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【来週の米国株】重要イベント通過、「もしトラ」織り込みタイミングと減税の影響は(5/3)

※執筆時点 日本時間2日(木)12:00 今週:FOMCと大手IT決算発表一巡 ※4月26日(金)-5月2日(木)4営業日の騰落 FOMC(米連邦公開市場委員会)と大手IT企業の決算発表を総じて無難に消化したものの、経済指標ではインフレ再燃が示唆されたことで米長期金利(10年国債利回り)は高い水準で推移し、株価の重石となりました。 FOMCは「タカ派化」を回避 FRB(米連邦準備理事会)は4月30日(火)~5月1日(水)にFOMCを開催し、市場の予想通り全会一致で金融政策の据え置きを決定しました。政策の据え置きは6会合連続です。FRBはまた、米国債のランオフ(償還に伴う保有証券減少)のペースを現在の月間最大600億ドル相当から、6月からは250億ドル相当へ減額する計画を提示しました。 FOMC声明文では「ここ数ヶ月、委員会が目指す2%のインフレ目標に向けた一段の進展は見られていない」との記述が追加された一方で、次の一手が利上げとなる可能性は低いとの見解を明らかにしました。 市場の一部ではFRBがタカ派姿勢を強めるとの懸念があったため、上記の内容は株式市場に好意的に受け止められました。 重要指標「雇用コスト指数」が上振れ、インフレ懸念続く FRBの「タカ派化」が回避されても米長期金利が低下しない背景には、経済指標ではインフレを示唆する内容が多いことが背景にあります。 一例として、FRBが賃金指標として重視している雇用コスト指数(4月30日(火)、四半期に1回発表)は、1-3月期に前四半期+1.2%の上昇となり、市場予想(同+1.0%)を上回りました。セクター間、組合員・非組合員間のばらつきも少なく、上振れが単なる季節的なノイズ(例外的な歪み)である可能性は低いと考えられます。 一般的に、賃金上昇率は物価全般の動向に遅行する傾向がありますが、飲食サービスやヘルスケアサービスなどの特定の業種における賃金の伸びは関連する項目のインフレと連動するか、これに先行する傾向があります。野村では2024年7月と12月の2度の利下げの予想を維持していますが、利下げ開始時期後ずれのリスクを高める材料だったと言えます。 大手IT決算は総じて堅調 他方、決算発表は総じて順調です。メタ・プラットフォームズを除いて、発表となったマグニフィセント7(アップル、マイクロソフト、アマゾン・ドットコム、テスラ、アルファベットの5社。エヌビディアは決算期が1ヶ月ずれている)の株価は全て決算発表後の時間外取引で上昇しました。業績面で特徴的だったのは、大手クラウド3社(アマゾン・ドットコム、マイクロソフト、アルファベット)のクラウド事業の売上高が全て市場予想を上回った点です。生成AIがけん引役となり、クラウド事業が再成長し収益に貢献していることがうかがえます。一方で、テスラは決算発表後の株価こそ上昇したものの、自動車部門などの主要部門の売上高が市場予想を下回る結果となりました。アマゾン・ドットコムも北米外の小売部門の売上高が市場予想を下回るなど、堅調な北米経済以外では綻びもあることには注意が必要です。全体で見ても、売上高純利益のポジティブサプライズ比率は直近4四半期を下回っています。 (注1)ポジティブサプライズ比率は、S&P 500 企業のうち決算実績がアナリスト予想平均を上回った企業の比率。2024年1-3月期には、2023年12月-2024年2月期決算、2024年2-4月期決算企業も含む。 (注2)直近4四半期平均とは2023年1-3月期~2023年10-12月期の平均。長期平均とは、売上高は2002年以降、純利益は1994年以降の平均。 (注3)LSEG(旧リフィニティブ)による2024年4月26日時点(売上高について229社、純利益について229社)の集計。 (出所)LSEG(旧リフィニティブ)より野村證券投資情報部作成 決算内容は今後アナリストのレーティング・目標株価に反映されます。個別企業の決算内容を確認し次の選別投資につなげていく局面と考えられます。 今週のポイントは1点です。 ミシガン大学調査でインフレ見通しを確認 10日(金)にミシガン大学調査による5月消費者マインド速報値が発表されます。調査には1年後・5年後のインフレ見通しが含まれるため、足元の賃金上昇が消費やインフレ見通しにどのような影響を与えているかを確認することができます。ソフトデータではあるものの、インフレ再燃が懸念される現在の環境では、市場の注目が高いと考えられます。 米国大統領選の株価への影響は いよいよ米大統領選まで半年あまりになりました。野村では、過去の大統領選での株価への織り込みタイミングをふまえると、今後数ヶ月のうちに織り込みが本格化していく可能性が高いと考えています。サイズファクターや、エネルギーセクターの動向から推計すると、2016年(トランプ氏/クリントン氏)は4-6月に、2022年(バイデン氏/クリントン氏)では5月後半~6月に織り込みが進みました。 減税は明らかに企業業績にインパクト バイデン氏、トランプ氏双方の政策の方向性をみると、追加関税の実施、石油・天然ガスの採掘制限の規制緩和など、各業種で有利不利という点はまちまちであるものの、米株式市場全体にとっては、法人減税に対する政策の違いが重要な相違点の一つと考えられます。今回は法人減税に対する政策の違いをテーマに、株式市場全体への影響についての野村の分析を紹介します。双方の法人減税政策の違いについては、バイデン氏が現在の21%から28%に増税すると公言しているのに対して、トランプ氏は現状の税率を維持する方向であり、この政策自体は明らかに企業業績へのインパクトがあると考えられます。 2018年減税時、法人税は売上高の1.1%減少した トランプ氏が2018年から法人税減税を導入したときを参考にすると、売上高に占める法人税の割合は、18~19年の平均値が12~17年の平均値より1.1%減少していることがわかります。減税効果の代替指標を純利益率の増加幅と営業利益率の増加幅の差としたうえで、トランプ氏が2018年から法人税減税を導入した前後の期間をもとに分析すると、①実効税率が相対的に高く、②時価総額が大きい企業ほど、業績面でみた減税の効果は大きいと推計されます。また短期的には、ファクター面では小型のバリュー銘柄やクオリティ銘柄がアウトパフォームしやすいと想定しています。 トランプ大統領政策のリスクは「インフレ」 もっとも、減税は株式市場にとって良いことだけではありません。特にインフレが高水準にあった今次局面において、減税は企業の設備投資を促し、景気過熱を助長しかねず、インフレが一層加速してしまうリスクもあることには注意が必要です。 (野村證券投資情報部 小野崎 通昭) ご投資にあたっての注意点 要約編集元アナリストレポートについて 野村オリジナル記事の配信スケジュール

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