【注目トピック】日米欧、主要中銀の政策金利見通し 3者3様の金融政策スタンス
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ECBは8会合ぶりに利下げを見送り
ECBは2025年7月24日に定例理事会を開催し、政策金利を2.00%(中銀預金金利)で据え置きました。政策金利の据え置きは8会合ぶりとなります。ECBは24年6月会合での利下げを契機に利下げ局面入りし、同年9月以降7会合連続での利下げを含み、累計2.00%ポイントの利下げを実施しました。理事会後の記者会見でラガルド総裁は、「我々は様子見できる好ましい位置にある」と発言し、当面政策金利を据え置く可能性を示唆しました。
野村證券は従来、ECBが25年9月と12月に追加利下げを実施し、中銀預金金利の着地点は1.50%になると予想してきましたが、7月会合の結果を受けて見通しを修正し、前回6月会合での利下げで今回の利下げ局面は終了したと判断しています。
ユーロ圏政策金利と独10年国債利回りの推移
(注)データは日次で、直近値は2025年7月30日。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成
FRBは5会合連続で据え置き
FRBは25年7月29-30日にFOMCを開催し、予想通り政策金利であるFF(フェデラル・ファンド)金利の誘導目標を4.25-4.50%に据え置きました。政策金利の据え置きは5会合連続です。今回はボウマン副議長とウォラー理事が0.25%ポイントの利下げを主張し、決定に反対しました。ただし、事前の予想通りであり、市場に対する明確な影響は確認できませんでした。
会合後の記者会見でパウエル議長は経済活動の伸び鈍化について、「主に個人消費の減速を反映している」と説明しました。また、「大半の政策当局者は利下げを急ぐべきではないと主張している」としたうえで、9月会合での利下げを示唆することを避けました。市場ではパウエル議長の発言がタカ派的(利下げに消極的)と捉えられ、1回当たりの利下げ幅を0.25%ポイントとした場合、25年中の利下げ期待がFOMC前の1.8回から1.5回へと低下しました。
米国の政策金利見通し
(注)データは日次で、直近値は2025年7月30日。政策金利はFF(フェデラル・ファンド)金利誘導目標の中央値。FF金先はFF金利先物。(出所)FRB、ブルームバーグより野村證券投資情報部作成
日銀はインフレ見通しのリスクバランスを上方修正
日本銀行は25年7月30-31日に金融政策決定会合を開催し、事前予想通り全会一致で政策金利である無担保コール翌日物金利の誘導目標を0.5%程度で据え置くことを決定しました。日銀による政策金利据え置きは4会合連続となります。
同時に公表した「展望レポート」では、食料品価格の上昇を主因に25年度の消費者物価(除く生鮮食品)の見通しを上方修正した一方、実質GDPや26年度以降のインフレ見通しについては微修正にとどめました。日銀は景気の先行きについて、海外景気の減速、企業収益の下押しなどを背景に減速を見込むものの、その後は「海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、成長率を高めていく」との見通しを示しました。その上で、基調的なインフレ率に関しては、「見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる」との見方を維持しています。
展望レポートの経済見通しを踏まえると、経済・物価が見通しに沿って推移すれば、利上げで緩和度合いを調整していく方針に変更はないと考えられます。ただし、経済に関するリスクバランスは25年度、26年度ともに「下振れリスクの方が大きい」との表現を据え置いた一方、物価見通しに関しては前回の「下振れリスクの方が大きい」から「概ね上下にバランスしている」へと変更しました。このため、市場では早期利上げ観測やターミナルレート(政策金利の最終着地点)見通しの上方修正期待につながることが予想されます。
展望レポートにおける「政策委員の大勢見通し」(2025年7月)
(注)値は、前年度比%で、<>内は政策委員見通しの中央値。各政策委員は、既に決定した政策を前提として、また先行きの政策運営については市場の織り込みを参考にして、上記の見通しを作成している。「大勢見通し」は、各政策委員が最も蓋然性の高いと考える見通しの数値について、最大値と最小値を1個ずつ除いて、幅で示したものであり、その幅は、予測誤差などを踏まえた見通しの上限・下限を意味しない。(出所)日本銀行資料より野村證券投資情報部作成
主要中銀の政策金利見通し
野村證券では、ECBの利下げは打ち止めとなり、今後は据え置きを予想しています。
FRBに関しては、インフレのピークアウトが視野に入ると予想される25年12月から3会合連続で0.25%ポイントずつの利下げを予想しています。ターミナルレートは3.50-3.75%の見通しです。
日銀に関しては26年1月に0.75%へ利上げした後、据え置きに転じると、3者3様の展開を予想しています。
日米欧の政策金利の推移
(注)政策金利は日本:無担保コール翌日物金利、2016年2月~24年2月は政策金利残高適用金利。米国:FF(フェデラル・ファンド)金利誘導目標の上限、ユーロ圏:中銀預金金利。データは月次で直近値は2025年6月。野村予想は、2025年7月末~2026年12月末で、2025年7月25日時点。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成
野村證券投資情報部 シニア・ストラテジスト尾畑 秀一
1997年に野村総合研究所入社、2004年に野村證券転籍。入社後、一貫してエコノミストとして日本、米国、欧州のマクロ経済や国際資本フローの調査・分析に従事、6年間にわたり為替市場分析にも携わった。これらの経験を活かし、国内外の景気動向や政策分析、国際資本フローを踏まえ、グローバルな投資戦略に関する情報を発信している。
ご投資にあたっての注意点