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09/12 17:00
【市場展望】米景気減速確認まではドル円高止まりへ
根強い円安圧力 ドル円相場は8月29日に一時147円台を回復した。昨年11月以来の円安ドル高水準となる。 5月に入り円安圧力が再燃し始めた時点で、円安ドル高が持続するリスクシナリオ実現には、①米国経済のハードランディング回避に加え、②海外経済の不透明感が低下する中での日銀の政策修正見送り、③原油価格の明確な上昇、の3つの条件が成立する必要があると指摘した。 日銀による政策修正は実現したが、市場における米経済へのソフトランディング(軟着陸)期待は一段と高まり、原油価格にも再び上昇圧力が強まっている。ドル円相場の短期的な上振れ(円安進行)及びその後の高止まりの可能性が高まっていると判断し、8月15日付で9月末のドル円見通しを145円(旧:138円)、12月末の見通しを140円(旧: 130円)へと上方修正した。年内のドル円は140~145円を基本レンジとした高止まりが続くとの見通しだ。 2024年に向けては円高への転換を見込むが、米景気の堅調が続けば、円高転換のタイミングが後ずれする可能性は残る。市場では本邦当局による介入警戒感も燻るが、短期的にはドル円の上振れリスクを警戒すべき局面と判断される。 米国では消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)が2カ月連続で前月比+0.2%以下に抑制、ディスインフレ局面へ移行しつつある。8月雇用統計で非農業部門雇用者増加数(3カ月平均)が15万人弱まで減速するなど、労働需給に緩和の兆しも強まり始めた。FRB(米連邦準備制度理事会)が利上げを行う必要性は低下しており、7月FOMC(米連邦公開市場委員会)での0.25% ポイント利上げが今サイクルでの最後の利上げとなった可能性が高い。 もっとも、市場では米ソフトランディング期待が崩れるには至っていない。インフレ圧力低下やFRB利上げ期待後退はむしろソフトランディング期待を高め、株式市場で好感されている。野村では23年10~12月期の米景気の前期比マイナス成長を予想するが、明確な米景気悪化が見られるまでは、市場は米利下げ開始の後ずれ期待を強めることで、米金利は高止まりし、円安ドル高圧力が持続しやすい。 米ソフトランディング成功なるか 米ソフトランディング期待に加え、サウジアラビアとロシアによる自主減産長期化もあり原油価格が反発していることも円安圧力を強めている。前年同期と比較し、①旅行収支が安定的に3,000億円程度の黒字を確保できていること、②供給制約解消により自動車輸出が回復していること、などエネルギー関連以外でも経常収支の改善をもたらす材料は見られ、前年同期のような需給面での強烈な円売り圧力の高まりは考えにくい。しかし、原油価格の反発により、短期的には需給面での一段の円高圧力の高まりも期待しにくくなった。 日銀による7月会合でのイールドカーブ・コントロール(YCC、長短金利操作)政策の運用柔軟化決定を受け、ドル円相場は円高が進んだが、インパクトは短期的に留まった。市場の利上げ期待の上昇が限定的となったことが、円高インパクトを弱めたと言える。日銀が為替市場のボラティリティ(変動率)上昇や当面のインフレ上振れリスクへの警戒を強めた点は重要な変化だが、YCCやマイナス金利の撤廃は早くとも24年と想定され、今後1~2カ月は日銀への政策修正期待が大きな円高圧力をもたらすには至らなさそうだ。 野村では米経済の10~12月期からの緩やかな景気後退入り、FRB の24年3月利下げ開始を予想しており、市場も23年末には利下げ開始をより本格的に織り込む公算が大きい。メインシナリオでは、ドルは140~145円レンジでの高止まりを経て、米景気の減速を確認する中で24年3月末に向けて135円へと円高が進むと予想する。 ただし、野村想定以上に米景気指標の強さが継続、ソフトランディング成功が確定的となれば、昨年高値である151円95銭を試す展開も否定できない。145円超の円安ドル高余地や滞空時間を見極める上では、米景気指標に加え、本邦当局による口先介入の強さと実弾での円買い介入に踏み切るタイミングも重要となってこよう。 (野村證券市場戦略リサーチ部 後藤 祐二朗) ※野村週報 2023年9月11日号「焦点」より ※掲載している画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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09/12 15:54
【イブニングFINTOS!】日経平均株価4営業日ぶりの反発、308円高(9/12)
本日の株式市場 前日の米国株式市場では、FRBが利上げに慎重になりつつあるとの観測報道を手掛かりに、主要3指数は揃って上昇しました。米国株高を受け、本日の日経平均株価は前日比161円高の32,629円で取引を開始しました。追加利上げへの警戒後退で、米国ハイテク株が上昇した流れを引き継ぎ、ソフトバンクグループなどの主力ハイテク株の上昇が目立ちました。一方、日銀の金融政策修正への警戒も根強く、長期金利は一時0.720%と上昇し、2014年1月以来、9年8ヶ月ぶりの水準を更新しました。長期金利上昇が嫌気され、日経平均株価は一時前日比18円高の32,486円まで上げ幅を縮小しました。しかし、その後長期金利の上昇は一服、対米ドルで円安の進行も支えとなり、日経平均株価は持ち直し、32,700円台での推移を続けました。引けにかけては強含み、結局前日比308円高の32,776円と4営業日ぶりに反発して取引を終えました。 プライム市場では、全体の7割超にあたる1,392銘柄が上昇し、TOPIXは前日比+0.82%と続伸しました。 本日発表予定の海外経済指標等 【ドイツ】・9月ZEW景況感調査(期待) 前月:-12.3 予想:-15.0 (注)経済指標などの市場予想はブルームバーグによる市場コンセンサス予想。時間は日本時間。(出所)東京証券取引所等より野村證券投資情報部作成 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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09/12 12:00
【野村の投資判断】中国関連銘柄はレーティング修正による株安リスクに注意
足元のレーティングはやや強気過ぎるとの見方も可能 先週の日経平均株価は上下に激しい値動きを見せました。特に注目すべきは(経済情勢に基づいて売買する)マクロ系ヘッジファンドの動向です。マクロ系ヘッジファンドは日本株のロングポジション(買い持ち高)を再拡大し、過去2週間で約7,000億円の買い越しを行いました。これは同期間の海外投資家全体の先物買い越し額である約1.1兆円の大部分を占めています。 通常、マクロ系ヘッジファンドは9月から11月にかけて中国景気を重視する傾向が強まりますが、現在の中国の景気指標はそれほど強くありません。あくまで仮説に過ぎませんが、5月の日本株の上昇局面で十分に利益を得られなかったことや、年初からの低調なリターンに対する焦りが、積極的なリスクテイクの背景にあると考えられます。 相場の流れに追随するCTA(商品投資顧問)もロングポジションを再拡大しており、先週は3,000億円の買い越しを行いました。買い越しの勢い自体は力強いわけではありませんが、持続性は高いと見られ、株価が31,600円を下回らない限りは維持されると見られます。 日本株の物色動向では、不動産不況やハイテク分野での米中対立を背景に、中国関連銘柄のアンダーパフォームが目立ちます。しかし、現在の中国関連銘柄の株価は、景気指標に比べると割安と言える状態です。今後の調整余地については、基本的には景気指標などのファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)次第とみられます。 ただし、アナリストのレーティング引き下げに伴う株安リスクにも注意が必要です。中国景気に対する悲観的な見解が増えているものの、実際には中国関連銘柄のレーティングは大きく調整していません。コロナ禍前の中国景気指標との関係を考えると、現在のレーティングは少し楽観的すぎるかもしれません。 最後に、海外景気に目を向けると、欧州や中国と比較して米国が強い状況にあります。もし米国景気がこのまま順調に回復を続けるならば、米国関連銘柄への投資が有望と言えるでしょう。 (FINTOS!編集部) (注)画像はイメージ。 要約編集元アナリストレポート「野村クオンツ・インサイト – マクロヘッジファンドは日本株ロング再拡大(2023年9月11日配信)」(プレミアムプラン限定) 要約編集元アナリストレポートについて ご投資にあたっての注意点
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09/12 09:30
【チャート分析】三菱UFJ、1,400円処のフシが視野に
このたび、FINTOS!で皆様にご好評いただいている機能「ウォッチリスト」に多く新規登録された銘柄をチャート分析しました。 「ウォッチリスト」新規登録上位銘柄ランキング 母集団:野村の投資情報アプリ「FINTOS!」にて、ユーザーの皆様が「ウォッチリスト」機能に新規登録した上位5銘柄(2023年8月分) 今回は2023年8月に新規登録された銘柄第2位の三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)です。週足チャートを用いて、チャート分析上の注目点を記しています。今後の投資戦略を考える上で、ご参考になれば幸いです。 主要移動平均線は上向き 当社は、国内最大の金融グループで、国際展開に強みがあります。 (図1)当社の株価は、2022年10月から今年2月にかけて大幅上昇した後、3月にかけて調整しました。しかしその後は、26週移動平均線を下支えに戻しを試す展開となり、6月には2008年7月以来15年ぶりとなる1,000円台乗せに成功、9月には2022年10月~今年2月の上昇幅を今年3月安値に当てはめたN計算値(1,172円)も達成しました。 主要移動平均線は上向きであり、今後急騰の反動をこなしつつ2006年4月~2011年11月にかけての下落幅に対する2/3戻し(1,406円)の水準がある1,400円処を目指す展開が期待されます。 上昇一服の場合は13週線などが下値メド (図2)一方この先上昇一服となった場合はまず上向きの13週線(9月1日:1,080円)が下値メドとして挙げられます。仮にその水準を割り込んだ場合は、今年3月以降下値サポートとなった26週線(同:978円)がさらなる下値メドとして挙げられます。 (注1) 株価は修正株価でザラ場ベース。直近値は2023年9月1日。 図中の「〇週線」 とは移動平均線を指す。 (注2)株価表記について、2014年7月以降、一部の銘柄の呼値の単価変更により、小数点以下第1位まで表記しているものがある。(注3)トレンドラインには主観が含まれていますので、ご留意ください。またご投資に際しては、企業業績や投資尺度などテクニカル以外の要素についてもご確認ください。(注4)掲載している画像はイメージ。 (出所)東京証券取引所データより野村證券投資情報部作成 (野村證券投資情報部 丹羽 紘子) この資料は、投資判断の提供を目的としたものではなく、一般的なテクニカル分析の手法について記したものです。テクニカル分析は過去の株価の動きを表現したものであり、将来の動きを保証するものではありません。 また、記載されている内容は、一般的に認識されている見方について記したものですが、チャートの見方には解釈の違いもあります。 ・【チャート分析】NTT、52週線は上向き継続 ※画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点
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09/12 08:27
【モーニングFINTOS!】追加利上げへの警戒和らぎ米国株上昇(9/12)
海外市場の振り返り 11日の米国株式市場は、主要3指数が続伸となりました。イエレン財務長官が10日、「労働市場に大きな悪影響を与えることなくインフレ率を低下させる事が可能」と述べたことや、FRB高官の一部が利上げに慎重になりつつあるとの見解が一部メディアで報道され、追加利上げへの警戒感が和らぎました。また、自動運転用人工知能のために開発したスーパーコンピューター「Dojo(ドージョー)」の本格稼働が好感されたテスラが急伸し、全体を押し上げました。為替市場では、植田日銀総裁がマイナス金利政策解除の可能性に言及したと伝わり、日本の長期金利の先高観から円買いが広がり、一ドル=146円台半ばに上昇しました。 相場の注目点 米国株の上昇が日本株の支えになる一方、日本の長期金利の上昇が高PER株の重石となりそうです。今後は、9月19-20日にFOMC(米連邦公開市場委員会)を控え、米経済指標に相場が左右される展開が見込まれます。13日(水)に8月消費者物価指数、14日(木)に8月小売売上高など、重要統計の発表が相次ぎます。インフレの鎮静化、消費や景気の減速傾向が見られれば、金融引き締めが長期化するとの懸念が和らぎ、相場の支援材料となりそうです。 本日のイベント 石油輸出国機構(OPEC)及び米エネルギー情報局(EIA)が月報を発表します。足元では原油価格上昇によりインフレ圧力が強まることが懸念されており、原油の需給見通しなどが相場で材料視される可能性があります。 (投資情報部 坪川 一浩) (注)データは日本時間2023年9月12日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 ※画像はイメージです。 FINTOS!編集部オリジナル記事 【今週の米国株】”1ヵ月早い”アドビ&オラクル決算発表が大手ハイテク業績の試金石に/CPIを待ち構える市場(9/11) 【野村の投資判断】「景気敏感・バリュー・大型」の3要素が日本株をけん引 ご投資にあたっての注意点
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09/11 20:00
【今週の米国株】”1ヵ月早い”アドビ&オラクル決算発表が大手ハイテク業績の試金石に/CPIを待ち構える市場(9/11)
1分でわかる今週の米国株 先週は、原油価格上昇や市場予想を上回る米経済指標が散見されました。FRB(米連邦準備理事会)による金融引き締め政策の長期化への懸念が再燃し、米長期金利(10年債利回り)が上昇しました。米長期金利の上昇を受け、米国株3指数は前週末比で下落しました。 今週のPoint1. 「沈黙期間」に入る中、CPIが相場の焦点に 19日(火)-20日(水)に開催される9月FOMC(米連邦公開市場委員会)を前にFRB幹部は沈黙期間(金融政策に関する公の発言を自粛する期間)に入っており、経済指標の内容によっては、金融政策に対する思惑で株式市場が大きく反応することも考えられます。 今週、市場が最も注目する経済指標は13日(水)の8月CPI(消費者物価指数)でしょう。市場は総合指数で前年同期比+3.6%と7月の+3.2%から再加速を想定しています。市場予想の+3.6%(あるいは、エネルギーと食品を除くコア指数の市場予想である+2.2%)からの上振れは株価の重石に、下振れは株価の支援材料になり易いでしょう。 今週のPoint2.インフレを加速させ得る原油価格の上昇 足元では産油国の減産などにより原油価格が上昇、WTI原油価格は87ドル前後で推移しています。原油価格の高騰はインフレ率の上振れ要因となるため、上昇が続けば、過去の数字である(8月の)CPI以上に注目を集める場面があるかもしれません。野村の大越シニア・エコノミストは、2022年の原油価格動向を振り返り「ウクライナ紛争勃発に絡んだ暴騰から原油価格が下落した後、WTI原油価格が90ドルを超えた局面が2回ある」※と指摘します。 ※10月の中国共産党大会を前に、党大会後にゼロコロナ政策が解除されるとの期待が高まった/11/11(金)に中国が20項目の制限緩和措置を発表する前に、ゼロコロナ政策解除期待が高まった 「足元の環境も踏まえると、今後WTI原油価格が90ドルを超えて安定する、あるいは更に上昇するためには、中国の不動産セクターに対する有効なてこ入れ策が講じられ、中国景気が改善して一定の成長を続けられるような景気対策が追加実施される必要がある」と分析しています。減産が続く中で中国景気の底入れが確認されれば、さらなる原油価格上昇も想定されます。 今週のPoint3. “1ヵ月早い”アドビ、オラクルの決算が大手ハイテク業績の試金石に 米国は早くも6-8月期決算発表が本格化します。6-8月期決算企業数はS&P500企業ベースで全体の4%にすぎませんが、最も企業決算が集中する7-9月期決算(同、全体の89%)における業績を見通す上では重要な情報となります。足元の注目は11日(月)引け後発表のオラクルと、14日(木)引け後発表のアドビで、いずれも顧客企業のクラウドやソフトウェア投資の意欲を見る上で注目が集まります。 12日(火)にはアップルが新型iPhoneを発表する見込みです。中国による政府職員のiPhoneの使用規制が発表され、同社の株価は前週末比で約6%下落しています。新型iPhoneの発表そのものが中国における規制懸念を払しょくすることにはならないと思われますが、株価の底入れ材料の一つになるかは市場の関心事項と言えるでしょう。なお、2023年4-6月の売上高で見て、同社の大中華圏の売上高比率は約2割を占めていました。 (ここまで、「1分でわかる今週の米国株」) (FINTOS!外国株 小野崎通昭) ご投資にあたっての注意点
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09/11 17:00
【銘柄紹介】ZHD/三菱商事/ユニ・チャーム
Zホールディングス(4689) 情報・通信 構造改革が進展し新経営戦略を発表へ 2023年4~6月期は業務委託費や販促費など105億円の経費効率化を行い、赤字事業の売却・撤退による利益増効果は66億円となった。このため、調整後EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)は前年同期比16%増益の1,000億円に達した。 今期は7~9月期以降も業務委託費の削減や新規採用の停止など、経費効率化が進展する見通しである。また、赤字事業の更なる構造改革も期待できよう。 23年10月にはヤフー社とLINE 社の合併会社が発足し、新たな中期経営戦略が発表される予定である。ここでは、各事業の経営指標、利益目標、資本政策などが注目点となろう。 戦略、コマース、メディア事業の増益要因 戦略事業の調整後EBITDA は24.3期の173億円の赤字から25.3期に71億円の黒字転換が予想される。構造改革効果のフル寄与に加え、社会インフラとして定着したPayPayの連結EBITDAは24.3期の41億円から25.3期は194億円へ拡大しよう。 コマース事業では、23年11月新設予定のLYP プレミアム会員へLINE 顧客が移行し、ヤフーショッピング取扱高へのプラス効果が見込まれる。 メディア事業では、23年6月にLINE 公式アカウントで有料プラン移行を促進する料金体系変更を行っており、今後は有償アカウント数増加による広告収入増が予想される。 (野村證券エクイティ・リサーチ部 増野 大作) 三菱商事(8058) 卸売業 24.3期も利益水準は高い 原料炭やLNG(液化天然ガス)などの資源事業の他、自動車や食品事業にも強みを持つ総合商社。2023.3期はウクライナ紛争で商品市況が大きく上昇したことで資源分野の業績が好調だった。非資源分野でも新型コロナ影響による物流の混乱もあって幅広い分野で供給不足に陥ったことからトレード事業の利益率が改善した。24.3期は新型コロナ影響の緩和もあって、前期好調の反動は出ているが、4~6月期(1Q)の親会社株主利益は3,177億円と新型コロナ前の水準を大きく上回るなど高い利益水準が続いている。なお、1Q 実績の24.3期通期計画に対する進捗率は35%と計画に対しても順調な滑り出しとなった。 キャッシュ創出力の高さは際立つ 好調な業績動向に加えて資産売却に伴う資金回収もあって1Q 決算でのフリー・キャッシュ・フロー(純現金収支)が5,500億円の黒字となるなど、他商社との比較でキャッシュ創出力の高さが際立っている。商社各社に対しては、株式市場からの株主還元に対する期待が強いが、当社はキャッシュ創出力の高さを背景に株主還元余力が大きい。また、当社は業種内で唯一財務レバレッジに関して適正水準を投融資レバレッジ(投融資残高に対する資本と有利子負債の関係)として開示している。1Q末の投融資レバレッジは26.9%と、適正とする40~50%を下回る水準であり、追加的な株主還元施策に期待したい。 (野村證券エクイティ・リサーチ部 成田 康浩) ユニ・チャーム(8113) 化学 アジアNo.1の不織布・吸収体メーカー 子供、大人用紙おむつや生理用品等の不織布・吸収体製品でアジアトップシェアを有する企業。海外事業が業績を牽引しており、2022.12期の海外売上高比率は66%。現地の生活スタイルや商習慣に合わせた事業展開に強みを持つ。 近年の当社業績は、フェミニンケア、ウェルネスケア、ペットケアの高収益カテゴリーが牽引している。これらはベビーケアと対照的に対象人口等の拡大に伴うニーズの多様化から高付加価値化が進みやすい。当社は高いシェアや現地ニーズへの対応力の高さを背景に少子高齢化等による市場成長の恩恵を取り込み、収益性向上を伴う業績成長が可能と考える。 価値転嫁が浸透、原材料安も追い風に 23年4~6月期コア営業利益は前年同期比19%増の303億円。国内はベビーケアやペットケアを中心に海外と比較して出遅れていた価値転嫁が浸透。成長鈍化が懸念されていた中国もフェミニンケアが伸長し、国内外事業とも同約20%の増益となった。 7~9月期以降も日本初の妊活用おりものシート等、秋の新製品での継続的な単価向上の取り組みによる収益性改善が続こう。また、原油価格等の下落による原材料安も見込まれ、24.12期にかけて業績面での恩恵が享受できよう。野村では23.12期のコア営業利益を前期比16%増の1,385億円、24.12期を同15%増の1,590億円と2桁の増益が続くと予想している。 (野村證券エクイティ・リサーチ部 大花 裕司) ※野村週報 2023年9月11日号「銘柄研究」より ※掲載している画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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09/11 16:02
【イブニングFINTOS!】日経平均株価3日続落 日本10年債利回りは0.7%台に (9/11)
本日の株式市場 本日の日経平均株価は、前週末比83円高の32,690円で取引を開始し、その後間もなく本日の高値となる32,746円を付けました。前週末の米国株式市場で、ハイテク株を中心に主要3指数が揃って上昇したことが押し上げ要因となりました。 しかし、9日に植田日銀総裁の「2%の物価目標が達成可能とすれば、マイナス金利政策を解除する選択肢もある」との発言を含む報道を受け、日本の10年国債利回りは9年8ヶ月ぶりに0.7%台まで上昇しました。これに伴い、金利の先高観や円高ドル安への警戒が広がったことなどが株式市場への重石となり、日経平均株価は前週末比下落へと転じました。なかでも指数寄与度の高い値がさの半導体関連銘柄や高PERな成長株などの下落が目立ちました。日経平均株価は一時32,400円を割り込む場面もありましたが、引けにかけてやや下げ幅を縮小し、前週末比139円安の32,467円で本日の取引を終了しました。業種別では、銀行業や証券が植田日銀総裁の発言などを受けて、前週末比で上昇しました。 本日発表予定の海外経済指標等 特にありません。 (注)経済指標などの市場予想はブルームバーグによる市場コンセンサス予想。時間は日本時間。(出所)東京証券取引所等より野村證券投資情報部作成 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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09/11 12:00
【野村の投資判断】「景気敏感・バリュー・大型」の3要素が日本株をけん引
デフレ脱却に沿った物色動向 8月末以降、海外株式市場が軟調に推移する中、日本株の堅調さが目立ちました。けん引役となっているのは、景気敏感・バリュー・大型の3要素です。2023年5-6月の上昇局面では、高ROE(自己資本利益率)・輸出関連・大型という代表的な優良株が選好されていましたが、様子が異なっています。セクター別に見ると、金融や不動産が上昇しており、これは日本のデフレ脱却に対する投資家の期待を反映している可能性があります。 金融市場では、強すぎる米国景気への懸念もくすぶっています。米金利は上昇傾向にあり、グロース株を中心とした米国株に調整圧力がかかっています。一方、米金利上昇を受けたドル高・円安の進行は、日本の輸出関連株やインフレの恩恵を受けるセクターにとっては追い風となっています。 為替介入のリスクについて考慮することも必要です。介入によるセクター別の相対パフォーマンスへの影響は大きいですが、巨額の円買い介入が実施された昨年の9月22日と10月21日の動きを振り返ると、株価が一方的に下落するわけではありませんでした。 今後、9~11月には多くの海外投資家が日本を訪れる予定です。日本における値上げの定着を体感するとともに、内需株のポテンシャルを再評価することになるでしょう。野村證券では、不動産、システム・アプリケーション、インバウンド関連、食品セクターを引き続き推奨します。 (FINTOS!編集部) (注)画像はイメージ。 要約編集元アナリストレポート「日本株ストラテジー – 注目点とトピック(2023年9月7日配信)」(プレミアムプラン限定) 要約編集元アナリストレポートについて ご投資にあたっての注意点