〇オピニオン
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03/20 12:00
【投資と税金】超富裕層に対する追加課税 ミニマムタックスって何?
2025年度の予算審議で注目された様々な年収の「壁」。そのほかにも「1億円の壁」があることをご存じでしょうか?所得税負担率が、所得の増加に伴い逆に低下する現象を指します。格差是正のため、2025年分の所得税から導入される超富裕層へのミニマムタックスについて、大手町トラストの税理士に伺いました。 (注)画像はイメージです。 はじめに 2023年度税制改正において、「極めて高い水準にある高所得者層に対する負担の適正化のための措置」が創設されました。超富裕層に対する追加課税措置のことで、「ミニマムタックス」とも呼ばれています。この改正は、2025年分以後の所得税について適用されます。 制度創設の趣旨 合計所得金額が1億円を超えるような高所得者層では所得に占める金融所得等の割合が高いことにより、所得税負担率が低下する状況がみられ、「1億円の壁」と呼ばれています。所得税において、最高45%の累進税率(総合課税)が原則とされる一方、株式などの金融所得や不動産の譲渡所得に係る税率が比例税率(分離課税)となっているためです。こうした「1億円の壁」の問題を是正し税負担の公平性を確保するのが本制度が創設された理由です。 適用要件等 (1)(基準所得金額※1 - 3億3,000万円 )× 22.5%(2)基準所得税額※2(3)(1)が(2)を超える場合に、その超える金額に相当する所得税が課されます。 ※1 「基準所得金額」とは、その年分の所得税について申告不要制度を適用しないで計算した合計所得金額 (その年分の所得税について適用する特別控除額を控除した後の金額)をいいます。 ・「申告不要制度」とは、以下の特例を指します。 ①確定申告を要しない配当所得等の特例 ②確定申告を要しない上場株式等の譲渡による所得の特例 ・「合計所得金額」には、預貯金からの利子などの源泉分離課税の対象となる所得金額を含まないこととされ、スタートアップ再投資やNISA関連の非課税所得も含みません。 ※2 「基準所得税額」とは、その年分の基準所得金額に係る所得税の額(分配時調整外国税相当額控除及び外国税額控除を適用しない場合の所得税の額とし、附帯税及び上記(3)により課す所得税の額を除く。)をいいます。 財務省パンフレット「令和5年度税制改正」より むすびに 本改正の影響を受けるのは、金融資産等の運用収益や不動産等の譲渡所得(分離課税対象所得)が多額に上るケースになります。例えば、M&Aや事業承継、相続にあたって自社株の譲渡が発生するような場合は、本改正を踏まえた税負担への検討も必要となってきます。 この資料は情報提供を唯一の目的としたもので、投資勧誘を目的として作成したものではありません。この資料は信頼できると考えられる情報に基づいて作成しておりますが、野村證券は、その正確性および完全性に関して責任を負うものではありません。この情報は、ご覧いただいたお客様限りでご利用いただくようお願いいたします。詳しくは、所轄税務署または顧問税理士等にご確認ください。 ご投資にあたっての注意点
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03/19 16:50
【野村の夕解説】日経平均株価は日銀会合後勢い失い安値引け 93円安(3/19)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 本日寄り付き前に発表された1月の機械受注統計で、設備投資の先行指標とされる船舶・電力を除く民需は前月比で-3.5%となりましたが、持ち直しがみられるとの基調判断は維持され、影響は限定的でした。日経平均株価は前日比6円安の37,839円で始まり、値がさの半導体株の上昇が追い風となり、日経平均株価も上げに転じました。前場終了直前、日銀の金融政策決定会合の結果が公表され、市場の事前予想通り政策金利の据え置きが発表されました。結果を受け外国為替市場では一時乱高下があったものの、1米ドル=149円台半ばから大きく外れることはありませんでした。日経平均株価は結果公表直後の前場引け時に前日比283円高となったものの、日本時間20日(木)未明に米国で公表されるFOMCの結果発表を控え、また同日は東京市場が休場となることから手控えムードが広がりました。引けにかけては徐々に上げ幅を縮小させ再度下げに転じ、大引けは前日比93円安の37,751円で安値引けとなりました。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注) データは15時45分頃。米ドル/円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。米ドル/円は11:30~12:30の間は表示していない。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 20日(木)の日本市場は春分の日で休場です。日本時間20日(木)未明に、FOMCの政策金利の見通しが発表されます。日本と同様、今会合では政策金利の据え置きが予想されています。パウエルFRB議長の記者会見で、今後の金融政策についてどのような見解が披露されるかが注目です。 (野村證券投資情報部 清水 奎花) ご投資にあたっての注意点
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03/19 08:19
【野村の朝解説】FOMC結果公表を控え、米国株は反落(3/19)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り トランプ米大統領の関税政策を巡る先行き不透明感や米国の景気減速懸念が引き続き相場の重石となるなか、18日の米国株式市場で主要3指数は揃って反落しました。NYダウは前日までの2営業日で1,000ドル余り上昇していたものの、この日はリスク心理の流れが一服し、持ち高調整の動きもみられました。トランプ大統領とプーチン大統領の電話協議では、ロシアとウクライナの停戦交渉において一部進展がみられましたが、FOMCの結果公表を翌日に控えた様子見機運が広がるなかで、NYダウは前日比260ドル安で引けました。 相場の注目点 本日は日米金融政策が焦点となりますが、いずれも政策金利据え置きがほぼ確実視されています。米国では19日のFOMCの結果に加えて、政策金利見通しの変化や、先行きの利下げ再開に関するパウエル議長の発言が注目されます。米国の景気減速懸念がくすぶるなかで、4月2日には米国による相互関税の発動も予定され、市場はFRBに対する利下げ期待を維持しています。一方で、FRBは米国の景気減速への対応とあわせて、関税によるインフレ再燃リスクにも目を配る必要があります。現在、市場は2025年中に2~3回程度の利下げの可能性を織り込んでいますが、早期の利下げに慎重な姿勢が維持された場合は、リスク心理の悪化が相場の重石となる可能性もありそうです。 本日のイベント 本日は日米金融政策の結果が公表されます。また、日本では1月の機械受注や2月の訪日外国人客数が発表されます。 (野村證券 投資情報部 引網 喬子) (注)データは日本時間2025年3月19日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 ご投資にあたっての注意点
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03/18 16:25
【野村の夕解説】バフェット効果再び、日経平均株価448円高(3/18)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 前日引け後に、著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いる米バークシャー・ハザウェイが日本の5大商社株を買い増したことが判明しました。このことが日本株への注目につながるとの期待から、本日の日経平均株価は前日比472円高の37,868円で取引を開始しました。前日の米国株高も追い風となり、商社株をはじめ幅広い銘柄の上昇に押し上げられ、日経平均株価は一時2月27日以来約3週間ぶりに38,000円を上回る場面もありました。しかし、4月2日の米国による相互関税の発動など、トランプ政権の政策が世界景気に与える悪影響への懸念も根強く、強弱感拮抗となり37,900円近辺で一進一退を続けました。日米の金融政策決定会合を明日に控え、引けにかけては様子見機運も広がり、前日比448円高の37,845円と3営業日続伸して取引を終えました。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注) データは15時45分頃。米ドル/円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。米ドル/円は11:30~12:30の間は表示していない。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 3月17-21日に米国で開催される会議「NVIDIA GTC 2025」において、日本時間19日午前2時からエヌビディアのジェンスン・フアンCEOが講演を行います。AI向け半導体開発のトップランナーの講演が、株式市場の期待を喚起する内容となるか注目されます。経済指標では、日本で19日に1月機械受注、2月訪日外国人客数が発表されます。他にも、日米ともに18-19日に開催されている金融政策決定会合の結果発表が予定されています。 (野村證券投資情報部 神谷 和男) ご投資にあたっての注意点
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03/18 08:16
【野村の朝解説】消費減速懸念緩和で米国株は続伸(3/18)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 17日の米株式相場は続伸。寄り前に発表された2月小売売上高が消費減速懸念を緩和させる内容だったことから、市場の安心感につながったようです。2月の小売売上高は前月比+0.2%と市場予想の同+0.6%を下回ったものの、1月の同-1.2%から反発、GDPの算出に使用されるコントロールグループでは同+1.0%と堅調でした。為替市場では、米ドルが主要通貨に対して下落する中、円に対しては上昇するなど、先行き懸念の緩和を示唆する動きとなりました。 相場の注目点 18~19日に、日本では日銀の金融政策決定会合、米国ではFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催されます。市場ではどちらも金融政策の据え置きが予想されており、FRBの政策金利見通しと、FOMC後のパウエルFRB議長の記者会見に注目が集まっています。17日の米国株は続伸したものの、トランプ政権の関税政策を巡る不透明感から、市場は「関税疲れ」といった様相を呈しており、「次の利下げタイミングを探りたい」との思惑が高まっているようです。FRBは24年12月FOMC会合で、25年中に2回の利下げ見通しを示しました。野村證券では、政策金利見通しは据え置きを予想しています。また、これまでパウエル議長は「利下げを急ぐ必要はない」との姿勢を示してきました。同氏の政策スタンスに変化がないことを確認するだけにとどまれば市場では失望感が広がるリスクがあります。トランプ政権の政策を見定めたうえで、「利下げの可能性もあり得る」と言った発言が聞かれるかどうかが注目されます。 本日のイベント 日米で金融政策会合の初日。米国では2月住宅着工統計、鉱工業生産統計が発表されます。 (野村證券 投資情報部 尾畑 秀一) (注)データは日本時間2025年3月18日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 ご投資にあたっての注意点
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03/17 16:38
【野村の夕解説】日経平均株価343円高 米株高と円安進行が支えに(3/17)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 14日の米国株市場は、関税政策に新たな悪材料が無かったことに加え、短期的な株価の大幅下落により米主要3指数は自律反発しました。この流れを引き継ぎ、本日の日経平均株価は前営業日比400円高の37,453円で寄り付きました。19日に発表される予定の日銀金融政策決定会合では、1月に利上げを行ったばかりであることと、米国の関税政策を巡る経済の下振れリスクへの警戒から、金利据え置きが市場のコンセンサスとなる中、国内長期金利が前営業日比で低下しました。また、トランプ米大統領が18日、ウクライナとの停戦を巡ってプーチン露大統領と協議を行うと報じられ、市場では地政学リスクの後退が意識されました。これらの材料から、米ドル円が一時149.0円台後半まで円安方向に進みました。円安進行を支えに日経平均株価は底堅く推移し、大引けは前営業日比343円高の37,396円となりました。個別銘柄では三菱重工業が前営業日比+12.16%と大幅上昇しました。政府が地上発射型の長射程ミサイルを九州に先行配備する方向で検討に入ったとする報道が材料視されたとみられます。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注) データは15時45分頃。米ドル/円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。米ドル/円は11:30~12:30の間は表示していない。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 本日、米国では2月小売売上高が発表されます。足元では景気減速を示唆する経済指標の発表が相次ぐ中、1月分の大幅な落ち込みから回復がみられるのか、結果に注目が集まります。 (野村證券投資情報部 秋山 渉) ご投資にあたっての注意点
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03/17 08:27
【野村の朝解説】政府機関の閉鎖回避で米国株は大幅反発(3/17)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 14日の米国株式市場では主要3指数が揃って反発しました。NYダウが前日までの4営業日で2,000ドル近く下落するなど、このところの米国株安の反動の影響があったほか、14日に失効する米連邦政府の現行のつなぎ予算を巡り、上院民主党トップが13日引け後に連邦議会下院で可決したつなぎ予算の延長法案に賛成する意向を示し、政府機関の一部閉鎖が回避される可能性が高まったことも好感されました。一方、3月ミシガン大学消費者センチメント指数と同時に発表された1年先の予想インフレが4.9%と、2年4ヶ月ぶりの高水準となりました。引き続き先行きのインフレ高進には警戒が必要です。 相場の注目点 週末の米国株の反発を受けて、本日の東京市場は買いが優勢で始まることが予想されます。今週は18~19日にかけて日銀の金融政策決定会合、米FOMCが開催されます。今会合では、日米中銀は政策金利を据え置くと予想されています。日米いずれも、今後の金融政策の方向性に関する言及があれば、金融市場が大きく動く展開も考えられることから、植田日銀総裁、パウエルFRB議長の会合後の会見に注目しています。重要イベントを控えて、週前半の日本株は様子見姿勢を強める可能性がありそうです。 本日は東京市場の取引時間中に、中国1-2月の小売売上高や鉱工業生産などの経済指標が発表されます。また米国では2月小売売上高が発表されます。トランプ関税の影響や、米小売大手ウォルマートが2月下旬の決算発表時に2026年1月期の見通しに慎重な姿勢を示したことなどから、個人消費の先行きに対する不透明感が強まっています。個人消費は米国の名目GDPの7割近くを占める最大需要項目であり、今後の米国経済の動向を占う指標として注目です。 (野村證券 投資情報部 岡本 佳佑) (注)データは日本時間2025年3月17日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 ご投資にあたっての注意点
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03/15 12:00
【注目トピック】AIは救世主となるか、光明差す中国株と中国経済
※画像はイメージです。 AIは救世主となるか、光明差す中国株と中国経済 中国株は政策支援とAIによる成長期待で上昇 長く停滞が続いていた中国株に光明が差しています。香港H株(香港証券取引所に上場している中国本土企業の株価指数)は、年初来でおよそ2割上昇し、日米の主要株価指数をアウトパフォームしました。 中国のベンチャー企業「ディープシーク」が開発した生成AIの最新モデルが低コスト、かつ、性能が優れていることから、中国テクノロジー企業の開発力と成長性が見直されています。また、トランプ政権の関税引き上げによる輸出の落ち込みをカバーするために、2025年3月5~11日に開催された中国の国会に相当する全人代(第14期全国人民代表大会第3回会議)で発表された政策支援も株価を押し上げました。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注)データは日次で、直近値は2025年3月11日。香港H株(ハンセン中国企業指数)は香港証券取引所に上場している中国本土企業の株価指数。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 成長率目標は意欲的、成長を支援する意向 全人代は、1年間の政治、経済や外交などの政策方針を審議し、予算案を承認する中国の最も重要な会議の一つです。3月5日に公表された「政府活動報告」では、2025年の経済成長率目標は前年比+5.0%前後と、24年から変わらず、概ね市場予想通りに設定されました。米国による対中関税の引き上げによる輸出への悪影響や、不動産不況が継続する中で、IMF(国際通貨基金)の予想(同+4.6%)を上回る意欲的な目標で、政府が成長を支える決意が感じられます。 財政支出で内需を拡大も、追加支援が必要 目標達成に向けて中国政府は、内需拡大を最重要視し、財政支出を拡大して消費を喚起する意向を示しました。一般会計に相当する一般公共予算の歳出を前年比1.2兆元増の29.7兆元に拡大する方針です。財政支出の拡大に伴い、財政赤字対GDP比率を4%前後と、24年の3%前後から引き上げます。一般予算とは別枠の超長期中央政府特別債と地方政府特別債の発行枠の合計は、24年の5.0兆元から25年には5.7兆元に引き上げられました。それら予算外の資金調達を含む、実質的な財政赤字の対GDP比は24年の7.8%から10.0%に上昇すると野村では予想します。 しかし、今回の財政規模では成長目標を下回る可能性が高く、追加的な支援策が必要になると野村では予想します。米中対立に伴う貿易への悪影響、長引く不動産不況、力強さを欠く内需回復の中、25年の実質GDP成長率は4.5%前後に留まると予想します。 (注)全てを網羅している訳ではない。(出所)国務院、各種報道、野村證券市場戦略リサーチ部、野村国際(香港)より野村證券投資情報部作成 消費支援は成長を下支えも、構造改革には慎重 2025年の重点政策は、10項目が挙げられています。24年に3番目の目標とされた「内需拡大」が、25年は最優先に位置づけられました。内需拡大策には、家電などの耐久消費財の買い換え補助金の拡大(24年の1,500億元から25年は3,000億元)が含まれます。これらは年前半の個人消費を支えるとみていますが、24年から実施している制度であるため、年後半には効果が薄れる可能性があります。また、公的年金・医療保険などを拡充しますが、僅かな増額のため、効果は限定的でしょう。消費の抜本的な押し上げには、福祉の充実や所得再配分により貧富の格差を緩和するなどの、構造改革が求められますが、中国政府は慎重姿勢を維持しています。 (注)全てを網羅している訳ではない。 (出所)国務院、各種報道、野村国際(香港)より野村證券投資情報部作成 ディープシークの活用で投資や雇用を創造 消費に続いて重視されているのが科学技術の分野です。特に、目立ったのがAIを中心としたハイテク産業の支援強化や民営企業の経営環境の改善です。およそ1兆元で「国家起業投資誘導基金」を設立し、AIなどの分野の企業に対してベンチャー・キャピタルの形式により投資する計画です。また、AIの技術をあらゆる産業に応用し、活用する方針です。2月中旬以降、政府は公立大学・病院、国有企業など様々な分野の公的機関にディープシークの利用と普及を指示した模様です。経済のデジタル化の推進により設備投資を拡大し、新興企業を育成し、雇用を創造する狙いがあると考えられます。 不動産市況の回復と金融システムの安定を重視 中国では不動産開発会社の資金難から工事が停止し、予約販売済みの未完成住宅が大量に存在することで、消費者の信頼感が低下し、住宅販売が落ち込んでいます。地方政府に権限を与え、在庫住宅の買い上げにより、購入者への住宅引き渡しを支援する意向です。また、住宅の新規供給を抑制することで、不動産市況を安定化させる方針も示しました。さらに、特別国債の発行で調達した5,000億元を国有大手銀行に資本注入し、不動産不況による金融システミックリスクに備えます。 (注)データは月次で、期間は2015年1月~2024年12月。四大都市は、北京・上海・広州・深セン。(出所)CEICデータベ-スより野村證券投資情報部作成 規制緩和、消費主導など構造改革が成長のカギ 関連産業を含めるとGDPの3割を占めると試算される住宅市場の回復は、中国経済と中国株が中長期的に成長を持続するには重要です。しかし、人口が減少している状況では、中国の経済成長をけん引してきた住宅などへの固定資本投資への依存度を低下させ、民間消費が成長のドライバーとなることが求められます。また、AIなどテクノロジー企業への資金支援は重要ですが、「規制緩和」が最も成長に寄与する政策の一つとみられています。このような踏み込んだ構造改革が行われるかが、中国の成長期待が持ち直すカギになるでしょう。 (野村證券投資情報部 坪川 一浩) ご投資にあたっての注意点
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03/15 09:00
【オピニオン】世界で唯一、グロースとバリューが両立 投資家に優しい日本株市場
※画像はイメージです。 矢継ぎ早の米国大統領の施策・発言により、主要国・地域の株式市場は変動性の高い状況が続いています。今回は、2024年年初以降の主要国・地域の株式市場において、どのような評価軸が有効であったかについて、改めて確認することにしましょう。 【時価総額】‥全ての国・地域で時価総額は有力なファクター(大型株優位)であり続けています。米国では昨年後半に、多くのストラテジストが相対的に割高になった大型株を避け、中小型への投資を推奨しましたが、残念ながら目立った成果は出ていないようです。中小型株は大型株に比べ流動性や、情報量に格差があり、相当な割安感がないと、中小型株が優位に立つことはないと考えられます。なお、足元で米国・欧州は金利低下局面、日本は逆に金利上昇局面にあるわけですが、割引率(≒長期金利)の先行きが不透明/変動性が高い状態では、『割安/割高』の判断が困難な状況にあると考えられます。 時価総額ファクター(図表1) ※注記は図表4に集約 【ROE(株主資本利益率)/業績修正】‥時価総額にならんで、ROEや業績修正などの成長性、クォリティーに関するファクターも世界的に共通して有効性が持続しています。金利低下局面の国・地域では足元で割引率が高く、金利上昇局面にある国・地域では将来割引率の上昇が見込まれます。ともに、高い(高くなる)割引率に割り負けない成長性や業績モメンタムを投資家が好むものと考えられます。 ROEファクター(図表2) ※注記は図表4に集約 業績修正ファクター(図表3) ※注記は図表4に集約 【PER(株価収益率)】‥そうした中で唯一、日本のみで有効なファクターがPERファクターです。日本は、PERのファクター効果が2024年年初以来、主要国・先進国の中で、突出して高く、また累積ファクター効果が一度もマイナスになっていない唯一の国です。PERファクターは、業績後退局面などEPS(1株当たり利益)に対する信頼度が低下すると、ファクター効果が低下することがよく知られています。現在、日本企業の業績モメンタム(≒リビジョン・インデックス)は世界で最も強く、同時に幅広いセクターでリビジョン・インデックスが良好な状態にあります。そのため、PERが割安な企業を安心して物色できる環境が提供されている、と言えるでしょう。 PERファクター(図表4) (注1)図表は、日本(MSCI-Japan)、米国(MSCI USA)、欧州(MSCI Europe)、Kokusai(MSCI 日本を除く先進国)の、時価総額、ROE、業績修正、PERの累積ファクター効果(2023年末=0)。データは月次で、直近値は2025年2月。(注2)ファクター分析とは、銘柄母集団を指標の高低でグループ分けし、月初に上位20%の高スコアの銘柄群を買い/下位20%の低スコアの銘柄群を売った際の、月末までのパフォーマンス(リターンスプレッド)を計測するもの。(出所)野村證券市場戦略リサーチ部などより野村證券投資情報部作成 以上より、米国大統領の交代によりファクターの有効性が大きく変わった例はなさそうです。日本では世界で唯一、背反する概念と捉えられがちなグロース的なファクターと、バリューファクターが両立していることが確認されました。現状では日本の株式市場は、投資家にもっとも優しい市場、と言えるかもしれません。 ご投資にあたっての注意点