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2022/06/24 15:00
【特集】日本企業の業績修正は製造業が好転へ
株価と密接な関係があるRI(リビジョン・インデックス)とは 株価は企業業績と密接な関係があり、特に業績の修正動向は重要な情報です。RI(リビジョン・インデックス)は、アナリストの業績修正の方向を示す指標で、作成機関により作り方は様々ですが、野村證券が集計するRIはゼロを境目に上方修正が優位であれば、値がプラスとなる指標です。四半期ごとの決算発表時に、会社から業績の情報が出ると、アナリストの業績修正が活発化してトレンドが形成され易くなります。一方、決算発表の谷間は、一般的に業績修正数は限定的ですが、この間の業績への見方を修正するアナリストの趨勢が反映されます。 (図)アナリストの業績修正動向を示すリビジョン・インデックスと日経平均株価 (注)RI(リビジョン・インデックス)は、2023.3期の業績に関するアナリストの業績修正に関する指標。対象企業は、ラッセル野村Large Cap(除く金融)の約260社。3の倍数月の月初を起点に、3-5月、6-8月、9-11月、12-2月のその四半期が終わるまでの期間中のアナリストの(上方修正件数―下方修正件数)/(修正件数の合計)の比率。分母の修正件数の合計が少ない3の倍数月の月初の10日間は除いている。データは日次で、直近の値は2022年6月22日。RIの図表右側の数字は、直近の値。(出所)野村證券市場戦略リサーチ部、ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 製造業の業績下方修正は織り込み一巡で次の局面へ 日経平均株価は2022年入り後、おおよそ27,000円を中心にレンジ相場が続いてきました。この間、2023.3期の業績を対象としたRIの推移をみると、ウクライナ紛争や資源価格の上昇、中国のロックダウン(都市封鎖)、サプライチェーン(供給網)の混乱などがあり、特に製造業で、これらの悪材料を織り込むように下方修正優位が続いてきました。足元では、製造業の業績下方修正の織り込みは一巡し、上方修正優位に転じています。業績修正数が少ないため、RIは今後大きく変化し得ますが、製造業の挽回生産や国内外のサプライチェーンの混乱解消が進めば、業績の好転が着実に進み、RIから業績上方修正優位が明確になるでしょう。 (野村證券投資情報部 小髙 貴久) ご投資にあたっての注意点
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2022/06/24 13:00
黎明期を迎える「アップサイクル」ビジネス(アグリ産業の視座)
ESG(環境・社会・企業統治)やSDGs(持続可能な開発目標)が浸透し始め、官民を挙げた食の「アップサイクル」への取り組みが活発化している。オイシックス・ラ・大地は、フードロス解決型の食ブランド「Upcycle by Oisix」を立ち上げた一方、東京都は5月31日に、2050年までに「食品ロス実質ゼロ」を目指し、フードテックを活用した食のアップサイクルを都と共同で実施する事業者の公募を開始した。 アップサイクルとは、本来不要となったものに新たな価値を付与・提供する取り組み。日本では古くから、廃棄するホタテの殻でチョークを製造するなど、「もったいない」の文化に根差したテーマであるが、ESGやSDGsが盛り上がり、グローバルで注目を集めるビジネス分野となっている。 海外投資家の当分野への関心も高く、最近では、食品廃棄物を動物用飼料に変換するプラットフォーム(需要者と供給者を結ぶネットワーク)を運営するDo GoodFoods(米国)が1億6,900万ドルを、麦の収穫で発生した藁から食物繊維等の栄養成分を取り出すComet Bio(英国)が2,200万ドルを、それぞれ資金調達した。 注目が高まる一方で、アップサイクルの課題は少なくない。特に開発された食品の多くが類似製品と比較すると高額であり、消費者のエシカル思考(倫理的思考)に依存しているのが現状である。開発製品が高額になる主な理由は、主原材料である食品廃棄物の効率的な確保が難しい点にある。 食品廃棄物等を「供給」する食品メーカーや食品小売・外食企業からみると、廃棄するものと供給するものを別途仕分け、保管するのはコスト要因でしかない。また、各工場や店舗などから供給される量も限られ、アップサイクルメーカーは広域での調達が必要となり、調達コストが嵩む。 このような課題解決に向けた一つの方法は、日々、食品廃棄物を生み出している大手食品メーカー自身の当分野への参入である。自社製品を製造した際に発生する廃棄物を原材料とし、既存物流網を活用することにより、最もコストのかからないアップサイクル食品を開発・提供が可能となる。 現在、黎明期にあるアップサイクル市場の需要側のすそ野を拡げて成長期に繋げるために、既存の食品供給網を活用した新たな取り組みが嘱望される。 (野村アグリプランニング&アドバイザリー 鈴木 拓実) ※ 野村週報2022年6月20日号「アグリ産業の視座」より 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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2022/06/24 08:30
【モーニングFINTOS!】米国株上昇 / 米10年債利回りは低下 (6/24)
米国市場の動向 米主要3指数は揃って上昇 23日の米国株式市場で、NYダウは前営業日比+0.63%、S&P500指数は同+0.95%、ナスダック総合指数は同+1.62%と主要3指数は揃って上昇となりました。ユーロ圏の6月マークイットPMIの結果を受け、インフレの高進や供給制約が欧州経済を減速させたとの見方が広がり、欧州株の重石となりました。欧米の6月のPMIが総じて悪化したことを受け、米国債利回りが低下したことから、米主要3指数は上昇して取引を開始しました。場中に、FRB高官のインフレ抑制に向けた強い姿勢を示す発言を受けて、金融引き締めによる景気減速への懸念が広がり、NYダウやS&P500指数は前日比で下落へ転じる場面もありました。ただ売り一巡後は、米国10年債利回りが3.08%付近での推移になったことからハイテク株の上昇が市場をけん引し、主要3指数は再度上昇へと転じると、この日の高値圏で取引を終了しました。 相場の注目点 日経平均先物CMEは日経平均の前営業日終値をやや上回る 日経平均先物CME終値は26,195円となりました。日経平均株価の6~8月の配当落ち約48円を考慮した場合、実質的なCME終値は26,243円と試算され、日経平均株価の前営業日終値(26,171円)をやや上回る水準です。前日の米国市場でハイテク株の上昇が目立ったことから、本日の国内市場でも成長株を中心とした銘柄が同様の展開になることが期待されます。ただ、フィラデルフィア半導体株指数は続落しているため、国内半導体関連株の動向には注意が必要です。加えて、景気後退の懸念が高まり、WTI原油先物価格が続落したことなどから、東京市場のエネルギー関連株は相対的に軟調な展開が予想されます。 足もとのドル円相場は1ドル=134円80銭台と、前営業日の15時の135円60銭前後から円高です。円高を受け輸出関連株を中心に、日本株への影響に注目されます。 欧米で経済指標発表などが相次ぐ ドイツでは6月Ifo企業景況感指数が発表されます。エネルギーなど供給制約が強まる見通しの下、前月まで2ヵ月連続で予想外の改善となった反動が表れるかにも目配りが必要です。 米国では、インフレの状況を確認する上で、ミシガン大学による6月消費者期待インフレ率調査確報値(24日)や、翌週の6月コアPCE(個人消費支出)デフレーター(30日)などが注目されます。また、本日はセントルイス連銀ブラード総裁が講演を行い、翌朝方にはサンフランシスコ連銀デイリー総裁も講演を行う予定で、金融政策の見通しについて発言が出るか注目です。 FINTOS!編集部オリジナル記事 ・前日の特集:マーケット関係者に読まれた野村レポート10選(6/23) ・前日の厳選レポート:米利上げと新興国/石炭ロイヤリティ/非メモリ半導体【編集部厳選レポート3本】 ・前日の特集:中国景気の悪化が日本の輸出を大きく下押し(経済データの読み方) ・配信スケジュール:【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事の配信スケジュール ご投資にあたっての注意点
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2022/06/23 16:30
【イブニングFINTOS!】日経平均株価は小幅反発、中国の景気刺激策が下支え(6/23)
本日の株式市場 前日の米国株式市場では、パウエルFRB議長が物価安定のための急速な利上げが景気後退につながるとの可能性を率直に述べたものの、主要3指数は小幅な下落に留まりました。日経平均株価は、前日比14円安の26,134円で取引を開始し、内需株や空運株などを中心に国内の経済再開期待から上昇に転じました。加えて、中国政府当局が自動車消費の刺激策を拡大する方針を示し、上海株が上昇したことも好感され、日経平均株価は午前中に本日高値となる前日比252円高の26,401円を付ける場面もありました。ただその後、為替が1ドル=135円台前半へ円高が進むと、日経平均株価は本日の始値付近まで下落し、方向感に欠ける相場展開となりました。 午後の取引では、中国株式市場の上昇加速が支えとなり、日経平均株価は安値から持ち直して、前日比21円高の26,171円で本日の取引を終了しました。個別銘柄では東芝に対して1株7,000円で買収を検討しているファンドがあると報じられ、当社株は前日比+3.54%の上昇となりました。 本日発表予定の海外経済指標等 (米国)6月マークイットPMI (製造業) 前月:57.0 予想:56.0 (サービス業) 前月:53.4 予想:53.3(ユーロ圏)6月マークイットPMI (製造業) 前月:54.6 予想:53.8 (サービス業) 前月:56.1 予想:55.5(ドイツ)6月マークイットPMI (製造業) 前月:54.8 予想:54.0 (注)経済指標などの市場予想はブルームバーグによる市場コンセンサス予想。時間は日本時間。(出所)東京証券取引所等より野村證券投資情報部作成 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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2022/06/23 13:00
中国景気の悪化が日本の輸出を大きく下押し(経済データの読み方)
2022年4月の実質輸出(財務省貿易統計ベース。実質化と季節調整は野村による。)は前月比-4.0%と、3月の同+0.6%から減少に転じた。足元の輸出は悪化している。 4月の実質輸出を国別に見ると、中国向け輸出が前月比-9.1%と大幅に悪化したほか、米国向け(同-2.2%)やEU(欧州連合)向け(同-1.4%)も減少した。 加えて、制裁対象となっているロシア向け輸出は同-47.4%と、3月(同-40.8%)に続き大幅に減少した。本格的な制裁強化の直前にあたる2月以降、ロシア向けの輸出規模は4分の1程度まで縮小している。 中国向け輸出の減少に関しては、同国内におけるロックダウン(都市封鎖)の影響により、生産活動や物流が停滞していることが主因と考えられる。 4月の実質輸出の内訳を品目別に見ると、化学製品(前月比-8.9%)や電気機器(同-4.5%)、一般機械(同-4.0%)などが前月比減少に大きく寄与した。一方、自動車輸出(同+3.4%)は増加に転じた。供給制約の影響が緩和してきていることが背景として考えられる。ただ、中国国内のロックダウンが再び供給制約を生じさせていることから、目先で自動車輸出には減少圧力が加わる可能性が高い。実際、5月の国内新車販売台数(野村による季節調整値)は同-19.6%と大きく減少した。 中国国内のロックダウンの影響から、22年4~6月期の輸出は大きく下押しされる可能性が高い。GDP(国内総生産)ベースの財貨・サービス輸出は、前期比-2.8%の減少になると野村では予想している。供給制約の緩和に伴い、その後の輸出は回復に向かうと考えられるが、世界的なインフレ高進が海外景気の減速を通じて日本の輸出を下振れさせるリスクに注意が必要である。 (経済調査部 伊藤 勇輝) ※ 野村週報2022年6月20日号「経済データを読む」より 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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2022/06/23 08:25
【モーニングFINTOS!】意外と重要な米3-5月期決算、きょうアクセンチュアやダーデン・レストランツ(6/23)
海外市場の動向 主要3指数は揃って小幅反落 景気後退への懸念が重石 22日の米国株式市場で、NYダウは前日比-0.15%、S&P500指数は同-0.13%、ナスダック総合指数は同-0.14%と主要3指数は揃って小幅に反落しました。この日の米国株式市場は、パウエルFRB議長の議会証言を無難に通過したものの、金利引き上げによる景気後退への懸念が重石となりました。 相場の注目点 パウエル議長発言は「サプライズなし」で、注目は経済指標へ パウエルFRB(米連邦準備委員会)議長の姿勢は、先週の6月FOMC(米連邦公開市場委員会)と大きく変わりませんでした。2%インフレへの回帰に強くコミットとした一方、今後の利上げペースはデータ次第としています。FRB高官の発言も相次いでいますが、0.75%ポイントか0.50%ポイントの利上げを示唆と、大きなサプライズにはなりませんでした。 実際の「データ」を確認する上では、きょう23日(木)発表の各国PMI速報値や、明日24日(金)の6月ミシガン大学消費者センチメント指数確定値に併せて発表される、消費者の期待インフレ率などが注目されます。 意外と重要な米3-5月期決算、きょうアクセンチュアやダーデン・レストランツ 米国の3-5月期決算が本格化しています。S&P500全体でみれば、同決算期に該当する企業は4%と多くありませんが、89%を占める4-6月期決算企業に向けた観測気球としては重要です。本日23日(木)発表では、法人向けのデジタル関連投資の動向を見る上ではアクセンチュア(ACN)、外食などサービス業の事業環境をみる上ではダーデン・レストランツ(DRI)などの決算が挙げられます。 なお、今週発表のあった住宅大手2社(レナー()、KBホーム)では、いずれも一株当たり利益は市場予想を上回りました。新築住宅着工件数など経済指標は軟調な内容が続いていますが、KBホームでは通期の売上高見通しを維持するなど、必ずしもマクロから見たセクターとミクロから見たセクターの印象が一致しない場合があり、米国の3-5月期決算発表は企業業績から見た投資を考えるヒントになりそうです。 FINTOS!編集部オリジナル記事 ・前日の特集:【特集】日本の長期金利上昇は株式市場に痛手か? ・厳選レポート:前工程装置需要は2極化/中国スマホ出荷動向/米国経済見通しの改定【編集部厳選レポート3本】 ・配信スケジュール:【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事の配信スケジュール ご投資にあたっての注意点
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2022/06/22 20:00
【特集】日本の長期金利上昇は株式市場に痛手か?
日本の金利動向に注目が集まっています。日本の金利上昇が株価に痛手になるとの見方もありますが、本当なのでしょうか?野村證券の伊藤 高志シニア・ストラテジストが解説します。 日本の株式益利回りと長期金利の関係 長期金利の水準にかかわらずイールドスプレッドはほぼ一定 2000年代以降の株式益利回りと長期金利の関係を確認すると、①長期金利が上昇すると、益利回りが低下(PERが上昇)する傾向が強く、同時に、②イールドスプレッド(益利回り-長期金利)は長期金利の水準にかかわらずほぼ一定となっています。 (図)日本の10年国債利回り、TOPIX益利回りと株式リスクプレミアム (注1)株式リスクプレミアムは、予想EPSを株価で割った益利回り(予想PERの逆数で、株価の価値を測る尺度に利回りの概念を用いる)と安全資産である国債利回りの差。リスクフリーの金利に対する株式の超過リターンを指す。(注2)データは月次で、直近値は2022年6月8日時点。(出所)野村證券市場戦略リサーチ部より野村證券投資情報部作成 長期金利が上昇すると、市場では「金利上昇で株価に痛手」という見方が短期的に広がりがちですが、実際は長期金利の上昇は実体経済の好調を反映したものであり、企業の将来の利益拡大を先取りする形で益利回りが低下(PERが上昇)すると考えられます。また金利水準に変化があっても、株式のリスクプレミアム(≒イールドスプレッド)は短期的に大きく変動しない、というルールもしっかり守られているようです。 1980年代後半~1990年代初頭の資産バブル期には、益利回りと長期金利の間に現在ほど密接な関係は見られず、同時に長期金利よりも益利回りのほうが低水準、という現象が恒常化していました。高い持ち合い比率など株式の保有構造が現在と異なっており、『長期金利(債券)に対してリスクが高い分、益利回りも高い』という関係が機能していなかったと考えられます。 (野村證券投資情報部 伊藤 高志) ご投資にあたっての注意点
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2022/06/22 18:30
円安、賃金とインバウンドの関係(市場展望)
黒田日銀総裁は賃金インフレを後押し 「円安とインフレ加速」の可能性に注目が集まっている。6月7日に発表された毎月勤労統計では、4月の所定内給与が前年同月比+1.1%まで上昇、日本でも賃金インフレの可能性が高まっていることを印象付けた。これまで恒常的に日本の賃金上昇率に下押し圧力を加えてきたパートタイム比率が頭打ちにあるなど、労働需給のひっ迫が素直に賃金上昇につながりやすい状況が整っている。一方、黒田日銀総裁は6月6日の講演で「家計が値上げを受け入れている間に賃金の本格上昇にいかにつなげていけるかが当面のポイント」と述べ、賃金上昇を促す観点からも、円安の一因となっている日銀の金融緩和姿勢を変えない方針を示した。生産コスト上昇型の「悪いインフレ」を「良いインフレ」につなぐ存在として、インバウンド(訪日外国人)関連は有力と考える。 以下、インバウンドの潜在力が大きいとみる材料を2点取り上げる。 第1に、円安効果もあって日本の物価水準が世界的に見て極めて低い。この点はビッグマック指数(英エコノミスト誌、2022年1月)をみると分かりやすい。日本はスイスのおよそ半値、米国の約6割である。外国人客を誘引する要因であると同時に、インバウンド関連ビジネスには、価格引き上げの余地が大きいことを示唆している。 第2に、インバウンドはコロナ禍の直前まで急成長していたことを思い出したい。12年~19年の7年間で、訪日外国人客数は3.8倍に膨れ上がった。同期間の米・仏は1.2倍、1.1倍だったのとは異なる。 以上の2点は、リオープン(経済活動の再開)関連株の騰落率が市場平均を上回る期間が、欧米の場合(20年11月から半年程度)に比べ、日本では長続きしえる理由と考える。市場の織り込み具合はどうか。インバウンド関連銘柄の株価騰落率から推定される訪日外国人客数の織り込みは、コロナ前のピークを15%下回った水準にとどまっている。将来にわたって「インバウンドは元に戻らない」という株価形成となっており、再評価の余地は大きいと考える。野村では、業績好調な電機・精密および、リオープン関連としての運輸、不動産の計3業種を注目している。 22年度は実質6.9%経常増益予想 21年度のラッセル野村大型株指数(以下、RNL)の企業業績は、前年度比14.1%増収、同34.1%経常増益となった。20年度にはソフトバンクグループの投資事業利益が、21年度には同損失がそれぞれ大きく計上された。同社を除くと同58.7%の経常増益であった。21年度は19業種中16業種で経常増益、3業種で経常減益となった。増益寄与が大きかったのは、資源分野で原油や鉄鉱石、原料炭市況の上昇が続いた商社、旅客回復や海運が好調の運輸、石油が寄与した化学などである。 22年度予想は、前年度比10.3%増収、同11.1%経常増益である。ソフトバンクグループを除くと同6.9%の経常増益である。22年度も新型コロナ前の5年間経常利益の平均成長率(13年度を起点に18年度まで、年率4.7%)をやや上回る予想だ。 22年度は19業種中14業種で経常増益、5業種で経常減益を予想している。増益寄与が大きいと予想するのは、ソフトバンクグループの投資損失の剥落が主因となる通信、旅客回復が見込まれる運輸、半導体拡販見通しの電機・精密などである。 22年度の予想経常利益総額は3月2日集計時点から1.4%下方修正と、同年度の予想値を集計して以来、初めての下方修正となった。特に自動車セクターの下方修正金額が大きい。トヨタ自動車が原材料高に対してサプライヤー(部品納入業者)の負担も受け入れるという異例の対応を行ったことなど、個社要因が強かったともいえる。 ただ、業績予想修正動向を社数ベースで集計したリビジョンインデックスは、今回の集計で-8.7%と20年9月以来のマイナス(下方修正優位)に転じた。 業績見通しの上方修正は一巡したものの、予想する利益水準は高い。RNL構成銘柄のうち直近10年間(12~21年度)の経常利益が比較可能な銘柄を対象に集計すると、21年度は過去最高益(18年度)を15.7%上回り、22年度は28.6%上回ると予想している。こうした利益水準の高まりの背景には収益性の改善がある。RNL(除く金融)の売上高経常利益率はこれまで17年度の8.3%が最高水準であった。21年度の同利益率は9.0%と17年度を上回り、22年度には9.4%とさらに上昇する予想である。①コロナ禍の需要減の中で各社が費用削減努力を進めたこと、②サプライチェーン(供給網)のひっ迫が企業の価格交渉力向上をもたらし、かえって収益性改善に繋がったこと、などが要因として挙げられる。 (市場戦略リサーチ部 池田 雄之輔) ※ 野村週報2022年6月20日号「焦点」より 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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2022/06/22 16:30
【イブニングFINTOS!】日経平均小幅安、円安進行もFRB議長証言控え様子見(6/22)
本日の株式市場 本日の日経平均株価は前日比195円高の26,441円で取引を開始し、開始直後に本日の高値、26,462円を付けました。前日の米国株式市場で、主要3指数が揃って上昇したことに加え、円相場で1米ドル=136円台と円安が進んだことが好感されました。しかし、足元で上昇が目立っていた半導体関連株や機械株の一角が下落に転じたことなどが相場の重石となり、日経平均は前日終値を挟んで一進一退となりました。後場に入ると、米国時間の22日にパウエルFRB議長の議会証言を控え、様子見姿勢が強まり、小幅な値動きとなりました。結局、前日比96円安の26,149円で本日の取引を終了しました。 東京33業種別指数では21業種が下落し、下落率上位は鉱業、海運業、卸売業でした。一方、12業種が上昇し、医薬品、ゴム業、電気・ガス業が上昇率上位となりました。 本日発表予定の海外経済指標等 米国:パウエルFRB議長半期議会証言 シカゴ連銀エバンス総裁講演(23日1:50) フィラデルフィア連銀ハーカー総裁講演(23日2:30)ユーロ圏:6月消費者信頼感指数 前月:-21.1 予想:-20.5 (注)経済指標などの市場予想はブルームバーグによる市場コンセンサス予想。時間は日本時間。(出所)東京証券取引所等より野村證券投資情報部作成 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点