【新春特集】2025年政治イベント・リスクの注目点(内外政治)
2024年に続き25年も政治の混乱が続く公算大米国で発足するトランプ次期政権の経済政策に注目ドイツの解散総選挙、国内の参議院選挙にも注意
2024年は、インフレに政治が振り回された1年でした。中低所得者の不満を解消できず、選挙で与党・現職が敗北、退陣するケースが多く、独裁政権の崩壊も生じています。25年も同様の状況が続くと見られます。新政権は、財政拡張、関税引き上げ、外国人労働者排除などの主張が目立ちます。本来インフレを抑えるなら、真逆の政策が有効ですが、不人気政策の実行は困難です。主張通りの政策ではインフレ鎮静化が遅れ、結果的に有権者の支持を失うリスクがあります。
地政学リスクとして、中東、ウクライナ、米中関係が引き続き注目を集めるでしょう。中東については、トランプ次期米政権が、イスラエルを支持し、対イラン金融制裁を続け、イラン孤立を試みると見られます。一方、パレスチナとイスラエルの戦いが続く限り、サウジアラビアなどイスラム教国がイスラエルと国交を結ぶ可能性は低いでしょう。そこで、イランは、パレスチナ自治区ガザ地区のハマス、イエメンのイスラム教ザイード派組織フーシ派、イラクのイスラム教シーア派の各組織など、代理勢力に戦いを続けるよう促すだろうと考えられます。イランとイスラエルの全面戦争こそ起こらないものの、24年4月、10月に見られたようなミサイルやドローン(無人機)による攻撃の応酬が、再び発生するリスクには注意が必要でしょう。アサド政権が崩壊したシリア情勢の混乱と相俟って中東情勢は安定しないと見られます。
トランプ次期米大統領は、ウクライナ紛争の停戦を目指しています。しかし、ロシアのウクライナ領占領を黙認し、ウクライナのNATO(北大西洋条約機構)加盟を認めない停戦案になる可能性があります。こうしたウクライナが受け入れられない内容の場合、停戦は困難でしょう。ウクライナが停戦を拒んだとしてトランプ次期米大統領がウクライナへの軍事支援を停止する反面、欧州が支援を継続、対ロ制裁を強化すると見込まれます。
米中関係は、軍事衝突の可能性は低いと見られますが、通商上の対立が続き、改善は難しいでしょう。
次に先進国の政治状況を見てみます。
2024年11月に行われた米国の大統領・議会選挙では、トランプ候補(共和党)が当選し、上下院で共和党が過半数を獲得しました。しかし、トランプ次期大統領の得票率を踏まえると、政権発足当初から大統領支持率が低いことが見込まれます。トランプ次期政権が、早期に実績を示さなければ、26年の中間選挙(上下院選挙)では、共和党が上下両院で過半数を維持することは難しいでしょう。現在、下院での共和党議席数の民主党議席数に対するリードは5議席と僅差で、上院でも民主党の議事妨害を阻止出来るまでの議席数はありません。議会で実現できる経済政策には限りがあり、減税は、所得税減税の延長に留まる可能性があります。実績を早く示すために、トランプ次期政権は、議会を通さず、早期実現が見込める、対中関税の引き上げ、外国人労働者規制、バイデン政権の環境政策の撤回から着手するでしょう。このうち、関税引き上げや外国人労働者規制は、景気を押し上げない一方、インフレ圧力になりかねません。
ドイツでは25年2月23日に解散総選挙が行われ、政権交代する可能性が高いと見られます。第1党は中道右派のキリスト教民主同盟/キリスト教社会同盟(CDU/CSU)になると見込まれます。CDU/CSUは、社会民主党(SPD、中道左派)や自由民主党(FDP、中道派)と連立を形成すると見られ、財政規律の回復を図ろうとするでしょう。同盟90/緑の党(中道左派)は連立に参加しない見込みです。次期政権の下で、環境政策の見直しが図られ、エネルギーコストの抑制や自動車産業の立て直しを図ると見られます。
フランスでは、バルニエ内閣の不信任を受け、マクロン大統領が、新たにバイル首相を指名しました。しかし、与党が下院で少数である以上、主導権を握ることは困難でしょう。右派ないし左派はEU懐疑派で、財政拡張を主張しています。バイル首相が財政再建を主張すれば、バルニエ内閣と同様に不信任決議案によって退陣させられます。政権延命を目指せば、財政拡張を受け入れざるを得ません。今後も、フランスの財政再建は困難と見られます。
国内政治については、予算、税制、政治資金関連の法改正などを踏まえると、通常国会会期末の25年6月までは、与野党の議論が行われることから、第2次石破政権が続く可能性が高いと考えられます。同年7月の参議院選挙での石破首相、与党の目標は、与党過半数維持が目標と見られます。仮に、過半数割れとなった場合、石破首相が退陣し、国会運営の混乱が見込まれます。混乱回避のため、次期自民党総裁は野党との連立を目指すでしょう。野党の政策を受け入れる中で次期政権は財政拡張的になると見られます。一方、参議院で与党が過半数を維持する場合には、与党自らが解散総選挙を仕掛け、過半数奪還を目指すことになるでしょう。
図表1: 主要政治日程 (2025年)
(出所)各種資料、各種報道より野村證券経済調査部作成
(野村證券経済調査部 吉本 元)
※野村週報 2025年新春特別号「内外政治」より
※こちらの記事は「野村週報 2025年新春特別号」発行時点の情報に基づいております。※画像はイメージです。
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