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【オピニオン】米国の雇用・物価統計は要継続ウォッチ

※画像はイメージです。 2025年7月の米非農業部門雇用者数は前月比+7.3万人と市場予想(ブルームバーク調査・同+10.4万人)を下回る伸びとなりました。また、5月は同+1.9万人(12.5万人の下方修正)、6月は同+1.4万人(13.3万人の下方修正)と大幅に下方修正されました。3ヶ月平均でみた非農業部門雇用者数の伸びは月間で同+3.5万人になり、20年夏以降で最も低い水準となりました。 一方、25年7月の米消費者物価指数(CPI)は前月比+0.2%と6月の同+0.3%から伸び率が鈍化し、前年比では+2.7%と6月から伸び率は変わりませんでした。しかし、変動の大きいエネルギー・食品を除くコアCPIは前月比+0.3%と、6月の同+0.2%から伸び率が加速し、前年比でも+3.1%と6月の同+2.9%から加速しました。 これらの結果を受けて、政策金利変更に関する市場の織り込み度合いを算出したデータである「FedWatch」によれば、25年9月16-17日に開催されるFOMCで0.25%ポイントの利下げが実施されるとの市場の期待値は94.4%まで上昇しています(8月12日時点)。しかし、雇用統計、CPIとも検討すべき点が残ります。7月雇用統計における非農業部門雇用者数の過去2ヶ月分の下方修正は異例ともいうべき大幅なものでした。下図の通り、季節調整前、及び季節調整後のそれぞれの計数を今回の改定前と改定後で比較すると、特に25年5月分は季節調整による影響が大きかったことがうかがわれます。コロナ禍の急拡大で急激かつ大幅に雇用者が減少した20年3月以降のデータを季節調整する場合、歪みが大きくなることが否定できません。 米非農業部門雇用者数の改定状況 (注)改定前は25年6月雇用統計発表時の計数。改定後は同年7月雇用統計発表と同時に公表された改定の計数。(出所)米労働省、LSEGより野村證券投資情報部作成 一方、CPIについては5-6月分では関税による影響が生じつつあることが確認されましたが、今回7月分ではその影響が更に強まっているとは必ずしも言えない結果でした。下図の通り、関税の影響を受けやすい消費財の価格を見ると、前月比でマイナスに転じる財も散見されます。ただし、企業が関税率引き上げ前に在庫積み増しで対応していたことや、仕入れ価格の上昇分をすべて小売価格に転嫁せず、ある程度は企業側で吸収しているため、関税による小売価格への影響が限定的にとどまっていた可能性があります。   関税の影響を受けやすい消費財の価格動向 (注)関税の影響を受けやすい主な品目が対象。全てを網羅している訳ではない。 (出所)米労働省、ノムラ・セキュリティーズ・インターナショナル・インク(NSI)より野村證券投資情報部作成 8月下旬から米主要小売企業の25年5-7月期決算の発表が相次ぎます。関税引き上げによるコスト増をこれまでどのように対応してきたか、今後はどう対応するのか、会社側のコメントが注目されます。9月FOMCでの利下げ期待が高まっています。このFOMCでは参加メンバーの経済見通し、政策金利見通しが公表されます。8月分の雇用統計やCPIを踏まえて、利下げが再開されるのか見送られるのか、重要な局面を迎えます。なお、8月21-23日にジャクソンホール会議が米ワイオミング州で開催されます。今年のメインテーマは「移行期の労働市場:人口動態、生産性、マクロ経済政策」ですが、関税の影響が実質的に大きなテーマとなるでしょう。そこでのパウエルFRB議長の発言に注目が集まります。 ご投資にあたっての注意点

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