〇オピニオン
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03/13 16:48
【野村の夕解説】日銀総裁発言で日経平均株価は下げに転じる 29円安(3/13)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 12日の米国市場では、インフレ減速を示す2月消費者物価指数の発表が好感され、ハイテク株を中心に構成されるナスダック総合指数が反発しました。一方で、今後、トランプ政権による関税政策の影響が顕在化することでインフレは再加速するとの見方から、米国長期金利は上昇し、円高進行に歯止めがかかりました。これらを材料に、本日の日本株市場では半導体関連株を中心に上昇し、日経平均株価は寄り付きから37,000円台を回復しました。上げ幅は一時前日比500円を超える場面もありましたが、日銀の植田総裁の発言を機に上げ幅を縮める展開となりました。植田総裁は参議院財政金融委員会での答弁で、「今後、実質賃金、あるいは消費についてはもう少し良い姿が見込まれる」と述べ、賃金と物価の好循環に期待感を示しました。これを受けて、日銀の早期追加利上げ観測の高まりから前日比で低下していた国内長期金利が上昇に転じ、米ドル円は147円台半ばまで再び円高方向に進みました。円高進行に連れて日経平均株価は上げ幅を縮小し、終値は前日比29円安の36,790円となりました。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注) データは15時45分頃。米ドル/円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。米ドル/円は11:30~12:30の間は表示していない。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 14日に、2025年春闘第1回集中回答の集計結果が発表されます。日銀による今後の金融政策の動向を見極める上で注目されます。 (野村證券投資情報部 秋山 渉) ご投資にあたっての注意点
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03/13 08:29
【野村の朝解説】米国株はCPIの下振れを好感(3/13)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 13日の米国株式市場は寄り前に発表された2月のCPIが市場予想を下回ったことを好感、S&P500、ナスダック総合は反発しました。ただし、米国の関税政策に対する不透明感は根強く、12日に米国が発動した鉄鋼・アルミニウム関税に対してカナダが報復措置を明らかにすると、S&P500は1.3%の値上がりを帳消しにして、マイナス圏に沈む場面もありました。米国債市場では関税によるインフレ懸念から利回り曲線全域に亘って金利が上昇する一方、先物金利は年内に2.8回程度の利下げを織り込むなど、関税政策に対して市場はまちまちの反応を示しています。為替市場では米国金利上昇に追随してドル高が進行し、ドル円相場は一時149円を超えるドル高円安水準を付けました。 相場の注目点 3月18-19日は日銀の金融政策決定会合とFOMC会合が控えています。市場ではいずれも金利据え置きが予想されています。日銀に関しては次の一手は利上げで市場の見方は一致している一方で、米国に関しては関税引き上げによる金融政策への見方が分かれています。先物金利は景気減速観測を背景に利下げ期待が高まっている一方、当社を含めたエコノミストの一部はインフレ懸念を背景に当面の間、金利据え置きを予想しています。3月のFOMC会合は経済見通しが発表されることから、FRBはどちらの見解に近い答えを示すのかが注目されます。 本日のイベント 米国では2月PPIと週間新規失業保険申請件数が発表されます。市場ではインフレと労働市場の先行きに対する懸念が根強いことから、市場の安定化に寄与する結果となるかが注目されます。 (野村證券 投資情報部 尾畑 秀一) (注)データは日本時間2025年3月13日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 ご投資にあたっての注意点
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03/12 16:32
【野村の夕解説】日経平均株価は一進一退 前日比25円高(3/12)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 前日の米国株主要3指数の下落を受け、本日の日経平均株価は前日比30円安の36,763円で始まり、寄り付き後は押し目買いのような動きもみられ上昇に転じるなど、前日の終値を挟み一進一退の動きが続きました。前日に大きく低下した10年債利回りは、ウクライナ紛争の短期間の停戦観測もあり、午前中に1.535%と上昇(価格は低下)しました。日本株市場では金利上昇により利ざや拡大が期待される銀行や保険などが上昇しました。本日は2025年春闘における大手企業が労働組合の要求に答える集中回答日となり、主要企業の多くが、労働組合が要求する賃金と賞与に満額回答を行ったとの報道が伝わりました。また、トランプ米政権は日本時間午後1時1分にすべての国からの鉄鋼・アルミニウム製品の輸入に対して25%の追加関税を予定通り発動しましたが、取引時間中の日本市場への影響は限定的でした。その後は本日米国で発表されるCPIなどの重要指標を前に様子見が強まり、日中は37,000円の大台に届くことなく、終値は前日比25円高の36,819円とわずかに反発し取引を終えました。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注) データは15時45分頃。米ドル/円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。米ドル/円は11:30~12:30の間は表示していない。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 米国では本日、2月CPI(消費者物価指数)が発表されます。統計の内容次第では市場の利下げ観測を後押しし、米国を中心に長期金利低下を促すことが予想されます。 (野村證券投資情報部 清水 奎花) ご投資にあたっての注意点
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03/12 08:19
【野村の朝解説】貿易摩擦激化懸念で続落(3/12)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 12日の米国株式市場で主要3指数は揃って続落しました。貿易摩擦の激化懸念からNYダウは軟調推移が続き、一時700ドル超下落しました。取引終盤にかけて下げ幅を縮小する場面もありましたが、結局大幅続落となり、2日間で約1,300ドルの下落となりました。米国は12日に鉄鋼・アルミニウム製品への25%の追加関税を発動予定ですが、トランプ大統領がカナダに対しては税率を50%まで引き上げるよう指示したと伝わり、貿易摩擦激化が不安視されました。一方、トランプ大統領がその後、カナダに対する関税引き上げを見直す可能性を示唆したことに加え、ウクライナが30日間の停戦を受け入れる意向を示したことは、リスク心理悪化の一服につながりました。 相場の注目点 野村證券では、米国経済は2025年半ばから26年年初にかけて鈍化し、米国の実質GDP成長率は年率+1.8%程度とみられる潜在成長率を下回ると予想しています。景気後退を回避し、ソフトランディングするという見通しは維持していますが、景気押し上げ寄与が期待される財政政策は議会での審議が必要であり、当面は通商政策が焦点となるなか景気下振れリスクが意識されやすい局面が続きそうです。トランプ大統領の発言や米国の景気後退懸念が引き続き相場の波乱要因となるなか、来週18~19日開催予定のFOMCが注目されます。市場では利下げの織り込みが進み、FRBによる景気下支えに期待が集まりやすい状況となっています。 本日のイベント 米国は12日(水)に鉄鋼・アルミニウム関税の発動を示唆しています。欧州ではラガルドECB総裁の講演が予定されます。 (野村證券 投資情報部 引網 喬子) (注)データは日本時間2025年3月12日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 ご投資にあたっての注意点
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03/11 08:08
【野村の朝解説】ハイテク株主導でナスダック指数が大幅安(3/11)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 10日の米国株式市場では主要3指数が揃って大きく下落しました。ハイテク株安が相場全体の重石となっており、とりわけナスダック指数の下落率の大きさが目立ちました。週末に放送された米テレビの取材で、トランプ大統領が各種政策によって米景気が後退する可能性を明確に否定しなかったことなどが下落の要因とされています。債券市場では、米景気の後退懸念の強まりを受けて債券買いが優勢となり、米10年国債利回りが低下しました。また、為替市場では円が一時1ドル=146円台半ばと、2024年10月以来の円高・ドル安水準を付ける場面がありました。 相場の注目点 トランプ政権の通商政策、米景気減速懸念を背景とした円高などが日本株の重荷となっています。昨晩の米国株は大幅安となっており、本日の東京市場も軟調な展開が予想されます。このように相場の先行きが見通しづらい局面では、成長株への投資でキャピタルゲインを狙うよりも、配当利回りの高い高配当銘柄に着目してインカムゲインを狙うことが有効になることがあります。加えて、3月期決算企業の配当権利付き最終日(3月27日)が近づいていることも高配当銘柄の追い風です。月後半に向けて高配当銘柄には投資資金が流入しやすく、相対的に堅調な株価推移が期待できるかもしれません。 本日のイベント 本日は、寄り付き前に24年10-12月期GDP(2次速報)が発表されます。10-12月期法人企業統計で発表された設備投資の結果を受け、野村證券では実質GDP成長率が下方修正されると予想しています。一方、米国では労働需要を測る指標として、労働省が発表する雇用統計と同様に注目される1月雇用動態調査(JOLTS)が発表されます。 (野村證券 投資情報部 岡本 佳佑) (注)データは日本時間2025年3月11日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 ご投資にあたっての注意点
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03/10 16:21
【野村の夕解説】半導体関連株の上昇に支えられ、日経平均は141円高(3/10)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 6日(木)引け後に発表された米ブロードコムの好決算を受けて、7日(金)の米国株市場で半導体関連株が大幅上昇しました。この流れを引き継ぎ、本日の日本株市場も半導体関連株が相場を押し上げる展開となりました。本日寄り前に発表された1月の毎月勤労統計調査で、パートタイムを除く一般労働者の基本給に相当する所定内給与が前年同月比+3.1%と前月から加速しました。賃金と物価の好循環が続いていくとした日銀の見通しに沿う結果となったことで、早期追加利上げ観測が強まり、新発10年物国債利回りは2008年10月以来、16年5ヶ月ぶりの水準となる1.575%まで上昇しました。国内金利の上昇により、外国為替市場では一時147.0円台へと円高米ドル安が進みました。日経平均株価は円高進行を受けて寄り付き後に前営業日比182円安の36,705円まで下落する場面もありましたが、その後は半導体関連株の上昇が下支えとなって反発し、前営業日比141円高の37,028円で本日の取引を終えました。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注) データは15時45分頃。米ドル/円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。米ドル/円は11:30~12:30の間は表示していない。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 12日(水)に米国で2月の消費者物価指数が発表されます。3月FOMC(18-19日)を前にFRBがブラックアウト(FRB高官が金融政策に関する発言を控える)期間に入っており、結果によっては、金融政策への思惑から市場の反応が大きくなることが予想されます。 (野村證券投資情報部 秋山 渉) ご投資にあたっての注意点
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03/10 08:44
【野村の朝解説】半導体株上昇とFRB議長発言で米株反発(3/10)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 7日の米国株式市場ではNY主要3指数が上昇しました。朝方発表の2月雇用統計が市場予想を下回り、米景気の減速懸念から主要3指数は揃って下落して寄り付きました。FRBのパウエル議長の講演では、トランプ政権の政策が経済に与える影響が明確になるまで利下げを急がないと発言し、従来同様の見解を示しましたが、景気は「良い状態にある」との認識を示したことが好感されました。また、6日引け後発表のブロードコムの2024年11月-25年1月期決算が好調であったことが半導体関連株の下支えとなり、午後にかけて株式相場は反発しました。為替市場では、午前は一時146円94銭と2024年10月以来の円高ドル安となりましたが、その後は1ドル=148円前後で推移しています。 相場の注目点 本日の日本株は、前週末の米国株の上昇が材料視されそうです。また日本では本日1月毎月勤労統計や2月景気ウォッチャー調査の発表が予定されています。トランプ政権の動向に揺さぶられる相場展開が続いていますが、3月14日には米国の財政資金を手当てする「つなぎ予算」の期限、4月2日には「相互関税」の発動を控えるなど、しばらくは不透明感が継続しそうです。株式市場の支えになってきた堅調な米国景気には、足元で消費や雇用に関する統計が下振れするなど減速感が見え始めており、景気悪化への警戒感が相場の上値を抑えています。トランプ政権の関税引き上げが企業のサプライチェーンの混乱やインフレ再燃につながるリスクには注意が必要ですが、米国の実体経済は堅調さを維持しています。また、トランプ政権の政策には減税など景気を押し上げる政策が控えており、市場の警戒にはやや過剰な面があると見ています。また、来週には日米の金融政策決定会合が控えています。 (野村證券 投資情報部 坪川 一浩) (注)データは日本時間2025年3月10日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 ご投資にあたっての注意点
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03/08 12:00
【注目トピック】社会の変化×消費の新化
※画像はイメージです。 賃金と物価の好循環による社会の変化と新たな消費構造 日本は人口減少局面に突入 日本の総人口は今後、減少ペースが加速すると予想されます。戦後の高度経済成長期には、医療の進歩や生活水準の向上、戦後のベビーブームによる出生率の上昇などを受けて人口が急増したものの、1990年代以降は出生率の低下や晩婚化、女性の社会進出で人口減少局面に入りました。 国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、日本の総人口は2070年には8,700万人になるとしています。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注)2020年までの人口は総務省「国勢調査」「人口推計」、2025年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」(出生中位(死亡中位)推計)。(出所)総務省、国立社会保障・人口問題研究所、厚生労働省より野村證券投資情報部作成 各種資産の価値が上昇している 日本では、長期的な時間軸でみて人口減少への転換による総需要の減少が根底にあり、長きにわたるデフレ傾向から経済成長の低迷が続きました。この間、日銀の低金利政策が重なり、金利や資産からのリターンは、低い状態が継続していました。しかし、賃金と物価の好循環を背景として、日本国内の金利は、コロナ禍が一巡した2022年頃より上昇に転じています。近年のマンション価格の高騰や、2024年に日経平均株価が約34年ぶりに過去最高値を更新するなど、金利上昇とともに、各種資産の価値も上昇し始めています。 マンション発売価格上昇ペースが加速 金利や株価の上昇は、金融資産だけでなく不動産価格や人々の消費行動にも影響しています。金融資産や土地などの資産価格が上昇(下落)すると、家計が自らの消費を増加(減少)させる「資産効果」が起こります。首都圏のマンション市場動向をみると、2010年代半ば以降、マンション需要の増加や資材高などの影響を受け、坪当たり発売価格は上昇傾向が鮮明になってきました。所得や資産価値の上昇による家計の消費意欲の高まりや、将来の資産価値上昇を見込むマンション需要などから、首都圏で百貨店の高額消費が増え、巡り巡ってマンション価格も上昇が起きているとみられます。 (注)データは月次で、直近値は2024年10月。年率中古契約戸数のデータは、2001年3月から。(出所)不動産経済研究所、公益財団法人 東日本不動産流通機構より野村證券投資情報部作成 富裕層の構造が多様化 資産効果に加えてパワーカップルと呼ばれる、共働きで高収入の夫婦や、パワーシングルと呼ばれる、高所得を得ている独身者の影響も大きくなっています。女性の社会進出が大きな要因です。 これまでの日本における富裕層は、一般的に年齢が高い層が多いとされてきました。しかし、近年の社会構造や経済の変化により、富裕層の構造が多様化しています。 女性の労働力率(15歳以上人口に占める労働力人口(就業者+完全失業者)の割合)は、結婚・出産期に当たる年代に一旦低下し、育児が落ち着いた時期に再び上昇するという、いわゆるM字カーブを描くことが知られています。しかし近年では、「男女雇用機会均等法」や「女性活躍推進法」などの施策もあり、M字の谷の部分が浅くなっています。 (出所)総務省より野村證券投資情報部作成 また、民間企業の階級別女性比率の推移では、女性の役職者の割合が、年々増加しています。 (注)民間企業の階級別女性比率の推移のカッコ内の数値は、2025年の政府目標。直近値は2023年。(出所)厚生労働省より野村證券投資情報部作成 百貨店の稼ぐ力が高まる 家計が保有する金融資産や不動産の価値上昇に伴う資産効果に加え、女性の社会進出によって増加するパワーカップルやパワーシングルの影響で、富裕層が増加しています。この結果、高額商品を扱う百貨店の売上が好調です。 日本百貨店協会によると、店舗の統廃合が進んだことで、百貨店の売り場面積は2014年からの10年間で2割以上縮小しています。しかし、その一方で、店舗面積1㎡当たりの売上高は足元で増加しています。2024年1-10月時点の店舗当たり売上高は1㎡当たり約122万円と、コロナ禍前の2019年の約109万円を超え、2008年以降で過去最高となっています。 (注)データは年次で、実績値は2023年。2024年の百貨店売上高は、2024年1-10月の累計の売上高を単純平均し年額に換算している。売り場面積は、2023年までは各年末時点、2024年は10月末時点のものを使用している。(出所)一般社団法人 日本百貨店協会より野村證券投資情報部作成 国内富裕層や外国人旅行者からの消費意欲を積極的に取り込むなどして、売り場面積を縮小しつつも、百貨店の稼ぐ力は高まっています。円安を背景とした免税売り上げや、足元の賃上げ、株高による資産効果を受けた消費意欲の高まりによる販売拡大により、百貨店の稼ぐ力が高まっています。 (野村證券投資情報部 寺田 絢子) ご投資にあたっての注意点
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03/08 09:00
【オピニオン】日本の長期金利上昇の背景と転換点
※画像はイメージです。 2022年初に0.1%に満たなかった日本の10年国債利回りは、25年2月21日には一時1.467%と、09年以来約15年振りの水準にまで上昇しました。日本の長期金利上昇の背景としては、①米10年国債利回りと連動、②日銀に対する市場の高い利上げ観測、➂国債増発や日銀の量的緩和政策終了による需給悪化懸念といった要因が挙げられます。これらの要因の状況について概観し、長期金利の上昇はいつまで続くのか、またはどのような状況になれば転換点を迎えるのか、について考えてみましょう。 第1は米10年国債利回りとの連動です。22年3月にFRBが利上げに転じて以降、基本的に日本と米国の金融政策スタンスは真逆でしたが、日米の10年国債利回りは高い連動性を保ってきました。24年9月の日本の長期金利の底入れから上昇への転換も、米長期金利に連動した面が大きかったと見受けられます。ただし、米10年国債利回りは25年1月中旬の4.8%程度をピークに低下基調に転じており、それ以降の金利上昇は主に日本固有の要因であると考えられます。 第2は日銀に対する市場の利上げ観測の高まりです。日銀の田村審議委員は25年2月6日の講演で「25年度後半までに少なくとも1%程度までの利上げが必要だ」と発言しました。同氏は日銀内で最も利上げに積極的だと目されています。先物金利は既に1%程度までの利上げを織り込んでいる水準にあることから、インフレや成長率見通しに一段の上振れがなければ、日銀の利上げ期待に基づく金利上昇余地は限定的であると考えられます。 第3は国債の需給悪化による金利上昇です。日本の国債発行残高は対名目GDP比で09年3月末には163%だったものが、直近(24年9月末)には200%に達しています。ただし、発行残高の内、47%程度を日銀が保有しており、市中で消化されているのは発行残高の半分強、名目GDP比では106%に過ぎません。この比率が09年3月末時点では150%であったことを考えると、当時と比べて足元の需給環境はむしろ改善していると考えることもできます(下図参照)。 (注)データは四半期で、直近値は2024年9月末。 (出所)内閣府、日本銀行、LSEGより野村證券投資情報部作成 3月に入りいよいよ春闘が本番を迎えます。また、新年度入りのタイミングで値上げ実施が予想されるなど、季節的にはインフレ期待や利上げ観測が高まり易い状況にあります。当面の間は長期金利が高止まりする可能性は否定できません。ただし、米国の長期金利は頭打ちとなっており、25年度予算の成立とともに国債の需給悪化懸念も緩和することが予想されます。このため、日銀の政策金利の着地点が1%を大きく超えるものではないとの見方が市場に広く浸透すれば、長期金利は転換点を迎える可能性が高いと考えられます。 ご投資にあたっての注意点