すべく、SiC(炭化ケイ素、シリコンカーバイド)を材料とする半導体の採用が徐々に進んでいくと予想されます。 EV向けにSiCパワー半導体市場の拡大が期待される SiCパワー半導体は、従来のSiに比べて動作上限温度が高く、耐圧性に優れています。欧州や米国などでは、EVの電池電圧を現状の2倍となる800Vまで高める取り組みが加速しており、高電圧化がSiCパワー半導体普及の追い風となりそうです。 他社に先駆けてEV大手のテスラは、量産型EV「モデル3」にSTマイクロエレクトロニクス製のSiCパワー半導体を採用しました。2025年には、他の自動車メーカーからもSiCパワー半導体を採用したEVが次々と市場に投入される見込みです。SiCウエハー最大手のウルフスピードによると、2027年のEV向けSiCパワー半導体の市場規模は、2022年比約5倍に成長すると予想されています。 (注)EV向けSiC市場の数値はウルフスピードの推定・予想値(2022年10月31日時点)。(出所)Yole Power「SiC 2022 report」、ウルフスピード「Investor Day 2022」より野村證券投資情報部作成 太陽光発電などでも活用が進む 再生可能エネルギー分野では、太陽光発電用パワーコンディショナーなど電力変換システムで、Siの代替として、SiCパワー半導体の活用が進んでいます。太陽光発電では、太陽光により直流電力を生み出し、それを家庭やオフィスで利用するために交流電力に変換する必要があります。そのため、変換効率と電力密度を向上させることができるSiCが採用されています。 風力発電用では、コスト競争力に優れる現行のSiが依然として用いられているものの、系統蓄電池やEV充電器用ではSiCが主流となっています。 (注1)インフィニオン・テクノロージズが主催するイベントInfineon Power Roadshow(Nov.22)を参照。(注2)半導体搭載金額は、1メガワット(1MW)の電力を生成するために使用される半導体搭載額の費用をユーロで表したもの。(出所)野村證券エクイティ・リサーチ部より野村證券投資情報部作成 ご参考:パワー半導体関連銘柄の一例 ・レゾナック・HD(4004) 2022年9月にSiCパワー半導体に使用されるSiCエピタキシャルウエハーについて、国内メーカーとして初の200mm(8インチ)サイズのサンプル出荷を開始した。 ・ディスコ(6146) SiCの塊(インゴッド)から、高効率かつ高精度にウエハーを切り出す加工技術「KABRA(カブラ)」を開発した。 ・三菱電機(6503) パワー半導体世界大手。SiCパワーモジュールをEV向けに展開するなどして、2031.3期のパワーデバイス事業におけるSiC関連の売上高比率を30%以上に高めるとしている。 ・富士電機(6504) パワー半導体の世界大手。SiCパワー半導体の生産能力を2027.3期に2023.3期比50倍に増強するとしている。 ・ルネサスエレクトロニクス(6723) 2025年にSiCパワー半導体の量産開始を計画している。2023年7月にウルフスピード社とSiCウエハーの長期(10年間)供給契約を結んだ。 ・デンソー(6902) 同社が開発したSiCパワー半導体を用いたインバーターが、トヨタ自動車LEXUSのEV専用モデルに搭載されている。 ・ローム(6963) 2009年にSiCウエハーメーカーを買収した。2022年にSiCパワー半導体の量産を開始した。2028.3期までにSiC事業に5,100億円の投資を計画している。 ・ウルフスピード(A3028/WOLF US) SiCパワー半導体専業メーカー。ウエハーからモジュールまで手掛けている。 ・STマイクロエレクトロニクス(A3910/STM US) 2019年にSiCウエハーメーカーを買収した。当社製のSiCパワー素子がテスラの「モデル3」のインバーターに量産車として初めて採用された。 ・インフィニオン・テクノロジーズ(G0333/IFX GY) 世界トップクラスの車載半導体メーカー。パワー半導体では世界トップシェア。韓国現代自動車グループのEVプラットフォームにSiCパワー素子が採用された。 (注1)HDはホールディングスの略。(注2)外国株式のコードは、野村コード/ブルームバーグコード。(出所)各種資料より野村證券投資情報部作成 (野村證券投資情報部 澤田 麻希) ※画像はイメージ。 ご投資にあたっての注意点