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06/02 12:00
【テーマ銘柄】インド市場 現地化で世界一の中間所得層の消費を取り込む企業
※画像はイメージです。 世界一になると予想される中間所得層の消費額 インドの総人口は約14億人で、国連による2023年中盤の推計によると、中国を抜き、世界1位になった模様です。また、インドは、生産年齢人口(15~64歳)が、その他の世代の人口の2倍以上となる人口ボーナス期に入っているとみられ、人口動態も良好です。人口の増加とともに、購買力が高いとされる中間所得層も増加しており、OECD(経済協力開発機構)は、インドの中間所得層の消費が2050年に世界の約3割を占めるまでに成長すると予想しています。 (注)中間所得層の定義は1日当たりの所得が10~100米ドル。2005年購買力平価ベース。(出所)OECD Development Centre Working Paper No.285「The Emerging Middle Class In Developing Countries」 より野村證券投資情報部作成 経済改革によりインドに進出する海外企業を後押し 2014年にモディ政権が発足して以来、製造業の振興策「メイク・イン・インディア」をはじめ、破産倒産法や物品・サービス税(GST)の導入等ビジネス環境の整備や国内製造業向けの優遇措置を実施してきました。2020年には、国籍を問わずインド国内で生産する企業に対して、売上高に応じて補助金を支給する生産連動型優遇策(PLI)の導入を発表しました。こうした政策により国内企業の活性化を図るとともに、インド国内に外資企業を積極的に呼び込んでいます。 (注)全てを網羅しているわけではない。(出所)各種資料より野村證券投資情報部作成 インド市場に欠かせない現地化と日本企業の進出 インドは国土面積が広く、多様な人種、文化、宗教、気候が混在しています。そのため、海外企業がインドで事業を展開するためには、住環境や生活文化を考慮し、徹底して現地化した商品を投入する必要があります。1982年にインドに進出したスズキは、軽自動車をインドの国民車へとローカライズすることで、2007年度には日本の国内販売台数を上回るインド販売台数を達成しました。関西ペイントはスズキのインド進出に合わせてインド事業を手掛け、現地生産の自動車向けの塗料を供給しています。今後もインドに地盤を築き、成長が見込まれる消費を取り込むことで、企業価値を高めていく日本企業の増加が期待されます。 ご参考:インド関連銘柄の一例 ■インド進出日本企業 関西ペイント(4613)海外売上高約7割のうちインドは3割強を占める。インドの自動車用塗料ではシェアトップとなっている。ダイキン工業(6367)2000年にインドに進出し、エアコンの販売をはじめ、2009年にニムラナ工場を設立した。フジテック(6406)インド国内でエレベーターの生産と現地販売、メンテナンスまでを手掛け、着実に売上を拡大している。スズキ(7269)2023年度インドの販売台数は前年度比+8.6%の213万台となり、現地シェア4割前後を占めている。ユニ・チャーム(8113)インドでの普及率が低い、ベビーケア用品や生理用品の販売促進に取り組んでいる。 ■インド進出海外企業 ボーダフォン・グループ ADR(A2812/VOD US)英国の通信キャリア大手。モバイル通信の比重が高く、ドイツ、イタリア、インドなどが主要市場である。インドの携帯市場ではトップクラスのシェアとなっている。ユニリーバ ADR(A0855/UL US)世界有数の日用品・食品メーカー。インド子会社ヒンドゥスタン・ユニリーバは、美容や洗剤など多様な事業を展開している。高成長が続くインドで高いシェアを有している。 ■インド国内企業 インフォシス ADR(A3800/INFY US)インドのバンガロールに拠点を置く世界有数のITコンサルティング企業で、顧客は金融や製造業、小売、エネルギーなどほぼ全業種にわたる。ICICIバンク ADR(A4676/IBN US)世界銀行とインド政府の主導で1955年に設立された「開発金融機関」を母体とする銀行。個人や企業向けの銀行業務、為替、デリバティブなどのサービスを手掛けている。ドクター・レディーズ・ラボラトリーズ ADR(A4697/RDY US)ジェネリック医薬品を手掛けるインド主要医薬品メーカーである。ジェネリック医薬品だけではなく新薬開発の臨床試験なども実施している。HDFCバンク ADR(A4961/HDB US)インドの商業銀行で中・高所得層の個人と企業を対象に幅広い銀行業務と金融サービスを提供している。 (注1)全てを網羅しているわけではない。(注2)外国株式のコードは、野村コード/ブルームバーグコード。(出所)各種資料より野村證券投資情報部作成 (野村證券投資情報部 澤田 麻希) ご投資にあたっての注意点
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06/02 09:00
【注目トピック】実質賃金のプラス転換が日本の消費回復の後押しに
※画像はイメージです。 消費復調に向けた日本の変化 消費は4四半期連続のマイナス成長 日本のGDP(国内総生産)を構成する需要項目のうち、個人消費は5割超と最も高い割合を占めます。このため消費の変化がGDP成長率に与える影響は大きく、その動向が注目されます。 物価変動の影響を除いた家計の消費動向を示す実質家計最終消費支出は、2024年1-3月期に前期比-0.7%と、2023年4-6月期以降、4四半期連続のマイナス成長となりました。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注)データは四半期で、直近値は2024年1-3月期。需要項目は実質家計最終消費支出の伸び率(前期比)に対する寄与度。(出所)内閣府資料より野村證券投資情報部作成 家計最終消費支出を財別で確認すると、サービスに対する消費は、前期比+1.0%(寄与度+0.6%ポイント)と拡大しました。一方、自動車などの耐久財は同-12.2%(同-1.0%ポイント)と大きく減少しましたが、これは一部自動車メーカーの品質不正問題に伴う出荷停止による、一時的な影響が大きいと見られます。食品や光熱費といった生活必需品を含む非耐久財への実質消費は、2003年7-9月以来、約21年ぶりに4四半期連続で減少しました。このことから、家計は物価高の影響から節約志向を強めている様子がうかがえます。 2023年10-12月期の貯蓄率はマイナス 下図は、名目での家計最終消費支出と可処分所得と貯蓄率の推移を示しています。2000年頃までは、貯蓄率が10%前後で推移しており、家計は、将来の支出に向けた貯蓄を進めていました。一方、2023年10-12月期の貯蓄率は-0.3%と、2四半期連続でマイナスになっています。貯蓄率がマイナスになることは異例で、家計が貯蓄を切り崩して消費を行うような厳しい状況であることが示されています。このような推移の背景には、食料品や資源などの生活必需品の価格が上昇していることが影響していると考えられます。つまり、生活必需品の価格が上昇したことで、名目の家計消費支出は押し上げられましたが、家計が実際に購入する量は減少しているとみられます。物価上昇が家計を圧迫する様子は、足元の家計の景況感にも表れています。 (注)データは四半期で、直近値は名目可処分所得と貯蓄率が2023年10-12月期、名目家計最終消費支出が2024年1-3月期。(出所)内閣府資料より野村證券投資情報部作成 足元、収入の増え方と暮らし向きが乖離 下図は、消費者態度指数の推移で、家計の景況感を示します。「収入の増え方」や「暮らし向き」は、過去は方向感でも水準面でも高い連動性がありましたが、足元では大きく乖離しています。「収入の増え方」に比べて、「暮らし向き」が大きく出遅れている背景には、前述した食料品や資源価格の上昇が要因となっています。 上記に加え、2024年5月には政府による電気・都市ガス料金への補助金制度が打ち切られるため、今後、消費動向が更に厳しくなることが懸念されます。こうした消費への下押し圧力に対し、政府は、所得税と個人住民税の定額減税を2024年6月から実施し、家計の所得環境悪化の緩和を試みています。ただし、通常、このような政策の押し上げ効果は一時的であると考えられ、消費の復調には恒常的な所得環境の改善が必要だと考えられます。 (注)データは月次で、直近値は2024年5月。図中の「暮らし向き」、「収入の増え方」は消費者態度指数を構成する指標項目で、全てを網羅しているわけではない。(出所)内閣府資料より野村證券投資情報部作成 実質賃金がプラスに転じ、消費を後押し 消費回復に向けた転機として、実質賃金上昇率のプラス転換が挙げられます。2024年春闘の賃上げ率は、連合による第5回回答集計時点で前年比5.17%と、5%台を達成する見込みです。このうちベースアップ(ベア)率は同3.57%と、2023年の同2.12%を上回っています。 (注)データは一般労働者の所定内給与が四半期で、連合集計のベースアップ率、消費者物価上昇率が年次。直近値は、一般労働者の所定内給与が2024年1-3月期、連合のベースアップ率は2023年、消費者物価上昇率は2023年度。2024年のベースアップ率は2024年第5回回答集計時点、消費者物価は2024年度の野村見通し(2024年5月16日時点)。(出所)厚生労働省資料、連合より野村證券投資情報部作成 また、パートやアルバイトを除いた一般労働者の所定内給与は、ベア率と高い連動性を有しており、同程度の水準まで上昇することが期待できます。野村證券では、2024年度の消費者物価上昇率は、前年比+2.9%と、2023年の同+3.0%からほぼ横ばいを予想しています。3%半ばのベア率が実現すれば、所定内給与の上昇率は、インフレ分を差し引いた実質ベースでもプラスに転じる見込みです。また、実質賃金のプラス転換が消費回復に寄与することで、景気の安定化も期待できます。 (注)データは四半期で、直近値は2024年1-3月期。2024年4-6月期以降は2024年5月17日時点の野村證券経済調査部予想。(出所)内閣府資料、野村證券経済調査部より野村證券投資情報部作成 日銀は、「賃金と物価の好循環を確認し、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現」することを目指しており、春闘の賃上げ動向は政策判断にも影響を与えます。今後、賃金の上昇が消費に結びつく動きが確認できれば、日銀の金融政策正常化や次の利上げにもつながると考えられます。 (野村證券投資情報部 金井 一宜) ご投資にあたっての注意点
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06/01 19:00
【来週の米国株】”雨続き”の米国株、雇用統計で晴れ間は見えるか(6/1)
※執筆時点 日本時間31日(金)12:00 今週:インフレ懸念が継続 ※5月24日(金)-5月31日(木)4営業日の騰落 米金利上昇が重石に 今週の米国株式市場では、米長期金利上昇が株価の重石となりました。先週末5月24日(金)に4.4%台だった米長期金利(10年国債利回り)は、29日(水)に一時4.6%台をつけました。 インフレ鈍化の持続性に懐疑的な市場 5月に入り発表された雇用統計、CPI(消費者物価指数)、小売売上高といったハードデータ(実際の経済活動を測るもの)はインフレが鈍化可能性が高まっていることを示唆したものの、市場はインフレ鈍化の持続性に懐疑的なようです。このため、その後公表されたPMIや消費者信頼感指数といったソフトデータ(関係者へのアンケート回答を基に測るもの)が市場予想を上回ったことをきっかけにインフレ懸念が再燃し、5月に入ってからの金利低下が巻き戻されていると言えます。 FOMC参加者もタカ派的 FOMC(米連邦公開市場委員会)からのコミュニケーションの観点では、全体の議論に先行しやすいウォラー理事が初回利下げは年末との見方を示したことや、議事要旨においてインフレリスクが顕在化する場合には追加利上げとの見方が示されたことが、金利上昇に寄与している可能性があります。景気・インフレの減速が持続的となるためには、FOMCが金融環境の引き締めを維持するようなコミュニケーションを続ける必要があります。 今週のポイントは2点です。 7日(金)雇用統計で晴れ間は見えるか 今週は米国経済の先行きや金融政策の行方を予想する上で注目度の高い、月初の重要指標の発表が予定されています。6月3日(月)の5月ISM製造業景気指数、5日(水)の5月ISMサービス業景気指数は、業種別の景気動向だけではなく、投入価格の変化や企業の採用意欲を探る上でも注目されます。また、4日(火)の4月雇用動態調査(JOLTS)、7日(金)の5月雇用統計は、労働需給の状況や潜在的なインフレ圧力の状況を確認するための最重要統計の一つです。 FRB高官は沈黙期間のため、内容によっては金融政策への思惑で、市場が大きく反応することも考えられます。 ISMは前月から小幅上昇が予想される 5月ISM製造業景気指数の市場予想は49.7(4月49.2)、5月ISMサービス業の市場予想は51.0(4月49.4)と、いずれも小幅上昇が予想されています。ISMサービス業については前回4月分が景気の好不調の分水嶺である50を割り込みましたが、市場は5月分で再度上回ると想定しています。ISMサービス業は、内訳において雇用が50を大幅に割り込んでいる影響で、ヘッドラインの数字も低めに出やすくなっていると推察されます。雇用の50割れは人手不足による採用難の影響による面もあり、必ずしも景気が大幅に減速していることを示唆するわけではありません。市場予想通りの結果となれば、見た目以上に実際のサービス業の景気は良好と判断できます。 5月の雇用者数の増加ペースは4月を小幅上回る予想 5月非農業部門雇用者数の市場予想は前月比+18.0万人(4月同+17.5万人)と、前回を小幅上回る伸びが予想されています。市場予想通りとなれば、雇用増加ペースは月20万人台後半以上のような極めて好調な数字からは減速しているものの、依然として堅調に推移していることが示唆されます。5月平均時給の市場予想は前月比+0.3%(4月同+0.2%)と、前月から小幅加速し、堅調に推移することが予想されています。 ただ向こう数ヶ月という観点では、雇用統計は季節調整の歪みから、6月分・7月分において実態よりも下振れやすいため米金利は一旦低下する可能性があります。もっとも、金利低下が持続的となるためには、上述のようにFOMCが金融環境の引き締めを維持し、景気・インフレの減速が続く必要があると見込まれます。 ”セールスフォースショック”は杞憂か NYダウ採用銘柄でもあるソフトウェア大手のセールスフォースが29日(水)引け後に2-4月期決算を発表しました。調整後EPS(1株当たり利益)は市場予想を上回ったものの、売上高は従来予想を据え置き、市場予想を下回りました。決算発表の翌日30日(木)に当社の株価は前日比19.73%安と大きく下落しました。売上高見通しは従来予想を維持したのに対して、調整後EPSを引き上げたことはより収益性を重視した施策を進めると推察されますが、当社も含め、直近発表された複数のソフトウェア企業の決算で顧客企業が支出を抑制している可能性も窺えます。 今週も続く決算発表で、実績や会社業績見通しなどを通し、状況を判断していきたいと考えます。発表が予定されるソフトウェア企業としては、4日(火)にクラウドストライク・ホールディングス、ガイドワイア・ソフトウェア、6日(木)のドキュサインなどが挙げられます。6月第2週にはアドビやオラクルといった大手ITで3-5月決算発表が始まるため、市場の関心が高い状況が続きます。 (野村證券投資情報部 小野崎 通昭) ご投資にあたっての注意点 要約編集元アナリストレポートについて 野村オリジナル記事の配信スケジュール
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06/01 12:00
【6月の投資戦略】米利下げ先送りの織り込みが進めば、業績拡大が株価の下支えに
目次・日本の企業業績見通しの下方修正は保守的な色彩が強い・FRBの利下げは先送りもいずれ実施へ・米国企業業績の拡大は幅広い業種に広がる・中国政府による断続的な政策対応が続く・日本銀行の次の一手はバランスシート縮小・日本の主要企業の業績は拡大へ 日本の企業業績見通しの下方修正は保守的な色彩が強い 日米で、2024年1-3月期決算発表はほぼ一巡しました。米国では企業業績の上方修正が続いています。日本の企業業績は、2023年度の実績は上振れて着地したようですが、2024年度は会社の保守的な期初計画の影響もあり、アナリストの業績見通しが下方修正されています。しかし、日米ともに巡航速度の経済成長が続き、米国はいずれ利下げ局面に入るとみられます。我々は、米国株式市場は金融相場から業績相場に、日本株市場も業績拡大が続くことで、株式市場の好環境が持続するとみており、この見方に変更はありません。 ▲TOPに戻る FRBの利下げは先送りもいずれ実施へ 米国では雇用環境のひっ迫からの緩和が進むものの、景気は良好で、インフレ率も望むような減速は進んでいません。FRB高官のほぼ全員が、政策金利を当面据え置くことが望ましいと主張しています。一方、インフレ率は加速しておらず、いずれ利下げが行われるとの見方は変わっていないため、長期金利の更なる上昇は限定的とみられます。 ▲TOPに戻る 米国企業業績の拡大は幅広い業種に広がる 米中貿易問題は続いていますが、バイデン政権の対中追加制裁関税は一部の戦略製品に対象が限られており、経済や物価への影響は限定的でしょう。企業業績は大手テクノロジー企業を中心に増益モメンタムが続いており、AIに関連するビジネスが急拡大しています。今後は、大手テクノロジー企業以外にも業績拡大が広がるとみられ、株価の下支えになるとみられます。 ▲TOPに戻る 中国政府による断続的な政策対応が続く ユーロ圏の景気は持ち直しつつあります。インフレ率が減速する中で、ECBによる6月の利下げの可能性が高まっていますが、ECB高官の多くは続く7月の連続利下げには消極的なようです。中国では不動産市場の低迷が景気の重石となっています。中国政府は断続的に景気対策や経済問題に対する対応策を発表しており、景気の安定化に努めています。 ▲TOPに戻る 日本銀行の次の一手はバランスシート縮小 日本の製造業は、自動車の挽回生産や設備投資関連の機械などを中心に、生産増が予想されています。春闘の歴史的な賃上げに対して、実際の賃金上昇率への反映はこれからのようです。日本銀行の追加利上げには、賃金上昇などの条件が満たされておらず、まだ時間を要するとみられます。一方、国債買入れの減額など、日本銀行のバランスシート縮小に向けた議論が進められており、円安懸念に対する金融面での対応の一つとなるでしょう。 ▲TOPに戻る 日本の主要企業の業績は拡大へ 日本の主要企業の2024年度業績見通しは、事前予想に対して下方修正が進みました。ただし、生産の回復や保守的な為替前提を踏まえると、時間の経過と共に下方修正要因となった懸念や悪材料が薄らぎ、業績予想の上振れが期待されます。東証の「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」として、企業の成長戦略への取り組みや大規模な自社株買いなども相次いで発表されました。景気と企業業績の拡大に加え、このような企業行動が続く中で、野村證券は2024年内の日経平均株価のレンジ高値を44,000円と予想します。 ▲TOPに戻る 投資戦略については、日本では業績見通しの引き下げが株価の重石となっているようですが、経済ファンダメンタルズ(基礎的条件)などは、今後の業績拡大を否定するものではありません。米国の利下げ先送りが一定程度織り込まれた後は、引き続き、日米企業業績の拡大が株価を下支えするとみます。 (野村證券投資情報部 小髙 貴久) ※野村證券投資情報部「Nomura 21 Global 6月号」(発行日:2024年5月27日)「投資戦略の概要」より※掲載している画像はイメージです。 Nomura21Global参考銘柄について ご投資にあたっての注意点
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06/01 09:00
【オピニオン】米長期金利の高止まりを十分視野に入れるべき
※画像はイメージです。 4月30日~5月1日に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)の議事要旨が公開されました。その中で、「ディスインフレのプロセスが従来考えられていたよりも時間がかかる可能性が高い」との見方が示された一方、「多くの参加者は政策の引き締め度合いについて不確実性がある点について言及した」と述べられています。FOMC後のFRB(米連邦準備理事会)要人からの発言をみても、概ねこの時点の判断が続いていることがうかがえ、インフレに対する警戒感が根強い状況が続いています。 2024年1-3月期の米国のインフレ関連の経済指標は概ね上振れました。しかし、同年4月の消費者物価指数、及び雇用統計における時間当たり賃金の伸びが同年3月から減速したため、市場におけるインフレ警戒感はやや後退しています。米国10年国債利回りは24年4月下旬に一時4.7%台まで上昇しましたが、足元では4.6%台へやや低下しています(24年5月29日時点)。 改めて、FOMC議事要旨を点検してみると、「24年1-3月期のECI(雇用コスト指数)は前年比では減速しているものの、前期比では顕著に加速した」との記述があります。雇用コストに関連する経済統計の中でも、賃金のみならず福利厚生費なども含めたより広範囲の労働コストを集計したECIをFRBは重視しています。24年1-3月期のECIは前期比年率+4.8%と、23年10-12月期の同+3.8%から加速しました。セクターや主要な構成項目全体で比較的広範に顕著な上昇を示しており、上振れが一時的ではない可能性があります。 労働コストは他の経済統計に比べ遅行的ではありますが、下方硬直性、つまり一旦加速傾向となった場合、減速するまでに時間がかかりますので、金融政策の効果を計るうえで、相応の時間軸が必要となります。前回の24年3月のFOMCで示された参加メンバーの政策金利見通しの分布、いわゆるドット・チャートでは、1回当たりの利下げ幅が0.25%ポイントとすれば、24年中の利下げ回数が3回であることが示されました。24年6月11-12日に開催される次回のFOMCでは新たな政策金利見通しが公表されますが、24年内の利下げ回数が3回から2回に修正される可能性があります。ただし、FF(フェデラル・ファンド)金利先物市場などで観察される24年内の利下げ回数は現在2回未満と想定されており、その意味では市場期待とのギャップはほぼなくなるものと推察されます。 雇用コストの減速に時間がかかり、米国10年国債利回りが高止まりするシナリオを十分視野に入れるべきと考えます。米国株式のバリュエーションを考える際には、EPS(1株当たり利益)などの企業収益がどの程度増益になるかがより注目されることでしょう。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 ご投資にあたっての注意点
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06/01 07:00
【来週の予定】最重要統計の一つ「5月米雇用統計」の発表へ
来週の注目点:米国の重要統計、中村日銀審議委員、ラガルドECB総裁の発言 多くのFRB(米連邦準備理事会)高官は、前回(4月30日~5月1日開催)のFOMC(米連邦公開市場委員会)以降、利下げに関して慎重に見極める姿勢を強めています。そのため次回FOMC(6月11~12日)では金融政策は据え置きが予想され、市場の関心は政策金利見通しに集まっています。 今週は米国経済の先行きや金融政策の行方を予想する上で注目度の高い、月初の重要指標の発表が予定されています。6月3日(月)の5月ISM製造業景気指数、5日(水)の5月ISMサービス業景気指数は、業種別の景気動向だけではなく、投入価格の変化や企業の採用意欲を探る上でも注目されます。また、4日(火)の4月雇用動態調査(JOLTS)、7日(金)の5月雇用統計は、労働需給の状況や潜在的なインフレ圧力の状況を確認するための最重要統計の一つです。 日本では3日(月)の1-3月期法人企業統計季報、5日(水)の4月毎月勤労統計が重要です。法人企業統計は設備投資や在庫投資に関するGDPの基礎統計です。この結果を受けて各社が24年1-3月期のGDP見通しの改定を行います。毎月勤労統計では引き続き実質賃金の動向が注目を集めそうです。 日銀の金融政策面では、6日(木)の中村日銀審議委員のコメントが注目されます。中村委員は「中小企業の賃上げ余力の高まり」を確認する必要があるとして、24年3月の会合でマイナス金利の撤廃に反対しました。 ユーロ圏では6日(木)、ECB(欧州中央銀行)が金融政策理事会を開催します。市場では広く0.25%ポイントの利下げが予想されています。ただし、その後の利下げペースに関しては加盟各国の中銀総裁など、ECB高官の間でも見方が定まっていないと見受けられます。このため、今後の政策経路に関してラガルド総裁がどのような見方を示すかが注目されます。 (野村證券投資情報部 尾畑 秀一) (注1)イベントは全てを網羅しているわけではない。◆は政治・政策関連、□は経済指標、●はその他イベント(カッコ内は日本時間)。休場・短縮取引は主要な取引所のみ掲載。各種イベントおよび経済指標の市場予想(ブルームバーグ集計に基づく中央値)は2024年5月31日時点の情報に基づくものであり、今後変更される可能性もあるためご留意ください。(注2)画像はイメージです。(出所)各種資料・報道、ブルームバーグ等より野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点
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05/31 16:20
【野村の夕解説】前日の大幅下落を受け、日経平均株価は自律反発(5/31)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 本日の日経平均株価は、前日比119円高の38,173円で取引を開始しました。前日までの3営業日で累計845円下落していたこともあり反発しました。ただ、前日の米国株市場下落の流れを受けて半導体関連株等が下落したことから、上値を抑えられ、日経平均株価は前日比65円高の38,119円で午前の取引を終えました。しかし午後に入ると、日経平均株価指数先物の上昇を受けて日経平均株価も上げ幅を急速に拡大しました。前日の米国株の下落要因ともみられる米国1-3月期実質GDP改定値の下方修正に加え、本日発表予定の米国経済統計によりインフレ鈍化が示されれば、米国の早期利下げにつながる可能性があり、株価の押し上げ要因になるとみられた面もあるようです。日経平均株価は前日比191円高の38,245円で午後の取引を開始した後も上昇幅の拡大が続き、一時、本日の高値である前日比472円高の38,526円を付けました。その後も高値圏で推移し、同指数は前日比433円高の38,487円で本日の取引を終えました。また、本日の東証プライム市場の売買代金は7兆7,612億円と、今年に入って最高の水準となりました。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注)データは15時15分頃。ドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 本日、米国4月個人消費支出・所得統計、ユーロ圏5月消費者物価指数が発表されます。FRBならびにECBが物価の動向を見極める上で重要視している経済指標であることから、その結果が注目されます。 (野村證券投資情報部 秋山 渉) ご投資にあたっての注意点
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05/31 12:00
【今週のチャート分析】日経平均株価25日移動線を割り込む、早期奪回なるか注目
※画像はイメージです。 ※2024年5月30日(木)引け後の情報に基づき作成しています。 日経平均株価の下値メドは36,700円近辺、二番底形成なるか 今週の日経平均株価は、日米金利上昇が嫌気され、30日まで3日続落となり、取引時間中に一時3万8000円を割り込みました。日本の10年国債利回りは、約13年ぶりに1.1%に達しました。 チャート面からこれまでの動きを振り返ってみましょう(図1)。5月16日に日経平均株価は、これまで概ね上値を抑えられてきた25日移動平均線(5月30日:38,448円)を上回り、その後もしばらく同線を維持していました。 しかし、長期金利の上昇により上値は重くなり、5月30日の大幅安を受けて25日線を再び割り込みました。この調整が継続となり、30日安値(37,617円)を下回った場合は、4月19日安値(36,733円)の水準が下値メドとして挙げられます。 今年4月安値までの下落率(9.3%)は、波動分析上の参考局面である昨年10月安値までの下落率(9.6%)と比較し、値幅調整は概ね十分と捉えられます(図2)。 日足チャートで昨年10月安値(10月4日:30,487円)形成後の動きをみると、その後“二番底”(10月30日:30,538円)をつけ、本格的な上昇トレンドに移行しました。今回も同様に“二番底”形成の動きに留まるか注目されます(図1)。 一方で、5月30日安値(37,617円)形成後は引けにかけて値を戻し、昨年10月以降の上昇トレンドライン上で下ヒゲを引いて反発しています。この先戻しを試す展開となった場合は、早期に25日線(同:38,448円)を奪回できるか注目されます。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注1)直近値は2024年5月30日時点。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(出所)日本経済新聞社より野村證券投資情報部作成 (注1)直近値は2024年5月30日時点。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(出所)日本経済新聞社より野村證券投資情報部作成 新興国株指数は底練り局面を脱するか 新興国株が今年に入り上昇傾向となっています。新興国株の代表的な指数であるMSCIエマージング・マーケット指数(ドル建て)は、2008年10月以降、上下に大きく動きながらも緩やかな長期上昇トレンドを形成してきました(図3)。 2022年10月安値形成時に前述の長期上昇トレンドラインを下支えとして反発、その後はチャート上の底練り局面へと移行しました。今春には、2023年1月高値以降の上値抵抗線を突破しており、今後、本格的な戻り相場入りとなることが期待されます。 (注1)直近値は2024年5月28日時点。(注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(注3)ドル建てのMSCIエマージング・マーケット指数を使用している。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 新興国株の代表的な存在である中国株は今年2月にかけて下落傾向となっていましたが、当局の相次ぐ景気刺激策や景況感の改善などによって、今春に大幅上昇しました。 上海総合指数(図4)のチャートをみると今年2月安値形成後の大幅上昇で、2021年から約3年続く下降トレンドラインまで値を戻しています。この先同ラインを突破となれば、中長期的な上昇トレンドに入った可能性が高まったと捉えられます。 (注1)直近値は2024年5月28日。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 次にインドSENSEX指数(図5)をみると、昨年末にかけて大幅上昇した後、今年に入ってからもじり高となり、史上最高値の更新が続いています。インドではインフレ率が低下する中で成長が加速し、経済は好調な状態を維持しています。 6月4日に開票予定の総選挙では与党・インド人民党が世論調査通り圧勝するか注目が集まります。今後も24ヶ月移動平均線を下支えとする中長期的な上昇トレンドが続くか注目されます。 (注1)直近値は2024年5月28日。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(注3)日柄は両端を含む。(出所)ボンベイ証券取引所より野村證券投資情報部作成 新興国の経済環境は各国で大きく異なりますが、今後米国経済が緩やかな減速に留まる中で米国金利が低下してくれば、投資資金が新興国へ向かいやすくなると考えられます。また、新興国の金融政策の自由度も高まる可能性があります。引き続き新興国株から目が離せません。 (野村證券投資情報部 岩本 竜太郎) 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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05/31 08:30
【野村の朝解説】NYダウ3日続落し約1ヶ月ぶりの安値(5/31)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 30日の米主要3指数は、揃って下落しました。寄り前に発表された2024年1-3月期実質GDP改定値が、前期比年率+1.3%(市場予想同+1.3%)と、速報値の同+1.6%から下方修正されました。GDPの約7割を占める個人消費の改定値が、同+2.0%と速報値の同+2.5%から市場予想以上に下方修正されたことなどから、米景気ソフトランディングへの期待の後退につながりました。また、前日引け後に、市場予想を下回る売上高実績とガイダンスを発表したセールスフォースが、前日比-19.73%と大幅下落したことがNYダウを押し下げました。NYダウは3日続落し、約1ヶ月ぶりの安値となりました。 相場の注目点 昨日、日本の10年国債利回りが約13年ぶりに1.1%に達したことなどを受け、日経平均株価は一時900円超下落する場面がありました。6月の日銀金融政策決定会合(13-14日)を前に、当面は日銀の政策修正観測による金利変動が株式市場に影響を与えるとみられます。本日寄り前に、全国の物価の先行指標となる5月東京都区部消費者物価指数が発表されます。また、来週には、4月毎月勤労統計(5日)が発表されます。物価上昇率分を差し引いた実質賃金は、3月まで24ヶ月連続で前年同月比マイナスが続いています。これらの物価と賃金に関連する統計は、日銀の追加利上げのタイミングを見極める上で重要です。加えて、中村日銀審議委員の挨拶(6日)も、市場の関心を集めるでしょう。 本日のイベント 東京時間の午前中に、中国で5月政府版PMIの発表が予定されています。米国では、FRBが物価統計として重要視している4月PCEデフレータ―が発表されます。 (投資情報部 澤田 麻希) (注)データは日本時間2024年5月31日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 野村オリジナル記事の配信スケジュール ご投資にあたっての注意点