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【新春特集】円の復権はなるか(外国為替市場)

2024年の為替市場を席巻した円キャリー取引は25年は盛り上がらず海外中銀利下げの中での逆行的な日銀利上げ、需給改善が円相場の支えにトランプ政権2.0の経済政策はドル高に作用、ただし対円でのドル高は限定的に 2024年の為替市場は、米景気軟着陸期待から年前半はキャリー取引が席巻、夏場にかけて米景気への警戒からキャリー取引が巻き戻される展開となりました。低金利通貨である円は年前半に最弱通貨となった後、年後半は買い戻されています。24年後半に見られた円高はポジション調整による色彩が強いと言えますが、この間に生じたファンダメンタルズ面での変化、1)海外主要中銀が利下げに踏み切る中での逆行的な日銀利上げ、2)円需給の緩やかな改善、も重要です。 図表1: 主要通貨の対米ドル騰落率 (24年下期) (注) 6月末から12月11日まで。(出所)ブルームバーグ等より野村證券市場戦略リサーチ部作成 FRBは24年9月に50bp利下げを実施、ECBは6月に25bp利下げを開始とそれぞれ利下げサイクル入りしています。米大統領選でのトランプ前大統領の勝利を受け、インフレ懸念を背景に25年中の米利下げは緩やかなものとなりそうです。野村證券では25年3月に25bpの利下げを予想しています。 一方、日本では24年3月にマイナス金利が解除され、7月には0.25%まで政策金利が引き上げられています。日銀は「経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」との基本姿勢を維持しており、25年に向けて利上げ継続がメインシナリオと言えそうです。米日5年金利差は徐々に縮小していく公算が大きく、緩やかな円高ドル安が予想されます。 図表2: 米日5年金利差とドル円相場 (出所)ブルームバーグ等より野村證券市場戦略リサーチ部作成 日銀はリスク材料として、米経済や金融市場の動向を重視しており、米指標の上振れ時や円安圧力台頭時には利上げを前倒しする可能性も高そうです。結果的に、24年前半のような大幅な円売りポジションの蓄積の可能性は低下し、円安の行き過ぎには歯止めが掛かると見ています。 需給の観点では、海外との政策金利差の縮小により、本邦投資家にとっての為替ヘッジコストが低下に転じたことが重要です。24年9月末時点の主要生保9社の為替ヘッジ比率は小幅ながら約3年ぶりに上昇に転じており、25年に向けて円相場の支えになりそうです。貿易収支の緩やかな改善傾向も続くと予想され、経常収支と直接投資収支を通じた基調的な円安圧力緩和につながると考えられます。 図表3: 基礎的収支に基づく円需給推計とドル円 (注) 24-26年の経常収支は野村見通しに基づく。直接投資収支は横ばいと仮定。所得収支及び直接投資収支の為替インパクトは実際の収支の50%と仮定。(出所)財務省、ブルームバーグ等より野村證券市場戦略リサーチ部作成 25年を展望する上では、1月20日発足の米国トランプ新政権の政策が為替市場に及ぼす影響を考えることも重要となります。トランプ前大統領が選挙戦を通じて主張してきた政策姿勢については、ドル高的な要素とドル安的な要素が混在していますが、政策の優先順位や実現可能性などを考慮すれば、市場ではインフレ懸念が先行しやすく、25年前半にかけて米金利上昇圧力に伴うドル高圧力が顕在化しそうです。実際、大統領選でのトランプ候補勝利を受けて、為替市場ではドル全面高が進みました。 もっとも、対円でのドル高の勢いは16年のトランプ候補勝利時と比較してかなり弱いことが特徴的です。16年当時と比較し、1)グローバルなリフレ期待上昇が限られること、2)米ターミナルレート(利下げの最終到達点)の変化が限定的なこと、3)日本当局の政策姿勢が異なること、などが円安圧力を限定していると考えられます。また、トランプ政権1.0対比で早いタイミングで関税発動に向かう可能性が高いと見ていますが、18-19年に米中貿易戦争が激化した際には、元安が進む中で円は逆行的に上昇しています。対中関税が早期発動に向かうと見られる25年前半には、対人民元や対ユーロなどでの円高材料となりそうです。 図表4: 2016年と2024年の米大統領選前後のドル指数とドル円 (注)投開票日を基準とした変化率。(出所)ブルームバーグ等より野村證券市場戦略リサーチ部作成 総じて、25年のドル円相場は、トランプ関税2.0の影響に注目が集まる1-3月期にかけては1ドル=150円前後での高止まりが続くと予想されます。その後、海外中銀の利下げに逆行した日銀の利上げにより、140円台前半に向けて緩やかな円高ドル安が進みそうです。年前半には対ユーロや対人民元などのクロス円での円高圧力が強まりやすく、ユーロ円は1ユーロ=150円割れ、人民元円は1人民元=20円割れに向けて調整すると予想しますが、年後半にはドル円などで押し目買いの機会がありそうです。 (野村證券市場戦略リサーチ部 後藤 祐二朗) ※野村週報 2025年新春特別号「外国為替市場」より ※こちらの記事は「野村週報 2025年新春特別号」発行時点の情報に基づいております。※画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点

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