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【オピニオン】円安と日銀の金融政策を巡る関係

※画像はイメージです。 2024年4月29日、ドル円相場は一時1ドル=160円台と34年ぶりの円安水準を更新しました。その直後には本邦通貨当局が為替介入を実施したと見られ、155円を割り込む場面もありました。5月1日には158円近辺で再び為替介入が行われた模様で、5円程度円高が進行するなど、ドル円市場は市場の円安圧力と本邦通貨当局の為替介入との間で変動の激しい相場展開を続けています。 円安ドル高の主因は日米金利差の拡大だと見られますが、足元で円安が加速した契機として、円安に対する植田日銀総裁の様子見姿勢が挙げられます。日銀は4月25-26日の金融政策決定会合で、予想通り政策金利を据え置きました。市場では円安を牽制する意味もあり、国債買入ペースの減額に関する何らかの示唆があるのではないかとの見方もありましたが、この点についても日銀からは特段アナウンスはありませんでした。 会合後の記者会見で植田総裁は、今後の金融政策運営に関して「経済・物価見通しが実現し、基調的な物価上昇率が上がっていくとすれば、金融緩和度合いを調節していくが、当面は緩和的な金融環境が継続すると考えている」と、従来の政策姿勢を繰り返しました。円安に関しては「基調的な物価上昇率への大きな影響はないと、みなさん(日銀の政策委員)が判断した」と述べ、差し迫った警戒感を示しませんでした。 植田総裁は23年4月の総裁就任以降、円安進行時にタカ派的(金融緩和解除に積極的)な発言を行い、円安をけん制する姿勢を見せてきました。このことから、植田総裁の様子見的発言が、「円安阻止を意図して日銀が早期利上げを実施する可能性は低い」との見方を喚起し、円安につながったと見られます。 日銀は政策判断のと主柱として「基調的な物価上昇率」の動向を据え、この点において足元の円安の影響は小さいと判断しています。輸入物価の前年比上昇率を前回為替介入を実施した2022年と比較すると、足元で輸入物価の上昇率はゼロ近辺にあり、円安による影響をとっても22年時の半分程度であることがわかります。 植田総裁は5月7日、岸田首相との会談後、円安についても協議したことを認め「経済・物価に潜在的に大きな影響を与え得るものであり、最近の円安について日銀の政策運営上、十分注視していくことを確認した」と、やや円安を警戒するトーンを強めました。円安基調に変化が見られなければ、植田総裁の発言はタカ派色が色濃くなる可能性がありそうです。ただし、政策判断においては基調的な物価動向が最重要である点に変わりはありません。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注)データは月次で、直近値は2024年3月。円安の影響は契約通貨建てと円建て輸入価格の前年比上昇率の差。(出所)LSEGより野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点

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