〇オピニオン
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2024/12/19 08:27
【速報】FOMC「タカ派的利下げ」でNYダウ1100ドル超安 野村證券ストラテジストが解説
市場は利下げペース鈍化、米国政策金利の着地点の更なる上昇を警戒 FRBは12月17-18日に開催したFOMCで市場予想通り政策金利であるFF金利の誘導目標を0.25ポイント(pt)引き下げ、4.25-4.50%とすることを決定しました。利下げは9月(利下げ幅0.50pt)、11月(0.25pt)に続く3会合連続で、累計の利下げ幅は1.0ptとなりました。同時に発表された経済見通しを見ると、2025年中の利下げ幅は0.5ptと、1回当たりの利下げ幅を0.25ptとした場合、前回9月見通しの4回から2回に修正されました。26年の利下げは2回で据え置き、27年は1回の利下げが追加されています。25年10-12月期の実質GDP成長率見通しは前年比+2.1%(前回同+2.0%)へ、FRBがインフレ指標として注目しているコアPCEデフレーターも同+2.5%(同+2.2%)と上方修正されましたが、いずれもトランプ次期政権の掲げる政策を完全には織り込んでいないと見られます。 FOMCの経済の見通し(2024年12月) (注)FOMCは2024年12月17-18日に開催。予想の中央値。実質GDP成長率及び2つの物価指標は各年10-12月期の前年同期比。失業率は民間部門の各年10-12月期平均の失業率。コアPCEデフレーターは価格変動の激しい食品とエネルギーを省いたもの。政策金利はFFレート(フェデラル・ファンドレート)のレンジの中央値で、各年末値。(出所)FRBより野村證券投資情報部作成 会合後の記者会見でパウエル議長は「金利調整プロセスの新たな段階に入った」と利下げペース減速を示唆、インフレ目標達成に1-2年を要する可能性に言及するなど、FRBの懸念が景気下振れからインフレ高止まりへ再びシフトしている可能性も示唆しました。また、トランプ次期政権の政策の影響を見通しに反映させた参加者は「一部」に留まる旨を明らかにしています。 FOMCの結果を受けて市場では、金利上昇・株安・ドル高で反応しました。今回の0.25ptの利下げは予想通りでしたが、次期政権の掲げる関税引き上げや移民規制の強化はスタグフレーション(景気下押しとインフレ押上げ)的な方向に作用することが予想されます。FRBはこれらの影響をフルに織り込んでいない段階で利下げペースの減速、利下げ時期の後ずれ、政策金利の着地点の上方修正を示したことが、市場ではタカ派的(インフレ抑制を優先)とみなされ、更に利下げ幅が縮小する事への警戒感が高まったようです。 (野村證券投資情報部 尾畑 秀一) ご投資にあたっての注意点
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2024/12/18 16:23
【野村の夕解説】日米中銀の結果発表を前に4日続落(12/18)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 本日の日経平均株価は前日比187円安の39,176円で始まりました。日米中央銀行の金融政策会合の結果発表を日本時間明日19日に控え、9時台の外国為替相場は1米ドル=153.60円台と、昨日15時半からやや円高に推移しました。終日を通して弱含みでの推移となり、終値は前日比282円安と、4営業日続落となりました。 業種別では、自動車を含む輸送用機器指数が上昇し、相場を下支えしました。日本時間18日早朝に一部報道機関が、本田技研工業と日産自動車が経営統合に向けた協議に入ると報じました。2社は持ち株会社を設立し、それぞれの会社を傘下におさめる形で協議を進めているとのことです。取引時間中には、日産自動車はストップ高まで急伸しました。本田技研工業の終値は前日比3%安となり、日産自動車は値幅上限値のまま引け、同23%高となりました。 また、キオクシアホールディングスが東証プライム市場に上場しました。公開価格の1,455円に対し、初値は1,440円となったものの、終値は1,601円まで上昇しました。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注)データは15時45分頃。ドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 FOMCの結果公表が日本時間19日(木)午前4:00に行われ、その後同4:30からパウエルFRB議長の記者会見が行われます。また、19日には日銀の金融政策決定会合の結果も発表されます。 (野村證券投資情報部 清水 奎花) ご投資にあたっての注意点
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2024/12/18 08:34
【野村の朝解説】FOMCを控え、警戒感から米国株は下落(12/18)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 17日の米国株式市場では、NY主要3指数が揃って下落しました。NYダウは1978年2月以来の9営業日の続落となりました。FOMCの結果発表を翌日に控えて警戒感が広がり、株価の重石となりました。FRBが12月会合での0.25%ポイントの利下げをするとの見方が依然優勢ですが、朝方発表された11月米小売売上高が消費の堅調さを示唆する内容だったことから、2025年の利下げ回数が少なくなるとの見方が相場を下押ししました。個別では、米医療保険大手ユナイテッド・ヘルス・グループ(UNH)が続落し、連日で上場来高値を更新していた米半導体のブロードコム(AVGO)も反落しました。為替市場では、米国債利回りの上昇が一服する中、1ドル=153円台半ばまで円高方向に値を戻しました。 相場の注目点 日米の金融政策に引き続き注目です。市場では12月FOMCでの0.25%ポイントの利下げを概ね織り込んだ状況にあるため、焦点はパウエルFRB議長の記者会見や、FOMC参加者の政策金利見通し(ドット・チャート)です。仮に、今会合で政策金利見通しが引き上げられ、25年中の利下げ回数の減少が示された場合には、米金利の上昇とドル高要因となります。ただし、来年以降の市場の利下げ観測は後退しつつあり、25年中の利下げ幅が0.5%ポイントを下回る可能性を織り込みつつあります。また、トランプ次期政権の政策を踏まえて、パウエル議長は今後の金融政策について柔軟な姿勢を示さざるを得ないと考えられます。そのため、市場の反応は限定的になると野村ではみています。他方、本日から明日19日まで開催される日銀の12月会合では、利上げ見送りがコンセンサスです。FOMC後の円安ドル高の勢いが限定された場合には、日銀は利上げを見送りするとの見方が一段と強まり、足元のドル円はレンジ内での動きになりやすいとみています。 (野村證券 投資情報部 坪川 一浩) (注)データは日本時間2024年12月18日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 野村オリジナル記事の配信スケジュール ご投資にあたっての注意点
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2024/12/17 16:52
【野村の夕解説】日米中銀の会合を前に 引き続き小動き (12/17)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 日本時間16日(月)夜、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長がトランプ次期米大統領と会談し、今後4年間で米国で1,000億米ドルの投資を行う旨を発表しました。また、昨日ナスダック総合指数は史上最高値を更新しました。 本日の日経平均株価は前日比132円高の39,589円と反発し始まり、ソフトバンクグループの大幅な上昇が日経平均を押し上げました。米国金利の上昇(価格は下落)による円安米ドル高も追い風となり、一時前日比338円高となりました。上昇一服後は、値がさの半導体株であるアドバンテストの大幅安が重石となり、後場に入ってからは下げに転じました。今後の注目イベントを控えて値動きは限定的となり、終値は前日比92円安と、3営業日続落となりました。ソフトバンクグループは前日比4.41%高となり、1銘柄で日経平均株価を82円押し上げた一方、アドバンテストは同9.35%安となり、 1銘柄で日経平均株価を235円押し下げました。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注)データは15時45分頃。ドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 米国では本日から18日(水)までFOMCが、日本では18日(水)~19日(木)にかけて日銀金融政策決定会合が開催されます。また、18日(水)はキオクシアホールディングスが東証プライム市場に上場予定です。 (野村證券投資情報部 清水 奎花) ご投資にあたっての注意点
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2024/12/17 08:27
【野村の朝解説】ナスダックは最高値を更新、ダウは続落(12/17)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 16日の米国株式市場は高安まちまちとなりました。NYダウは朝方に上昇する場面もみられましたが、週内にFOMCを控えるなかで方向感は乏しく、前週末の終値近辺でのもみ合い推移となりました。一方、S&P500は3営業日ぶりに反発し、ナスダック総合指数は11日に付けた史上最高値を更新しました。 この日発表された12月のNY連銀製造業景気指数や同月の製造業PMI速報値は、トランプ次期政権の関税政策への警戒感などもありいずれも悪化しました。もっとも、米国ではサービス業を中心に景況感が堅調であり、同月のサービス業PMI速報値は2021年10月以来の高水準を記録しました。25年以降の利下げペース減速が意識される中、米10年国債利回りは4.4%台に上昇し、ドル円は154円台を回復しました。 相場の注目点 米国では今晩からFOMCが開催されますが(17-18日)、市場はすでに0.25%ポイントの利下げをほぼ織り込んだ状況です。トランプ次期政権の政策を巡り不透明感が高まるなか、足元では25年以降にいったん利下げを打ち止めとの見方も浮上しており、今回の焦点はパウエルFRB議長の記者会見に加えて、FOMC参加者の政策金利見通し(ドット・チャート)です。25年の利下げ幅については、9月FOMC時点で1.0%ポイントと想定されていましたが、今回のFOMCで見通しは上方修正される公算が大きいとみられます。米国株式市場では、米長期金利の上昇が株価の重石となる一方で、米経済の軟着陸期待が支えとなってきましたが、長期金利の上昇が続くとこれまでの上昇にブレーキがかかる可能性もあり、先行きの利下げペースについて、どのような見解が示されるのか注目されます。 (野村證券 投資情報部 引網 喬子) (注)データは日本時間2024年12月17日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 野村オリジナル記事の配信スケジュール ご投資にあたっての注意点
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2024/12/16 16:23
【野村の夕解説】日米中銀の会合を前に上値は重く、日経平均は12円安(12/16)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 本日の日経平均株価は前週末比80円高の39,551円で取引を開始しました。米国で12日(木)引け後に好決算を発表したブロードコムを含む、主要半導体企業で構成されるフィラデルフィア半導体株指数が13日(金)に大幅上昇しました。これを受けて、国内半導体関連銘柄が上昇し、日経平均株価を押し上げ、一時上げ幅は161円まで拡がりました。 外国為替市場では、日銀の追加利上げ観測の後退を受けて円安米ドル高が進んでおり、本日11:30頃には、一時153.9円台になりました。しかし、円安進行は株式市場にとって追い風とはならず、日経平均株価は40,000円を前に上値は重く、徐々に上げ幅を縮小しました。今週17-18日の12月FOMC、18-19日の日銀金融政策決定会合を前にした様子見姿勢の強まりも重石となったとみられます。引けにかけて前週末終値近辺での値動きを続け、大引けは前週末比12円安の39,457円で取引を終えました。東証プライム市場の売買代金は、3兆3,314億円と、10月25日以来の低調な水準でした。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注)データは15時45分頃。ドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 本日、米国では12月ニューヨーク連銀製造業景気指数が発表されます。12月FOMCを前に、米国景気の動向を確認するうえで、注目されます。 (野村證券投資情報部 秋山 渉) ご投資にあたっての注意点
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2024/12/16 08:12
【野村の朝解説】FOMCを控え米株は動意を欠く展開(12/16)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 13日の米国株式市場は動意を欠く展開となり、S&P500は前日比横ばい、ナスダック総合も小幅高で引けています。米国では17-18日にFOMCを控える中で、先週は11月消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)と注目度の高いインフレ統計が発表されました。CPIは事前予想通り、PPIは予想比で小幅上振れましたが、市場では今週の利下げ判断を妨げるものではないと評価され、0.25%ポイントの利下げを概ね織り込んでいます。この日注目されたのは円安です。円は一時1ドル153円80銭まで売られ、日中としては11月26日以来の安値を付けました。先週のブルームバーグに続き共同通信が「日銀が金融政策の据え置きを検討している」と報道したことで、市場の利上げ観測が後退し、円安につながっています。 相場の注目点 市場は今週のFOMCでの利下げを概ね織り込む一方で、25年末の政策金利見通しはむしろ上昇しています。結果、米国債市場では長期金利を中心に金利は上昇しています。足元の利下げ観測の後退は景気堅調を織り込んだ「良い金利上昇」の面が大きく、米株は堅調に推移しています。ただし、10年国債利回りが4.5%を明確に上回る展開になれば、トランプ次期政権の誕生など、不透明感の高い中での金利上昇が米国株式市場で嫌気される可能性があり、注意が必要です。 先週発表された日銀短観は、景況感は堅調、企業の設備投資計画も予想に反して上方修正されるなど、日銀の利上げを後押しする結果であったと評価できます。日銀は今週の会合で利上げを見送るとの観測報道が増えていますが、足元で進行している円安に対する日銀の評価が注目されます。ドル円相場が155円を超える際には口先介入の再開なども想定されることから、日銀が円安阻止に向けて政府と足並みを揃える可能性もあります。 (野村證券 投資情報部 尾畑 秀一) (注)データは日本時間2024年12月16日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 野村オリジナル記事の配信スケジュール ご投資にあたっての注意点
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2024/12/14 12:00
【注目トピック】半導体製造装置市場は2026年にかけて拡大へ、業界団体が市場予測を発表
※画像はイメージです。 SEMIの2024年末世界半導体市場予測 2024年・2025年とも上方修正 米国時間12月9日にSEMI(国際半導体製造装置材料協会)は、半導体製造装置の2024年末市場予測を発表しました。 2024年7月時点の予測と比較すると、2024年は上方修正されていますが、2025年については、下方修正されています。ただし、前年比マイナス成長となった2023年に対し、2024年には拡大に転じ、2025年も拡大が続くという方向に変わりはありません。また、今回新たに示された2026年予測については、一段の拡大が予想されています。 中国とAI関連需要がけん引 発表資料の中でSEMIは、2024年7月の予測以来、2024年の半導体製造装置販売額の見通しは明るくなっており、特に中国およびAI関連分野からの投資が予想を上回っていると述べています。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注)灰色は実績、薄い赤色は2024年7月時点、赤色は2024年12月時点のSEMI(国際半導体製造装置材料協会)による予測。(出所)SEMI、LSEGより野村證券投資情報部作成 半導体製造装置販売額の内訳で一番大きな前工程(半導体材料であるシリコンウエハー等を処理する工程)のウエハーファブ装置について、2024年の上方修正は、AIコンピューティングからの需要にけん引されたDRAMおよびHBM(広帯域メモリー)への好調な設備投資の継続を主に反映しているとしています。加えて、中国の投資も引き続き、ウエハーファブ装置市場の拡大に大きく貢献しているとしています。そして、先端ロジックとメモリー・アプリケーションの需要増加により、2025年、2026年と拡大が続くとしています。 後工程(処理されたシリコンウエハー等を半導体製品として組み立てる工程)装置分野は、過去2年連続して減少したものの、2024年は特に下半期において力強く回復したとしています。2025年以降の後工程分野の成長を支えるのは、ハイパフォーマンス・コンピューティング用半導体デバイスの複雑化、モバイル、車載、産業用の需要が増加するためとしています。 地域別動向 地域別では、中国、台湾、韓国が、2026年まで装置購入額のトップ3を維持し、中国は景気減速が予測されているにもかかわらず、装置購入が引き続き底堅いことから、今回の予測期間中はトップの座を維持する見込みと予想しています。中国への装置出荷額は、2024年に過去最高の490億米ドルに達するとのことです。 なお、ほとんどの地域で設備投資額は2024年に減少し、中国以外の地域では2025年に回復することが予想されるものの、中国は2022~2024年の3年間の大規模投資を受けて、2025年は縮小する見込みとのことです。2026年には、すべての地域で増加することが予測されるとしています。 今後の注目点 半導体製造装置メーカーであるアプライド・マテリアルズ、KLA、ラムリサーチ、ASMLホールディングなどの株価は、2024年夏以降、軟調に推移しています。半導体製造装置の需要が、AI向けは好調なものの、自動車など他の分野の需要が弱いことなどが各社の決算発表などの機会で示され、株価の重石となっていました。 (注)データは日時で2024年初=100とする指数。直近値は2024年12月10日。ASMLホールディングはADR(米国預託証券)の価格の推移。(出所)LSEGより野村證券投資情報部作成 このような状況を踏まえると、今回のSEMIの予測は、概ね想定の範囲内と考えます。 とはいえ、2025年の予想は下方修正されたものの、2024年には拡大に転じて2025年も拡大が続くという方向に変わりはなく、今回新たに示された2026年には一段の拡大が予想されているという点は、ポジティブに受け止めてよいと判断します。 今後も、半導体業界に関する報道や、半導体製造装置メーカー及び半導体メーカーの決算発表などの機会を通し、半導体製造装置市場の動向を確認していきたいと考えます。 12月18日には、半導体メモリー大手のマイクロン・テクノロジーが、2024年9-11月期(2025年8月期・第1四半期)決算を発表する予定です。マイクロン・テクノロジーは、自社で半導体を製造する垂直統合型の半導体メーカーで、半導体製造装置を購入する企業であり、同社の設備投資計画などを確認したいと思います。 (野村證券投資情報部 村山 誠) ご投資にあたっての注意点
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2024/12/14 09:00
【オピニオン】日本経済の鍵を握る「春闘」3つのポイント
※画像はイメージです。 日本の2024年7-9月期の実質GDP成長率(2次速報値)は前期比年率+1.2%と、2四半期連続のプラス成長を記録しました。成長に最も寄与した個人消費(民間最終消費支出)は前期比+0.7%と、23年1-3月期以来の高い伸びとなりました。主体別にみると、非居住者による支出(いわゆるインバウンド消費:個人消費ではなくサービス輸出に含まれる)が減り、居住者による支出(個人消費に含まれる)が増えた点が特徴的でした。 野村證券では、日本経済は今後も年率+0.5%程度と見られる潜在成長率を上回るペースで回復すると予想しています。また、日銀は賃金と物価の好循環が継続するとの見立てを基に利上げを継続する意向です。今後の景気動向や金融政策判断の鍵を握っているのは賃金上昇ペースとその持続性だと考えられます。 日本では毎年2月頃から行われる春闘において労使間で賃金交渉が行われます。今回は、この春闘でチェックすべき3つのポイントをご紹介します。 第1はベア(ベースアップ)率です。連合は25年春闘も「5%以上の賃上げ」を目指すと掲げていますが、このうち特に重要なのは定期昇給分を除いたベア、いわゆる基本給のベースアップ部分です。定期昇給分は毎年大きな変化がないため、前年と比較した給与の増加分は主にベアの部分になります。 第2はベアがインフレを上回ったか否かです。23年春闘では平均で前年比+2.12%のベアが達成されましたが、23年度の消費者物価=インフレ率(同+3.0%)を下回ったことから、実質賃金は目減りしました。この結果、個人消費は減少してしまいました。 第3は、春闘での賃上げ率が日本全国のベンチマークになっているかです。春闘での結果はあくまで連合に加盟しており、かつ賃上げを獲得した組合の平均に過ぎません。日本全体で見たベアに相当する給与は、毎月勤労統計の一般労働者(正社員に相当)の所定内給与(基本給に相当する部分)です。24年10月の所定内給与(速報)は前年比+2.8%、同月の消費者物価が同+2.3%ですから、実質賃金は同+0.5%上昇しました。 野村證券では、25年春闘でのベアは同+3.46%、同じく25年度のインフレ率は同+2.0%と予想しています。野村證券の見通し通りであれば、基本給の増加率が物価上昇率を上回ることで消費が堅調に推移するなか、企業には賃上げの一部を価格転嫁する余裕が生じると想定されます。日銀は賃金と物価の好循環を確認しながら、景気にとって中立的と見られる水準に向けて政策金利の引き上げに取り組むと予想されます。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注)データは一般労働者の所定内給与が月次で、連合のベースアップ率、消費者物価上昇率が年次。直近値は、一般労働者の所定内給与が2024年9月、連合のベースアップ率は2024年、消費者物価上昇率は2023年度。2025年の連合のベースアップ率、2024年度、25年度の消費者物価上昇率は野村見通し(2024年12月9日時点)。(出所)厚生労働省資料、連合、野村證券経済調査部資料より野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点